押忍!クソ女飯   作:ヤマグティ

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マキマさんはね。お酒に酔ったりしないし、S○Xしたい(直球)なんて思わないし、やる事全部が厄介オタ染みてなきゃいけないから続かないです。


昼もパン パン パパン

 

 

 

『……市の市長は今回の……について……』

 

 

私はクッションを枕のようにして寝転がると、テーブル等の下に敷かれたマットの何処かに置いたリモコンを手当たりに探して、テレビを点けてニュースを眺め始める。

 

「……。」

 

が、内容は頭に全く入ってこない。

 

何故なら、私の頭の中は既に別の事で一杯だからだ。

 

「……そういう行為……してみたい……。」

 

 

 

今の自分なら性行為できる。

 

 

したい。

 

 

一度思い立ってしまったそれは、私の普通の生活への憧れを刺激してしまった。

 

そういう事をする相手。

 

すなわち恋人。

 

最終的には夫婦。

 

 

そう、夫婦。

 

 

親子間の物とは別の、他者との間に出来る家族。

 

いつかの映画で見たそれに、ずーーっと憧れてきた。

 

…けど、同時にそれは無理だと諦めてもいた。

 

種族間的な問題もそうだったし、何よりあんな脅威的な力を持った強者たる私を、自分の意志で心から好きになってくれるような存在なんて、対等に見てくれる存在なんている訳がないのだから。

 

 

でも、それも今日まで。

 

どうして今の今まで気付けなかったんだろう。

 

今の人間となった私なら、出来る。

 

 

“エッチな事”を。

 

 

 

 

 

……。

 

 

 

 

 

 

 

…。

 

 

 

 

…でも。

 

 

 

 

 

でも…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……好きな人……いない……。」

 

 

そこに問題があった。

 

 

まず、エッチな事はお互いを理解してればしてる程気持ちいいのだと私は思う。

 

どんな映画でもそう描写されていたから。

 

となると、知りたいと思えるような、すなわち好きだと思えるような人と出逢わなければならない。もしかしたらそれは異性でも同性でも良いかも知れない。

 

……が。

 

思えば私の人生、今に至るまで好きな人と付き合った事は愚か、そもそもとして誰かを好きになった事が無い。

 

多分今日まで気づけなかったのも、この誰も好きにならなかった感覚のせいだ。

 

まず誰かを好きにならなければならない。

 

……けど、どうやって?

 

私にも好き嫌いはある。

 

どんな人なら好きになれるか。

 

どんな人が、タイプなのか。

 

今まで出会ってきた、思い付く限りの人間の特徴全てを頭に浮かべそれを考える。

 

 

 

まず、他の人とは違うような、凄い所のある人……。

 

 

それから……どんな存在でも助けを呼ばれたら助けに行けるような、ヒーローのような正義感。

 

 

でもそんな助けを求めてきた相手もぶん殴っちゃうような、めちゃくちゃな所もあって欲しい。

 

あと…腕が四本位あって……。

 

 

それらと頭からチェンソーが生えてて……。

 

 

服なんて着なくて……。

 

 

 

言葉を喋らなくて______

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「マキマさん。アンタの作る最高に超良い世界にゃあ糞映画はあるかい?」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「うーん…。じゃやっぱ殺すしかねーな。」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「や~っと油断してくれたなぁ…。ポチタは返してもらうぜ。」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

「マキマさんがず~っと戦ってたのは俺が心臓からもぎ取ったポチタですよ。」

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

先程まで並べていた思考は、脳裏にあの日の事が浮かんできたことでフッと影に埋もれて消えてしまった。

 

そして、まだ瞳の中に映っているあの光景から逃れるように、仰向けにしていた体をぐるりと回してうつ伏せになって顔も影に埋める。

 

 

どれだけ考えてみたって、私の理想は「彼」だ。それ以外に無い。

 

けれど…「彼」は私が思っていた理想とは認めたくないが違う。

 

あの変わり果ててしまった、犬のような有り様で過ごす毎日なんかに尻尾を振って満足していた。

 

きっとデンジくんは私以上にそんな「彼」の事をよく知っていて、だから「彼」はデンジくんを選んだ。

 

