押忍!クソ女飯   作:ヤマグティ

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実は社会人エアプなので続かないです。

だから所々変な所があっても許して❤


飲み 2/2

 

「「「カンパーーイ!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ビールもう一杯!!」

 

「もう一杯目飲み終わったんですか。」

 

「部長もたまには来ればいいのにね~!」

 

「……そういえば…確かに岸辺部長とは大人数で飲んだ事ないですね。」

 

 

 

「あ、トンテキある。おいしそー。」

 

「オレ唐揚げ!!唐揚げ!!キャッキャッ!!」

 

「あ、いいね唐揚げ。後で分け合いっこしようよ。」

 

「賛成!!賛成!!」

 

 

 

 

「焼き鳥うんま~。」モグモグ

 

「いつ見ても思いますがクチバシが開くようにできたそのマスク、本当に良く出来てますね。そこまで徹底しますか。」

 

「いいでしょ。特注品。」

 

 

 

「わぁ……おいしい……こんなにおいしいの初めて食べたかも……。」

 

「小紅ちゃんは実家に殆どお金入れてるんだったっけ?大変だね…。」

 

 

 

「あっオイ!!それオレが頼んだ餃子だぞ!!」

 

「は?ワシのじゃが?」

 

 

 

 

 

深夜帯。ガヤガヤと声入り交じる座敷席。皆各々楽しそうにしている。お財布の犠牲は無駄にならなそうだね。良かった良かった。ほんとうによかった。

 

甲斐あった光景に満足し、そしてこれから消えていくお財布の中身の事を頭の片隅に考えながら、私はメニューを開いて何を食べるか考える事にする。

 

唐揚げ。カツ。砂肝。生姜焼きetc…

 

メニューを開くとやはり最初に目に止まるのは肉系。

 

狩猟時代でもあるまい畜産の普及した現代でも、ただお肉というだけで何故か他の食材より贅沢に感じるのはきっと魔力の類だろう。

 

一瞬豚カツにしようかと考えたが、ここの豚カツは衣も肉も分厚いのは良いんだけど前にそれが飲み過ぎたお酒と合わさって胃がもたれて翌朝辛かった思い出がある。

 

その教訓からお酒を盛大に飲むならもう少し重く無いものにしよう、という方向性を定める事にした。お肉を食べたいと言う時点で既に破綻してる気もするけど。

 

 

 

 

 

じゃあ、生姜焼きにでもしようかな。

 

 

 

 

 

と、カツよりは重くないでしょと一瞬考えて、ふと目に止まった我流君を見てその考えも変えた。

 

我流君の事が目に止まったのは、そのマスクのクチバシが開いて食べ物を口に運べるようになっているといういつ見ても凝視してしまう光景を作っているからだ。

 

そんな我流君が食べている焼き鳥を見て、それが良いなと感じてきた。

 

そこまで固い食べ物じゃないし、味を塩に調整すれば油の摂取量もある程度は調節できる。

 

よし、これでいこう。

 

「焼き鳥の盛り合わせ、塩でお願いします。」

 

 

 

 

焼き鳥。

 

鶏肉を串に刺して焼いてお好みでタレをかけて食べるだけという非常にシンプルな食べ物。

 

だが、その単純さこそが至高。それこそが長年において居酒屋に普及し多くの人々から愛されている理由。

 

シンプルイズベスト。

 

料理には精巧さも無論大切だが、必ずしもそれだけが全てとは限らないのだ。

 

特に居酒屋などのお酒のある場では、大切なのは会話や交流を楽しむという事。食事はそれを引き立てる物にすぎない。

 

あえて精巧に作らず意識を料理だけに向けさせないという事は案外に大切だ。

 

 

美味しさだけを追求する事が食事の全てでは無いということなのだと、そんな哲学染みたことを焼き鳥は感じさせてくれる。

 

 

 

 

まぁ私はそれでも真っ先に美味しさを追求させて貰うけどね。個々人の楽しみ方だって大切だ。

 

よって哲学、これは命令です。消えなさい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「焼き鳥の盛り合わせ。塩になります。」

 

「ありがとうございます。」

 

つくね もも ねぎま 皮 レバー

 

綺麗な間隔で並べられた焼き鳥の盛り合わせがコトリと置かれる。

 

