モルモットとふしぎな目覚まし時計 作:✿▽✿
今、タキオンをターフへと送り出そうとしている中で怒号とも呼べる大歓声が上から叩き付けてくる。俺……いや俺たちが送り出した先は京都の地ではなく東京。
そう、秋の天皇賞である。
つい先日行われた菊花賞はあの”マンハッタンカフェ”が勝利したと聞き、改めて彼女のステイヤーとしての才能の高さを感じると共に……タキオンは練習を積んだ。
10月からは俺の考案したトレーニング方法……とは言いつつも彼女らのモチベーションを上げたに過ぎないのだが、それらをこなす内にタキオンはオールカマーの時よりも更にグンと伸びることになる。
(闘志……ウマ娘としての「本能」を刺激するのは最も効果を発揮するという推測は合っていた。)
相手を越えたいという思いがウマ娘の本能であるのならば、もっとそれを"増幅"する事によって
適切なトレーニングを行い、適度な栄養を取らせ、ストレスは最低限に、しかし本能を常に刺激させてやる。
まだまだ改善点はあるにせよ、ここまでする事ができればどんなウマ娘だってG1……いや、3冠だって目指せる範囲には育てられるはずだ。
『各ウマ娘ゲートに入りました。』
(挑戦だタキオン───お前は"挑戦"するんだ……)
上には皇帝……下には輝かしい功績のウマ娘達が……そんな彼女らに板挟みにされて忘れ去られてしまうようなものではない。アグネスタキオン───又の名を"超光速のプリンセス"という名を残さねばならない。
その為に俺は助けるのだ。
『各ウマ娘───スタートしました!』
(…………)
ただ……まあ……
(……ここ、すごい見にくいなぁ……)
ターフとの海抜差はほぼない為中団の混戦具合では視認しずらい。どこに警戒するべきウマ娘がいるのか分からないし、反省点も見つけにくい。だが……
『───アグネスタキオン
ハナを突っ切るタキオンを見るぶんには関係のないことだ。
そう、ダイワスカーレットとの練習でもう一つ副産物が生まれたのだ。元々先行、次に差しを得意とするタキオンだが、何故か逃げをも得意とするようになっていた。一つ考えれる要因はやはりダイワスカーレットの存在であるが詳しいことは分からない。ただ、『ダイワスカーレット』と『練習』することで何かしらを学んだのだろうという説が個人的には推している。
("ダイワスカーレット"なら逃げ……では追い込みの適性を持っている"ゴールドシップ"や"ナリタタイシン"などであれば……?)
非常に興味深い題ではあるが残念ながらそれを調べれる暇はない。そして逃げという作戦はかなり好都合でもある。なぜならば相手とのレベル差が顕著に表れるからだ。サイレンススズカの逃げなんかは分かりやすい例だろう。中距離……特にマイルでは相手とのスピードの差がハッキリと表れているのだ。サイレンススズカをどうして引き合いに出したのかといえば彼女は走り切るどころかしっかりと最終直線で加速するということ。単純なスピードだけでなく、総合的に見てもポテンシャルは高い───俺の考えうるタキオンの最終地点はそこだと思っている。
だがあれほどの逃げをしろということではなく、ただ逃げるだけでいい。タキオンの力はもう既に普遍的なウマ娘では追い付かなくなってきているのだ。警戒するべき相手がいないのであればただただ自分を追求するだけで勝てるだろう。……ただし、最高の逃げを常に打てるならば。だが。
所で、どうしてクラッシックとシニアが分かれているかその理由を知っているだろうか。勿論、クラッシック級の彼女らは成長───専門用語で言うと『本格化』が始まっていなかったりする為である。その為上半期の重賞の殆どは大抵クラッシック級とシニア級とに分かれており本格化が過ぎたウマ娘が多くなるクラッシック下半期はシニアと走ることになる重賞が増えてくるのだ。だがしかし、それでもクラッシックでシニアに挑むのは厳しいものとされる。
もうお分かりだろう。厳しいとするもう一つの理由は場数の差である。それによってレース運びの技術が段違いなのだ。クラッシックでもプレッシャーを与えようとするウマ娘はいるが、ラフプレーまがいの行動を除けば大半は取るに足らないものだと断言できる。だが、シニア級の相手への圧の掛け方は段違いだ。高々目障り程度だった圧がコースを制限し、移動させられスタミナを削る羽目に、冷静さを欠いて周りへの視野を狭める。実力が勝っていたとしても
