呉爾羅ですが、なにか? 作:VSシリーズ
お待ちいただいた方、申し訳ございません。
そして、ついにWeb版・書籍版ともに原作が完結。
原作者の先生、ご執筆ありがとうございました。大変お疲れ様でした。
さて、今回は内容がかなりボリューミーなものとなっております。
だいぶ久しぶりの更新ですが、お楽しみいただけると幸いです。
2022/05/15
・後書きの「➀主人公のステータス」のスキル一覧に、新しく獲得した「気絶耐性LV1」を追記しました。
まず、今まで温存していた技を使う。
呪い属性のダメージでHP・MP・SPも減少しているから、このMPと赤い方のSPを消費する技はできれば使いたくなかった。
だけど、もう消耗を気にして戦っている場合じゃない。
今の自分の状態のステータスと大差ない強さの敵が複数いるからには、出し惜しみはしない。
細胞活性、発動。
並行して、魔闘法と気闘法のスキルもオンにする。
これらのスキルを発動することで、自分自身の能力値を一時的に上昇させる。
呪い属性により下がった分を全部取り戻せるほどじゃないけど、それでも今の状態なら十分に大幅な強化になる。
もっとも、この系統のスキルを使っている間はMPとSPが消費されていくから、いつまで使えるのか気にしておく必要はあるけど。
とにかく、少しのあいだだけとはいえステータスを上昇させておけば、一対多数の状況でもどうにか戦えるようにはなったはず。
とは言っても、油断なんてできるわけがない。
細胞活性とかのステータス強化系スキルをオンにした瞬間、5体いるカースバグラグラッチのうち一体が、こっちに駆け出してきて攻撃を仕掛けてくる。
速度能力が今の私とたいして違わないせいか、かなり速く動いているように感じる。
細胞活性や魔闘法とかのスキルを使っても速度能力は上がらないから、この攻撃を回避するには他のスキルに頼るほかない。
高速演算のスキルで計算を行い、回避するためのルートを頭の中で導き出す。
思考加速や予見などの他のスキルの力も借りながら、一応算出できた回避ルートに従い、迫ってきたカースバグラグラッチの攻撃をかわす。
けど、回避した先には、離れた場所から一気に跳躍してきた他のバグラグラッチが、空中から私に攻撃を仕掛けようとしてきていた。
熱線で迎撃――ダメだ、放つ前に直撃を受ける。
ギリギリのところで回避を選択し、相手の攻撃が掠りながらも距離を取っていく。
だけど、そうして距離を取った先にもカースバグラグラッチがやってきていて、私に攻撃をくらわせようと待ち構えていた。
気が付いたら、そんなことを繰り返すループの中に嵌まってしまっていた。
おそらくカースバグラグラッチたちが所持している高レベルの連携のスキルが可能としている、ピッタリ息の合った連携攻撃を受け続けるしかなくなってしまっている。
高速演算のスキルでどうにか攻撃をかわすルートは導き出せているけど、相手の連携がうますぎるせいで、こっちが攻撃できるスキを作ることができない。
……スキル云々とは別の、自分自身の戦闘経験の少なさにも原因があることは否定できなかった。
今まで複数の魔物を相手に戦ったことはあるけど、連携のスキルがある相手は、数の多さを活かした戦い方をしてくるから、こっちにとっては戦いづらいことこの上ない。
この連携に、アノグラッチたちが加わっていないことが幸いだった。
私からの攻撃と自身の怨念発動を狙った行動でだいぶ数を減らしたからか、バグラグラッチがやってくる前のような積極的な動きは見せず、カースアノグラッチたちは私とバグラグラッチとの戦いを傍観するようになっていた。
あるいは、強力な援軍であるカースバグラグラッチたちが襲撃に参加したことで、私との戦いは自分たちの勝利で決まったと思っているのかもしれない。
この連携攻撃をどうにかしないとそうなる可能性が高いわけだから、笑えない。
今のところカースバグラグラッチ達からの攻撃は掠る程度に抑えられているけど、このまま連携が続いていけば決定的な一撃を受けるかもしれない。
それに、掠るだけでも呪い属性のダメージを受けているから、実は現時点でも明らかな形で、じわじわと追いつめられている。
いい加減、私のターンに入らせてもらうことにする。
攻撃を避けるために横に跳躍して、その先に待ち構えているバグラグラッチを視界におさめる。
