モルモットとふしぎな目覚まし時計 作:✿▽✿
───あれは、寒い冬のことだった。
俺の担当したウマ娘……アグネスタキオン。彼女の"最後の"レースであった有馬記念の後だ。
長距離を走り切れるトレーニングを積み、激しい上り坂が有名な中山のコースで勝てる為に入念な準備を続けた。
そのかいあって彼女は見事優勝することが出来た。そして俺とタキオンは喜び合う───筈だった。
それは、唐突に告げられた。
「トレーナー君、URAファイナルズには出ないことにしてくれ。」
どうしてだ。何故、どんな理由で───そんなことを聞く前に一つの言葉が告げられた。
「私の脚はもう限界なんだよ。本当のことを言えば、レースには出たい───だけど、私の脚はもう……これ以上の負荷を掛けるわけにはいかない。」
いつもより目にハイライトが入った状態で彼女はそう答えた。
タキオンを襲ったのはケガだった───レース中に発生したケガ……彼女はじっとこらえて走った。走り切った。
医師から引退を促される前に、ウマ娘の身体をよく知っているタキオンは自身が走れないことを理解していたのだ。俺は……何もわかっていなかった。
URAファイナルズに出走が決定したと伝えに来てくださった理事長にタキオンのケガを理由に出走取消の旨を伝えた。理事長はとても残念そうだったが、仕方がないと。それどころか、タキオンがウマ娘の研究ができるような研究施設に入れるように便宜を図ってくださった。
『下問っ!君はまだトレーナーとしてやっていけるか?』
『まだ、やれます。……ですが……少しだけ……期間を空けさせてください。』
『無論!心の整理が付いてからで良い!』
『すみません……』
タキオンの有馬記念優勝&引退&お別れパーティが終わった後、俺は理事長の所へと向かった。このトレセン学園にはトレーナーが付いていないウマ娘はまだまだいる。無論、そんな彼女らも磨ければ色んなレースで勝つウマ娘だ。理事長としてはそんな彼女らを育ててあげたいという思いはあるだろうし、俺も新人ながらも多くのウマ娘を担当したいと思っている。
……だが、ここまでとは思わなかった。トゥインクルシリーズの場で競い合うということがどれだけ厳しいということが……常にケガというリスクを背負いながらも夢を追い続ける彼女らを導かねばならないという重責を軽く見損じていた。
タキオンは旅立った。彼女の少ない友人でありライバルであったマンハッタンカフェ、タキオンが他人のようには思えないなんて言って、よく面倒を見ていたダイワスカーレット、そしてどうして来たのかわからない程接点が少ないはずのエアシャカールの3人が見送った。
帰路の足取りは重い。行きはタキオンが話題を振ってくれたり、エアシャカールをイジっていた為に賑やかだったのだが……俺を含めてタキオンがいなければほぼ他人同士の関係だから話す事もなかった。
ウマ娘の寮の前に車を停めて、彼女ら3人を見送った。
それが終われば、俺は寮へと帰る。
(……タキオン……)
来月にはURAファイナルズの決勝戦が始まる。中距離ではマンハッタンカフェ、ダイワスカーレットが決勝戦へと進出していた。忙しい筈なのに見送りに来てもらってありがたいと思う。あとで彼女らのトレーナーにも礼を言わなければいけない。
鞄を椅子に投げ捨て、手洗いうがいをしてどっかりと座り込んだ。
「……俺は紅茶派のままだ……」
紅茶を飲んでさっさと寝よう。明日は別に何もないんだから。タキオンを起こしに行くのも、弁当を作るのも、何もする必要はないんだ。
ピンポーン
「今行きまーす」
呼び鈴が鳴った。……同僚だろうか。そう考えてドアを開けて覗き込むが誰もいない。
(……?)
いたずらかと思ってドアを全開にすると何かが引っかかってザリザリと擦れる音がした。音源を見てみると、小さなボール紙の箱が置いてあった。
「……誰がこんなものを……?」
住所や伝票などの類はないので直接置かれたのだろう。その時、ちょうどトレーナー寮の前には3人のウマ娘が走り去っていく姿を捉えた。後ろ姿で判別は付きづらいが俺の知っているウマ娘ではないようだった。
(あの三人が、か?まあいい。チャイムを鳴らしたってことは俺宛てだったんだろう。)
タキオンのファンだろうか。それなら生憎もう行ってしまったのだが───なんて思いながらも部屋に戻って包装をといた。
「
中に入っていたのは赤い塗装が特徴的なアナログ式の目覚まし時計だった。何故かわからないが、西暦や曜日まで表示されるものだ。しかも反転フラップ式で表示されるのでお値段は結構高そうだ。
(タキオンが朝弱いからってか?……いらねーよ)
同封されている無駄に分厚い説明書らしきものをゴミ箱へ投げ捨て、時刻を合わそうと裏を向けるとなんとつまみが7個ほどあった。この意味不明なつまみの多さに俺はゴミ箱を漁って説明書を開く。
(あん……?)
奇妙な内容だった。説明すると長くなるので要約すれば……
───この目覚まし時計は時を超えれるらしい。
ただし、過去限定で飛びたい時間に時刻を合わせて就寝する必要がある。何故かはわからないが、この目覚まし時計の存在を誰かに漏らせば二度と過去へは戻れないらしい。そして、時計の一番上に表示されている"5"という数字が時を戻せる回数のようだ。
「俺をバカにしてんのかッ!?───」
ピンポーン
「すみませーん!」
「───ッ!」
(今度は誰だッッッ!?)
こんなふざけた事をしたウマ娘であればただじゃおかない。そう思って扉を強く開けた。
「───桐生院トレーナー……」
「あの……もしかしてお忙しかったり……」
「……いえ、大丈夫です」
───桐生院葵。ハッピーミークというウマ娘のトレーナーであり、俺と同期のトレーナーだ。タキオンとは中距離のレースで争った仲だ。その担当のハッピーミークは確かURA決勝戦に出るのだとか。
「その、URA決勝戦進出おめでとうございます。」
「あっ!いえ、ミークが頑張った結果というか───」
口火を切ったのは俺だった。どうやら、受け答えから察するに相当気を使わせているみたいだ。必死に俺が傷付かない言葉を探して話しているが……嬉しくもあり悲しくもある。
「あまり謙遜はしなくて良いですよ。……ケガなんて、誰にも予想できるものじゃないですから」
「───!」
桐生院トレーナーは、僅かに目を見開いて俺のことをじっと見た。彼女が何を考えているのかなんて今はどうでもよかった。
それからは会話がうまく続かず、そのままズルズルと中身のない話をするだけで彼女を見送った。
(……いろんな人に気を使わせてんだなぁ……)
タキオンを担当するにあたってとてもお世話になったたずなさんや、トレーニングの施設の
ベットに伏せながら右にある棚に置いてあるあの"目覚まし時計"を見やった。
(時を戻せる……か。)
その時計を手で手繰り寄せて持ち上げる。ふざけたフォルムをした赤い時計はカチカチと時を
(どうせ次の日になってるだけだ……)
俺の意識は闇に溶けた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
ジリリリリリリ
いつもとは違う
───"2019年 4月 3日"
(うそ……だろ……)
ここから、長い戦いが始まろうとしていた───
目覚まし時計を使ったあとのアフタートーク的なのいる?(BADENDと原作キャラ曇らせ)
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いる
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いらん
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自分で考えろハゲ