「ツインドライヴ?」「ツインターボ!」 作:GN新人トレーナーR
「(キャンサー杯)やってみせろよ、マフティー!」
「(ツインターボなら)なんとでもなるはずだ!」
「ガンダム(クロスオーバー)だと!?」
今更だけど世界観はアニメとアプリと漫画が混ざってる。
トレセン学園の食堂は非常に賑やかだ。
ウマ娘は身体能力ゆえに要求カロリーが高く、その食事量を支えるため多くのスタッフが勤めている。朝昼晩、3食すべてを用意するべく厳戒態勢が敷かれているのだ。
ただし、それでも追いつかないことが3日に1回は発生する。
たとえば座高ほどのコロッケを積む者、ラーメン杯なるものを突然開催する者、たこ焼きとご飯を延々と注文する者、etcetc……。胃袋が規格外なウマ娘は以外と多い。
つまりこの場所の賑やかさとは、戦場に挑む料理人と楽しくご飯を食べるウマ娘たちの合唱なのだ。
そんな食堂の一角、テーブル席でツインターボは食事を取っていた。
「それでねそれでね、来月ターボもレースにでるんだぞ~!」
「よかったねぇ、それも重賞ってさ」
「ふふん、でしょぉ?」
「いや~ターボも頑張ってるし、あたしも頑張らないとだね~」
「お~! ネイチャなら出来る! 昨日も走ってたのターボは知ってるよ」
「……ありゃりゃ、意外と高い評価にネイチャさん驚いちゃった」
「もち! だってネイチャは親友で、応援してるもん」
「あはは、ありがとねぇ~。あたしもターボのレース応援に行くからさ」
「ほんと!? やったやった~! ぶっちぎりで1着になるから、目にもの見せてあげる!」
「なーんか言い回し変な気がするね~*1」
ターボの対面に座って親しそうにしているウマ娘は、ナイスネイチャ。年始の
自虐的な発言が目立つものの、コンスタントにトレーニングをこなす努力のウマ――実力者だ。
そしてターボの自称だが、入学当初からの親友。
その後も2人が掃除当番いつだっけなど、他愛ない話を続けていた折。
「オマエだなっ、バクシンオー先輩にちょっかい出してるっていう悪者は!」
小柄な乱入者が現れた。
「…………?」
「えっと……?」
指を向けていることからこちらに――ターボに話かけているのは分かる。
だが、なぜ悪者? 話のきっかけにしては妙なチョイスだ。
ネイチャは確認するべく目線を送るが、ターボは首を横に振った。
「ネイチャさん、話が見えないっていうか……」
「とぼけるな! アタシはわかってるんだぞ、正直にハクジョーしろっ」
「何言ってるかわっかんないぞ?」
真面目に困惑している様子をとぼけていると受け取ったらしい茶髪のウマ娘は、大げさなポーズを取って自己の主張を続けた。
「ウマソルジャーのレッドペガサスが現れたからには、悪者はソッコクお縄なんだ!」
「ウマソルジャーっていうか、ビコーペガサスでしょ」
冷静なツッコミを入れるネイチャ。
乱入者の名前はビコーペガサス。短距離でその活躍を有力視されているウマ娘だ。
パトロールと名乗って学校内を走り回る有名ウマである。
「今のアタシはレッドペガサスなんだー!」
「あっ、はい。それで、どうして悪者うんぬんって話に?」
「? なんでって、なんでだ?」
「ん、んん?」
とりあえず話の主導権を握ろうとネイチャは質問を始めるが、ビコーは本気で疑問符を顔に表していた。
「いや~、何か理由ってあるものじゃん? というか、自分で『ちょっかい出した』って言ってたでしょうに」
「あー、そうだ! ちょっかい出してるだろオマエ!」
「オマエじゃなくてツインターボ! ターボは名前あるもん!」
「え? あ、ごめんターボ……」
「ゆるす!」
「おお……優しいな、ターボ!」
「ふふん、ターボが優しいのはじょーしきだよ!」
「ターボは優しい……なんで優しいターボが悪者なんだ?」
「いや、あたしたちに言われても……」
首をひねるビコー、どや顔をするターボ、話が見えないネイチャ。三者三様の反応を示す。
「というかさ、ちょっかいというか。バクシンオー先輩に何か言われたの?」
「違うけど……」
「じゃあまたなんで?」
「それは……バクシンオー先輩が構って――じゃない、忙しそうにしてたから!」
「あっ……はは~ん」
思春期的なアレを察したネイチャは微笑ましそうな表情になる。
