押忍!クソ女飯   作:ヤマグティ

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いつかネットで見た「押忍!クソ女飯」とか言う罵倒を思いだして、何となくノリと勢いだけで作ったss。出オチなので初投稿です。


グルメ漫画なんて一ミリも読んだ事ないけど許して♥

正直只のマキマさん社会生活ssになりそう。

多分続かないです。



元ドミネーターとカツサンド

 

 

チチチチチチ……

 

 

 

六畳半のアパートの一部屋に、小さく小鳥の囀りが響き渡る。

 

「朝だね。」

 

スゥスゥとベッドで眠っていた女性は、その囀りを聞くや否や本当に眠っていたのかと思うほどにパッと元気に目を開いて、体を起こす。

 

そうして、ベッドのすぐ隣にある机の上から充電をしているスマートフォンを取って、画面をタップして小鳥の囀りを止める。

 

再び机の上にスマートフォンを置くと、うーーん…と体を伸ばして布団から出る。

 

「まだ寝てたいなぁ。」

 

女性は惜しそうにそう言いながら、少量の日の光が差し込んでいたカーテンを開ける。

 

ブワッと一気に部屋が暖かな光で満ちる。今日は雲一つも無い良い天気のようだ。

 

「うん。眩しいね。」

 

女性は一斉に顔に降り注いできた光に目を冴えさせて貰うと、今日の支度を始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

            

私はマキマ。

 

あ。いや、今は間木 麻。

 

アパートの一室で一人暮らしをしているしがないOLだよ。

 

今はね。

 

昔は違った。

 

マキマ。そう、マキマ。

 

 

それが前までの私の名前。

 

 

それが昔の私を表した名前。

 

 

それが

 

 

 

 

 

 

 

 

支配の悪魔だった頃の名前。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

支配の悪魔。

 

人々の持つ支配への恐怖が生み出した、人類の歴史とも言える名を冠した悪魔。

 

 

 

 

 

支配の悪魔。

 

かつて日本に存在した、全てを掌握しきれる程の力をもった悪魔。

 

 

 

 

 

支配の悪魔。

 

そしてその支配の名を持つにも関わらず、「とある力」を使って平等で対等な世界を作り上げようとした悪魔。

 

 

 

 

 

 

支配の悪魔。

 

あと、その「とある力」のファンガール。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、それも本当に昔の話。

 

 

 

 

 

 

 

今の私は間木(まき) 麻(まや)

 

 

支配の悪魔であるマキマは、色々あって死んじゃった。

 

ホント、何で死んじゃったんだろう。おかしいな。日本国民って一億人ぐらい居たと思うんだけど。

 

契約内容とか認識の問題に何かあったのかな。

 

まぁ考えてもわからないか。兎に角。

 

今はこの世界に人間として生まれてきて、物心ついたときにふと昔の事を思い出して、でもそのまま人間として育ってきて、人間として働いている正真正銘の人間。

 

もう支配の力なんて微塵も使えないし、悪魔でも何でもない。

 

ただ、悪魔だったときの外観と記憶だけが残ってる。

 

まぁ、だからなんなんだろうね。

 

対等な世界を作りたい。その夢はもう叶わない。

 

20年ぐらい人間として生きてきたけど、支配による恐怖の力が無くなった所で結局対等な関係なんて大して作れなかった。

 

悪魔の力、いいや。悪魔の存在そのものが無くなったであろうこの世界には、私のその大きすぎた夢を叶えられた唯一の力である彼だっていなかった。

 

嗚呼、そうだ。

 

私のヒーローが、この世界にはいない。

 

もう、記憶の中にしかあの勇姿は存在しない。

 

そんな世界で、このマキマを持って生きるのに一体何の意味があるんだろう。

 

いっそマキマの事も、彼の事も全部忘れていれば私は幸せだったかも知れない。

 

「…。」

 

「…ハァ。」

 

洗面台の鏡に写るスーツに着替えた私の姿を見ると、今日もため息をつく。

 

それはスーツ姿が昔を思い出させるからだし、今日も仕事をしに出社しないといけないめんどくささによく似た憂鬱感の為でもあった。

 

仕事は退屈。それでいて今はもう支配の力が無いから大変。

 

それでも出社しないと、仕事をしないと人間の私は社会を生きていけない。

 

自力で頑張る。

 

根回しも、ポジションの確保も、ほとんどが支配の力頼りだった私にとっては慣れないこの感覚に子供の頃は四苦八苦した。

 

そんな人間としての昔の事を思い出しながら、赤ピンク色の後ろ髪を三つ編みにする。

 

この髪型も昔の自分を思い出させる要素だけど、やっぱり仕事をする時はこれがお気に入り。

 

そうして鏡で身だしなみがしっかりしてるかを確認すると、ハァと再びため息をついて今日も大人しく諦めて家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ぞろぞろと、足音につぐ足音。

 

何処の誰もが出社時間。駅は今日も大混雑だ。

 

私はそそくさと要領よく人混みを潜り抜けて改札を抜けると、真っ先にホーム…ではなく、改札を抜けたすぐ近くにある小売店に向かう。

 

私の、毎朝のちょっとした楽しみの為に。

 

私は向かった先にある小売店のパンコーナーにいくと、迷う事なく3個入りのカツサンドのパックを一つ取ってレジに持っていく。

 

「あら、おはよう間木ちゃん。今日も時間ピッタリね。」

 

レジ店員のおばさんは、毎日欠かさずやってくるすっかり常連と化した私に明るく挨拶する。

 

「おはようございます。」

 

私は社交辞令と常連である馴染みを込めて小さくニコリとして挨拶する。

 

そうして、慣れた手つきで財布から五百円を取り出してカツサンドと等価交換する。

 

