呉爾羅ですが、なにか? 作:VSシリーズ
並列意思含めて口調に不安……
オッス!オラ蜘蛛!名前はねえぞ!
今日は、オラのすんげー冒険を聞かせてやっぞ!
日本では普通のJKだったオラは、ある日教室で起きた大爆発で死んじまったぞ!
それはDってゆーすんげー性格がわりー邪神のせいだっていうんだから、マジ
そんでもって、魔物や魔法が存在するファンタジーな世界に転生することになったんだぞ!
それだけなら素直に、オラわくわくすっぞ!できたんだけど、なんとオラだけ蜘蛛の魔物に転生しちまった!
ほんとやってられねーってばよ!
あ、間違えた……やってらんねーぞ!
しかも転生した先は、狂暴な魔獣はびこるエルロー大迷宮!
この世界のラストダンジョン的な場所で生まれ変わっちまったんだぞ!
そのうえ、オラの生まれた時の強さは、魔物として最低クラスだなんて話だから、さぁー大変!
いや、マジで大変だったわ……。
すんげーよえー、最底辺の蜘蛛の魔物に転生しちまったオラだけど、そこはオラ!
元人間様の知恵と度胸を駆使して、ありとあらゆるつえー奴らをなぎ倒し、ついにエルロー大迷宮を脱出したぞ!
だけど、それを許さねえヒデー奴がいたんだ!
オラの生みの親でありながら、虐待上等、ネグレクト上等、我が子を食べるのも上等な、正真正銘の外道な巨大蜘蛛――マザーだ!
マザーは、生まれたばかりのオラを喰おうとしてたくせに、オラが強くなった途端、眷属支配のスキルでこっちを従えようとしてくる、本当にヒデー奴だった!
だから、マザーの悪辣な支配の糸を断ち切るために、仕方なく、ほんと~~~うに仕方なく、オラの並列意思たちをマザーの精神に送り込んで、やめさせるよう説得(物理)をしたんだぞ!
そしたら、マザーは自分のしたことも忘れて、怒り狂ってオラを殺しに来たんだぞ!
配下を送り込んできたり、大迷宮を壊してでも襲ってきたり、挙句の果てにステータスがアホみたいな数値の魔王にオラを一度始末させたり、本当に散々だったぞ!
だから、オラはマザーのところに(並列意思が散々弱らせた後)直接むかってやって、決着を付けようとしたんだぞ!
でも、マザーは狡猾で、オラはマザーの罠にかかって絶体絶命のピンチに陥っちまったんだぞ!
もはやここまでか……と思ったその時、並列意思たちがオラの体に戻ってきて、マザーからうば…今までの慰謝料代わりに貰ってきた力で、超絶パワーアップ!
オラは、友情(的な並列意思たちとの絆、ただし自分のコピー相手)・努力!(強調)の力で、ついにマザーに勝利したんだぞ!
{情報担当、いつまで茶番を続けているんだい?}
茶番とは失礼な、私の冒険を某有名なインフレバトル漫画風に振り返ってただけでしょーが。
〈いいけど、早くせんと魔王がくるばい〉
おっと、そうだった。
マザーから情報を受け取っただろう魔王がここに来る前に、急いで転移しないと。
エルロー大迷宮を脱出し、マザーを倒した私だけど、魔王からは逃亡をする日々を続けている。
マザーは魔王の眷属だったから、マザーの眷属でありながら反逆を起こし、マザーを倒すに至った私の存在を、魔王は決して許しはしないだろう。
私が魔王の立場だったら許せるはずないし。
マザーの力を取り込んだとはいえ、平均ステータスが9万というアホみたいな数値の魔王相手では、どんな準備をしたとしても戦えるはずもない。
いちおう並列意思の体担当が、マザーにやったみたいに魔王の精神に侵入して魂を攻撃してはいるんだけど、マザー相手でも並列意思3人分で長い時間がかかったから、並列意思1人分で魔王の魂を削り切るとなると、相当な期間が必要になるはず。
体担当の侵食を当てにするとしても、私本体は逃げ続けなきゃいけないって訳よ。
まあ、叡智様によるマーキングと空間魔法の転移で、油断さえしなければ魔王の追跡は問題なく振り切れるから、かなり余裕がある逃亡生活だけどね。
あ~~、せっかくエルロー大迷宮の外に出たんだから、久しぶりに甘いものが食べたい。
{本当に余裕だね……}
〈とてもあのバケモノに追われてるんとは思えんばい……〉
だって、ようやくあのマザーを倒したんだよ。
あの、私の二度目の人生におけるトラウマNo.1のマザーに!!
