呉爾羅ですが、なにか? 作:VSシリーズ
まず、最近使い始めた鑑定で、相手の情報を少しでも手に入れてみる。
《熟練度が一定に達しました。スキル『鑑定LV2』が『鑑定LV3』になりました》
『エルローバラギッシュ LV8』
大蛇に鑑定を使用したことで、ちょうど鑑定のスキルレベルが上がったようで、種族名の他にLVの表記も出てきた。
まあ、これだけの情報は、危険感知がある以上あってないようなものだけど。
隠密で気配を消していても、鑑定を魔物に使用すると、鑑定を使用した私の存在を相手の魔物に察知された。
つまり鑑定は、対象となった魔物に、私のことを認識できるようにする何らかの効果をもたらすということになる。
そしてそれは、相手の魔物の集中力を乱すことに繋がるんじゃないかと私は思った。
大蛇――エルローバラギッシュを対象に鑑定のスキルを発動すると同時に、私はスパイラル熱線を吐き出していた。
鑑定は、相手の気を少しそらすための手段。
これで、私の攻撃が当たる確率が少しでも上がってくれれば、と思ってね。
私の目論見がうまくいったのか、スパイラル熱線が大蛇の胴体に当たった。
当たったけど……あまり、ダメージはないみたい。
上で戦った蛇よりもずっと強固な鱗に体を守られているから、威力の大部分が鱗に防がれているようだった。
私と同じように、衝撃耐性や貫通耐性――あるいはそれらの上位スキルを持っている可能性もある。
やっぱり、このレベルの魔物相手だと一筋縄じゃいかないか。
だけど、全く攻撃が通じていない訳じゃない。
熱線が当たった場所の鱗は少し黒く変色していて、もろくなったような印象がある。
それに、あそこからわずかに肉が焦げるような臭いもする。
このまま熱線による攻撃を続けていけば、着実にダメージを与えていくことができる。
それに、鱗さえ破壊できれば、剥き出しの肉に熱線の威力をそのままぶつけることもできるはず。
とにかく、相手からの攻撃を受けないように距離を保つことを優先しながら、少しずつでもダメージを与えていこう。
と思ったところで、エルローバラギッシュからの攻撃が来る。
既に思考加速や予見などのスキルは発動しているため、わずかに時間の流れが遅くなった視界のなか、ほんの少し先の未来の動きが、今の動きと少しぶれるような形で見えているのが分かる。
さっきと同じ、横なぎの尻尾攻撃だ。
だけど今度は不意打ちじゃない分、回避することができる。
高速演算で、既におおよその回避ルートは算出している。
回避よろしく、マテリア!
[了解!]
私の考えたことは、しようと思えばコミュニケーションをとることなくマテリアにも伝わる。
スキルで分けられた別の意思とはいえ、元は同じ「私」だから、しっかりとした繋がりがあるんだと思う。
その繋がりを通じて、算出した回避ルートを実際に体を動かしているマテリアに瞬時に伝達する。
そして計算した通りに、私の体は大蛇の攻撃を回避した。
[って、アブな!?]