予見のスキルを使い、そのバグラグラッチの次の動作を映像という形で捉える。
どうやら、私の正中線を狙って大きく振りかぶってからぶん殴るつもりみたいだ。
カースバグラグラッチの前に着地した瞬間、その光景通りに攻撃は放たれ、私はその攻撃を受けた。
だけど、ダメージを受けたわけじゃない。
体に当たる前に、真剣白刃取りのように両腕で挟み込むことで、カースバグラグラッチの攻撃を受け止めていたから。
なにも高速演算は、相手の攻撃を避けるためだけにしか使えない訳じゃない。
相手の攻撃をちょうどいいタイミングで防御することにだって使える。
私がさっきから回避に専念しているから、カースバグラグラッチたちの連携も私が回避することを前提としたものになってる。
だから、こうして急に防御に切り替えることで、目の前のバグラグラッチを倒せるだけの隙を作ることができた。
しっかりとカースバグラグラッチの腕をつかみながら、熱線を放つ準備をする。
私が攻撃しようとするのに気づいて相手は暴れ始めるけど、もう遅い。
十分にチャージしたのち、私は目の前のバグラグラッチに向けて引力熱線を発射した。
通常の熱線にキングギドラの引力光線のパワーを加えたような見た目の熱線がカースバグラグラッチに直撃し、その一撃でHPを削り切った。
それなりのダメージになるとは思っていたけど、まさか一撃で倒せてしまうとは思わなかった。
HPが0になったバグラグラッチは、絶命して背中から倒れていった。
《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV27からLV28になりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『高速演算LV8』が『高速演算LV9』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『睡眠耐性LV7』が『睡眠耐性LV8』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『望遠LV2』が『望遠LV3』になりました》
《スキルポイントを入手しました》
カースバグラグラッチを一体倒して得た経験値で、レベルアップしたみたいだ。
呪い属性で低下している能力値が元に戻るわけじゃないけど、MPとSPが全回復してくれるから有難い。
細胞活性とかで消費した分も、これで回復できたわけだ。
レベルアップも嬉しいけど、引力熱線による攻撃が予想以上に強力だったのも嬉しい誤算だった。
こっちはスキルで底上げしているとはいえ、ステータスに大差がなかった相手を一撃で倒せるなんて……。
重耐性を持たない相手には、防御をある程度無視してダメージを与えることは知っていたけど、いざ接戦で使ってみて真価が分かった気がする。
この熱線があるなら、カースバグラグラッチが複数相手でも戦っていけるかもしれない。
残りのバグラグラッチたちは、仲間を一撃で倒した私の技を警戒してなのか、積極的に攻撃を仕掛けてくるのをやめて慎重にこちらの様子を窺うようになった。
能力値がだいぶ弱体化しちゃったから弱気になっていたけど、気持ちが落ち着いた今なら、冷静に戦えば勝機は十分にあると考えることができる。
あとは、カースアノグラッチたちの行動にも注意を払いながら一体一体倒していければ――!?
プツリと、私の中で糸が切れるような感覚が駆け巡った。
その直後、視界がグラリと大きく揺らいだ、気がした。
慌てて足に力を込めて、どうにか体勢を保つ。
なにが……一体なにが起こったの……?
なんらかの攻撃を受けた……という訳じゃないと思う……。
なんだかよく分からないけど……さっきまでとは世界の見え方が全然違う……
突然おそってきた不調をこらえながら、その原因を明らかにするため今の自分の状態を確認していく。
すると、思考加速や予見の効果が切れていることに気づいた。
さっきのが原因でスキルがオフになったのかもしれない、急いで再発動しないと――!?
スキルが、発動しない――!?
そんな……噓でしょ!?
いったいなんでこんなことに……!?
まさか、スキルを使い過ぎたから……!?
スキルをあまりにも長時間使い過ぎたから、不具合を起こして発動しなくなったの!?
もしかして、この精神的な不調も、スキルが発動しなくなったことが原因……?
そうだ!集中のスキル!