つい先程まで火の元に晒されていたのだと感じさせる湯気と、小さく少しに沸騰している塩ダレが食欲を増幅させていく。

 

見る食事を一瞬で満足に楽しむと、早速もも串を取る。

 

もも串。

 

焼き鳥って何?と聞かれれば、きっと誰もが最初にコレを頭に浮かべるだろう。

 

もも肉。柔らかなその食感は、唐揚げ、照り焼き、他の料理の具材等、と多岐に渡る用法を作り出す。

 

まず鶏肉と言ったらコレ。

 

王道を往く者。

 

ザ・スタンダード。

 

思い付く限りそれっぽい言葉を頭に浮かべると、いやそんな事よりもとふぅふぅと冷まして早速先頭の一つを食べる。

 

王道たる由縁のもも肉の柔かな食感と、塩ダレとこしょうの塩味が噛む度に口に広がっていく。

 

「うん。おいしいね。」

 

王道のおいしさがなんたるかを堪能し、それから二口、三口食べて、残りの下二つは一気に引きずり取って食べ終える。

 

次に取るのは、革にするかと少し迷ったがつくねにする。

 

つくね。

 

部位をそのまま刺す一般的な他のものとは違い、一度こね丸められるという過程が施され、さらにお団子のように3つ構成になっているという何処までも焼き鳥界のイレギュラー。

 

3つ構成、言葉だけで聞くと何か損したような気になるが、実物を見てみればそれは違うと思い知らされる事になる。

 

その丸くて、ずっしりとした質量感。

 

そう、丸めこねられ圧縮されたつくねは3つ構成にすることで他と釣り合いが取れているのだ。

 

そんなヘビー級の一個を一つ口に含む。

 

圧縮された重量感、それに反して歯が感じる食感はふわふわとした非常に柔かなもの。

 

肉のすり身で出来ているそれを噛み砕くのはとても容易だ。

 

だが時折噛む音に混ざるコリッとした音が単に柔らかいだけではないと訴える。

 

コリコリとした食感。軟骨だ。

 

魚等で出来た他のつくねには無い鶏つくねだけの要素。

 

軟骨に別に特段味がするわけではないが、これは食感を楽しむ物なので大した問題ではない。

 

ちなみにコレ結構好みが分かれる物らしいと社会に出て知ってかなり驚いた。

 

 

「うん。おいしいね。」

 

つくね3玉全部食べ終えると、何かさっきも聞いたような感想を口に出す。

 

そうして、次に先程選ばなかった皮串を手に取る。

 

ちなみに先程皮串を選ばなかった理由に深い意味はない。あるよね、何か先にこっち食べたいなってなること。

 

 

皮串。

 

 

羽を丁寧にむしり取ったであろうプツプツとした外観は、そうまでして食材として余すこと無く使おうとした先人たちの食への敬意と執念を物語っているように感じさせる。

 

薄くて軽い、先程のつくねとは反した軽量型。

 

皮の特徴は、言うまでもなくあの食感だ。

 

口にいれれば、早速あのカリカリとした…いやパリパリ?

 

まぁどちらにせよ、他の部位では再現不可のこの独特な食感こそが皮串の不動のポジションだ。

 

そういえばたまにゴムみたいに柔らかいタイプもあるけどあれも結構好みが分かれるよね。ちなみに私はどっちも好きだよ。

 

「うん。おいしいね。」

 

我ながらコレしか感想が言えないな。

 

と頭の片隅で貧相な語彙を憂慮しながら、次はどれにしようかと考える。

 

「……さー…ん?」

 

残っているのはねぎまとレバー。

 

「…木さーん?」

 

どうしようかな。後味的には……

 

 

「おーい、間木さーん?」

 

 

「わ、姫野ちゃん。」

 

ふと遠くから聞こえてきた声がだんだんと近づいてきて、同時にお酒くさい臭いもしてきて不審に思い顔を上げると、向かいから前のめりに私を見ている姫野ちゃんの顔が目の前にあった。

 

 

「お、戻ってきた。間木さんまた食の世界に入り込んでたでしょ。」

 

 

「ごめんごめん。どうしたの?」

 

すっかり思考を焼き鳥にだけ向けていたなと反省しながら要件を聞く。

 

「ああ、私じゃなくて、暁君。暁君がさっき間木さんに声かけてたんだけど間木さん焼き鳥に飲まれて全然反応しないから。」

 

