「ツインドライヴ?」「ツインターボ!」   作:GN新人トレーナーR

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もっと速く更新したかった!加速しろ!

・ひと月の間
R「ジェミニも勝てなかった……何の成果も……」
脳内TODO「R、どんな物語がタイプだ?」
R「? そりゃ、山も谷もなくていいからみんなが平和な……」
TODO「……退屈だよ……R……」
R「!?」

そういうわけで、王道は他の方々が書いていらっしゃるし
書きたいことを書いていきます

これはただの捏造ではない……
ツインターボが輝くための……ッ!





何!? オーバーロード!?

「サクラ、今日こそメインキョカイデンしちゃうからな!」

「ふっふっふ。そう簡単にバクシンマスターの座を取れるとは思わないことですね……ッ!」

 

 ツインターボと練習用コースで併走トレーニングをするのはサクラバクシンオー。

 お互いハナを譲らぬ接戦を繰り広げていた。

 併走トレーニングで双方逃げウマ――バクシンオーは先行も得意だが――というのは事故のように思えるも、気にしてはいけない。2人にはこれが合っているのだから。

 

 事実、最高速のターボにバクシンオーは難なく追いすがれている。ターボの方が追い立てられていると言っても過言ではなかった。

 

(っ、さすがサクラ! 全然引き離せない……でもでも、ターボはまだまだ速くなれるもん!)

 

(コーナー前で加速……なるほどそう来ましたか! 確かに減速するコーナーで引き離そうとするのは悪くありません。しかし私は学級委員長!! ターボさんに模範的なレースを見せるためにも、ここで手は抜きませんよーーーーっ!!!)

 

 1週目の残り2ハロン。2人は同じタイミングで再加速をした。

 練習だって全力全開。それが2人のトレーニング風景である。

 

 

 

 

 

 そもそも、なぜフリーのウマ娘であるサクラバクシンオーがツインターボとトレーニングをしているのか。

 

 ことの発端は昨年。レースに負けてあーだこーだとターボがベッドでうめいたとき、何気なく同室の先輩にどうしたらいいか、と聞いたことだ。

 

 

『Q:勝てないなぁー、勝ちたいなぁー。何が足りないんだろう?』

 

 

――――バクシン! 模範アンサー!

 

「ずばり、足りないのはバクシン力ですねッ!」

「バクシン……力? なにそれなにそれ!」

「バクシン力とはッ!」

「バクシン力とは?」

「…………」

「…………」

「学級委員長が清く正しく模範的バクシンをするために持つ力のことです!」

「…………? とにかくバクシン力! それがあればターボも速く走れるの!?」

「ええ、もちろんですともッ! この学級委員長たるサクラバクシンオー、嘘偽りを申しませんッ!」

 

 何をどうしてそうなったのかは本人たちしか知り得ないが、自信満々に言い切る先輩の言葉に感銘を受けたツインターボ。翌日トレーナーの元へサクラバクシンオーを連れて行き、一緒にトレーニングするんだと言い張ったのである。

 トレーナーの胃薬が増えた瞬間だった。

 

 とはいえトレーナーにとって悪いことがあったとも言い切れない。なぜならバクシンオーとターボの相性は存外悪くなかったからだ。

 バクシンオーの教え方はお世辞にも上手い訳ではない。しかしターボはバクシンオーとのトレーニングを通して確実に強くなっていく。

そのことが分かって以来。トレーナーは丁度ターボの練習相手が欲しかったのもあったので、バクシンオーとの練習を許可していた。

 

 学級委員長として学園を駆け巡るバクシンオーの方もまた、ターボの世話をよく焼いてくれている。その分騒動も大きくなるが……。

 1度、ターボはバクシンオーのトレーナーも兼任してほしいと彼に持ちかけたことがあったものの……彼はそれを承諾できなかった。

 

 ひとつはトレーナー自身そこまで自分が器用ではないと自覚していること。もうひとつは、彼が()()()――それも母国で実績を残した訳でもない――ということだ。

 外国人トレーナーの扱いは今なお難しいものとされており、彼の場合は()()()()()()()()()()()()()()ならば、と許可されたのだ。

そういう事情もあってバクシンオーのトレーナーになることはできなかった。

 無論、お互いにそれ以外の理由はあるのだが。

 

 

 

 ⏰⏰⏰

 

 

 

「ぜぇ……ぜぇ……ど、どうだ、サクラぁ……」

 

 何本か走り終えた後、息を荒げてツインターボは芝に背中を預けた。

 その隣に汗をかいたバクシンオーが座る。

 