「つまり、いつも仲良しなお姉ちゃんが遊んでくれなくて寂しいってこと~?」
「はっ、はぁっ!? ち、違うし!」
「しかもターボは寮も同室だし、羨ましいんだよね~」
「わ、わぁっー! そんなことない! アタシは別に、寂しくなんて……」
「そうか? ターボは寂しいぞ~、サクラがいないと!」
「へ?」
予想外からの差しに目を見張るビコー。
「まー、今日はホシューって言ってたからダメそうだけどな!」
「バクシンオー先輩、いつも補習受けてるよねぇ」
「…………」
「素直になった方がいいと思うんだけどな~、あたしは」
「……素直とか、違うし」
「ふぅん……」
バクシンオーが毎度毎度補習を受けているのはよく知られている。いち生徒に過ぎないバクシンオーの補習情報が出回ってしまっているのは、日々の行いからか。
「ま、あたし的にはターボが赤点回避できてよかったよ~。1学期早々補習だとねぇ」
「ネイチャが教えてくれたからでしょ! 赤点取ったらレース出さないってトレーナーにも言われたし……」
「うんうん、いつもその意気でいてくれれば文句ないね~」
ネイチャが感慨深そうに頷く中、ターボはビコーに目を向けた。
「そういえば、ビコーってご飯食べたのか?」
「え? いや、まだだな……」
「お~、なら一緒に食べようよ。今日はにんじんゼリーが付いてくるし!」
「ほんとか!? すぐ行ってくる!」
釈然としない表情だったが、にんじんゼリーの存在を知った瞬間に目を輝かせたビコー。
走るなと注意されながら学食を持ってきたビコーは、ターボたちと同じテーブルに座ってご飯を食べ始めた。
「ねぇねぇビコー。さっきのポーズってさ、もしかしてキャロットマンか?」
「おっ、ターボはキャロットマン知ってるのか!?」
食後。思い出したターボがビコーに水を向ける。
「もち! あんなにかっこいいヒーローは居ないもんな!」
「ターボ、よくわかってるじゃんか! 今日の帰り、一緒におもちゃ屋いかないか? キャロットマンの新作フィギュアが出るんだ!」
「おお~! いーよいーよ、行こう!」
先ほどまでの妙な空気はどこへやら。同じ趣味を見つけたらしい2人は、すっかり話にのめりこんでいくのだった。
「……ま~、これはこれで。丸く収まったのかな?」
⏰⏰⏰
放課後、練習も休みだった2人は約束通りおもちゃ屋へやって来ていた。
キャロットマンのフィギュアが飾られているショーウィンドウにかじりつくターボたち。
「ベルトの溝まで表現されてる……かっこよさ2倍だな~」
「ビコービコー、こっちの奴はバンジージャンプセットもついてるみたいだぞ!」
「おっ、チャリティー募金の奴だろ? じゃあバンジーバク転も再現できるってことかー!」
「そーなる! 命綱ひとつですごいことやるよな~」
「ああ、キャロットマンは不可能を可能に変えるヒーローだし」
「うんうん」
あっちは使い方のわからない銃剣!とか結局使われなかったカード!だとか、あっちこっちに目移りした結果、おもちゃ屋を出てきたのは夕暮れ時だった。
「たくさん買いたいけど、そーすると
「セツヤクは大事だってトレーナーが言ってたぞ~? 全然できないけど!」
「だよな~。アタシも全然できないや」
お金の管理はトレーナーに任せるのが1番いいとか、そんな話をして買い物袋を手に帰り道を進む。
交差点で信号待ちをする間。
ちらちら見られてる気がして、ターボは視線の主に尋ねた。
「ビコー? どうしたんだ?」
「いや、その……」
見つめられて途端、歯切れを悪くするビコー。
彼女はこっちを見たり、あっちを見たり。せわしなく目を回した後、意を決したようだ。
「食堂で悪者とか、言っちゃっただろ?」
「……そう言われればそうだったような?」
むむむ、と思い出そうとするターボ。
しかし、記憶の大部分はゼリーが美味しかったとか、同じ趣味の
「言っちゃったんだよ、アタシ……。それを謝りたくて」
「ビコーがそう言うならそうなんだな」
自分の記憶力が信用ならないことはターボ自身が分かっている。
それでもビコーがこのタイミングで言い出したのは、もやもやした気持ちを抱えているからだろう。話しただけでなくなるものでもないだろうけど、話して楽になるならそうするべきだと思う。
ゆえにターボは続きを促した。
