呉爾羅ですが、なにか?   作:VSシリーズ

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※主人公がアナフィラキシーショックについて心配する描写がありますが、この世界の蜂の魔物が持っている毒では起こりえない設定ですので、そのことをご理解いただきたいと思います



追記、彼女に蜘蛛子並のメンタルを期待しないでください


生きあがく

正直いうと、もう心が折れそうだった。

自分よりも圧倒的に強い大蜘蛛に狙われ、底が見えないほど深い穴に落ちた。

どうにか落下死せずに済んだと思ったら、あの蜂に今までにないほど強力な毒を注入されて、この地下深くで苦しむことになっている。

 

HP高速回復と呉爾羅のレベルが上がって再生能力が向上したから、耐性が上がったこともあって毒で体力が削られることはなくなった……と思う。

でも、毒によるものと思われる痛みは、まだ体に残っている。

それに、壁に体を押し当てている時に摩擦で削れた背中の傷も、じくじくと痛んでいる。

いつもなら回復し始めているはずなんだけど、毒のダメージを回復するのに手いっぱいで、こっちの傷は回復する余裕がないのかもしれない。

 

今までで最悪のコンディションであるにもかかわらず、周囲の状況も良くない。

エネルギーを消耗したのか、かなりお腹がすいてしまっていて、はやく何か食べた方がいいかもしれない。

だけど、この場所に、上層のように食料になるような魔物がいるかどうかも分からず、いたとしても獲物になるような弱い魔物はいないかもしれない。

こんな状態で、初めての場所で狩りに行くのは、不安が大きい。

 

それに、上にいる蜂も怖い。

さっきみたいな蜂がやってきて毒をまた盛られたら、今度こそ死んじゃう。

今のところ、それと同じ蜂の存在は感知系のスキルで感じられないけど、警戒をやめることなんてできない。

 

毒に、痛みに、空腹に、蜂を始めとした外敵。

それらが、今の私を追い詰めている。

 

 

……もう嫌だ。

どうして私がこんな目に……。

私が一体、何をしたっていうの……?

 

今まで、他の生き物を殺して生きてきたから?

そうでもしないと、生きていくことなんてできなかったのに?

それとも、私の心構えとかが、何か悪かったの……?

 

……帰りたい……。

誰か、助けて……。

 

 

 

 

 

……どうにか気持ちを立て直して、行動を起こす。

まず、少し心もとないけど、進化するときに以前作ったような土のシェルターを作った。

今回は、白熱光で熱を加えることで、より強度を持たせることに成功した。

 

自作のシェルターは、少しばかりの安心感を私に与えてくれた。

その安心を頼りに、今後のことを慎重に考える。

 

現状について、まずは毒と傷のダメージを治すことを優先したいと思う。

初めての場所で、ダメージが残ったままの体で他の魔物を狩りに行くのは、できるだけ避けたい。

空腹が限界を迎える前に食料を確保したい気持ちもあるけど、蜂に襲われる可能性も考慮したら、まずはダメージを回復させたい。

 

傷を治したりする手段は、今のところHP高速回復と呉爾羅の二つのスキルしか思いつかない。

これらのレベルが上がれば、徐々に回復してくるようになると思う。

熱線や他のスキルのように、明確に「使用する」という意思をもってスキルを使っているわけじゃないけど、体を休めて癒すことを意識していれば、もしかしたらスキルのレベルが上がるかもしれない。

この二つのスキルは大事な命綱なので、可能性が低くても試していきたい。

 

私の上の方を飛んでいる蜂だけど、私との距離はかなり離れているし、こうしてシェルターにこもっていれば襲われないかもしれない。

気配感知や危険感知で警戒することはやめないけど、シェルターがあるから不意打ちは仕掛けられないだろうし、大丈夫だと思う。

 

……よし、感知系のスキルで外敵を警戒しながら、再生系のスキルを高めることを意識して体を休めよう。

 

 

 

土のシェルターの中で眠って、目を覚ます。

正直、蜂が襲い掛かってくるかもしれない状態で眠るのは不安だったけど、眠気は対処しきれなかった。

眠ってしまうのを我慢していたら、睡眠耐性なんていうスキルを手に入れていたけど、さすがに眠らずにはいられなかった。

体の痛みはまだ治まらないけど、それでも眠気は襲ってくるという、知りたくもないことを知った。

 

すぐに感知系のスキルを使用して、周囲に危険がないことを知ってホッとする。

無事とは言えない状態だけど、こうして生きていくことができるのは、やっぱり嬉しい。

 

寝るまでに、再生系のスキルのレベルが上がることは結局なかった。

空腹も、少しずつひどくなっている気がする。

それでも、今は回復することを優先したい。

 

 

 

起きてからしばらく、周囲の警戒をして過ごしていたら、待ち望んでいた瞬間が来た。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「HP高速回復LV4」が「HP高速回復LV5」になりました》