スキルの効果で集中力を長い時間保ち続けていたところに、その効果が切れたことで集中力もなくなって、精神的な疲れが一気に襲い掛かってきたんだ……。
まずい。
精神系スキルがあったからこそ苦しい状況でも戦うことができていたのに、それらが使えなくなったのは命取りだ。
それでも、戦える状況にまで持ち直さないと。
スキルに頼らずに集中しなおそうとするけど、うまく頭が回らない。
今まで集中のスキルがあったからこそ無視できていた精神的疲労が、私の思考を大きく妨げてくる。
呪い属性で能力値が大幅に下がっているからか、体もすごくだるい。
スキルが使えないどころか、ろくに頭も体も働かせられない。
こんな状況で、戦うなんて――。
――気が付いたら、思考するだけでいっぱいいっぱいになっていた私の横っ面に、カースバグラグラッチの拳が叩き込まれていた。
完全に予想外の事態に激しく動揺し、隙だらけな状態を見せ続けている今の私は、敵にとって格好の攻撃の的だった。
その攻撃を始めとして、私に襲いかかってきた1体のカースバグラグラッチはどんどん攻撃を繰り出してきた。
バグラグラッチの攻撃はスキルの効果で呪い属性が付与されていて、それを受けるということは私にとって能力値の更なる低下という戦況悪化に繋がる。
そんなことは嫌というほど分かっているのに、心身ともに絶不調に陥ってしまい、スキルもまともに使えない今の私は、避けることもできずに相手の攻撃を受け続けることを許してしまっている。
そして、呪い属性のダメージが私の体にどんどん蓄積していき、ただでさえ著しく低下している能力値がより削られて、さらに窮地へと追い込まれていく。
さっきまで1体だけ攻撃に出させて様子見していた他のカースバグラグラッチも、もはや私の勝利の可能性は完全に失われたと見たのか、今まで攻撃を加えてきた1体に加勢して連携を取りながら攻撃を仕掛けはじめた。
呪怨の恩恵を受けて私にダメージを与えてくる相手が1体から4体に増えたことで、呪い属性による能力値の低下のペースはさらに上がっていく。
抵抗能力のステータスが下がることで呪い属性への耐性も弱くなり、能力値全体が加速度的に下がるようになってしまった。
このままだと、まず間違いなく私は敗北して、死ぬ。
この状況をどうにかするための一手を打たなきゃ生き残れないのに、この自分自身の絶体絶命の状況を、私はまるで他人事かのように、ぼんやりと認識していた。
生まれ変わってから、ずっと自分の生に執着していた私の思考は、自分の生死がかかった場面で在り得ないほど曖昧なものになっていた。
原因は、この長く続いている戦いのなかで厚く積み重なった精神的疲労か、逆転の術が全く分からず心が敗北を受け入れてしまいそうになる絶望的な戦況か、あるいはその両方か。
自分が思いつく限りのやれることはやり切ったから、敗北という結果だろうが受け入れてしまえ、という気持ちもあったのかもしれない。
――だけど、それと同時に、頭のなかが比較的クリアな状態になっているからか、自分のなかに確かにある《それ》の存在を、私は感じ取れるようになった。
《それ》は、まるで膨大なエネルギーが凝縮されているようで、常に高熱を放ちながら私の中に存在している――ような感じがした。
その存在を感じ取ったことで、疲弊しきったはずの体と心にも、少なからず力が入ってくるような感覚がした。
呪い属性によって能力値がどんどん低下していくという絶望的状況が変わった訳じゃないし、そんな状況を打開するためのいい作戦が思いついたわけじゃない。
だけど、策なんて何も思いつかないまま、まだ生きあがくことができるだけの力は体に残っている、そんな私の心は、一つの決断を下した。
――気の向くままに、力を振るってしまえ。
今までの私は、いくつものスキルの補助を得たうえで思考と計算を重ねることで、戦闘における自分の優位を確立しようとしてきた。
だけど、今の私はそれらのスキルを使うことができず、ろくに頭を働かせることもできない。
なら――これが例え自分の最期の戦いになるとしても、いや、だからこそ!――いっそのこと、自分の心が赴くままに動きながら戦っちゃえばいい、と私は思うようになっていた。
喜びのあまり、思わず歓声を上げてしまうように。
悲しみのあまり、激しく泣き出してしまうように。
何も考えず、ただ衝動のままに、この力を――!!
