花言葉   作:こたれん

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自分の経験を元にして、ゆっくりと書いていこうと思います。




その日は、突然の雨だった。俺は大学の帰りで、逃げるようにして屋根がある公園へと駆け込んだ。家までまだ距離がある、そんな中この雨に打たれるのはごめんだった。

「...はぁ。」

思わず、ため息が溢れる。木で作られた簡素な屋根の下にあるベンチに俺は腰をかけて、濡れたズボンの裾などを苛立ちに見つめた。

「...雨、嫌いなの?」

ふと、隣から声が聞こえてきた。いきなり話しかけられて少し驚いたが、それを悟られないように声がした方に顔を向ける。

そこには、1人の女がいた。

タバコを口に咥えて、少しやさぐれた様な目をした彼女は、煙を吸って、そしてそれをうまそうにはいていた。

「...誰ですか?」

見たこともない彼女を怪訝に思い、俺は彼女の質問に答えることなくそう聞いた。

「私はね、雨好きなんだよね。特に理由はないんだけど。」

今度は彼女が俺の質問を無視し、タバコをふかしながらそう言った。

それに俺は少し苛立ち

「...俺は雨嫌いです。タバコは、もっと嫌いですけどね。」

少し得意げにそう答えて、スマホを取り出した。

メッセージアプリを開く。特に何も通知はなくて、自分がいかに孤独なのかを再確認させられた気分になった。

「君、名前なんて言うの?」

「...いいたく、ないです。」

「あっそ。...私は花。夢元花。趣味は男を抱くこととタバコを吸うこと。」

俺の答えを特に気にするわけでもなく、彼女は自分語りをし出した。

花と名乗った彼女はまあまあな趣味を暴露したあとに、タバコを消した。

「傘、ないんでしょ。」

彼女は、俺にビニール傘を差し出した。

「あげるよ。これ、私二本あるし。折り畳みと普通のやつ。」 

そう言い残して、彼女は折り畳み傘をカバンから取り出して公園を去っていった。

タバコの残り香が、周りに立ち込めていた。

「...くっせ。」

その匂いに俺は毒づき、しばらく雨の音を聞いていた。

葉を叩く雨の音が、耳に心地いい。

急に雨が降り出した、梅雨の日。

俺は、タバコの煙を纏わせた花さんと、雨音が響く公園で出会った。

 

翌日、雨はまだ降り続いていて、俺は昨日と同じような時間帯に昨日花さんと出会った公園に向かった。借りた折り畳み傘を鞄にいれ、ぼーっとしながら雨の中を歩いた。ビニール傘を雨が叩く音が、耳に心地いい。靴が濡れる不快感を尻目に、俺はあの公園に着いた。

ベンチの方を見ると、やはり昨日と同じようにタバコを吸っている彼女は、俺を見るなりタバコを上にあげて、よっ、と軽く挨拶をしてきた。

俺はそれに軽い会釈を返して、昨日と同じように隣に座った。

「なに?君も、タバコ吸うの?」

「...僕はすいませんよ。昨日嫌いって、そう言ったでしょ。」

俺にタバコを吸うかと聞いてきた彼女に、呆れたように俺は返事をして、カバンから折り畳み傘をとりだした。

「これ、ありがとうございます。」

「えー、それ別に返さなくてもいいのにー、荷物になるし。」

「借りっぱなしって、僕は嫌なんで。」

「あげるって言ったじゃん。」

「...別に、もらいたくはないので。返します。」

「...ははん、君、結構めんどくさい性格してるね。」

傘を受け取らない彼女にそう言われ、俺は内心余計なお世話だと毒づいた後に、傘を半ば強引に彼女の手に渡した。

「...それじゃあ、僕はもう用事済ませたので、もう帰りますね。」

そう言い残して、公園を後にしようとすると、なにかに、服の裾を掴まれた。細くて、意外と小さい手が、俺のジャージの裾を掴んでいる。

「...なんですか?」

「ふふふ、理由もなく相手に触れるのが、美女の特権なのよ。」

「...からかってるだけなら、僕帰りますよ。」

「ええー!いいーじゃん!つまんないの!折角私がかまちょしてあげてるのに!もー少し話し相手になろうとかないのー?」

得意げな顔をした彼女に俺がそう返すと、心底つまらないと言った様子で、彼女は俺に文句を言い続けた。

そして、そんな彼女をみて、俺は気づいた点があった。

昨日はなかったはずの、絆創膏のようなものが、腕や首にあった。

それがなんなのか聞こうとして、いわゆるキスマークみたいなものかと自己解決して、聞くのをやめておいた。

俺は結局、彼女の当たり障りもない雑談にしばらく付き合うことにした。いつもなら面倒に思うはずなのだが、不思議と、嫌な気持ちにはならなかった。

しばらく彼女の上司の愚痴やらを聞いていると、外の雨が止んだ。

「あ...雨、やんじゃった。」

それを見た彼女は、残念そうにそう呟いた。

「雨、止んだの嫌なんですか?」

そんな彼女を怪訝に思って、俺はそう聞いた。

雨が止んで嫌になる人間など、それこそ、雨が降り続かない日々が続いた農民ぐらいしかいないと思っていたからだ。

「....うん、そうね、雨が止んじゃうのは、少し、嫌、かな。」

そんな俺の質問に、少しだけ辛そうな表情を浮かべ、けれどそれを取り繕うかのような笑みを浮かべて、彼女は、変わってるでしょ!と俺に微笑んできた。

結局その日は、特に変わったこともなく公園で1日を潰した。

気がつけば夕方になっていて、俺はもう家に帰ることにした。

用もなく1日を潰したのは、久しぶりだった。

去り際に、明日もくるかと聞かれて、なんとなく、はい、と答えた。

初めてだった。女性とこんなに長い時間話すことも、誰かの愚痴を聞くことも、そのどれもが、俺には新鮮な出来事で...少しだけ、楽しい出来事だった。

鞄の中に、あの折り畳み傘を入れっぱなしであることに気がついた。

傘は、返しそびれたままだった。

それを口実に、俺はまた、彼女に会いに行くのだ。

 

 




読んでくれてありがとうございました!
特に展開がなくてつまらないと思うんですけど、これからゆっくり広げてくつもりなのでご付き合いいただけると嬉しいです!
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