{思った以上にギリギリだった!?}
高速演算で導き出したルートよりも、実際の大蛇の攻撃は正確に私を狙ってきたようだった。
もしかしたら、命中のスキルも持っているのかもしれない。
これからの回避ルートは、この誤差を考慮して導き出さないと……。
《熟練度が一定に達しました。スキル『回避LV9』が『回避LV10』になりました》
《条件を満たしました。スキル『回避LV10』からスキル『確率補正LV1』が派生しました》
回避のスキルレベルが上がったりしたみたいだけど、それは後回し。
マテリアは、私に当たりそこなったエルローバラギッシュの尻尾めがけて、スパイラル熱線を吐いた。
攻撃した後のスキを狙うつもりで放った熱線だけど、相手にもうまいことかわされてしまった。
回避のスキルを持っている可能性もあるな……。
攻撃を仕掛ける際にも、相手の動きを高速演算で算出しておく必要があるかもしれない。
《熟練度が一定に達しました。スキル『高速演算LV3』が『高速演算LV4』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『HP高速回復LV6』が『HP高速回復LV7』になりました》
そんなことを考えた時にも、スキルのレベルが上がっていく。
実戦になると、こうもスキルのレベルが上がっていくものなのだろうか。
戦闘中に別のことを思考した隙を突くかのように、エルローバラギッシュは次の動きを見せる。
頭を後ろに引き、その長い胴体をまるでバネのように縮めていく。
あっ、まずいと思った時には、既に遅かった。
自身の体を縮めていた大蛇は一気に体を伸ばし、まさにバネの反動のように、凄まじい勢いでこちらに飛び掛かってきた。
今度は真正面から私に攻撃を仕掛けてきて、その鋭くて大きな牙を私の体に突き刺そうとしているのがよく分かる。
多分、あの牙や口から送り込まれる猛毒や酸は、尻尾の攻撃によるものとは比較にならないくらい強力なものだと思う。
あれだけはどうにか防がないといけない。
すぐさま熱線で迎撃するけど、それで止まるような相手じゃない。
大蛇の頭を狙った私の攻撃は、相手が空中でも柔軟に胴体をくねらせたことで着弾点がずれ、胴体にあたった。
スパイラル熱線による物理的威力はそう低くはないはずだけど、この大蛇の攻撃を止めるには至らなかった。
そして私の熱線を器用に回避したエルローバラギッシュは、命中のスキルも大いに効果を発揮しているのか、私の首を正確に狙ってきた。
猛毒を送り込む大蛇の牙が、容赦なく私の首筋に突き立てられようとした。
ガキンッ!
だけど、その牙は私の皮膚に突き刺さることなく弾かれた。
私の体を覆っていた石が、大蛇の猛毒の牙を防いだ。
地竜のスキルで使える技の一つである、自身の体を石で覆って防御する技。
その技を使って、私はエルローバラギッシュによる牙での攻撃をガードした。
上手くいくかどうかは賭けだったけど、どうにか防ぐことはできて良かった……。
《熟練度が一定に達しました。スキル『思考加速LV2』が『思考加速LV3』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『酸耐性LV6』が『酸耐性LV7』になりました》
それでも、牙が通じないくらいで大蛇は諦めなかった。
今度は、その長い胴体をすぐさま私にからめ、締め付け始めた。
その巨体による圧迫はすさまじく、私の身体を覆う石の鎧も少しずつ罅が入っていく。
それに、牙による攻撃も続いていて、首筋の護りも削られていっているのが分かる。
このままだと、いずれ首に牙を突き立てられ、猛毒を送り込まれて死ぬことになるか。
それとも、体全体を強烈に締め付けられて死ぬことになるか。
この状態に陥った大蛇の獲物は、そのどちらかの末路を迎えることになるんだろうな。
こうなっちゃったら、もう打つ手はなくなるだろうしね。
……ただし、私は別だけど。
マテリア。
[OK]
体内放射、発動。
私の体から放射熱線のエネルギーが衝撃波として放たれ、私の体を締め付けて密着していたエルローバラギッシュの体を焼いていく。
しっかりと胴体を私の体に巻き付けていた分、体表面の大部分に体内放射をまともに食らうことになったから、相手に与えられたダメージは決して少なくないはずだ。