そして、私の意識が現実に戻ってきた時、そうして行動した結果を目の当たりにした。
私に攻撃を加えていたカースバグラグラッチのうち2体が、オレンジ色に発光する泥のようなものに塗れた状態で、仰向けに倒れて絶命していた。
この光景を最初に見て、どうしてカースバグラグラッチが倒されているのか、という疑問が浮かんだ。
呪い属性の効果で本来の数値通りの力をほとんど発揮できない今のステータスじゃ、よっぽどの手段を使わない限り私を上回る能力値を持つバグラグラッチを倒すことなんてできないはずなのに。
しかも、倒したのが2体なら、なおさらの話だった。
だけど、HPが0になったカースバグラグラッチに纏わりついているドロっとしたものを鑑定して、それが何なのか分かったことで、自分がどのような方法で敵を倒したのかを、なんとなく理解した。
他のカースバグラグラッチの様子を見てみると、倒した2体ほどではないにしろ、そのオレンジ色に光る泥のようなものが体にくっついていて、それを振り払おうと腕や足を振り回すほど必死になっているようだった。
確認のために鑑定してみたら、
そのことを確認した私は、さっきは何も考えずに使っていた技を、今度は頭で理解しながら使用する。
地竜のスキルと、呉爾羅のスキルを同時に発動。
それぞれのスキルの効果で生まれた土属性の力と火属性の力を、口の中にため込みながら融合させる。
そして、自分の望む形で一つになったら、それを一気に解き放つ!
そうして解き放たれたものは、私の攻撃を回避する余裕がなくなっている2体のカースバグラグラッチに襲いかかった。
最初は光線のように真っすぐ放つことができたけど、時間が経つと勢いがなくなっていって、ホースから出る水のように、私の口から出ていくと直ぐに下に落ちていくようになるのが目でわかる。
この攻撃を受けたカースバグラグラッチたちの方は、浴びたものが先ほどのオレンジ色のドロッとしたものになって纏わりつき、それに比例するかのようにHPの減少するペースが急激に上がった。
バグラグラッチたちのもがく動きがさらに激しくなって、振り払われるドロの量も多くなるけど、2体のHPは凄まじい勢いで減っていく。
やがて、2体の動きは弱弱しいものに変わっていき、ピクリとも動かなくなるころには、2体のHPは0になっていた。
これが、偶然にも作り出した、私の新しい武器となる技術だった。
地竜のスキルなどで作り出した土属性の物質に、呉爾羅のスキルで発生させた火属性のエネルギーを加え、熔岩のように高熱を発するモノにして、攻撃として相手にぶつける。
この攻撃は、相手に当たった際にダメージを与える他、形のある物として相手にくっつき、その熱により接触しているあいだはダメージを与え続けることができるようだ。
分かりやすく言うなら、他の属性で毒を再現したようなもの、といった感じかもしれない。
名づけるなら、「熔岩熱線」……かな?
《経験値が一定に達しました。大原 雅美がLV28からLV29になりました》
《各種基礎能力値が上昇しました》
《スキル熟練度レベルアップボーナスを取得しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『火炎強化LV3』が『火炎強化LV4』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『神性領域拡張LV1』が『神性領域拡張LV2』になりました》
《スキルポイントを入手しました》
カースバグラグラッチを4体倒した経験値で、レベルアップした。
これで、呪い属性のダメージでかなり減っていたMPとSPが全回復した状態に戻った。
とはいえ、カースバグラグラッチたちの攻撃で大きく低下してしまった能力値は戻らない。
思わぬきっかけで逆転して、この場にいるカースバグラグラッチは倒し切った。
残るは進化前と思われるカースアノグラッチだけだけど、その数の多さから油断ができない相手であることは変わらない。
今の大きく弱体化した状態じゃ、アノグラッチの大群相手に、満足に戦える気がしない。
呪怨や怨念といった厄介なスキルを持つカースアノグラッチたちを相手にして、なんとか戦い抜くことができていたのは、思考加速・予見・高速演算といった精神系スキルの恩恵があったからこそだ。
それらのスキルが使えなくなって、さらに著しく能力値が弱体化している今の状態で、アノグラッチたちと戦って勝つのは、至難。