「ぜぇ……はい……学級委員長的に現状を分析した上で申し上げますと……まだバクシンしきれていません!」

「えぇ~! なんでさなんでさ~!」

「ではお聞きしますが……ふぅ……いつわたしがバクシンし始めたかお判りになりましたか?」

「え? う、うーん……」

 

 抽象的な言葉の応酬にターボは疑問符を浮かべる。

 

「答えは始めからです! 生徒の模範たる学級委員長は最初から全速力! その上でバクシンを自然と行えるようになってようやく、バクシンマスターになれるのです……ッ!」

 

 未だ息は上がっているものの、バクシンオーは胸を張ってそう答えた。

 その姿にターボは憧憬の瞳を向ける。

 

「そうだったんだぁ~! くうう、ターボもまだまだだった!」

「しかし、ターボさんもいいところに来ていますッ! このままバクシンロードを進み続ければ……」

「続ければ……?」

「バクシンマスターになるのも夢ではありませんッ!」

「おお~! それならもう1週しようよ!」

 

 真面目に聞くとよくわからないが、この会話で2人は通じ合っているのだろう。

 そのまま練習を続けようとする2人の下に、トレーナーが飲み物を持ってきた。

 

「お前さんら、その辺でひと休みしときな」

「お、トレーナー! 流石だな~!」

「おお、これはありがとうございますっ!」

「お気になさんな。いつもの礼だよ」

「そういうことでしたら……ぷはっー!」

「ぷはーっ!」

 

 ボトルを天に掲げ、同じポーズをとる2人。

 その姿をトレーナーは満足そうに見つめる。

 

「この前の模擬レースといい仕上がって来たな、ターボ」

「でしょぉ? これで次のレースは大勝利だよ!」

「あえて言うなら、もう少しフォームを整えたいが」

「えぇ~? トレーナー、いつもそればっかじゃん~!」

「む、フォームは大事だぞ。かっこいいフォームに速さは宿るからな。ターボだってかっこよく走りたいだろう?」

「むぅ……確かにそう!」

「かっこいいフォームは速い、つまりそれもバクシンですねッ!」

「バクシンだ~!」

「どれもこれもバクシンって言えばいいわけじゃないぞ……?」

 

 はしゃぐ2人に対するトレーナーの苦言は無視された。

 

 それはそれとして、夕焼けを浴びながら休息をとる3人だった。

 

 

 

 トレーニングを終えるやバクシンオーが「むむっ、学級委員長を呼ぶ声が聞こえましたッ!」と飛び出していった後、川沿いの並木道をトレーナーとターボは歩いていた。

 

「ターボ、本当に()()んだな? もう後戻りはできないぞ」

「うん、ターボは()()よ!」

「まったく、とんだ無茶をうちの姫様は言いおる」

「あっはっは~! でも、メニューは考えてくれるんでしょ~?」

「そりゃあ、もちろん」

 

 なら問題なしっ! ターボは屈託のない笑顔でそう言った。

 

(はぁ……人の気も知らんでこいつは)

 自分がしようとしていることの難しさを、ターボはわかっているのだろうか。きっと、半分は分かっているが半分は分かっていない。

 しかしこの真っすぐさがターボの魅力であり、トレーナーが無茶を言われてもやってあげようと思う根幹だった。学園で騒ぎを起こして嫌われることがないのも、ターボが天性の人たらしだからに違いない。

 だから、無茶だとは思っても不可能とは思わない。

なぜなら――――彼女はツインターボなのだから。

 

 そして彼女は空高々に決起する。

 

 

 

――――サクラが走った道を、ターボも走る!

 

 

 

「ならまずは来月のレース、負けてられないな」

「もちろん! がんばるぞ~、おー!」

 

 

 

 ⏰⏰⏰

 

 

 

 ツインターボを寮に送り届けた後、トレーナーはある診療所に足を運んでいた。

 

「ドクター、血液検査の結果はどうだ?」

 

 ドクターと呼ばれたのはサングラスをかけた金髪の男。ツインターボの専属医である。

 彼は回転椅子を回してトレーナーに向き直り、手元の資料を見て言った。

 

「今のところ各種数値は基準値に収まってる。お前の方は?」

「ああ、こっちも安定してるよ。ヒヤッとするところはあったがな」

「この前のは……俺も驚いたよ。去年の二の舞にならないでよかった」

「あんなのが2度3度起こったらワシのいる意味がなくなるだろうが」

「それは俺も同じだっての」

 

