ブライアンはカッコイイ。男勝り、というよりも行動のひとつひとつがキザっぽく、それでいてサマになっているのがブライアンというウマ娘だ。
そんなブライアンから、バレンタインチョコを貰ったのは先月のこと。コンビニで買えるチョコだったし、彼女は「お返しはいい」と言っていたが、そういうわけにもいかない。そう思って、トレーナーはお返しについて考えていた。
そして、思いつく。
普段からクールビューティなブライアンの驚く顔を見たいと!
愛が重バ場な、手作りのチョコを作ってやろうと!
最初はちょっとした好奇心と嗜虐心によるものだったが、いざお返しチョコの製作に興が乗ると、その気持ちも膨らんでいった。
そうして完成したのが、バカップルもびっくりの、大きな手作りハートチョコだった。
「ま、まあ、ブライアンなら何も言わず受け取るでしょ」
さすがに重いな、と思っているとブライアンがトレーナー室にやってきた。
ブライアンは挨拶もなしに自分用のロッカーを開けて、トレーニングの準備を始める。この無言の時間を信頼の証と思うようになってから久しいが、今日ばかりは静かなトレーナー室が居心地悪く感じれた。
トレーナーはおずおずと、ロッカーの前にいるブライアンへと歩み寄る。ブライアンはすぐにトレーナーの気配に気がついて、怪訝な表情を向けた。
「こ、これ……バレンタインのお返し」
ブライアンは「いいと言ったはずだが……」と言いつつも、素直にそれを受け取ってくれた。
外から見れば四角い箱を色んな角度から眺め、店のラベルなどがないと知ると「手作りか?」と聞いてきた。
トレーナーは無言のままそれに頷く。
「開けるぞ」
そこからは一瞬だった。
ラッピングの紐を解き、ブライアンはハート型の……それも単体としてはとてつもなく大きなチョコと相対した。
きっと彼女なら呆れるだろう。いや、もしかしたら照れるくらいしてくれるか──と、思ったが彼女は無言のままチョコに齧り付いた。
リアクション薄いなーと、少しばかり残念に思っていると、チョコを咀嚼していたブライアンが、不意にトレーナーの顔を見つめる。
「そういうこと……で、いいんだな?」
その言葉の意味を、トレーナーは理解できなかった。だが、有無を言わさないようなブライアンの口ぶりに、思わず首肯してしまっていた。
すると、ブライアンは「逃げるなよ?」とだけ言って、トレーナーの方へと近づいてゆく。
ドン──と、ブライアンは壁に手を付く。いわゆる壁ドンというやつで、トレーナーから“逃げ”の作戦はなくなった。
「んっ……」
直後、甘い声がかすかに漏れる。
それが、どちらのものだったかは分からない。
しかし、突如として口の中に広がった甘い香りに罪悪感を覚えつつも、トレーナーは甘味を求めて舌をまさぐるのだった。