「演習開始だ!!全艦全速前進!!敵艦隊を蹴散らしてやれ!!」
まったく、上官に逆らうなどふざけた奴だ。それにしてもわしに勝てるつもりでおるのは滑稽だな。あいつは陽炎型と睦月型の戦力差を理解しておらんのか?
「司令、敵艦隊が見えたわ。なんか蛇行しながらこっちに向かっているわ。」
「蛇行だと?ふざけおって!!構わん、さっさと距離を詰めて蹴散らせ!!」
わしが教えた駆逐艦の戦い方を理解しておらんのか!?駆逐艦の強味は速度と雷撃だ!!最速で接近して雷撃を叩き込めと教えたはずだぞ!!これだから話を聞かない無能は・・・回避行動をしながらのんびり砲撃戦をするなんて、あの馬鹿は戦艦でも使っているつもりか?
「司令、敵艦隊が砲撃の射程圏内に入ったわ。」
「宜しい。では全艦!!斉射用意!!」
「きゃあ!!被弾したわ!!損傷軽微!!」
「構わん!!撃て!!」
「撃てぇ!!・・・命中弾なしです・・・」
「チッ、ええい次だ次!!」
「くっ・・・敵の砲撃で不知火・黒潮被弾!!まだまだやれるわ!!」
「怯むな馬鹿者!!撃ちかえせ!!全艦!!第二射用意!!」
「きゃあ!!私と磯風が被弾!!私の魚雷発射管がやられたわ!!」
「何をしておる!!撃て!!」
「撃てぇ!!・・・命中弾なしです・・・」
「しっかり当てんか馬鹿者が!!」
――――――――――――――――――
演習開始の合図と共に我等が艦隊の睦月達が動き出す。おそらく教官率いる陽炎型も動いているはずだ。
「さて、あとは睦月達に任せて作戦の解説でもするか?」
「本気で余裕なのだな・・・ではまず聞きたいのだが・・・駆逐艦なのに何故全速力で距離を詰めないのだ?駆逐艦の強みは雷撃であろう?それを生かす距離まで近くべきではないのか?」
「教本通りに考えればな。だが今の状況ならばそれは間違いだ。」
「と言うと?」
「駆逐艦が距離を詰める理由だが、もちろん雷撃の話もあるが、もうひとつの理由は砲撃の火力が低く射程が短いからだ。」
「う、うむ。ならばなおさら苦手な砲撃戦で戦う必要はなかろう?」
我がそう言うと葛原は頭を抱えた・・・我は何かおかしな事を言ったのであろうか?
「相手は同じ駆逐艦だぞ?戦艦や巡洋艦が居るのならば射程の差が出るが、駆逐艦同士ならば射程の差は無い。」
「おお、言われてみればそうであるな!!」
「だから蛇行で回避行動を取らせる事で被弾を減らし、速度を落とす事で命中精度を上げる事によって、雷撃戦の前に出来る限り敵の戦力を削るのだ。」
「ふーむ、なかなか考えておるのだな。では砲撃のタイミングを睦月に任せたのはなぜなのだ?指揮をするのが我々提督の仕事であろう?」
この質問も葛原に頭を抱えさせる結果となってしまったか・・・だが教官も細かく指示を出しておったし、我もかっこよく指示を出しておったのだがなぁ・・・熱き魂を持つ漢であれば『総員斉射用意!!撃てぇ!!』とか言うのはロマンを感じるものだ。
「はぁ・・・艦娘は自分で考える能力があるのだぞ?敵艦隊が射程圏内に入ったら撃つなんて当たり前の判断が出来ない訳無いだろ?それなのにわざわざ提督が砲撃のタイミングを指示する必要など無い。現場から司令室に報告して砲撃の指示を出すだなんて時間の無駄だ。そんな暇があるならば、現場の判断でどんどん撃たせるべきだ。」
うぅ・・・そう言われてしまえば理解は出来るのだが・・・漢のロマンを完全に無視して冷静な判断をしておるのだろうが・・・こやつには熱い血が流れておらんのか?
「提督、もうすぐ射程圏内に入るよ。」
「分かった。では作戦通りに行動してくれ。」
「了解にゃしぃ!!撃ち方、始め~!!」
ほう、ロマンに欠けるが同じ駆逐艦同士なのに先制攻撃をしておるな。
「やった!!当たった!!」
ほほう、皐月が初撃で当てたか。幸先良いではないか。しかも相手の砲撃は全て外れたようだな。すぐに二撃目の準備をして撃ち込み、さらには相手が二撃目を撃つ前に、こちらはもう一度撃ち込む事に成功する。しかも相手の砲撃はまた外れである。
「おお!!優勢であるな!!しかも相手の砲撃は運良く2回とも外れではないか!!」
「運だけではないぞ?」
「と言うと?」
「こちらは回避行動を取っており、相手は全速力で向かって来ている。さらに相手の砲撃はこちらの砲撃が着弾した直後だっただろう?つまり相手はこちらの砲撃を受けて、被弾や至近弾による海面の揺れや水飛沫の影響を受けたはずだ。それにも関わらず教官の指示で撃ち返してきたのだ。士官学校の艦娘は練度が低い。そのような小さな無理や動揺で命中精度は下がる。」
「そ、そこまで考えておったのか・・・」
お、恐ろしい漢だ・・・こうして見ると教官が手の上で踊らされておるようにしか見えんぞ?そして今の解説の間にもう一発砲撃を叩き込んだようだな。
「魚雷発射準備!!次の砲撃後に撃って反転するよ!!」
そろそろ雷撃の射程圏内に入るようだな。
「ふわぁ!?」
ああ!?三日月が被弾しただと!?だが見たところ小破で済んでおるようだな。
「行くよ~撃てぇ~!!」
睦月達は砲撃後、作戦通りに魚雷を発射した後に反転して後退する。確かに射程圏内ではあるのだが、こんな距離から発射して当たるものなのだろうか?