そう言って姫野ちゃんは自分の隣の早川君を指差す。

 

「俺は別に間木さんが食べ終わってからでも良かったんですが姫野先輩が…。すみません。」

 

 

「いいよ、それで何?」

 

 

「聞きたい事がありまして、今回の取引の件です。」

 

 

「ん、あの会社とのこれからの事?」

 

 

「いえ…。間木さん。単刀直入に聞きます。」

 

 

「?」

 

 

 

 

 

「あの話術、何の細工をしてるんですか?」

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

「…うーん……。」

 

そう言うとレバーを一口食べて、モゴモゴとしながら上に視線をそらす。

 

 

 

 

思い出すのは、数年前。初めて取引に言ったの事。

 

それなりに仕事を優秀にできた事で若いながらに仕事の担当を任された私は、今はもう辞めちゃった先輩と、今は別の課に居る同期と共に取引に行った。

 

今後の事業拡大に関わる大切な取引だった。

 

そんな取引に行った先の社長への挨拶。

 

緊張感の張りつめる先輩たちの表情の中、その時私の開口一番に出た言葉は

 

 

 

 

 

 

 

 

「これは命令です。本社と契約するといいなさい。」

 

 

 

 

 

 

 

 

その時の周囲の凍った空気は未だに忘れられない。今でもたまに夢で見る。

 

 

やってしまった。

 

 

私の頭はそれで満ち溢れていった。

 

 

小太りでシワくれたおじさん。

 

社長というポジション。

 

契約させるという思考。

 

この3つが揃った事で、悪魔時代のスイッチが起動してしまったのだ。だって悪魔として生きてきた時間の方が長いんだもん。

 

 

 

鳴り響くのは低い男の怒鳴り声。

 

 

泡を吹く寸前の固まった先輩。

 

嘔吐するのを必死に抑える同期。

 

無表情に棒立ちしながらも頭はパニックの私。

 

どうすればいい?いいや、こんなのどうすることもできないだろう。

 

そう思い、自棄になった私は、

 

それを復唱し続ける事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ふと、気づけば鳴り響いていた怒号は消え、静寂が訪れている。

 

それに先輩は恐る恐る意識を取り戻し、同期は蹲っていた顔をフルフルと上げ、私は虚無に追いやっていた思考を嫌だけど引き戻す。

 

そして、驚愕する。

 

 

 

 

目の前に写っていたのは、震える顔と手で私と握手をしている社長の姿だった。

 

 

 

契約、成立。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

奇跡としか形容出来ないこの日の事は、後に間木さん伝説の序章として語り継がれていく事になるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

「ずっとおかしいと思ってるんです。ただ圧力だけで押し通るなんて。」

 

「あれは人の心を掌握する催眠術か何かを使ってるんですか?答えて下さい間木さん。俺は真剣なんです。」

 

 

「……。」

 

困ったな。あれは本当にただ圧で押してるだけなんだ。

 

 

どうやら私は、人と目力が違うらしい。

 

何でも底が見えないとか、本質を見抜かれてる気がするとか。

 

別に私には何の意図も無いのだが、この目でひたすらに見つめられると並の精神の人はどうも駄目になるらしい。

 

と言っても、本当に並の人だけ。

 

芯の強そうな人には通用しない自信がある。例えば岸辺部長とか。

 

だから皆知らないが使い時は結構見極めている。絶対人に進めていいような方法じゃない。

 

というかそもそも教えようにも教え方なんて分からない。

 

「間木さん。もし俺にも出来るものなら…教えて下さい。」

 

「専売特許なのは百も承知です。何でもします。」

 

早川君はレバーをひたすらに頬張り目を反らし続ける私を真剣に見つめ聞いてくる。

 

早川君は真剣だ。その目をチラッと見ただけで分かる。

 

早川君がここまで真剣な理由。

 

それは、とあるライバル社に絶対に負けたくないという想いからだ。

 

ライバル会社、J-Uコーポレーション

 

昔早川君のご両親の経営してた会社は、この企業との競争に負けて倒産に追い込まれてしまったらしい。

 

だから早川君はうちの会社があそこにだけは絶対に負けて欲しくないと自分も成果を出したいのだ。

 

ってこの前に姫野ちゃんが言ってた。

 