 口調からするに2人は気安い関係のようだ。

 それもそのはずで、トレーナーがトレーナーになる前からこの医者とは知り合いなのである。

 トレーナーから差し出された資料を受け取るドクター。

 

「あれからもう4年近いか」

「ああ。ターボの体格が当時とあまり変わらなくて助かったよ」

「換装作業となればレースどころじゃないからな。けど、いくら安定したって俺たちはまだドライヴ*1のすべてを知ってるわけじゃない」

「お前さんに言われずともわかってる。無茶はさせんよ……それより気になるのはこれだ」

 

 トレーナーが資料の一点を指差す。

 

「ドライヴの能力向上……やはり気になるか?」

「ああ。ワシは何も弄っとらんのに出力が3%も向上してる上、安定度だって増した」

「考えられる原因は」

「……まったくもって不可解だが、上昇傾向から見て先月頃だろうな」

「4月ごろ……」

 

 ドクターは己の知識から関連のありそうな情報を引き出した。

 

「日本のウマ娘たちには3女神の祝福、とやらがあるって話を覚えてるか?」

「そりゃあ、日本でトレーナーをするなら調べたさ」

「しかし祝福には縁を結んだウマ娘もいないといけなかったはずだ。となると」

「思い当たるのは……バクシンオーだな」

 

 2人は同時に、先日行われた模擬レースのことに考えが向いた。

 

「あの時のターボは、バクシンオーがスパートに入るときと同じ現象をわずかに引き起こしていたよな?」

「ああ、ワシだって何度も記録を見返した」

 

 その光景を2人は現象として確認している。

 無論、似たようなことは他にも確認している。ウマ娘たちは科学で説明しきれない摩訶不思議の塊が如き存在なのだ。

 ただ、そこで思考停止に至るわけにもいかないのも事実。

 

「バクシン力。本人すら把握しきれていない超常現象か」

「そしてバクシン力の源と考えられるバクシン粒子。それがターボのドライヴに影響を及ぼした……と。まったくもって意味がわからん」

「バクシン粒子ねぇ。いったい何がどうなっているんだか。ターボくんの健康を補助してくれているならありがたいのだけど」

「今はなんともないが、いずれ悪影響が出るかもしれない。それを警戒しないでどうするんだ、ドクター」

「しかし、実際にバクシン力を使ってるバクシンオーくんはなんともないんだろう?」

「……それは、そうだが」

「俺だって楽観視しろとは言わない。まったくメカニズムが見えないからな。けど、そいつを心配しすぎてターボくんから目を離しちゃ本末転倒だろう、トレーナー?」

「ああ…………」

 

 まったくの正論にトレーナーは二の句を告げなくなる。

 2人の間に沈黙が訪れた。

 少しして、トレーナーは絞り出すように口を開く。

 

「…………全く嫌なもんさ、子供を実験動物みたいに見るってのは」

「結果論を話してもしかたない。そもそも、親御さんだって納得してるんだ」

「そうするしかなかっただけだろ」

「そうだ。けどそれであの子が助かった事実は変わらない」

「わかってるさ、んなことは。けどなぁ……」

 

 論理と感情は違う。トレーナーは自身の担当ウマ娘を信じている。信じているからこそ、自分の行いに葛藤を覚えていた。

 

 項垂れるトレーナーを前にドクターはコーヒーを差し出した。

 

「本社の言うことなんて気にするなよ」

「……全部気にしてるわけじゃない。報告書だって必要ないことは書いてないさ」

「それでもだ。お前は昔から抱え込むからな」

「…………」

「俺たちがやるべきなのは、あの子が全力でレースを走れるようにサポートすること。違うか?」

「……ああ、そうだな」

 

 コーヒーを飲み、定例報告を終えたトレーナーは診療所を後にする。

 

(ああ言ったものの……あの子が望めば無茶も許しちまうんだろうな。あいつは甘い奴だから)

 

 ドクターは1杯のコーヒーを手にそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ツインターボは夢を見ていた。古い夢だ。何年も前の出来事。

 北海道の片田舎で生まれ、降り積もる雪の上を走り回っていたころの記憶。

 

「パパ~! だるま出来た! だるま!」

「はっはっは、真ん丸に作れるなんてターボはすごいなぁ!」

「だろー? まだまだ作っちゃうかんなー!」

「手が冷えてしまうから、ほどほどにするんですよ~」

 

 ツインターボは両親からの愛を一心に受けたウマ娘だった。

 父はなんでも褒めてくれるし、母の作る料理はいつだって美味しい。ターボも両親のことが大好きだった。

夢の中の少女は元気に走り回り、雪に埋もれて笑っている。

 

 

(なに……?)