契約完了。

 

カツサンドを受け取るとカバンにしまって、ホームへと向かう。

 

 

駅のホーム。

 

腕時計を見て、今日も今の時間が私が乗る電車の来る十分前である事を確認する。

 

それを確認すると、フフっと自然と笑みがこぼれる。

 

なぜならこの十分間こそが、毎朝のちょっとした楽しみだから。

 

私はカバンからカツサンドの入ったパックを取り出して、その紙のパックから三つある内の一つを取り出す。

 

ふっくらとした、不純のない白くて四角い食パンに挟まれた肉厚なカツ。その隙間から少しのぞくキャベツ。

 

普通のカツサンドだと少し端っこに隙間ができがちだが、このカツサンドには端までしっかりとカツが詰まっている。

 

このボリューム満点のこれが、私の朝食だ。

 

何の気無しに初めて買った時からのお気に入りで、毎朝こればかりを買っている。

 

そう、毎朝カツサンド。

 

相変わらず朝からなんてがっつりしてるな。

 

と、今日もそう思いながらかぶりつく。

 

 

肉厚故に少し固いカツを食い千切って頬張る。

 

口一杯に広がるのは、肉汁とカツに染み付いたソースの味。パンやキャベツの甘み。そしてパンに塗られたマスタードの酸味にも似た辛味。

 

そんな沢山の味わいも、カツサンドのメインたるカツもしっかり堪能させるように、いや。むしろ引き立てるように良い意味で抑えられている。

 

サクサク、シャキシャキと、カツの衣やキャベツを噛み砕く軽快な音が固く閉じられた唇から小さく漏れて響いてくる。

 

だんだんとそれが小さくなって聞こえなくなってくると、喉をゆっくり動し飲み込む、そして口を空にすると、今日もこう言う。

 

「うん。おいしいね。」

 

何の捻りもない淡々とした感想。

 

でも、そのシンプルを極めたこの言葉が私にとっての「食」に対する一番の誉め言葉だった。

 

 

 

 

 

人間になってからは、「食」が数少ない私の楽しみになっていた。

 

 

悪魔だった頃の私にとっては「食」は大して重要なものじゃなかった。

 

血さえ飲めてれば生きていられる悪魔にとって、「食」は娯楽にしか過ぎないものだから。

 

人間を好んで食べたりする悪魔もいたけど、それは人の死を望む悪魔の習性の為。別に食べるという手段にこだわらなくたって人を殺せれば満足できる。

 

食文化を楽しむ感性は、悪魔だった頃の私にはあまりなかった。精々ちょっと楽しいくらい。

 

 

 

だが、人間になってからはそれが大きく変わった。

 

人間になってから一番に私を苦しめてきたのは、空腹という感覚。

 

お腹が満たされないことに非常に満足できないという感覚は、悪魔にはない感覚だった。

 

人間の体にとって何かを食べるというのは、人間以前に「生物」として必要な事だった。そうしないと死んでしまうから。

 

死なない為に空腹を満たすべく食べる。それが生物としてのごく自然的かつ最大の欲求なのだ。

 

悪魔が本能的に人の死を望むのと同じように、生物は満腹感を本能的に望んでいる。

 

だからお腹が膨れると、そこに比例して私の心は大いに満たされていった。

 

そんな悪魔の頃とは違った感覚がとても新鮮で、そのうち私はモリモリ食べる元気な子に育っていた。

 

だから今でこそ悪魔の頃とほとんど同じ体格をしていても、幼い頃の写真を見ると大体ぽっちゃりとしている。恥ずかしいね。

 

まぁ、兎に角。ごく日常的な食べるという行動に喜びを見いだせるようになったのは、人間になって良かったと思えた所だった。

 

本当は映画鑑賞とかも日常的にできればいいのだけれど、生憎しがない社会人の私にはこの世界でもそう頻繁にはそんな時間が取れないのが現状だ。

 

支配の力が少しでも使えれば、企業の努力義務に映画鑑賞時間の導入とか入れるのになぁ。とたびたび思う。

 

ちょっと話が逸れたね。まぁまとめると、今の私は食べるのが大好きってこと。

 

それなりに頑張って仕事して、それなりのお給料で美味しい物を沢山食べる。

 

以前の夢と比べれば随分と小さなモノになったけど、それが悪魔でもマキマでもなくなった私にとっての、今の所の生きる理由。

 

 

 

私は気づけば最後の一つになってしまっていたカツサンドを食べ終えると、道中に買っていたお茶を一口飲んで締める。

 

ちょうど、タイミング良くホームに轟音が鳴り響く。電車が来たようだった。

 

ホームの防護扉と、電車の扉が開く。

 

人々はぞろぞろと電車から出てきたり、入っていったりする。

 

その民衆の一員たる私も、その足取りに習って入っていく。

 

今日も満員電車な訳だけど、気分のセットアップは先程しっかり終えたので今日もこれにストレスを感じることは無さそうだ。

 

そうして多くの群衆が顔を下に向けて画面を見つめ始める中で、私だけは顔を上に向けて今日もこう考えるのだった。

 

 

今日の夜ご飯は、何にしようかなぁ。

 

 

 

 

 

 

 

 

まぁ、そんなこんなで私はしがない人間になっちゃったけど、ご飯はおいしいし、人間扱いもそんなに悪くないし、それなりにちゃんと社会人もやれてる。

 

軽い気持ちでこんな生活をしてるけど…。

 

案外この生活を続ける為なら、死んでもいいかもね。

 

…。

 

いや、死んだら何も食べれないね。やっぱり無し。

 

 





グルメ系の書き方のコツをだれか教えて❤(自発的に調べる気ゼロのクズ)
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