早川君のことなら「え?それプライバシーに関わる事じゃない?何でそんな事知ってるの?」ってくらいに知ってる姫野ちゃんからの情報だからきっと間違い無い。

 

 

「…間木さん。」

 

 

「……。」

 

 

何か良い誤魔化し方は無いかと考え、思い付くと早速私はスーっとビールを一気に飲み干し、空になったジョッキをトンと置くと

 

 

 

「私より飲んだら教えてあげる。」

 

 

 

強者にのみ許される宣戦布告をする。

 

 

 

「……すいません生ふたつ。」

 

「あっ私もやる~!生ひとつ。」

 

 

 

突然二体一になったが、私はそれに何も怯まない。

 

何故なら支配の名を冠する強力な悪魔たる私はお酒なんれいくら飲んれも酔わないからだ。

 

大人げないないようだけど、ごめんれ早川君。

 

さぁ開戦だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「んぇあぁぁ~~~………あれ私も良くわかんないのぉ~~~……。」

 

「えぇ…。」

 

負けた。

 

私はぐったりとテーブルに突っ伏して、ぐでんぐでんになっている。

 

しまった。何か前にも似たような事があった気がしてつい忘れていたが、今の私は人間だった。

 

今の私の分解酵素が働いてくれる量には限界がある。

 

なんなら人より劣るかも知れない。

 

「わたしそもそも人間じゃらくて……いあ今は人間だけどぉ……。」

 

 

「…はぁ…?人間じゃないってどういう……酔っぱらってないでちゃんと……。」

 

洗いざらい全てを喋ろうと試みるが、もうすでに信じてもらえてない。

 

「成る程…。人間を超越するような存在になるって意気込みが大切という事か…!」

 

 

「そ、そういう事かなぁ……?」

 

遠くで飲み勝負を観戦していた荒井君は感心した意気込みを見せ、小紅ちゃんはそれを懐疑する。

 

「らから……私もともと悪魔でぇ…」

 

 

「…?悪魔……?なんですかそれ……。」

 

 

「成る程ね、つまり心を悪魔にする程の冷酷さと威圧感が大事って訳だ!」

 

 

「いやそういう事じゃなくない…?」

 

 

「絶対チギャウ…チギャウ…。」

 

今度は我流君が感心してみせ、淵瀬君と比無君を困惑させている。

 

「流石間木様、敢えて自分を酔わせる事で秘匿してみせるとはお見事です。」

 

 

「……ッ!そういう事だったか……!やられたっ…!」

 

そして最後に不理ちゃんがいかにもあってそうで全然あってない分析をした事で、早川君はそれで納得してしまった。

 

「いや~~一杯食わされたね~暁君~!あはは…あり?一杯飲んだんだっけ??いやでもイッパイ飲んだのは間木さんで~……。い~…まぁいっか!!アハハ!!」

 

 

「多分一番いっぱい飲んだのはアンタですよ、ハイ俺の余った分あげますから離れて下さい。酒臭いです。」

 

 

「やったー!」 グビッ

 

「ヴっ オッッェエ゛エ゛エ゛ェェッ!!」

 

 

「ギャアアアアアア!!?」

 

 

 

「うわぁぁ姫野先輩が吐いた!!」

 

「店員さーん至急拭くものお願いしまーす!!」

 

 

「見ろ伝次!!暁がゲロ吹っ掛けられとるぞ!!ガハハハ!!」

 

「日頃俺達に先輩ヅラして説教たれてる罰だせ!!ギャハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

飲酒量の限界を越えた酒乱が盛大に吹き散らかした事で、ワーワーギャーギャーと夜の居酒屋に阿鼻叫喚の喧騒が沸き起こる。

 

所々に飛び散らかされた嘔吐物。それをもろにくらい死んだ目で虚構を見つめる早川暁。

 

そんな彼を笑っていた者たちも、異臭に耐えかね釣られ吐くので更に状況が悪化していく。

 

地獄。あぁ、地獄はまさしくここにあったのだろう。

 

そんな現世に突如として生まれ現れた地獄。

 

そこに誰かが小さく助けを呟いたが…。

 

 

 

残念ながら、その声は喧騒に掻き消された事で、決して誰一人の耳にも届くことはなかったのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…たすけてちぇんそぉまぁん……。」

 

 

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