ハッキリ言って、まともな手段で勝利をつかむことは不可能だと思う。
それに、また増援として新しいカースバグラグラッチがやってくる可能性だってある。
カースバグラグラッチ相手なら、この熔岩熱線があれば対処できると思うけど、その場合も弱体化した能力値が不安要素になる。
つまり、呪い属性によって大幅に下がった状態にされてしまっているステータスをどうにかしないと、この状況を乗り越えることができない、と言ってもいい。
呪い属性のダメージを受けない状態で時間がある程度経過すれば、ステータスは元の数値に戻るよう上がり始めるとは思う。
だけど、カースアノグラッチたちが、私にそんな時間を与えてくれるとは到底思えない。
もう、アノグラッチたちが与えてくる呪い属性のダメージを受けないように立ち回ることは不可能だと思う。
だから、短時間で、全回復とまではいかなくても、ある程度は能力値を元に戻すような手段を、今この場で取る必要があると私は判断した。
……実は、そんな手段について一つだけ、少し前に思いついたものがあった。
だけど、思いついた当初は、そんな方法を実行に移すつもりなんて全くなかった。
上手くいくという確証がなかったこともそうだけど、それ以上にリスクが高くつくものだったから。
だから、精神系スキルが使うことができているうちは、そんなことをしようだなんて思わなかった。
――だけど、ここまで追い詰められている以上、もう手段を選んでいる余裕なんてない。
非常に危険な行為だけど、覚悟を決めて、やるしかない。
口にエネルギーをチャージし、螺旋熱線を放つための準備をする。
白熱光や放射熱線だと威力が小さすぎるから、少なくともスパイラル熱線ぐらいは使わなくちゃいけないと思う。
チャージが完了し、しっかりと目標に当たるように角度を調整してから、私は意を決して螺旋熱線を放った。
情報収集のためにカースアノグラッチたちに鑑定を使用しているうちに、鑑定のスキルレベルが上がって、LV10になった。
LV10に至った鑑定のスキルは、対象の能力値についての詳細を確認することを可能としてくれた。
その情報から、体の部位ごとに能力値が異なっていることを、私は知った。
例えば私の体の場合だと、牙に爪、それに尻尾の攻撃能力が高めになっていた。
それ等の部位の攻撃能力はステータス上の平均攻撃能力より高めで、他の部位との関係が体積や質量といった要素も考慮されたうえで平均攻撃能力の数値が計算されているんだろうと思う。
そして、呪い属性によりマイナスされている能力値……これもまた、私の体の部位ごとに、平均値を多少上回ったり下回ったりと異なっていることが分かった。
それも、呪いによるマイナスの値は、ステータスの能力値と比例の関係にあった。
つまり、各部位の能力値の大小に比例するように、呪い属性による能力値の低下は、部位ごとに分かれた状態になっていると予想できる。
それまではステータスを見て、単純に数値という形でしか呪い属性のマイナスの影響を捉えていなかった。
でも、この体の部位ごとの詳細な能力値の状況というものを知ることができるようになって、見方が変わった。
この「呪い」というものは、もしかしたら、「毒」や「麻痺」といったものと同じように、この体に物理的に悪影響を与えるようなモノなのかもしれないと考えた。
情報としてしか存在しないものや、霊的なものではなく、私の体の中に物質として存在しているようなものじゃないのか、と。
仮に、「呪い」が私の体の中に存在する物質だとしたら、物理的な手段で取り除くことも不可能じゃないはずだと私は考えた。
そして、部位ごとだと元々の能力値が高いほど呪い属性によって下がる能力値も高いのなら、元々の能力値が高い部位ほど「呪い」が多く含まれている可能性が高い、とも考えた。
例えば――
――意図的に螺旋熱線で切り離した、自分の尻尾とか。
――ガ、アアアアアアアアアアアァァ!!!
《熟練度が一定に達しました。スキル『痛覚軽減LV6』が『痛覚軽減LV7』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『貫通耐性LV2』が『貫通耐性LV3』になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル『破壊耐性LV4』が『破壊耐性LV5』になりました》
痛い!!
痛い!!
痛い!!
今まで味わったことのない、信じられないほどの痛みで頭がいっぱいになる!!