 

HP高速回復のレベルが、上がってくれたのだ。

自分の生命力が、回復の傾向に向かっていくことが分かる。

毒による激痛も、少しずつ収まってきた気がする。

 

《熟練度が一定に達しました。スキル「毒耐性LV8」が「毒耐性LV9」になりました》

 

ちょうど毒耐性のレベルも上がってくれた。

この調子なら、近いうちに毒も抜けきってくれると思う。

そうしたら、背中の傷も治り始めると思うので、その傷が完治したら狩りに行こうと思う。

 

まずは、再生が終わるのを待とう。

 

 

 

おなかが、すいた。

 

体の再生は……一応、終わった。

体の痛みもなくなったし、背中の傷もすっかり治ってる。

途中で、苦痛耐性がLV7になったことをアナウンスで聞いた。

 

でも、それ以上に空腹が気になって仕方がない。

自分の体が回復したことに安心して気が抜けたのか、一気に空腹感が押し寄せてきた。

そのせいか、ちょっと頭がふらふらしてきた気がする。

 

この状態で狩りにいくのは、かなり危険だと思う。

かと言って、このままだと食料が手に入らないから、最悪本当に餓死するかもしれない。

 

そんな時、チラッと視界に映ったのは、昨日体内放射で仕留めた蜂の亡骸。

その毒で、私を大いに苦しめた、あの蜂。

 

……あの蜂を食べればいいじゃないかと、思っちゃった……。

 

確かにそうだけども、どう考えても悪手でしかない。

刺されて毒を注入された時にあんなに苦しんだのに、その毒をもう一度体内に取り込むような真似をするなんて、本当にどうかしてる。

それに、確率は低いとはいえ、アナフィラキシーの危険性もある。

あの蜂の毒で、このトカゲの体で、それが起きるかどうかは分からないけど、あの蜂は食べないのが一番だ。

 

……でも、今はそれ以上に空腹をどうにかしないといけないと考えちゃう……。

お腹がすいてくるのに耐えられなくなってきて、食べないよりも食べた方がいいと思うようになってくる。

 

……それに、最初に蜂の毒を喰らった時に比べて、毒耐性もHP高速回復もレベルが上がってパワーアップしてる。

今なら、蜂の毒を取り込んでも、なんとかなるかもしれない。

アナフィラキシーに関しては、起きないことを祈るしかない。

 

……食べよう。

このままだと、空腹で死ぬことになるかもしれない。

私の持っているスキルが毒を上回っていることを祈ろう。

 

体内放射で焼けた蜂の亡骸に近づき、いただきますと心の中で礼をする。

自分を守るためとはいえ、奪うことになった命。

できることなら、無駄にすることは避けたいという思いもあった。

 

覚悟を決めて、一口かぶりついた。

牙でかみ砕き、飲み込んで胃へと送り込む。

 

瞬間、私の体をまた痛みが襲った。

それに、少し体も痺れてきた。

麻痺のことをすっかり忘れていた……。

馬鹿か私は!!

 

幸い、毒による痛みは最初ほどではなく、麻痺の痺れもそこまでではなかった。

少しだけ動きがぎこちない体を動かして、蜂をくわえてシェルターへと戻る。

空腹で冷静じゃなかったのか、無防備な場所で蜂を食べ始めたけど、さすがに続きは安全な場所で食べることにする。

 

食べかけの蜂をシェルターの中に入れて、自分も中に入る。

さっきの一口に含まれていた毒でダメージを受けたけど、今はもう回復し始めてるのを感じる。

どうやら、この蜂の毒でまた死にかける、という展開はなくなったみたいだ。

 

我ながら、バカなことをしちゃったとは思う。

空腹で、ここまで思考を乱されるとは思ってなかった。

お腹がすくっていうことは、私が考えていた以上に恐ろしいことだった。

今まで食べてきた生き物たちには、これまで以上に感謝しないと。

 

それはそうと、この蜂を食べることに危険が全くないという訳じゃないけど、少し食べる分なら危機的状況に陥るわけじゃないと分かった。

すると、現金なことに、できれば全部食べておきたいと考えるようになってしまった。

 

今までの経験上、毒持ちの魔物を食べていると、毒耐性のスキルのレベルが上がることがある。

なら、この強力な毒を持つ蜂を食べていれば、毒耐性も強くなっていって、今後毒を持つ魔物との戦いで多少有利になるんじゃないかと思う。

それに、HP高速回復のレベルも上がるかもしれないと考えると、苦しい思いをしても食べた方がいいかもしれない。

 

そう考えながら、私は回復を待つ。

回復を待ちながら、周囲への警戒を感知系スキルで行なった。

 

 

 

穴の底に落ちてから、3日目。

といっても、時間の感覚なんてなくなっているから、寝て起きて、を1日の基準として考えているだけだけど。

 

