モルモットとふしぎな目覚まし時計 作:✿▽✿
(過去だ……間違いなく過去だ……)
トウカイテイオー、メジロマックイーン、ウオッカやダイワスカーレット。彼女らが取った栄冠は無かったことにされ、ピカピカの新入生のままだった。先輩にたずなさん、秋川理事長、そして桐生院トレーナーも大した反応はなく、俺が新人だった頃とまったく同じ反応を返してきた。
過去だ。メールも、寮も、トレーニング施設も、トレーナー室兼タキオン仮眠室も……全てが元に戻っている。
だが───
(あの記憶はここにある……)
そうだ。これから7時間ほど後の事だ。俺はサクラバクシンオーに追い掛けられているタキオンにぶつかるのだ、が……
(よくよく思い返してみれば、タキオンが退学する寸前でトレーナー契約を交わしたんじゃないか……)
正直に言えば───待てない。件の有馬記念まで3年を切っているのだから、丈夫な身体作りの食事とトレーニング、それにケガを予防する為のさらなる策を考えるにはまだまだ時間が足りない。もし、差し迫った状況であったが為にタキオンがトレーナー契約を了承したというのなら待つのが正解だが先程も言ったように悠長に待ってはいられない。一週間───いや、一日すら無駄にするには惜しい時間だ。
(……スカウトしに行くか。)
それらの懸念を差し引いても俺にはスカウトできると確信できる勝算があった。一つ懸念を足すなら、彼女の行う"実験"くらいだろう。
幸いにも彼女の"実験"の程度はどれほどだったのか覚えている。局所的に蛍光色で発光するだけなら最早なんとも思えないくらいには慣れているのだ。
早速、彼女の元へ向かう事にした。未来を変えるその為に
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タキオンの行動ルーチンは変わらない。変わるとするなら精々実験の内容か、邪魔が入らないように実験できる場所を定期的に移動するの2択程度だ。確かこの時期は……そう、この実験室だった筈だ。
片方はくもりガラスになっている引き戸の小窓から覗き込むと、そこには見慣れた制服を着てスタンドに固定した紫色の水が入ったフラスコを加熱する女生徒の姿が目に映った。
こんなことをするウマ娘は彼女しかいない───タキオンだ。
突如、俺を襲ったのは発汗と涙腺の刺激。タキオンに再び会えたことで緊張したのか冷や汗が背中や頭からどっと出ている。
(……あードキドキする。)
あの"目覚まし時計"が入っていた箱にあった注意書きを思い出せ。まだ未来を変えれた訳じゃない。……そうだ。"時"をタキオンに意識させないことが肝心だ。
落ち着けたのを確認して引き戸のくぼみに指を引っ掛けてガラガラと開ける。
(……くっ!しまった!どう言葉を発していいか分かんねえ!)
落ち着くことばかり考えていたのでいざ対面してみると頭が真っ白になる。結局落ち着けていない自分を責めながらも顎に手を当ててこちらを見ている彼女になんとか言葉を発しようとした。
しかし、先に口火を切ったのは彼女だった。
「……見覚えがない。大方君は新人トレーナーだろうが、どうしたのかな?」
「……アグネスタキオン。」
口腔がカラカラに渇き、水分を求めている。アルコールランプから発せられるニオイと彼女の僅かな苛立ちを感じ取りながら、二の次の言葉を紡いだ。
「トレーナーとウマ娘……二人が一緒にいるということはどういうことか。分かるだろ……?」
「ふぅん……君はスカウトしにきた。ということかな?」
「そうだ。」
やっと冷静になり始めた。……これじゃあ容易に掛かるな。なんて言えないと冗談を思いつける程には落ち着くことができた。
タキオンは黙りこくったままだが、俺には揺るぎない勝算があるのだ。
───それ即ち、
タキオンの実利とはその『可能性』と『その果て』の探求に繋がるの1点のみ。それらを阻むモノは全て排除するべきものなのだ。逆説的に言えば、追求に繋がるモノなら熱く歓迎されるということ。つまるところ……
(時が戻る前とやることは変わらない。)
食事、お茶、実験。ほか諸々の全てを円滑に行える様にマネジメントするだけのこと。無論、こんなことを進んでやるトレーナーなんていないだろうからタキオンにとっては願ってもないことだろう。
「分からないねぇ……君がどうして私をスカウトしようとするのかが理解できないのさ。私の走りも見せた訳でもないのにねぇ……」
(今なら見なくても分かるが……しかし不自然と言えば不自然か。)
「一つ噂を耳にしてね。タキオン、君の走りは『超光速』と謳われていた。」
「へぇ、それは光栄だね」
「『超光速』───それがどれほどのものなのか俺はデータ上でしか知らないが……先につばをつけておく位には惹かれた。」
「ふぅん……」
(適当な建前はここまでだ……ここからが勝負所。ここでタキオンの興味を引かねばスカウトすることは難しいだろう。)
「……全くもって興味がなさそうだな。」
「そりゃあそうさ。まだスカウトをする理由しか聞いていないし、少なくとも私をキープしておく為にここに来たのなら本格的に契約を考えるのは後でも良いと思ってね。」
