呉爾羅ですが、なにか? 作:VSシリーズ
あ、これもう死んだわ。
事態を理解した私は、まずそう思った。
だって、ここから生き残るとか、無理だもん。
他の魔物と戦うならスキルの力が使えるけど、空を飛ぶことができるスキルはないもん。
まさか、死なないようにと他の魔物に殺されないよう立ち回ってきた私が、そのための行動で死ぬとか思ってなかった。
ああ、どうしてこうなっちゃったんだろう。
私はもともと日本にいた普通の女子高生で、ゴジラ映画は視聴する側の、ただの人間だった。
それが、死んだと思ったらトカゲになっていて、ゴジラと同じ熱線を使えるようになって、こんな弱肉強食の世界で必死に生きてきたはずなのに、バカみたいに呆気なく死ぬなんて……。
誰が望むんだ、こんなアホみたいな話。
でも、これはこれでいいのかもしれない。
こんな血と闘争にあふれた世界から解放されるのなら、悪くないかも。
何度リアリティのありすぎる悪夢かと思ったことか。
正直、今でも夢だと思いたい気持ちがある。
早く、こんな夢から覚めて、ゴジラの映画がまた観たいと何度も望んだ。
あのシーンでも、もう一度見たら感動するかもしれない。
いくらなんでも、熱線でそこまではできないだろうと思った、あの……。
それだ!!!
一気に思考を現実へと引き戻した私は、立体機動のスキルを意識しながら体勢を立て直し、同時並行で穴の側面との距離などを確認する。
《熟練度が一定に達しました。スキル「立体機動LV1」が「立体機動LV2」になりました》
この状況でのレベルアップはありがたい。
私は落下しながら体勢を整え、ちょっと斜めの下方向に顔が向くようにする。
そして、思いっきりの力を込めて、放射熱線を吐き出した。
空中で熱線を吐き出した反動で、体が回転しそうになるが、どうにか体勢を維持できるようにスキルを意識しながら努める。
最低でも、上の方を向いてしまうようなことは決して起こしてはいけない。
流石に熱線の反動を完全には殺し切れず、体が少しずつ回転して、熱線の噴射先も下方向から横方向にずれていく。
だけど、上の方を向いてさえいなければ、むしろありがたい。
熱線を吐き出し続けた私の背に、衝撃と凄まじい痛みが襲う。
穴の側面の壁にぶつかった!
私は、口から吐き出した熱線を推進力にして、落下速度を少しでも緩めると同時に、自分の体が壁にぶつかるように行動していたのだ。
穴の深さが尋常ではないおかげで、地面に衝突するまでの時間も大分あるようなのが不幸中の幸いだった。
この大穴がもし浅かったら、地面の染みになる方が早かったかもしれない。
まあ、その場合は、大けがで済んで死ぬことはなかった可能性もあるけど。
壁にぶつかった衝撃で、熱線を一度止めてしまい、壁との距離ができてしまう。
しかし、私は覚悟を決めて、熱線を吐き出し続けて自身の体を壁に押し付けた。
壁に自身の体を押し当てることで、壁との間に重力とは逆向きの摩擦力が生じ、落下スピードは落ちるはずだ。
そう考えた通り、少しずつ落ちていく速度が遅くなっているように、目で見ている限りでは感じている。
同時に、自分の背中で壁との摩擦を起こしているから、背中には削られていく痛みが襲い続けている。
焼けるように痛いけど、落下スピードを下げることを優先しないと死んでしまうので、熱線を吐くことと体勢を保つことに集中する。
《熟練度が一定に達しました。スキル「苦痛耐性LV1」を獲得しました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「集中LV5」が「集中LV6」になりました》
また新しいスキルを手に入れたみたいだけど、そっちに意識を割く余裕はない。
ただ熱線を吐いて、少しでも落下する速度を遅くして、死ぬ可能性を少なくする。
そのことを第一に考えて行動したおかげか、最初の時と比べて下に落ちていく速度が遅くなっているのが目に見えて分かる。
これは、いけるのでは?