決めていた覚悟が無駄に思えるほどの痛みと喪失感に、心が折れそうになる!!
余りの痛さに、意識がどこかに飛んでいってしまいそうになるのを感じたけど、牙を死ぬほど噛みしめて耐える!!
ここで意識を失ったら、わざわざ自分の体の一部を切り離して痛い思いをした意味がなくなる!!
《熟練度が一定に達しました。スキル『気絶耐性LV1』を獲得しました》
いつもと変わり映えのないアナウンスが聞こえてきて、新しいスキルが手に入ったことが分かった。
そのスキルのおかげか、どうにか意識を保つことができた……。
……とりあえず、敵の前で自傷して、痛みで気を失って隙だらけになって死亡、っていうバカみたいな末路は回避できた……
意識はあるけど、尻尾が切り離された部分がひどく痛むのは変わらない。
何もかもほっぽり出して、ただ痛がっていたい気持ちでいっぱい……。
だけど、こんなことまでした成果がちゃんとあるのかどうか、鑑定で確認しておかないと。
もしこれで何の成果も得られなかったら、ホントにもう無理……。
…………よし。
今までからは信じられない速さで、能力値が回復していってる。
こんなにも痛い思いをした意味はちゃんとあったことが、本当に嬉しい。
《熟練度が一定に達しました。スキル『HP高速回復LV9』が『HP高速回復LV10』になりました》
《条件を満たしました。スキル『HP高速回復LV10』がスキル『HP超速回復LV1』に進化しました》
あ、HP高速回復のスキルがLV10になって進化した。
……まあ、熟練度が大量にたまるようなことが起こったばかりだからかな……。
そう思いながら、私は自分の体の後ろの方をチラリと目視してみた。
……既に、断面
呉爾羅のスキルがもたらす再生能力は、やっぱり常軌を逸していることがハッキリと分かった。
部位欠損なんて初めてだけど、こんな簡単に元に戻るのが普通だとは絶対に思わない。
だけど、呉爾羅のスキルさえあれば、おそらくこうなるだろうと考えていなければ、呪い除去のため、こんな方法を取ろうとは決して思わなかったに違いない。
一部だけど、自分の中にある「呪い」を、自分の体ごと切り離す。
これが、この状況で考えて、実行に移すことができると思った、能力値を元に戻すための唯一の方法だった。
いや、本当にリスクが高い方法だとは思う。
想像通り、めちゃくちゃ痛いし。
痛みで気を失ったら、隙だらけになってアノグラッチどもに間違いなく殺されるだろうし。
気絶しなくても、凄まじい痛みで隙だらけになっていたことは間違いないだろうし。
というか、カースアノグラッチたち、なんか、私に攻撃しなくなってない?
バグラグラッチたちを倒したあたりから、私の様子をじっと見ているだけになっているような気がするんだけど……。
いやいや、油断大敵油断大敵。
戦いの最後まで、気を抜いちゃいけない。
それに、万が一だけど、尻尾を切り離すための螺旋熱線のダメージと、その後の尻尾を失ったことによるダメージで、HPが0になって死んでしまう可能性もあるにはあった。
でも、呉爾羅のスキルに含まれる特殊な効果である自己再生と超再生、それにHP高速回復のスキルがあるから、その心配はほとんどしていなかった。
HPが半分ほど削られても短時間で全回復してしまうほどの回復力をもたらしてくれるからこそ、体の一部を失うとはいえ生命活動自体にそこまで影響が出ないのなら大丈夫だと信じることができた。
「自然回復しないような怪我でも回復可能」としてくれるHP高速回復と呉爾羅のスキルがあるなら、尻尾を失っても再生するだろうと考えたのも、この方法を実行に移すことができた要因の一つだった。
まあ、この辺りは理屈というか、確信に近い形での根拠になるけど。