「今年になってから先輩と話せる機会が減ってて……むしゃくしゃしてたんだ」
ターボの目に目を合わせていたビコーだが、次第にバツの悪くなったか逸らしてしまう。
「でも先輩はいつも通り明るいし、アタシがとやかく言うことでもなかったから仕方ないって思っていたけど――――ターボと先輩が仲良く練習してるのを見て、それで……」
本人の気持ちを代弁するように、ウマ耳がぺたんと横になった。
「ターボがそんな悪い奴じゃないっていうのはレースを見ればわかったし、アタシだって本気でそう思ってたわけじゃないぞ? でもこのまま何もしない訳に行かなくて、よく考えないまんまあんなことを……悪口を言うなんてヒーロー失格だ……」
「んー……」
「ごめんな、ターボ」
ビコーの話を聞いたターボは。
「いーよ。全然気にしてないから!」
あっけらかんとそう言った。
そんなターボにぎょっとしたのはビコーだ。彼女はどうして?と言いたげに問いかける。
「ビコーもサクラのことが好きなんだよね?」
しかし帰ってきたのはそんな一言。
そう問われて、ビコーは自分の気持ちに気が付いた。
「好き……うん、たぶんそうだ」
「じゃあ、許す。サクラが好きなら悪い
なんだその理論と言いたくなるが、2人にとってそれは共通認識だったようで。
「そっ……か。やっぱりいい奴だな! ありがと、ターボ」
「ふふん、どういたしまして」
これから仲良くしようという気持ちも込めて2人は握手を交わした。
青信号に変わった歩道を渡る。
「それに、ターボのレース見てくれてたの嬉しいなぁ! ねね、今度一緒にトレーニングしようよ。サクラも一緒に!」
「えっ、それは……いいのか?」
「いい! サクラもたぶん断らないし。あ、でもビコーのトレーナーはどうなんだろ?」
「たぶん大丈夫だと思うぞ。アタシのトレーナー、なんか変だから」
「そうなのか? よかったよかった~」
具体的な調整は自分のトレーナーに任せるターボ。
彼の胃薬の数は止まらない、加速する。
それはそうと、ウマ娘の聴力は非常に優れている。視界に映る範囲であれば聞き分けることも訳ないのだ。
つまりどういうことか。
「……聞こえたよな?」
「うん」
耳を立たせて顔を見合わせる2人。
「確かにひったくりって聞こえたし、なんかこっちに来るバイクもあるぞ?」
ターボが確認するように言えばビコーも頷いた。
くだんのバイクは道路標識を無視したスピードを出しており、それどころか運転手の男はヘルメットさえしていない。
それに今、自分たちを抜き去ったバイクが持っていたバッグはどう見ても女性もの。そういった趣味なら勘違いだろうが……同じく血相を変えて走ってくる女性を見るに、あのバイクはひったくり犯で間違いない。
「どうする?」
「……」
「ね、ビコー。どうしたいんだ?」
「アタシは……」
「ターボも学園で何度も聞いてるよ。ビコーはヒーローなんでしょ?」
「…………」
数秒の逡巡。
悪口を言った自分が今まで通りヒーローの真似事をしてもいいのだろうか。
そうやって考え込むビコーに、ターボは一言放った。
――――
瞬間、ビコーの脳内に憧れのヒーローが映った。「心と努力でなんとでもなるはずだ!」と言いながら様々な困難に挑んでいくその姿を。
「……ターボ、これを持って貰ってもいいか?」
「もちろん!」
自分がとるべき行動を定めたビコー。
ターボに買い物袋を渡した彼女は、スタートフォームに入って――――加速した。
一方、ひったくり犯の男はバイクを走らせながら笑っていた。
「あんな上物を着てるくせに無警戒なんぞ、狙ってくれと言ってるようなもんだろ常考*2。あの様子じゃ俺に追いつけないし、こりゃ勝ったわ」
彼はひったくりを繰り返す常習犯だった。
自分より弱い女性を狙って、人間の足では追いつけないバイクを使って逃走する。そうやって大事なものを奪われた時に見せる恐怖や屈辱、混乱に不安といった表情を見るのが好きだった。
まさに吐き気を催す邪悪。見紛うことなき悪者だ。
ゆえに、彼女がそんな人物を見逃すはずはなく。
「どいつもこいつも平和気取りをしやがって。世の中は奪って奪われてこそ本来だろうが。だから俺は奪うんだ……敗者になりたくないからな。俺は悪じゃねえ、負けた奴が悪なんだよッ!」