トラウマを克服した喜びに浸りながら、手に入れた自由を存分に謳歌するしかないでしょうが!!
{まあ、気持ちはわかるよ}
〈で、自由はいいけど、これからどうするとね?〉
これから……そうか、これからのことか。
確かに、魔王から逃げるにしても、何かしらの目的はあった方がいいか。
今は逃走一択だけど、魔王との力の差を縮めておくために力をつけておきたい。
まずありえないけど、気づいたらばったり遭遇していたなんていう万が一もあるかもしれないし。
で、強くなるのに一番手っ取り早い手段といえば、レベルアップだ。
LVを上げればアラクネへの進化も近づくし、進化してもステータスとかが上昇する。
アラクネへの進化はもともと目指していたし、やっぱりこれが一番の目標かな。
そんでもって、最近は向こうの方から強い奴がくるから経験値には事欠かなかったけど、今は違う。
マザーの次に強いパペットタラテクトたちは魔王の周りに固まってるし、その他の強めな眷属たちは軒並み倒してしまった。
エルロー大迷宮には魔王が網を張ってるだろうし、ここら辺には強そうな魔物はいない。
つまり、自分の足で稼がないと、経験値は入ってこないか。
とりあえずは、エルロー大迷宮ほどではないにしろ、魔物が多くいる所を探してみようか。
あ、魔王が従えているタラテクト種はいないところね。
見つかったら、すぐばれるだろうし。
まあ、人間は魔物より多めに経験値を持ってるから、人間の集落を襲ったほうが速いだろうけど。
でも、ほら、いちおう私、もと人間だし?
正当防衛はまだしも、自分から積極的にヤろうとかは考えたくない。
うん、かなり魅力的だけど、進んでヤろうとかは思ってないよ?
というわけで、魔王から距離を取ることを優先しながら、経験値稼ぎによさそうなところを探すとします。
{うん、私も当面はその方針で良いと思うよ}
〈じゃけん、そげんなところ見つけんのは、時間がかかるかもしれんけん〉
{確かに、エルロー大迷宮には魔物があふれていたけど、あそこは例外だろうからね。
かなり広い範囲で探していかなきゃ、ちょうどよさそうなところを見つけるのは難しいかもしれない}
〈あ、もしかしたら、その途中で他の転生者に会うかもしれんね〉
{その可能性はなくはないけど、この広い世界に25人だと出会う確率はかなり低いだろうね}
……他の転生者、か。
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他の転生者の大半が人族に転生して、私だけ蜘蛛っておかしくない!?
しかも、転生した場所は狂暴な魔物だらけのエルロー大迷宮だし!!
おかげで難易度ルナティックな人生ならぬ蜘蛛生だわ!!
『いいじゃないですか、私が見る分には面白いですし』
それが一番腹立つんだよ!!
ひとが必死になって生きているのを……この邪神!!
はぁーないわー!!
私だけこんな扱いとか、マジないわー!!
『一応言っておくと、魔物に転生している方はあなた以外にもいますよ』
え?
マジで?
ほとんどが人族に転生してるんじゃないの?
『転生させた方々の大半は人族に転生しましたが、例外もいます。
その例外に入る人たちは、それぞれ魂の波長が近い種族の魔物に転生しています。
なかには、あなたと同様にエルロー大迷宮に生息する魔物になった方もいるんですよ?』
マジかー……。
私も同じ境遇とはいえ、それは災難だったとしか言いようがないわ。
ちなみに、どんな魔物に転生してるの?
『そこに転生していたのは貴方を除くと二人で、どちらも地竜に生まれ変わることになるでしょうね』
地竜かよ!!
竜とか、魔物のなかだとエリートコースじゃん!!
少なくとも底辺ステータスの蜘蛛より恵まれてるじゃん!!
やっぱ不公平だわ!!
ん?
『生まれ変わることになる』?
それって、まだ生まれてないってこと?
『正確には、地竜の転生者のうち一人は、まだ卵から孵化していない状態ですね。
いずれは生まれることになるでしょうが、おそらく数年はかかることになるでしょう。
もう一人の方は既に活動を開始していて、この大迷宮の片隅でたくましく生きていますよ』
ふーん。
ま、別にいいけど。
『同じ転生者ですが、特にどうしようとかは考えないのですね』
まあ、全く気にならないと言えば違うけど、自分から接触しようとかは思わないかな。
この大迷宮で最強クラスのマザーとの戦いに巻き込むようなことになったら、後味悪いだろうし。
そもそも、何度も死にかけたとはいえ、最弱種族に転生した私ですら、ここまで成り上がった訳だよ?