そして、尻尾を自ら切り離してから大して時間が経たないうちに、失ったHPは元通りに戻った。
尻尾も、地面に落ちている切り離した方さえ目に入らなければ、まるで何事もなかったかのように再生していた。
……痛みはまだ残ってるけどね。
で、こんなに痛い思いをして、呪い属性によって下がっていた能力値がどれくらい戻ったかというと、2割と少しってところぐらいかな。
能力によって多少戻ってきた数値が異なるけど、だいぶ力を取り戻すことができたと思う。
他に分かったことは、再生したほうの尻尾にも呪い属性の影響が出るようになって、その分だけ他の部位の能力値が、呪いの影響が薄くなったかのように元に戻っているっていうこと。
これは、切り落とした尻尾以外の体に残っていた呪い属性による弱体化が、尻尾を新しく作ったことで元の状態より全体的には薄まった、と考えていいはず。
呪い属性で能力値が低下している体で、その一部を切り離して新しく再生させれば、全体的に能力値が元の数値に近いものになる。
それなら、切り離しと再生を繰り返していけば、弱体化したステータスをどんどん元の状態まで戻していくことができる。
尻尾を切り落として再生させることで、その時の低下している能力値の約2割を取り戻すことができるとすると……1回目で20%、2回目で16%、3回目で13%ぐらい……といった感じか。
……あんな痛い思いをするのは嫌だけど、死ぬよりかはずっといい。
それに、ある程度まで抵抗能力が上がってくれば、ステータス上での呪い属性への耐性も高まるし。
呪い耐性のスキルレベルが低いうちはカースアノグラッチが与えてくる呪い属性のダメージを防ぎきれなかったけど、今はスキルレベルがだいぶ高くなったから、能力値における抵抗能力を上げれば少なくとも相手を倒し切るまでは持つと思う。
カースアノグラッチたちが、また怨念の効果による呪い属性の大ダメージを狙った行動を取るかもしれないけど、奴らが怨念を発動させるよりも、こっちが尻尾を切り落として再生させる方が早いだろうから、まあ問題ないでしょ。
呪怨のスキルを発動させた直接攻撃も、こっちから近づかなきゃ大丈夫だろうし。
相手の数の多さがかなり問題だったけど、バグラグラッチが来てからアノグラッチの増援は全く来ないし、たぶんこれ以上、カースアノグラッチが来るようなことはないはず。
来たら来たで、こっちが死ぬほど痛い思いをする回数が増えるだけの話だからね!
物凄く痛いだけで実際に死ぬってわけじゃないから、問題ない問題ない!!
ハハハハハハハハハハハハハ!!
あー、なんだかすごくスッキリする!
呉爾羅のスキルのおかげでHPの心配なんてする必要なんてなかったんだから、そのことを最初から活かして戦うべきだった!
こんなにも痛くて、心が折れそうだけど、死んじゃうことに比べたら、なんてことないんだから!!
アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!
《熟練度が一定に達しました。スキル『恐怖耐性LV6』が『恐怖耐性LV7』になりました》
アハハハハハーーハァ。
……よく見ると、カースアノグラッチたちが自分を見る目に変化が出ていることに気づいた。
怒りとか、憎しみ以外のものが目に宿っている。
あれは、もしかして……怯え?
まさか、ここまで来て、今さら奴らが私のことを恐れるようになったとでも?
ハハハーー笑えない。
お互い、今までずっと命の奪い合いをしてきたんだぞ?
こっちはこんな思いしてまで戦い続けてるんだぞ?
そっちだって仲間を大勢失ったし、なんなら仲間が捨て身になるのを止めもしなかっただろ?
それなのに、まだ生きているお前らが後戻りなんて、許すわけないだろ?