――――――――――――――――――
「くそぉ!!何故だ!?何故こちらよりも向こうのほうが砲撃回数が多いのだ!?しかも向こうの砲撃は当たって、こちらの砲撃はようやく小破が一人だと!?手を抜いておるのか貴様等!?」
「はぁ!?そんなわけ無いでしょ!?ッ!!不知火・浜風被弾!!不知火は中破!!」
「こんのぉ!!雷撃戦が不利になってしまったではないか!!撃って撃って撃ちまくれ!!火力はこちらのほうが上なのだぞ!!」
「・・・分かったわ。えっ!?て、敵艦隊が反転して後退してるわよ!!」
「な、な、なんだと!?駆逐艦が雷撃戦を嫌がって後退だと!?常識外れな事を!!追え!!全速力で追い掛けて腰抜け共の背中を存分に撃ってしまえ!!」
――――――――――――――――――
「にゃ!?提督、敵艦隊が後ろから全速力で追い掛けて来てるよ!?砲撃もたくさん飛んで来てるにゃ!!」
「魚雷が命中するまで耐えろ。」
「ふぇぇ!!睦月達は紙装甲なんだけど・・・」
睦月達が必死になって砲撃の嵐の中を撤退しておる・・・後ろから撃たれるのは恐ろしいであろうな・・・
「な、なぁ葛原よ?これ本当に大丈夫なのであろうな?」
「ああ、問題無い。敵艦隊は罠を疑わずに必死に追い掛けて来ている。しかもこの砲撃の激しさならば、こちらの背中を撃つ事に集中しているようだ。・・・だから魚雷に突っ込む事になる。」
通信機越しに激しい爆音と水飛沫が上がる音が聞こえる。ほ、本当に雷撃が命中したのか!?
『旗艦陽炎、雷撃により大破判定。これにより葛原提督候補生の勝利です。戦闘終了。各艦隊は出撃港へと帰還して下さい。』
「ん?もう終わりか。掃討戦をするまでもなかったようだな。」
「おお!!見事!!まさに見事!!まさか本当に教官に勝ってしまうとはな!!」
「相手が弱かっただけだ。だがこれで教官の面目丸つぶれだな。あの無能な教官がどうなるか楽しみだな。」
そう言って暗い笑みを浮かべる葛原は、まるで獲物に喰らい付く狼のようだ。本当に恐ろしい。
「何はともあれ我の敵討ちをしてくれた事、心の底から感謝するぞ!!」
「・・・敵討ち?なんだそれは?」
「そう照れるでない。いや、そう言うのであればこれ以上の言葉は無粋であるな。なぁに、貴様の心意気はしっかり我に届いておる。」
「はぁ・・・そうか?」
「うむ、我は貴様の心意気に感動したのだ。今後は貴様の盟友として共に戦う所存である!!共に覇道を歩み!!天下を我等の手に!!」
「・・・はぁ・・・もう好きにしろ・・・」
「うむ、ではさらばだ我が盟友よ!!いずれまた会おう!!」
盟友が勝ち方を教えてくれたのだ!!ならば次は我がそれを実践する番であろう!!あとは我ばかり教えを乞うのは乞食と変わらぬ、盟友には我が持つ膨大なる艦娘の知識を授けよう!!
「ふはははは!!楽しくなってきたぞ!!」
「なあ小森、あいつは何を言っていたんだ?」
「さ、さあ?」
「そう言えばどうして小森はここに来たんだ?」
「ここ・・・人が少なかった・・・」
「なるほど。」
――――――――――――――――――
「これが我と盟友が天下を獲る契りを結んだ時の話である。」
このクズは自信満々の表情で話終えたのだけれど・・・これってこのクズが一方的に気に入って盟友認定しただけじゃ・・・
「そ、そう・・・まあ・・・それがきっかけにはなったのよね?」
「うむ、その後盟友は我に戦術を、我は艦娘や深海棲艦の知識を教え合い、互いに高め合う存在へとなったのである!!」
「ふーん・・・ま、まぁ面白い話だったわ。」
「やはり霞殿ならば理解してくれるか。初期艦として選んだ我が目に狂いはなかったな!!」
ご、ごめん・・・全然理解出来ない・・・でもこの後なんだかんだで一応仲良くはなっているのよね?葛原の奴も意外と面倒見が良い所があるから、友好的な相手には意外と優しいのよね。敵に回すと恐ろしいけど・・・
コンコンコン
「お待たせ致しました。麗子様がお待ちです。」
「うむ、では行こうか霞殿!!」
「ええ、そうね。」
ちょうど良いタイミングで話が逸れてくれたわね。助かったわ・・・
霞ちゃんが思わず気を使ってしまう・・・そのレベルのお話でした。
うん、戦闘の方は良いけどその後は・・・