彼にとって不幸で女性にとって幸運だったのは、女性は女性でも――ウマ娘がいたことだろう。
「――――だったら、そんな悪者はソッコクお縄なんだ!」
「な、ウマ娘だと!?」
声をかけられた男が目を見開いたその隣に、併走するビコーの姿があった。
ウマ娘の速度は自動車のそれを優に超える。追いつくのは訳ないし、加えてビコーは追いかけるのを得意としていた。
「レッドペガサス参上! 逃がさないぞ、ひったくり犯!」
「クソッ、チビが調子に乗りやがって!」
ビコーと男の体格を比べれば確かにビコーは負けている。人間同士であれば、力比べをすると男の勝利に終わるだろう。
だがしかし、ウマ娘の身体能力はそんな体格差をモノともしない。
さらに加速して振り切ろうとした男に対し、ビコーがとった行動とは。
「うおおおおおっ!!」
バイクの前に躍り出たビコーは向きを反転、両手を突き出してバイクを受け止めた。
「ば、バカな……車の前に出てくる奴がいるかよ!?」
これには男も開いた口がふさがらない。
小学生と言われても相違ない子どもが車線に飛び出したのだから、心臓に悪かった。
「たかがバイクひとつぅっ!」
足を後ろに伸ばしてブレーキ代わりに。アスファルトと接した靴から甲高い音が響いた。
「嬢ちゃんやめろ! このままじゃ足が燃え尽きるぞ!」
「なんのこれしきぃぃぃぃ!!」
「な、なんて根性なんだ……」
男は戦慄した。なんて危ないことをするのかと。
男は自戒した。こんな子供が体を張っているのに、自分はなんて情けないのかと。
「俺は――――」
気が付くと、男はアクセルペダルから足を話していた。
わずかに残った良心とビコーの魂の輝きが男の邪念を焼いたのだ。
「ふぅ……はぁ……」
大きく息をするビコー。
男の気持ちとリンクするように、バイクはいよいよ動きを止めた。
「嬢ちゃん、負けたよ……名前はなんていうんだ?」
観念した男は力なさげに問いかけた。
「潔い奴だな! アタシはビコーペガサス! 正義の味方を目指してるんだ!」
「ビコーペガサス……いい名前だ。その様子じゃ競争ウマ娘だな? 頑張れよ……」
「おう! アンタもこれに懲りたら真面目になるんだぞ。キャロットマンは『1度悪に手を染めても、立ち上がる勇気があればいつだってやり直せる』って言ってるし!」
「はは……そうか……そうか……」
その後、駆け付けたお回りさんに男は連行されていった。
「お手柄だったなぁ、ビコー!」
「えへへ、間に合ってよかった!」
「ええ、ほんとうに助かりました。なんとお礼を申し上げればよいのか……」
ターボと合流したビコーは被害者の女性と顔を合わせる。
年下のビコーたちに敬意をもって接してくれる出来た人だった。
「お礼の気持ちだけでアタシは十分! ヒーローは見返りを求めないからな!」
「いえいえ、それでは私の気がすみませんので……。これしか渡せるものはありませんが、ぜひ受け取ってください」
そう言って差し出されたのはスイーツバイキングのチケット。
これには2人とも視線を吸い寄せられた。
「で、でもアタシは……別に……」
口で言うのは簡単だが、ビコーの視線は泳ぎまくっている。
それを目ざとく見つけた女性は、少々強引にチケットをビコーの手に収めた。
「それでしたらお礼とは申しません。お友達との仲を深めて欲しい、そんな私のお節介ということにいたしましょう」
「う……あ、それなら……」
「はい。それでは御機嫌よう、小さなヒーローさん」
そう言って女性は迎えに来た着物姿の人と聴取のため、警察へ向かっていった。
その後も事態の推移を見守っていた通りすがりの人などがビコーに拍手を送って来る。
「よくやった嬢ちゃん!」「根性あったぞ!」「にんじん驕らせてくれ!」「人参要らないよ」「お前には言ってねぇ!」
そんな声たちを背に受けながら、ビコーは気恥ずかしさの混ざった得意げな顔で寮に足を向けるのだった。
「いや~今日のビコー、ヒーローみたいでかっこよかったぞ!」
「いいや、
「うわっ、誰?」
周りが落ち着いたころ。
興奮した様子でターボが話しかけると、どこからともなく緑髪の男が現れた。
「あ、トレーナー! なんでこんなところにいるんだ?」
「え、トレーナーなんだ?」
「おう、ビコーのトレーナーだぞ。そいつは」
「あ、トレーナー」
「ターボのトレーナー?」