こっちだって覚悟を決めてるんだ。
そっちも覚悟を決めろ――殺しつくされる覚悟をな。
《条件を満たしました。称号『恐怖を齎す者』を獲得しました》
《称号『恐怖を齎す者』の効果により、スキル『威圧LV1』『外道攻撃LV1』を獲得しました》
以下、現時点の設定など
➀主人公のステータス
フェネグラッド LV29 名前 大原 雅美
・ステータス(低下中)
HP:8792/9993(緑)
MP:9217/9368(青)
SP:10193/10193(黄)
:10127/10127(赤)
↓平均攻撃能力:3013(9881)
↓平均防御能力:3250(10281)
↓平均魔法能力:2500(9139)
↓平均抵抗能力:2564(9244)
↓平均速度能力:3213(10230)
・スキル
地竜LV9,龍鱗LV8,甲殻LV8,鉱体LV6,
HP超速回復LV1,
MP高速回復LV3,MP消費緩和LV8,魔力操作LV2,魔闘法LV5,
SP高速回復LV3,SP消費大緩和LV3,気闘法LV4,
破壊強化LV6,打撃強化LV5,斬撃強化LV5,貫通強化LV4,衝撃強化LV6,
火炎強化LV4,土強化LV8,毒強化LV2,麻痺強化LV4,
火炎攻撃LV2,土攻撃LV9,毒攻撃LV4,麻痺攻撃LV5,外道攻撃LV1,
立体機動LV8,手加減LV4,
集中LV10,思考加速LV9,予見LV9,並列意思LV5,記録LV5,高速演算LV9,
命中LV10,回避LV10,確率補正LV9,隠密LV10,迷彩LV8,無音LV10,無臭LV7,威圧LV1,
鑑定LV10,探知LV10,
影魔法LV3,
過食LV9,
暗視LV10,視覚領域拡張LV4,
破壊耐性LV5,打撃耐性LV6,斬撃耐性LV3,貫通耐性LV3,衝撃耐性LV5,
火炎耐性LV2,水耐性LV2,大地無効,雷耐性LV3,重耐性LV3,
猛毒耐性LV8,強麻痺耐性LV6,呪い耐性LV8,睡眠耐性LV8,強酸耐性LV5,腐蝕大耐性LV2,
気絶耐性LV1,恐怖耐性LV7,外道大耐性LV8,苦痛無効,痛覚軽減LV7,
視覚強化LV10,望遠LV3,聴覚強化LV10,聴覚領域拡張LV2,
嗅覚強化LV8,味覚強化LV2,触覚強化LV7,
神性領域拡張LV2,
天命LV10,天魔LV10,天動LV10,富天LV10,
剛毅LV10,城塞LV10,天道LV10,天守LV10,韋駄天LV10,
呉爾羅LV10,
禁忌LV10,命名LV3,
n%I=W
・スキルポイント:23600
・称号
呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者、魔物の殺戮者、恐怖を齎す者
➁精神系スキルが発動不可になった理由
主人公は「長時間使用し続けたことにより生じた、スキル自体の不具合」と予想したが、
作者的には「スキル発動に必要なエネルギーが枯渇したから」……ということにしたい
Web版でも、描写は限られているが、スキルの発動に必要な力が尽きると、自分の力で
止められない発動中のものも含めてスキルが停止する場面がある。だけど、ほぼ
独自設定という扱いでいいと自分では思う。ちなみに、主人公がそんな状態でも
一部のスキルを使用できたのは、ここでは明かせない理由があります
➂熔岩熱線
作者が主人公にやらせてみたかったこと。説明終わり
➃「呪い」の仕様(独自設定)
部位ごとに弱体化している数値が細かく設定されていたり、その部位を体から切り離せば
その分だけ弱体化が緩和するというのは、完全に独自設定。体の部位によって攻撃能力や
防御能力などが異なっているのはWeb版に記載あり。正直、「呪い」を毒や麻痺などと
同じようなものだとみなし、体ごと削り飛ばすという方法ぐらいしか思いつかなかった……
あと、主人公に自らブレーキを壊してもらうためのきっかけだったりする
➄蛇足:なんとなく思いついたアイデア集(今作関係なし、ネタバレ注意)
※ネタバレ注意
⑴蜘蛛のアリエル ディスカバリー
アリエルが、突如空に現れた謎のうずに吸い込まれて、気が付いたら
「星のカービィ ディスカバリー」の舞台となる世界にいて、カービィたちと
なんやかんやする話。なお、「ディスカバリー」の方の話が終わったら、
「蜘蛛ですが、なにか?」の世界にカービィたちと戻ってエライことになる予定
⑵白織さんハードモード
「星のカービィ ディスカバリー」のラスボスやらなんやらがやってきて、
白織さんにとってのハードモードになるお話。「絶対お前のせいだろ、D!!」
星のカービィ ディスカバリー、いいゾ~これ(布教)
後書きの「主人公のステータス」にて、追加してほしい要素はありますか?⑵
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①前回からのステータスの上昇値
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②前回からのスキルのレベルの上昇値
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③呉爾羅などのスキルによる補正値
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①と②
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①と③
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②と③
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①と②と③
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特になし