昨日から今日にかけて、蜂を少しずつ食べていった。

食べて毒を喰らって、毒が抜けきるまで体を休めて、の繰り返し。

 

再生系のスキルで回復するまでの間、他のスキルのレベルを上げたりした。

シェルターに閉じこもっているから鍛えたスキルの数は少ないけど。

 

蜂はもう、食べきっている。

この蜂には、本当に世話になった。

いろんな意味で、本当に。

 

この蜂のおかげで、毒耐性が大幅にレベルアップした。

少しずつ食べているうちに、毒耐性のスキルがLV10になって、猛毒耐性というスキルになったらしい。

LV10になったら、進化という形で別のスキルになるものもあることを、初めて知った。

名前や進化という単語から考えて、より毒への耐性が強くなるスキルだと思う。

 

で、毒への耐性がそういう感じで強くなった私だけど、ふと気づいた。

スキルポイントで、毒耐性を強くすれば良かったんじゃないかと……。

 

うん、激しく後悔しましたとも。

毒耐性に限らず、HP高速回復とかのレベルも上げられるわけですから。

スキルポイントの存在をもっと早く思い出していれば、ここまで苦労することはなかったわけですから。

どうしてこう、スキルポイントのことをすぐ忘れちゃうのか……。

 

で、せっかくだから、麻痺耐性のレベルを上げるのにポイントを使った。

思えば蜂の攻撃で、まず体が麻痺してたんだよね。

あのとき行動できていれば猛毒をくらうこともなかったと考えると、麻痺というものも厄介だと今なら思う。

ちょうどLV2になったことをいつもの声で知っていたから、LV10になって強麻痺耐性というスキルに進化するまでポイントを消費した。

 

HP高速回復にもスキルポイントを使おうと思ったけど、やめた。

私は、今回のことで初めて麻痺というものの恐ろしさを知り、毒で死にかけることになった。

毒耐性は蜂を食べているうちに猛毒耐性へと進化し、スキルポイントで麻痺への耐性は強化したけど、これからは、これらに匹敵する――あるいはそれ以上の脅威に遭遇する可能性だってある。

そのことを考えると、その脅威への対策として、スキルポイントはできるだけ取っておきたいという気持ちが強かった。

まあ、けっきょくのところ状況次第だけど。

 

さて、蜂は食べきってしまったため、食料を得るにはシェルターの外に出るしかない。

不安は大いにあるけど、十分に回復した以上、あとはなるようになるしかない。

 

私は、隠密系や感知系のスキルをフルに使いながら、未知の場所を歩み始めた。

 

 

 




以下、現時点の設定など

➀主人公のステータス

フェネグラン LV4

・ステータス

 HP:1494/1494(緑)
 MP:1367/1367(青)
 SP:1450/1450(黄)
  :714/1462(赤)
 平均攻撃能力:1388
 平均防御能力:1387
 平均魔法能力:1279
 平均抵抗能力:1282
 平均速度能力:1363

・スキル
 
 地竜LV4,龍鱗LV3,甲殻LV2,
 HP高速回復LV5,
 MP回復速度LV2,MP消費緩和LV2,
 SP回復速度LV3,SP消費緩和LV3,
 破壊強化LV2,打撃強化LV1,斬撃強化LV1,貫通強化LV1,衝撃強化LV2,火強化LV6,
 火攻撃LV3,土攻撃LV2,
 立体機動LV2,
 集中LV6,予測LV6,並列思考LV7,記憶LV5,演算処理LV1,
 命中LV3,回避LV3,隠密LV10,迷彩LV2,無音LV10,無臭LV1,
 危険感知LV7,気配感知LV7,動体感知LV3,
 影魔法LV1,
 過食LV5,
 暗視LV10,視覚領域拡張LV2,
 火耐性LV4,大地無効,猛毒耐性LV2,強麻痺耐性LV1,睡眠耐性LV2,酸耐性LV3,腐蝕耐性LV2,
 恐怖耐性LV4,苦痛耐性LV8,
 視覚強化LV2,聴覚強化LV2,嗅覚強化LV2,味覚強化LV1,触覚強化LV1,
 生命LV2,魔量LV2,瞬発LV3,持久LV3,強力LV4,堅固LV4,術師LV2,護法LV2,疾走LV3,
 呉爾羅LV7,
 禁忌LV7,n%I=W

・スキルポイント:93510

・称号

 呉爾羅、悪食、魔物殺し、暗殺者

➁作者の、耐性系スキルに対する考え方
・ステータス上の抵抗能力の大きさに関わらず、所持により対応する属性に
 抵抗できるかどうかが大きく左右される
→本作で、平均抵抗能力は1000を超える主人公が麻痺を喰らったのは、
 麻痺耐性のスキルを所持していなかったから
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