どうにか落下死を回避できる可能性が見えてきたことで、心に若干の余裕ができた。
そしてようやく、私は気配感知と危機感地――それと、新しく手に入れていた動体感知で、この縦穴にいた魔物の存在に気が付いた。
蜂だ。
人よりも大きいサイズの巨大な蜂が、何匹も縦穴の中をブンブンと飛び回っていた。
落ちることに気をとられて、全く意識できなかった。
蜂は、自分たちの縄張りに入ってきたものは許さないとばかりに、私に襲い掛かってきた。
こっちは地面に激突しないようにするのが精いっぱいだっていうのに!
幸いにも、気配感知による脅威は、いつも狩っているカエルと違わないぐらいのが大半だ。
熱線は落下の勢いを落とすために使っている最中で、空中で天地が逆転しているという非常に戦いにくい状況だけど、戦えない訳じゃない。
あくまで下向きに熱線を吐くことを中心に考え、並列意思で蜂への対策を行う。
火攻撃のスキルで手と足、尻尾に火をつけ、蜂が寄ってこないように体勢を崩さない程度に振るう。
今までの魔物と同じく蜂も火が苦手なのか、私のそういう行動だけで近くに寄ってくることはなくなった。
そうやって蜂を遠ざけながら熱線を吐き続けていたら、やがて蜂たちは諦めたのか、縦穴の上の方へと遠ざかっていった。
そして、ついに地面が近づいていき、下を向いていた私の頭が地面と衝突し、かなりの衝撃が頭の中を走った。
頭痛を覚えながらも、私は生き残ることができた嬉しさでいっぱいだった。
ゴジラ映画の、ネタとしか思えないようなシーンから思いついた咄嗟の策だったけど、どうにかうまくいって良かった。
本当に、熱線を空中での推進力にするなんて方法を、よく考えついたと自分でも思う。
上を見上げると、本当にかなり深いところに落ちたことが分かる。
ここから元居た高さまで戻るのは、無理だろうなと思った。
立体機動のスキルのレベルが上がれば行けなくはないのかもしれないけど、さっきの蜂に邪魔されることを考えると、行かない方がいいと思う。
別のところから戻れるかもしれないから、まずはここの探索を先に行なおう。
そう考えた私の背中に、ブスリという音とともに何かを刺される感触がした。
突然の事態に一瞬呆けてしまいそうになったが、すぐに感知系のスキルを使用。
私に攻撃を仕掛けていたのは、蜂だった。
しかも、さっきの蜂の何倍も大きく、感じ取れる脅威度も高い。
すぐに対処しようとしたけど、それは無理だった。
体が、動かないのだ。
まるで痺れているようで、行動しようとしても動くことができなかった。
この状況で体を動かせないことに焦っている私に対し、蜂が針を通して何かを私の体内に流し込んできた。
すると、またたくまに体の内側から激痛が襲ってきた。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い!!
体が中からひび割れてくるような凄まじい痛みに、かつてないほどの命の危機を感じる。
背中から針を刺す蜂をどうにかしないといけないと分かっているけど、痺れている体はまだ動かない。
それでも、このままだと死ぬ。
激痛に苦しみながらも、どうにかしようともがく。
《熟練度が一定に達しました。スキル「麻痺耐性LV1」を獲得しました》
その声が聞こえてきた時、少しだけ痺れが弱まったようで、体も少しだけ動かせるようになったのを感じた。
そのことを認識した私は、蜂を攻撃するために体内放射を使用した。
体内放射は、呉爾羅のスキルがレベル6になったことで使用できるようになった技だ。
放射熱線のエネルギーを衝撃波として全身から放出する技で、口から直線的に放たれる熱線と違って、自分の周り全てを攻撃することができる。
熱線の何倍も消耗が激しい技だから使い時は選んでいたけど、熱線が当たらない背中の蜂を迎撃するにはこれしかない。
私の体内放射をまともに受けた蜂はひとたまりもなかったようで、気配感知で感じ取れる反応がすぐに消えてしまった。
どうにか原因は排除できたけど、激痛はまだ私を蝕んでくる。
《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV5」が「毒耐性LV6」になりました》
毒……?
そうか、毒だ!
あの蜂、私に毒を盛ったんだ!
