ウマ娘は本当に幼いころから当たり前のように芝の上を駆ける。
誰に言われたわけでも、教えられたわけでもないのに放課後の公園に集まると、レースが始まる。
もちろん速い子がいれば遅い子もいる。
それでも誰もが、一番最初にゴールラインに駆け込むことを目指して走る。
そして、大多数が中央か地方のトレセン学園に入学することになる。
トレセン学園は東京、府中にある広大な敷地を持つウマ娘育成を専門とした学園である。
地方にも笠松や高知、盛岡、佐賀など分校、系列校を抱える巨大組織だ。
本校舎には一学年5,000人、分校にも合わせて5,000人。
全ての生徒を合わせれば40,000人を数えるウマ娘が夢や希望あるいは他の何かを抱えて、日々のトレーニングに励んでいる。
梅雨が明け、初夏の香りが漂ってきた日の練習終わりに、蜂蜜入りのボトルを小さな両手で抱えて飲む小さなウマ娘にあたしは話しかけた。
「ねぇ。ユキはメイクデビュー決まったの?」
「トレーナーさんから来週末の芝2,000mで走るって言われたよ」
「そっか。同じ日にあたしも走るんだ」
「え?同じレースを?」
「違うわ。トレーナーが同じチームの娘を同じレースに出すような真似するはずないじゃない」
「あー。そうだよね。効率大事って言ってたもんね」
「勝ち上がりなのに、チームで潰し合ってたら1レース分無駄になる。だったら分散させて、効率的に勝利を回収するって言ってたよ」
「ぴぇー。カナちゃんトレーナーさんのマネじょーずー。」
「ウマ娘の脚質として、最も効率的なのは先行策だ。6割を超える勝率がそれを証明している」
「にゃー。そっくりー」
「芝を走ってこそ本物だ。レースにも格というものがある」
「はぇー。すっごい」
トレーナーの口癖を真似するあたしを、口を開けたままの間抜け面で見つめる白めの葦毛の小さなウマ娘はユキノハナドケイ。
同学年のクラスメイトでチームカペラのチームメイトだ。
「ユキ。あなたメイクデビュー2,000mだけど走れるの?」
「えーっと、クラシックに向けて適性を見たいってトレーナーさんは言ってたけど」
若干不安そうなユキを見ていると攫って監禁したくなる。
あたしをこんな気持ちにさせるなんて、なんて罪作りな娘なんだ。
「あなたマイル超えると末脚が鈍るじゃない」
「ちょっとー長いかな?ってくらいだし大丈夫だよ。たぶん」
「そうだと良いんだけどね」
「ぷくー。不安になるようなこと言わないでよ。」
「ほら、早く片付けなさい。ご飯なくなるわ」
あたしはそう言って立ち上がる。
「あぁー。まってーカナちゃん置いてかないでー」
本当にこの子はインターミディエイトで走れるんだろうか。
今日の模擬レースでも1,800を過ぎたあたりでばたついていたのに。
あたしたちのチームトレーナーはマイル以下の子はチームに置いておかない。
ユキはメイクデビューもしくは次走でインターミディエイトを走る能力があることを証明しなければならない。
もちろん、あたしもそうだ。
「ねぇー。カナちゃん、まっでぇっ」
ドテッ
「ナニころんでんのよ。レース前なんだから気をつけなさいよ」
「だってー。カナちゃんがご飯全部食べちゃうって言ったからー」
「言ってないわよ、そんなこと」
「カナちゃん」
「なに」
「あんよいたい」
あたしは荷物のついでにユキを背負って寮へと戻ることになった。
こいつモチモチしてて気持ちいぞ、おい。
どーなってんだこれは。
6月●日
きょうはカナちゃんといっしょにたくさんれんしゅーしました。
れんしゅーのあとにカナちゃんがトレーナーさんのものまねをしてました。
とってもじょーずですごい!!
でもカナちゃんはそのあといじわるでした。
いじわるされたからカナちゃんにおんぶしてもらっておへやにかえりました。
りょーのおへやにかえったあとふつーにあるいてたらカナちゃんがすごくおこってました。
なんで?
以下設定資料
登場ウマ娘
ユキノハナドケイ(架空ウマ娘一応、モデル馬は居るけど戦績全然違うってソレ一)
出身:北海道
身長:143cm
体重:微増
毛色:葦毛(白め)
アレ:大きめ(順調に成長)
第一話だとメインで喋ってったのがカナちゃんことオニニカナボウだったけど、こっちが主人公。
フシギダネ。寮は美浦。コレだけ絡ませておいて同部屋じゃないぞ。
オニニカナボウ(架空ウマ娘:カナちゃん)
出身:秋田
身長:164cm
体重:そんなに○されたいのか
毛色:栗毛
アレ:かなりまな板ダヨこれ。
作画に盛らないことと表記されそうな娘。
ツンツンおねーさんだけど、本当は小さくて可愛いものが好き。
だからユキちゃん愛してる。寮は美浦。
登場人物
トレーナー(鏑木トレーナー)
チームカペラのトレーナー
先行信仰の篤く、毛髪の薄い奴。
とりあえず適正に関係なく前目につけさせる。
ダートは砂遊び派閥。
重賞至上主義かつ勝率至上主義で、前残りしやすく勝率の良い先行を指示することが多い。
語句
チームカペラ
オリジナルで作ったった。正直、すまない。当時は若く、チームが必要だった。
所属馬は以下の通り
同期ユメノコウスイ(史実馬変名)
同期ウミノラクエン(史実馬変名)
同期ナンカイトマス(史実馬変名)
同期オニニカナボウ(架空馬)
1年先輩オグリマロン(史実馬変名)
1年先輩ハグロイワイノウタ(史実馬変名)
2年先輩オリヒメ(史実馬変名)
2年先輩ジョンイスマイル(史実馬変名)
史実馬をそのまま使うのは阿寒湖さんかなってことで変名してある。
大体くだらないギャグか意味をひっくり返したりしてコネコネしたから、判る人には判る。
コネコネした結果、某珍名馬主リスペクトみたいになるのねん。
ちなみに主人公のはずのユキノハナドケイはマヤノトップガンと同期の95世代設定じゃ。
生まれ年は史実に合わせてる(多分あってる)から、気になったら調べてみるとよいぞ。
たぶん調べて実名が割れると、このチームの末路が判るってスンポー。
あ、そうだ(唐突)
この物語では、中等部はレース出ません。
物語にも出ません(ロリコンの兄貴姉貴すまぬ)
高等部1年目でジュニア、2年目がクラシック、3年目からシニア、4年目以降はシニア戦継続扱いです。
アニメ時空でもアプリ時空でもないけど、能力表記はアプリと同じにするからそこんとこ、ヨロシク。
インターミディエイトintermediate
1,900mから2,100mのこと。SMILE区分のI。
国際グレードの競争なんかで使われる区分。
もちろん日本国内の競争なんかでも国際グレード取得済みの競争だとそういう区分で扱うから、短距離マイル中距離長距離の区分とは少しずれる。たとえばウマ娘アプリで2,200mの宝塚記念は中距離、有馬記念は2,500mの長距離だけど、SMILE区分的には2,101mから2,700mのロングで同じ区分扱い。でもウマって100m違うと届いたり届かなかったりするから、どっちにしろ距離適性ってもっと細かく見ないと投票券って買えないよね。