竜なんていう優遇種族に転生したんだから、自分一人でどうにか生きていってほしいわ。
『普通の人は、あなたのように生きていくことはできないと思いますけどね』
いやいや、確かにここは危険とはいえ、私みたいに人生綱渡りな状態にはなってないでしょ。
多分。
『そうではなく、精神的な問題ですね』
ん?
どゆこと?
『日本で普通の女子高生として過ごしていた人が、ある日死んでしまって、記憶を持ったまま異なる世界で全く別の生き物として生まれ変わって、弱肉強食の環境で生きていかないといけなくなる。
今まで平和な世界で日々を送っていたことを考えれば、その精神的負荷は尋常ではないでしょう。
実際、彼女の人間としての精神は、あまりのストレスに何度も崩壊しそうになっています。
まあ、そのたびにどうにか立ち直り、精神を修復しながら一生懸命に生きていますが』
Oh……私も同じような境遇とはいえ、そういうふうに聞くと同情しちゃいそうになるわ……。
で、アンタはそうやって苦しみながら生き抜いている元クラスメイトをただ見てるだけなわけだ。
いや、その様子を見て愉しんでいるって言ったほうがいいか。
『邪神ですから』
アンタやっぱクソだわ。
というか、同じような状況でも割と自分のメンタルを保っている私って、実はかなり凄い?
『そうですね、並外れて図太いメンタルだと思いますよ』
おい!
もっと言い方あるだろ!
『あなたの尋常ではないほどの図太さはさておいて、彼女に干渉するつもりがないのなら、私からは特に言うことはありません。
彼女は、あなたが関わらない方が面白いことになりそうですから、私としては歓迎です。
あなたも、せっかく不死の魔物になった訳ですし、これからも私を楽しませてくださいね』
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誰がじゃい!!
こっちはお前のために強くなってるわけじゃないんだよ!!
あの邪神ホント腹立つ!!
〈いきなりどうした!?〉
{
あ、あー、気にしないで。
ムカつくことを思い出しただけだから、D関連の。
〈あー、なるほど〉
{いったい何事かと思ったばい……}
ごめん。
さて、腹立つことも思い出しちゃったわけだけど、そういえばDから他の転生者の現状も少し聞いてたな。
Dの話からすると、私と同様エルロー大迷宮に魔物として転生した元クラスメイトは二人いるんだったっけ。
で、私がザナ・ホロワに進化した時点では、一人はどういうわけか生まれていなくて、もう一人は既に生まれていて、活動しているって話だった。
まあ、思い出しただけで、方針は変わらないけど。
元同郷ではあるけど、会いに行ったり助けに行ったりする旨味がないんだよね。
叡智様があるとはいえ、アホみたいに広いエルロー大迷宮のなかを探す手間はとんでもないだろうし。
そもそも、魔王がいるかもしれないから、無理。
それに、マザーよりも格上の魔王を敵にまわしちゃっているから、あの時よりも私が置かれている状況がより悪いものだと分かった以上、会いにいかない方があっちのためでしょ。
だってステータスが鬼高いし、スキルもほとんどカンストしているバケモノだよ?
そんな奴との戦いに巻き込まれたら、たまったものじゃないでしょ。
少なくとも私が巻き込まれる立場だったら、原因になった奴に対して殺意を抱くね。
うん、やっぱり自分からは関わらない方針を続行で。
あの邪神の望み通りの行動をするのは癪だけど、それはそれ。
その転生者が、魔王を倒すうえで強い味方になってくれる可能性があれば、話は違うんだけどなー。
例えば、めっちゃ強力なスキルを転生特典に貰っているとか、ステータスがむっちゃ高いとか、そんな感じ。
でも、それはいくらなんでも期待しすぎでしょ。
Dの話からすると苦労しているみたいだし、弱くはないにしても魔王に勝てるほど強いとは思えない。
Dはなんか気にしているみたいだったけど、十中八九転生者だからだよね。
私と同様、この世界で自分が転生させた人間がどう生きているのか、娯楽感覚で見てるに違いない。
そのなかで不遇な目にあっている奴を見て愉悦しているのが、あの邪神だ。
アイツのことを考えていたら、またムカムカしてきた。
あー、やめやめ。
さっさと移動することにしよう。
私は勘違いしていた。
Dは、全ての転生者に対して興味を持っていると思っていた。
だから、気にしているといっても、「転生者だから」という理由だと考えていた。
でも、それは違った。
私は、
次回、進化。からの……