蜂と言えば毒だということを、すっかり失念していた。
毒を浴びたことも取り込んだことも何度もあるけど、こんなにも痛い思いをしたのは初めてだから気づかなかった。
でも、気づいたからと言って、どうにかできるわけじゃない。
まだ麻痺が残っているけど、身を隠せそうな場所を探して、そっちの方にどうにか移動した。
《熟練度が一定に達しました。スキル「苦痛耐性LV1」が「苦痛耐性LV2」になりました》
また何かのスキルのレベルが上がったみたいだけど、とにかく体が痛くて意識できない。
この激痛、間違いなく蜂に刺されて入れられた毒によるものだろう。
痛いだけじゃなく、体が弱っていくことも分かってしまう。
呉爾羅やHP高速回復でも間に合わないほどの速さで、命を削られていくのを感じてしまう。
いやだ、死にたくない。
その想いが通じたのか、痛みは治まらないけど、自分の命が繋がっていく感覚がする。
なんとなく、体力を、生命力に変換するような、そんな感覚……。
そう長くは続きそうにないけど、それでも自分の命が少しでも長引いてくれることに泣きそうになる。
《熟練度が一定に達しました。スキル「HP高速回復LV2」が「HP高速回復LV3」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV1」が「恐怖耐性LV2」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV6」が「毒耐性LV7」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「苦痛耐性LV2」が「苦痛耐性LV3」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性L2」が「恐怖耐性LV3」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「HP高速回復LV3」が「HP高速回復L4」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「呉爾羅LV6」が「呉爾羅LV7」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「禁忌LV6」が「禁忌LV7」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「恐怖耐性LV3」が「恐怖耐性LV4」になりました》
《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV7」が「毒耐性LV8」になりました》
気が付いたら、その感覚も収まり、自分の命が削られていくような感覚もしなくなった。
毒による激痛と死への恐怖で、どれだけの時間が過ぎたのかも分からなかった。
気配感知で自分自身を探ってみると、大分弱ってはいるけど、一定の気配の大きさを保っているようだった。
たぶん、毒によるダメージと、再生能力が拮抗しているような状態なんだと思う。
……どうにか、蜂の毒で死ぬ事態は回避できたみたいだった。
だけど、状況は今までで最悪だ。
上はさっきみたいな蜂がたくさん飛んでいて、また襲ってくるかもしれない。
生命力を回復させた代償なのか、お腹がひどくすいている。
だけど、ここは初めて来た場所で、食料になるようなものがあるかどうかも分からない。
悪夢は、まだ続くようだった。
以下、現時点の設定など
➀主人公のステータス
フェネグラン LV4
・ステータス
HP:914/1494(緑)
MP:318/1367(青)
SP:571/1450(黄)
:236/1462(赤)
平均攻撃能力:1388
平均防御能力:1387
平均魔法能力:1279
平均抵抗能力:1282
平均速度能力:1363
・スキル
地竜LV4,龍鱗LV3,甲殻LV2,
HP高速回復LV4,
MP回復速度LV2,MP消費緩和LV2,
SP回復速度LV3,SP消費緩和LV3,
破壊強化LV2,打撃強化LV1,斬撃強化LV1,貫通強化LV1,衝撃強化LV2,火強化LV6,
火攻撃LV3,土攻撃LV1,
立体機動LV2,
集中LV6,予測LV4,並列思考LV6,記憶LV4,演算処理LV1,
命中LV3,回避LV3,隠密LV10,迷彩LV2,無音LV10,無臭LV1,
危険感知LV6,気配感知LV6,動体感知LV1,
影魔法LV1,
過食LV5,
暗視LV10,視覚領域拡張LV1,
火耐性LV4,大地無効,毒耐性LV8,麻痺耐性LV1,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,
恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV3
視覚強化LV2,聴覚強化LV2,嗅覚強化LV2,味覚強化LV1,触覚強化LV1,
生命LV2,魔量LV2,瞬発LV3,持久LV3,強力LV4,堅固LV4,術師LV2,護法LV2,疾走LV3,
呉爾羅LV7,
禁忌LV7,n%I=W
・スキルポイント:95110
・称号
呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者
➁今作オリジナルの種族の説明
○種族「アサシンフィンジゴアット」
概要:ハイフィンジゴアットの特殊進化先。ステータスはジェネラルと比べると
低めだが、猛毒針や、針で刺した相手を麻痺状態にする麻痺毒針などの
強力な状態異常攻撃を持っているほか、隠密と無音のスキルを高いレベルで
保有しているため、ステータスの高い魔物相手でも、毒や麻痺に対する
耐性が高くないと倒してしまえるほどの厄介さがある