「うん」
「なんで2人が一緒に?」
それだけでなくターボのトレーナーまで現れた。
まるで図ったかのようなタイミング。
「ワシは蹄鉄の交換をしてたんだがな、そいつがコソコソ変な行動をしているもんだからついてきたんだよ」
「妙な行動だとは侵害な。僕はただ救世主の姿を見守っていただけさ。今日の働きもまた輝かしいものだった……さすが我が救世主」
「それなら堂々としろというに。草陰に隠れてするんじゃない」
2人の話を聞いたターボは。
「そういうのストーカーだってネイチャが言ってたぞ」
「――――そんな低俗なものと一緒にしないで欲しいな。僕は彼女の輝きが曇らないように見守り続けているんだ。私利私欲を満たすために他人の土地へ踏み込む外道とは違うのさ」
「何言ってんのかわっかんないぞ」
「だろ? アタシも何言ってんのかわからねーもん」
お手上げとばかりに両手を上げるビコー。
「ターボたちが困ってるじゃないか緑色。そんなだからお前さんは気味悪がられるんだよ」
「言うじゃないか中年風情が……君こそ目に隈を添えているおかげで避けられていると気が付かないのかい?」
「はてなんのことかなぁ?」
「貴様……」
ターボにとってトレーナーが自然体で話す相手はそんなにいないので、2人の様子を物珍しそうに見ていた。
「トレーナーたちは知り合いなの?」
「ん? ああ、まあ。ワシらの師事した相手が一緒だったからなぁ」
「忌々しいことだがね」
へー。と、ターボは唸った。トレーナー、ぼっちじゃなかったんだなと。
「あ、トレーナー(緑)。さっき警察の人が保護者を呼んでほしいって言ってたからトレーナーのこと話しておいた!」
「ふむ……そういうことなら僕らは先に失礼しようか。寮まで気を付けて帰るんだよ」
「おう!」
警察に行ったトレーナーたちと別れた2人は学校近くまで戻ってきた。
「ビコーとはここでお別れだなぁ。今日は楽しかったぞ!」
「ああ、アタシもだ!」
ターボは美浦寮、ビコーは栗東寮なので学校前で別れることになる。
また明日、とお互い手を振って帰ろうとしたところで、ターボが立ち止まった。
「ターボ?」
「……サクラ、たぶんまだ補習室にいると思う。それだけ。じゃあな~!」
「あっ」
走って寮に行ってしまったターボを見送ったビコー。
「…………」
時計をみたところまだ門限まで時間はある。
それを確認して、ビコーは静かに学園へ入っていった。
⏰⏰⏰
「おやビコーさん! 奇遇ですね」
「バクシンオー先輩……補習はもう終わったのか?」
「ええ、まあ、まだなんですけども。しかし、だからといって学級委員長が校内の安全を確保しない理由にはなりませんッ! きちんと全生徒が下校し終えたか確認するのも、学級委員長の職務ですから!」
バクシンオーのことを待っていたビコーだったが、彼女の補習はもう少し続くようだ。
現に、彼女のクラスメイトが追ってきている。
つまり脱走犯なわけだが、それにしてもバクシンオーは胸を張っていた。
「バクシンオーさーん! 補習は終わってないよー!」
「ちょわっ!」
案の定クラスメイトに捕まったバクシンオー。
このままだと補習室に輸送されてしまうだろう。
その様子が、何かと重なったような気がして。
話すかどうか迷ったが、ビコーは声を張り上げていた。
「バクシンオー先輩!」
「はい! サクラバクシンオーですッ! どうしました?」
「明日、見回り一緒にしよう!」
「ほうほう……わかりましたッ、また明日お会いしましょう、ビコーさん!」
「おう!」
いいから早く行くよ! とクラスメイトに引きずられていくバクシンオーを見送るビコー。
彼女の要求は意外と簡単に通った。
それもそのはずで、バクシンオーは後輩の頼みをたいてい断ったりしないからだ。
ゆえに彼女は、ひとつのシンプルな答えを得た。
「――――そっか、アタシが自分で誘えばよかったんだな」
レースまで行きたかったけど次回になりそう。
ネイチャが応援するレースの行方は……
・サポート/ライバル
サクラバクシンオー
ビコーペガサス ←NEW!
・強敵
・トレーナー(中年)
ターボのトレーナー。
モットーは「かっこいいフォームや服に速さは宿る」
・トレーナー(緑)
ビコーのトレーナー
ビコーの魂に焼かれて救世主だと思ってる。