「ごもっともな回答だ。ただ……タキオンと俺には少し認識に齟齬がある。」
タキオンはオウム返しのように齟齬と聞き返して俺の言葉を待つ。
「あぁ、さっき俺は惹かれた言ったが……それは少しだけ違う。分かりにくい言葉ですまないが、俺はタキオン以外をスカウトするつもりは毛頭ない。」
「……へぇ、口ではなんとでも言えるが、それくらいじゃ私の考えは変わらないよ?」
「そうだな。ところで聞いた所によるとお前は何やらウマ娘の"可能性"について研究しているようだな。」
「───……何かと思えば取り引きかい?……まあ、そうだねえ……モノによっては考えなくもないが……」
(理解が速くて助かる……いい加減所々隠しつつ話すのもキツくなってきた。)
「まずは、だタキオン。お前の要望を聞こうじゃないか。ああでも資金を援助するというのはナシだが。」
「おや、流石にそれくらいは弁えているよ。……色々悩むが……君、健康そうだねえ。一つは君が私の作る薬の被験体となること。もう一つは研究を一番としてレースやトレーニングを行うことかな。」
「なるほどね……」
「どうしたのかな?これでも私と契約する最低条件だよ?」
今更この程度の障害なぞ全くもって苦にならない。たかが発光するだけ。今では全く恐ろしくない。俺は差し出された条件を紙に書き取り、そこに付け加えていく。
「その程度なら問題ない。なんなら朝昼晩食事を作ってやってもいい。実験用モルモットのように実験したい時に付き合おう。」
「……私が条件を出した側なんだが……君、正気かい?」
まさにドン引きといったタキオンだが、未来では朝昼晩発光し続けたりするなんてザラだ。というか、タキオンが何度も実験するから光っていたのであって俺は決して自分から光りに行っている訳ではないのだ。殆どの人は勘違いしていたが……
「俺は正気だ。まあ、今すぐ決めてくれなんては言わない。あと、俺からも一つだけ条件を出そう。」
「ふぅン……なんだい?」
「"数日後の選抜レースに出てくれ。"」
「ふむ……」
(タキオンなら受けると分かっている。このレースが何を目的とするのか、彼女はそれくらいすぐに理解してしまうだろう。)
「性根を言えば出たくない───だけど、これならレースに出た方が得だしねぇ……はぁ……どうやらとても恐ろしいトレーナーに捕まってしまったようだ。」
やれやれと手を振ってお手上げのポーズをするタキオン。俺は信じきれずにもう一度聞き返した。
「……つまり」
「受けるよ。契約。……まあ、今は約束のようなものだが。」
(目標達成ッ……!)
一先ずは第一の関門を乗り越えた。ここから第二第三の関門を乗り越えなければいけないが、今は好調なスタートに宴でも開きたい気分だった。が、それはそれとしてトレーニングメニューや栄養学に基づいた美味しい食事などなど……考えなければいけないのは無数にある。
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〜side タキオン〜
今しがた実験室に来た男が開けたドアを見据えながら、アグネスタキオンは思案に深けていた。
(彼は新人の筈だ、が。)
アグネスタキオンは新人君と会話していていくつか疑問を覚えていた。一つは───"何故、あそこまで自分について知っていたのか"二つは───"どうして自身の目指す実験の最終目的までも知っていたのか"そして、三つ目───"勧誘をする為自身の身すらも差し出すという行為"これについてははっきり言えば異常だとしか思えない。
(自身について知っていたということについては噂か、生徒会……又は学園上層部の持つ情報か。彼が私をデビューさせる為に派遣されたのであれば知っていても何ら不思議はない。……だが───)
とてもスムーズに会話が出来た。少なくとも、目の前の実験を忘れるくらいには彼の勧誘にはワクワクさせられた。
性格や気が合うということを表すもので「ウマが合う」───という言葉がある。彼と話しているとまるで共に苦節を乗り越えた旧知の友のように思えた。もしかすれば、このトレセン学園に来た意味というのは彼に出会う為だったのかもしれない。
(……この表現は私らしくもない。
運命なんて非科学的なものを考えた自分を自虐をしつつも、タキオンの頭はしっかりと数日後のことを思い浮かべていた。
つい最近は……(進行イベが)岩に隠れとったのか?
マッマがマエストロくれなくて悲しい('、3_ヽ)_
目覚まし時計を使ったあとのアフタートーク的なのいる?(BADENDと原作キャラ曇らせ)
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いる
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いらん
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自分で考えろハゲ