予想外の反撃でダメージを受けた大蛇は、たまらずといった感じで拘束を緩め、私から距離を取ろうとする。
そんな大蛇に向かって、私は次の手を打つ。
地竜のスキルにより、土の弾丸をエルローバラギッシュに向かって吐き出す。
土の弾丸は熱線と比べるとかなり遅めで、この大蛇なら楽々とかわすことができるだろう。
実際、予見で視える限りの次のエルローバラギッシュの動きでは、既に回避できるコースにある。
そこに一手くわえる。
私は
先に吐き出された土の弾丸は後ろから迫ってくる熱線に追いつかれ、破壊されて幾つもの破片に砕け散る。
そして、回避できるはずの攻撃が分散したことによって、エルローバラギッシュの頭辺りに岩のような土の塊がいくつもぶつかっていく。
たいしたダメージにはならないだろうけど、意表を突くには十分なはず。
スパイラル熱線を、今度はエルローバラギッシュの頭めがけて発射。
さっきは着弾点をうまくずらされたけど、私の奇策に動揺していたのか、放った熱線は大蛇の頭に命中した。
これはたまらなかったのか、エルローバラギッシュの口から呻き声のように空気が漏れる音が聞こえる。
上で戦った蛇の時のように、口内に熱線を直接撃ち込んだわけじゃないから、流石にこの一発で勝負は決まっていない。
だけど、この一撃で与えられたダメージは少ないないはず。
《熟練度が一定に達しました。スキル『命中LV8』が『命中LV9』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『外道耐性LV7』が『外道耐性LV8』になりました》
私の熱線をまともに食らった大蛇は、私から離れるための動きを再開した。
遠ざかっていくエルローバラギッシュに向かって追い打ち気味に熱線を発射してみるけど、さすがに今度は回避されてしまう。
十分に私との距離を取った大蛇は、私への警戒心を高めたのか、攻撃を仕掛けるのは一旦やめたようだった。
私とエルローバラギッシュは、互いの動きを少しも見逃さないようにと、いくらかの距離を空けて睨み合いを続ける状態になった。
ここまでの戦闘でわかったことだけど、この大蛇、全快状態の私よりは速度は遅い。
スキルのおかげか、命中精度や回避能力は高めだけど、移動速度とかは私なりに測定した限り、麻痺で体の動きが鈍い状態じゃなかったら私が上をとれた。
もっとも、最初の不意打ちで麻痺を喰らっていたから、その次の尻尾の攻撃を避けるのがギリギリになったりしたわけだけど。
やっぱり麻痺は恐ろしいものだって、再実感した。
前回は体が全く動かなくなることに恐怖を覚えたけど、今回は体が少し動かしづらいってだけでも脅威だということを知った。
こういうふうに、実力にそれほど差がない相手との戦いでは、体の動きが鈍くなるってことは十二分に不利な要素になるわけだからね。
本当に、麻痺は厄介なものだと思い知った。
まあ今回に限っては、もう問題ないだろうけど。
《熟練度が一定に達しました。スキル『猛毒耐性LV4』が『猛毒耐性LV5』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『強麻痺耐性LV3』が『強麻痺耐性LV4』になりました》
ちょうど、耐性のレベルも上がったかー……。
もう麻痺による体の鈍さもほとんどなくなってきたけど、耐性がさらに上がるのは歓迎だね。
そういえば、猛毒や酸によるダメージも回復してるみたい。
戦闘中にレベルアップしていた酸耐性や猛毒耐性のおかげもあるだろうけど、やっぱりそれ以上に呉爾羅のスキルによる再生能力のおかげが大きいかな。
HP高速回復のスキルもあるけど、ほんと、このスキルのおかげで、凄い勢いで傷が治っていくからね……。
呉爾羅の再生能力があるなら、単純なダメージや傷――HPを気にせずに戦闘できるんじゃないかなって思うぐらい。
ともかく、不意打ちで与えられたダメージは回復して、麻痺もすっかり治った。
エルローバラギッシュには、少なくないダメージを与えられている。
あとは、相手の攻撃を受けないように注意しながら、着実にダメージを与えていけばいい。
麻痺していない今なら、エルローバラギッシュの速度にも十分対応できるだろうしね。
{ブレイン!}
え?
センス、どうしたの?
{探知に新しい反応があった!