 

 

 ターボの困惑を他所に記憶は映像を流し続ける。

 場面が変わった。

 小学校だ。放課後にターボを含めた小学生が集まっている。

 

「ターボ! きょうそうしよーぜ!」

「おっ、やるか~? いいぞいいぞ! きょうそう、しよう!」

「なら私も!」

「俺も!」

「僕もだ!」

「よ~し! 学校の周りをたくさん走った人が勝ち! いくぞー!」

「今日は負けないからな~!」

「待て待てー!」

 

 人間は身体能力で――少なくとも同年代の――ウマ娘に勝てない。それは訓練の有無に関わらず生まれつきの事実だ。

 しかし、ターボはいろんな人間・ウマ娘と走るのが大好きだった。

 手を抜くことなんてなく、全力でぶつかる。人間もウマ娘も関係なく、一生懸命に競争をすることが何よりの楽しみ。

 そうして毎日毎日、走り回っていた。

 

 

(ターボ、何か悪いことしたの……?)

 

 

 それらは一般的に微笑ましい子ども時代の欠片のはずだ。

 しかしターボは言いようのない寒気を感じていた。

 場面が変わる。

 ターボは自宅の居間でテレビにかじりつき、それを両親は微笑ましく見ていた。

 テレビにはレースの様子が中継されている。

 

『最終コーナー回ってハナを奪ったのはサクラチヨノオー! まだまだ伸びる! 先頭はサクラチヨノオー! 2番手はツツジショウグン! ツツジショウグン追いすがるが届かない! サクラチヨノオー! サクラチヨノオーそのままゴール! 1着はサクラチヨノオーです!』

 

「サクラのおねーちゃんすごいなぁ……」

「そうねぇ。東京でも元気みたいでよかったわ」

「ねぇねぇ! ターボもおねーちゃんみたいに走れるかな?」

「おっ、競争ウマ娘になりたいのかい?」

「競争ウマ娘……たぶんそう! おねーちゃんみたいにたくさん走りたい!」

「おお、その意気だ! 走りたいという気持ちがあれば、どこへだって行ける。だってターボは僕らの子供なんだから!」

「そうよ~、ターボは私たちの自慢の娘なんですもの。できないことなんてないわ」

「そっか……そっか~! よーし決めた! ターボ、競争ウマ娘になってレースに出る!」

 

 近くに住んでいた姉のようなウマ娘に感化されたターボ。

 だって、彼女がレース中に見せた顔は辛そうではあったけど。とても、楽しんでいるようだったから。

 多くのウマ娘がそうであるように、ターボも華の舞台で走ることに憧れを抱いた。

 

 

 

 

 

 

 

(ああ……そっか……)

 

 

 ターボは気づいた。

 これは()()()の記憶ではない。

 両親が大好きなのは事実だ。

 しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 競争ウマ娘に憧れたのは事実だ。

 でも()()()()()()()()()()()()()()

 これは、そうであって欲しかった記憶だ。

 ()()()()()()()

 

 確かに、両親に愛されてすくすくと成長した。体格は小さかったが、それだって誤差の範囲だ。

 問題が起きたのは、6歳のころ。小学校入学を控えて自我も出来上がってくる時分だ。

 

 それはほんの気まぐれだった。

 誰であれ、気分が高揚して目いっぱい体を動かしたいときは存在するだろう。

 彼女の場合は、それが両親にランドセル――それも自分の髪と同じ青色でヒーローとコラボしたかっちょいいモノ――を買って貰ったということだっただけ。

 しかしそれで充分だった。

 

 平和は一瞬で消え去った。

 

 全速力で走った瞬間、ターボは胸元に激しい痛みを覚えた。

 それでも気にする必要はないと、両親への感謝を態度で表したくて走り続けた。

 

 まず、うまく息を吸えなくなった。

 

 次に、足の感覚が薄くなった。

 

 それでも走り続けると、音が聞こえなくなった。

 

 目がうまく見えなくなった。

 

 風を感じなくなった。

 

 結果。

 そのまま立っていることすらできず地面に倒れた。

 それも、両親の目の前で。速度をつけたまま。

 