ハッキリ言って、そんな彼の姿も、彼がデンジくんを選んだ事も、非常に度し難くて悔しい。

 

彼は服を着るし、喋りもする。

 

そんな事私はあの日まで知らなかった。

 

私はずっと彼に憧れて、沢山の物を利用して、計画を立てて、膨大な時間をかけて追い続けてきた。

 

なのに。

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

………ンはね。服なんて着ないし、言葉を喋らないし。やる事全部がめちゃくちゃでなきゃいけないの。」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

あれが全部、私の思い込みだなんて。

 

 

彼の事なら何でも知ってると、そう思っていたのに。

 

どれだけ彼を想っていても、私は只の一方的なファンなだけだなんて。彼にとっての私は何でもないだなんて。

 

あれだけ追って、追いつきたくて、ずっと追いかけてきたのに。

 

何で私じゃ駄目だったんだ。

 

 

私の何が駄目だったんだ。

 

 

 

分からない。

 

 

 

気に入らない。

 

 

 

不愉快だ。

 

 

 

 

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

「うーん…。じゃやっぱ殺すしかねーな。」

 

■■■■■■■■■■■■■■■■■

 

 

 

 

 

 

 

 

なんで、私だって____。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…。」

 

「最悪だね、私…。」

 

今一瞬、自分の隣に彼がいてくれる様をイメージした事実を認めると、諦めて体を仰向けに戻して、そう自嘲的に小さく呟く。

 

どうやらあんな散々な事を言われても、まだ私は彼の事が好きみたいだ。

 

結局の所、私の生き甲斐は彼のファンである事だったんだ。

 

彼と添う事を夢見て追い続けるあの日々が、一番充実してた。

 

ずっと、ずっと。今でも彼が好きだ。

 

だからきっと、他の誰かを好きにはなれないだろう。

 

…。

 

……けど。

 

もう、彼は何処にもいない。

 

添うなんて前に、追う事すらもう出来ない。

 

それはもう仕方の無いこと…。

 

……。

 

あれ?じゃあ私ってもしかして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……このまま…一生独身……?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まぁ、そんなシリアスな事は考えなくてもいっか。」

 

 

 

そう自分に言い聞かせると、シュンとした心は吹っ切って立ち上がる。

 

過去は大切だが、いつまでもそれに囚われている訳にはいかない。私が生きるべきは眼の前にある今だ。

 

そして今私はお腹が空いている。よって私はご飯が食べたい。それが私が生きるべき今だ。丁度お昼の時間になった頃でもある。

 

考え事をしてゴロゴロしてた間に、いつの間にかもうそんな時間がたっていたようだ。

 

おかしいな。こんなに速かったっけ。仕事中は一時間ですら永遠にも感じるのに。

 

そんな短い休日に哀愁を感じたので、再びシュンとしてキッチンに向かっていくと、朝食を作った時にしまわず置いておいた食パンの袋をもってテーブルに戻る。

 

普段なら、こういう休日は何処かに食べに行くのだが、生憎今のお財布には契約に支払える物が殆ど残っていない。精々一週間は軽食でなら過ごせるぐらいだ。

 

酔った私を気遣って皆が払ってくれたかも。なんて期待をしていたが、お財布の重量はしっかり軽くなっていた。酔ってもちゃんと払ってて偉いぞ私。

 

一瞬口座から貯金の一部引き出してこようかなんて事も考えたが、さすがにそこまでの事じゃないのでしない。

 

まぁ兎に角、この休日は食パンで乗り切るしかない。お米があるにはあるけど炊くのがダルいから却下。

 

大丈夫だ。来週にはお給料が出る。そこまで計画性なく奢った訳じゃない。

 

 

さて、お昼も食パンになるわけだが、どうしようか。

 

朝食のあれでアボカドを考えなし全部に使いきったので、また別の物を考えなくてはならない。

 

「うーん…。」

 

またオシャレな物を作りたくもあるが、アイデアが簡単にポンポンと浮かんでくる程私はクリエイティブな人間じゃない。

 

冷蔵庫の中に残っているのも殆ど調味料の類いである。

 

「…こういう時はチャレンジ精神が必要だね。」

 