これが何なのかは分からないけど、何か来る!}
慌てた様子のセンスから、探知で知り得た情報が送られてきた。
それを受け取って、戦闘中にもかかわらず、私は混乱してしまいそうになった。
熱や気配など、今まで感知したもののどれとも違うものが、自分の体の上に出現していた。
感知した印象では、それはまるで、魔法陣のような複雑な模様を描くように存在していたようだった。
直後、上から急激な圧力がかかってきた。
押さえつけてくるものなんてないはずなのに、上から強い力が自分に襲い掛かっているのをハッキリと感じる。
思わず地面に倒れそうになるけど、体に力を込めて、どうにかこらえる。
だけど、こんな状態じゃまともに動くこともできない。
偶然、というにはタイミングが良すぎる。
十中八九、あの大蛇が何か仕掛けてきたんだと思う。
でも、それが何なのか全く分からない。
どうやって対処すればいいのか、まるで見当がつかない。
最初に不意打ちを喰らってから、状況が良くなったことに思わず気を抜いてしまったのが悪かったのか。
正体不明の攻撃で、戦局が一気に変わってしまうことをじわじわと感じていた。
以下、現時点の設定など
➀主人公のステータス
フェネグラッド LV6 名前 大原 雅美
・ステータス
HP:4294/4339(緑)
MP:2074/3882(青)
SP:3843/4485(黄)
:3643/4450(赤)
平均攻撃能力:4256
平均防御能力:4556
平均魔法能力:3747
平均抵抗能力:3807
平均速度能力:4503
・スキル
地竜LV7,龍鱗LV6,甲殻LV5,
HP高速回復LV7,
MP回復速度LV7,MP消費緩和LV5,
SP回復速度LV8,SP消費緩和LV8,
破壊強化LV5,打撃強化LV3,斬撃強化LV3,貫通強化LV4,衝撃強化LV5,火強化LV9,土強化LV5,
火攻撃LV7,土攻撃LV6,
立体機動LV5,
集中LV10,思考加速LV3,予見LV3,並列意思LV2,記憶LV9,高速演算LV4,
命中LV9,回避LV10,確率補正LV1,隠密LV10,迷彩LV6,無音LV10,無臭LV5,
鑑定LV3,探知LV10,
影魔法LV3,
過食LV8,
暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
破壊耐性LV3,打撃耐性LV2,斬撃耐性LV2,貫通耐性LV2,衝撃耐性LV3,火耐性LV8,大地無効,
猛毒耐性LV5,強麻痺耐性LV4,睡眠耐性LV5,酸耐性LV7,腐蝕耐性LV4,
恐怖耐性LV4,外道耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV2,
視覚強化LV7,聴覚強化LV6,嗅覚強化LV6,味覚強化LV2,触覚強化LV5,
身命LV2,魔蔵LV1,瞬身LV2,耐久LV2,剛力LV2,堅牢LV2,道士LV1,護符LV1,縮地LV2,
呉爾羅LV10,
禁忌LV10,命名LV2,
n%I=W
・スキルポイント:95600
・称号
呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者
➁呉爾羅LV10によるHP回復効果について
呉爾羅の特殊効果には「自己再生」と「超再生」というものがあり、自己再生の場合は
呉爾羅のスキルと同レベルのHP高速回復と同等の効果、超再生の場合は呉爾羅の
スキルと同レベルのHP超速回復と同等の効果をもたらしている。
つまり、通常のHP自動回復系のスキルとは別に、呉爾羅LV10のスキルを持っていると、
HP超速回復LV10とHP高速回復LV10を同時に持っているのと同じくらいのスピードで
HPが自動回復していくことになる。この設定のせいで、HPだけの話なら主人公の方が
アラバよりもかなりタフかも
➂最後の正体不明の攻撃
原作でもエルローバラギッシュのスキルの中にあった、重魔法。魔法陣が目に見えるものか
どうか分からなかったので、主人公の場合は探知に含まれる術式感知で存在を確認できる
ことにした。あと魔力感知でも感じ取れるかもしれない。
今回は、上から重力をかける魔法で主人公の動きを封じたような感じ