特にその駆け引きが飛び交うのが中団である。如何に実力が高くとも駆け引きの経験の少ないウマ娘をそこにねじ込むのは悪手。もしくはよほどの胆力を持っており全く動じないウマ娘だからなのかのどちらかになるだろう。
(楽に、負担の少なく勝たせるには"逃げ"でなければ……)
タキオンは意気揚々と先頭を走っている。本来であれば苦戦を強いられる筈だが、やはり先頭では流石のベテランでも駆け引きを仕掛けるリスクが高いようだ。
現在2バ身……くらいだろうか?実況から3バ身と聞こえたので目測より離れているみたいである。ちょうど1000mを通過したところなのでここからが本番だ。後ろから追ってくるウマ娘に追いつかれないように逃げ切らなければならない。足を溜めている訳でもなく、ただただ苦しくても逃げ続けなければいけない。
だが問題ない───2000mならばギリギリ走り切れる。様子見だったのかえらくスローペースな展開だったことも追い風だった。
最終コーナーの時点で差は4バ身。
『アグネスタキオン!!このまま逃げるか!?後ろの集団も一気に加速した!』
『残り300!アグネスタキオンの影は誰も踏んでいない!』
『200mを切ってまだ縮まらない!アグネスタキオン余力があった!このままゴールか!?後続も追いすがる───』
「行けぇっ!」
『アグネスタキオン一着でゴールイン!!初のG1勝利です!!2着との着差は2バ身!』
「よおし!!!!!」
ガッツポーズを取っていると後ろから視線を感じたため、振り返るとたづなさんがいた。少し恥ずかしいと思いながら咳き込んで挨拶をする。たづなさんからおめでとうございますと祝言を頂いた。これで二回目だろうか、クラシックの3つのレースは結局何も走れなかったしな……
「もしよければ天皇賞へ進んだ理由を教えて貰っても?」
「理由……ですか。」
少し沈黙を置いて、どっちを答えようかと考える。しばし考えた結果たづなさんであれば大丈夫だろうと本当のことを話すことにした。
「実を言えば……タキオンの足を考えてのことなのです。」
「足……ですか?」
えらく神妙な顔をして聞き返すたづなさんであるが、やはり秘書としてそういう生徒を多く見てきたのであろう。当然、歯がゆい思いだってした筈だ。
「……変なのかもしれません。ただの臆病なのかもしれません。───ですが、私は長距離を走ることによってタキオンの足が故障してしまうのではないかと考えてしまうのです。」
俺にベットリと貼り付いた”恐怖”は俺だけでなく、タキオンまでも雁字搦めに縛っているのかもしれない。だが、それでタキオンが怪我をしないのであれば御の字である。走れるならば、未来はまだ潰えていないのだから……
たづなさんは何か言いたげな顔をしていたが、結局何も言うことは無かった。タキオンが帰ってきたのでたづなさんとは一旦別れを告げて、楽屋へと共に向かう。
「そうだタキオン。勝った記念ということで何か料理をリクエストしていいぞ。」
「…………」
「タキオン?」
何故か面食らった顔をしたままのタキオンだが、やがて大笑いしだした。
「───何かと思えば料理!ふふ……そうか、料理か……」
「悪かったな……ああ、でも燕の巣みたいなそういうのはクオリティが滅茶苦茶低くなるからな?」
「流石の私もああいうのは頼まないし好まないよ。……そうだ、とびきり美味しい人参ハンバーグでも作ってくれないか?」
「分かった。人参ハンバーグだな。」
ある程度作れる範囲のもので良かった。まあ、色々なことへの労いも込めて作りますか……!
前週では内容にどうしても納得いかず投稿できなくて申し訳ありませんでした。
そしてもう一つ、私のみならず読者や同士の投稿者さんも思っていることでしょう『ちょっと待てぃ!』と……
いやね、マンハッタンカフェ実装はありがたかったですよ。彼女がどんな特徴を持っているのかわかりますし、それ抜きにしても普通に好きなんですがね……
タキオンの実験室と共用というのはねぇ……あまりにも大きすぎる情報ですって……
というわけでいくつかのシーンをちょこっとだけ改変したいところですが、読み直さなくてもいいようなレベルでの大きな変更は致しません。(こんな駄文を読み直してくれる人がいるのかはさておき……)
この物語を進めていく上でトレーナーの名前を出した方が自然なシーンが出来たのですが皆さん的にはどう思いますか?
-
出してもいいよ
-
出したらダメ
-
自分で決めてくれ┐(´д`)┌ヤレヤレ