 慌てて連れていかれた病院で医師に告げられたのは、走ることに体が耐えられないということだった。

 頑丈であるはずのウマ娘がなぜ。

 その疑問はあった。だが、未だ発展途上の体は少し頑丈なだけだ。それもバランスが悪い。バネはあるがバネを生かす土台が不安定なのだ。

 それゆえ肺はウマ娘の強靭な全力酸素交換に追いつかず、心臓も血液及び酸素を必要な量廻らすのに時間がかかる。

 しかしそれも日常生活を送るのに問題はないらしかった。

 

 そう――――今日のように、準備運動もなく突然全力を出さなければ。

 

 たった1回。されど1回。

 

 その全力を発揮したことで。

 

 肉体は内側からズタボロになってしまった。

 

 医師の話は難しくてよくわからなかったが、両親の苦い顔でそれがよくないことはわかった。

 

 それから数年は――――いや、生涯。走ることなど叶わなくなってしまった。

 

 ほんとの自分は、病院で寝たきりだった。

 

(ちが、う……ターボは、ターボは……)

 

 

 

 

 

「いいや違わない。あんたは『こっち側』だよ」

 

 心を見透かしたような声に振り向くと、全身を包帯に包まれたウマ娘がいる。

 横たわる少女は、昏い口元を隠さずに嗤っていた。

 

(あっ……)

 

 自分の陰から黒い手が伸びる。

 それらは夢見人であるはずのターボ(こちら)を狙いすましていた。

 

(まって……)

 

 楽観的でもこの影がいいモノだとは思えない。

 ゆえに、なりふり構わず逃げようとする。

 

(か、からだが……)

 

 しかし動かない。真に陳腐だが、金縛りにあったようだった。

 影は近づく。

 そして捕まった。

 

(ひっ……)

 

 それらはターボを自らの領分である影の中に引き摺り込もうとする。

 抵抗は意味を為さない。できることなどなかった。

 

(やだ……)

 

 体が飲み込まれると、その部位は生理的に受け付けない気持ち悪さを感じた。

 冷たい、けれど生ぬるい。粘ついて包もうとする。

 足が、尻尾が、胴が、腕が。

 

(ひとりは)

 

 そして顔が飲み込まれた時。

 

(やっ……ぁ……)

 

 何も見えなくなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!!!!」

 

 毛布を弾き飛ばすという無意識が行った衝撃で、ターボの意識は覚醒した。

 窓を見る。まだ外は暗かった。

 

「はぁ……はぁ……」

 

 お腹が重い。息も上がってしまっていた。

 なにより、意識と関係なく全身から冷や汗が噴き出している。

 パジャマが汗をすぐに吸収してくれるものの、それは単に体の重みを増すだけだった。

 

「大丈夫、ターボは大丈夫。大丈夫……」

 

 ターボは走れる。今は違う。走れるんだ。

 そうやって念仏を唱える僧侶が如く、根拠のない安心を得ようとする。

 しかし、クラヤミが齎した不快感と恐怖はぬぐえない。

 冷や汗が収まるまで、ターボは濡れて気持ち悪い自分の体をかき抱いた。

 

 

 

「……着替えよ」

 

 ターボが不安と戦っていた時間は幸いにもそれほど長くなかった。

 水分を吸いきった上着は脱いでTシャツを手に取る。

 

「…………」

 

 ひとっ走りしようかと考え、やめた。

 嫌な夢を見たからか無性に人恋しくなってしまったのだ。

 

「……いい、よね」

 

 1番近い場所にいるのは1人。

 のっそり自身のベッドから降り、隣人の枕元に立つ。

 「バク……シン……」と寝言をこぼす当人はすっかり寝入っているらしい。

 そのまったく無防備なことに安堵し、ターボは狭い住処の横に潜り込んだ。

 

「あったかいなぁ……」

 

 毛布をめくると、温められた風と柔らかさを感じた。

 先ほどまで感じていた寒さは遠い空へ飛び去っていくような心地よさ。

 寝ているなら問題ないはず。そう思ってバクシンオーの手を握ってみれば、きちんと握り返された。

 意識はないだろうに、拒絶どころか受け入れてくれたことでターボの胸が軽くなる。

 

「……ふあぁ…………」

 

 心の波が凪いでいく。

 心強い味方を得て、ターボの意識はまどろみに溶けていった。

   

 

 

 

 

 

 

*1
この世界における医療器具。ペースメーカーのような物




☆何!? オーバーロード!?
前に出過ぎると疲れやすくなる



・サポート/ライバル
サクラバクシンオー


・強敵



バクシンバクシンバクシーン!
バクシンバクシンバクシーン!
バクシン! バクシン!
バクシンシーン!
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