そう覚悟を決めて冷蔵庫に向かっていくと、そこからマヨネーズやケチャップ、マーガリンや、シナモン。ハムだのジャムだの、香辛料の類等をも兎に角取ってくる。

 

そうして、テーブルの上にそれらをズラリと並べた。壮観だね。

 

 

「どうしようかな。」

 

と、少し考えてみたが、そもそもチャレンジ精神とは知能に頼るものではないだろう。

 

うん、感覚だね。感覚に任せよう。

 

 

「いちごジャム、梅ジャム…それからオレンジジャムに…。」

 

 

「バターと……蜂蜜…あとシナモンもかけちゃお。」

 

 

「…おお、最強なパンができちゃったね。」

 

 

それなりに綺麗に配置してみて、今朝の物とは哀れな程うって変わった脳死の豪華盛り合わせを見ると、その色多彩さからなんだかそんなイメージを感じ取った。

 

直感で感じ取ったイメージは結構正確だ。

 

それが好意的に見えたのなら、これは案外美味しいのかもしれない。

 

 

「モグッ……ムチャムチャ……。」

 

「……。」

 

「うん。」

 

 

 

「微妙だね。」

 

 

 

 

そんな気は最初からしていたので、特にガッカリはしない。これで美味しかったら料理界隈の各方面に失礼だ。

 

一応、不味いと言える程不味くないのがまぁ評価できる点だろうか。

 

でもこれで今日のお昼は終わりはなんだかな。

 

それに、二日酔いの覚めてきた今の私の胃袋はパン一枚で我慢できるような器じゃない。

 

微妙な最強の盛り合わせを粗末にすることなく食べきると、次の食パンを取り出す。

 

やはり脳死は良くない。頭脳を使おう。インテリ大作戦だ。

 

先程の事を踏まえて意識を改めると、じっくりと見つめてまずはパンの分析を始めてみる。

 

 

パン……炭水化物……。

 

炭水化物……。

 

炭水化物といえば……お米だから…。

 

 

案外…ご飯に合うものってパンにも合うのでは?

 

 

「なんだか本当に頭が良くなってきたみたいだね。」

 

只の連想ゲームだったような気もするが、それらしい発想が出てきたので実行に移す。

 

ズラリと並べられた具材群から、条件に合いそうな物を探す。

 

 

……海苔の佃煮。

 

 

唯一見つけたそれらしい物を見て、そのビンを手に取る。

 

ちょうどそろそろ使い切りそうな量だ。都合がいいね。

 

スプーンを取ってきて、パン一面に漆黒を塗りたくる。

 

先程の色彩豊かさとは真逆の、黒一色。

 

なんだか食欲そそらない見た目になっちゃったな。

 

「……ハムッ……モグ…モグ…」

 

「……案外おいしいね。」

 

意外な事に、そんなに悪くなかった。

 

いやむしろ、何かと掛け合わせたり焼いたりすれば普通に美味しいものになるかもしれない。

 

そんなポテンシャルまで感じた。

 

先程使いきってしまったのを少し惜しいと思いながら、漆黒も食べきる。

 

パン二枚、大体これで腹五分目くらいかな。

 

次は……。 

 

具材群を再び見つめながら、パンを取り出そうとして、ふと違和感に気付く。

 

パンを取り出そうとする手が、クシャッとパンが入っている筈の袋を握り潰している事を。

 

 

 

「……。」クシャッ

 

 

「……。」ワシャワシャ

 

 

 

 

 

 

……あれ?食パンってもともと何枚あったっけ……?

 

 

 

 

 

 

 

七枚入りの袋で…。

 

 

ええと、朝ごはんに一枚使って……。今のに二枚……。

 

だから残り四枚か。不味いね、節約を考えてなかっ……。

 

 

 

いや、待てよ。そういえば昨日おやつ感覚で一枚食べてたような……。

 

あ、それより前にも何枚か食べてた気もしてきた……。

 

……そうだ、この食パンはそもそもおやつで食べる物としてストックしてた訳だから……。

 

 

 

 

………あ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「パン…無くなっちゃった……。」

 

 

 

 





誤字報告とかあったらして❤

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