元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編) 作:神羅の霊廟
「『狂化』……ですか?」
定藤の口から出てきたのは、箒も文月も聞いた事がない単語だった。
「そう、狂い化けると書いて、狂化。どうだい?」
「いえ……聞いた事はありませんね。察するに、艦娘に関する事とは予想出来ますが……」
「まぁあながち間違いではないね。確かに艦娘に関する言葉さ。ただし……悪い方面でね」
そう話す定藤の表情は沈んでいた。
「『狂化』はね、分かりやすく言えば『艦娘の深海棲艦化』の事さ。艦娘ってのは、一度沈むと深海棲艦になる……そして深海棲艦もまた、沈むと艦娘になるって言うのが一般論さ。実際それは間違いではないのさね。轟沈した艦娘が目の前で深海棲艦になったり、逆に深海棲艦が艦娘に変わるってのは、よく各地で目撃されてるしねぇ」
「最近の深海棲艦はどこか艦娘にも似た顔の奴が出てきたりするし、艦娘にも深海棲艦だった頃の名残があったりするらしいのですよ。まぁ本当にごく稀ですがね」
「瀬尾の言う通り、つまりそう言う事さ。だけどねぇ……『狂化』ははっきり言って不味い。あたし的にも受け付けられない現象さ」
「元帥がそれほどに嫌うとは……一体『狂化』とは?」
瀬尾が聞くと、定藤は今度は真剣な表情に変わった。
「皆心して聴いておくれ。『狂化』ってのはねぇ……轟沈していないにも関わらず、唐突に艦娘が深海棲艦に変わってしまう事さ」
「!」
箒達の表情が鋭くなる。轟沈という条件を経ずに艦娘が深海棲艦に変わるーー普通ならあり得ない現象だ。
「何の前触れもなく、ある日突然に艦娘が深海棲艦に変わるーーそれも目の前で。手塩にかけて育ててきた艦娘が、目の前で、何の前触れもなく、深海棲艦と成り果てる……恐ろしい現象さね」
「馬鹿な!そのような現象、今まで聞いた事もありませんぞ!」
「まぁ齋藤達が知らなくて当然さね。『狂化』は今の今まで、一度しか起こってないからねぇ」
「一度だけ?ならばそれほど気にする事もないのではないですか?」
中川がそう言うと、定藤は胸ポケットから一枚の写真を出して机に置いた。その写真には、若い頃の定藤と思われる女性と、薄紅色の着物と紺の袴の格好で、身の丈程の和弓を持っている艦娘が写っていた。
「この写真は……まさか元帥の隣にいるのは、あの鳳翔ですか?」
「その通りさね。一番最初に顕現した十人の艦娘の内の一人で、唯一の空母でもあった鳳翔。そして……あたしの目の前で狂化した唯一の艦娘さね」
定藤の言葉に、執務室に衝撃が走る。
「十年前……あたしがまだ中将だった頃、鳳翔は当時あたしが運営していた鎮守府のエースとして、とある作戦に参加したのさ。そしてその作戦が無事に終わって鎮守府に帰投したまさにその時ーー奴等は残存勢力をかき集めて、手近だったあたしの鎮守府に強襲してきたのさ」
「その話は聞いた事があります。私はまだ提督候補生でしたが、何でも随分激戦になったとか……」
「あぁ、薙の言う通りさね。戦いは数日に及び、最後に残っていた艦娘は、大破した鳳翔とあと一人だけ。で、あと少しでこちらの資源が尽きるっていう時になって……突然鳳翔が苦しみだしたと思ったら、みるみる内にその体は深海棲艦のそれへと変わってしまった。幸い精神はギリギリまで呑まれなかったらしく、鳳翔は自身の最期を悟り、あたし等に別れを告げて奴等に特攻し、残り全ての深海棲艦を道連れにしたのさ……」
定藤は一旦そこで話を切る。涙を堪えているのが表情からもよくわかった。
「そんな……私は、鳳翔は深海棲艦との戦いで轟沈したと聞いていました」
「まぁこの件は箝口令が敷かれたからねぇ、そう伝えられたのは当然さ。だから今となっては誰も真実を知らない。知っているのはあたしと……中川、あんたんとこの赤城だけさね」
中川が驚いた表情で後ろに立つ赤城を見た。直立不動の赤城の目には、うっすらだが涙が浮かんでいる。
「赤城、貴女……」
「……申し訳ありません、提督。定藤元帥の命で、鳳翔さんの最期を誰にも話さぬようにしていました」
涙ながらに説明する赤城。その手は強く握り締められ、ちょっとだけだが血が垂れている。恐らく元帥が言っていたあと一人というのが、中川の後ろにいる赤城という艦娘なのだろうーー箒はそう直感した。
「士気の事や艦娘達の心身の事も考えて、赤城に内密にするよう言い付けておいたのさ。空母の長ともされる鳳翔の最期が、あんな残酷な最期だなんて……彼女を慕う娘達に話す訳にはいかなかった」
定藤は話を締めて顔を伏せた。そして涙を拭うと、机の写真を手に取り懐かしそうに眺めた。
「なるほど、元帥が過剰なまでに艦娘達の減少を懸念するのには、そのような理由があったのですか」
「そうさ。もう二度と鳳翔のような娘を出したくない……そんな思いあっての事さ」
定藤はそう言って写真を胸ポケットに仕舞い、今度は文月を見た。
「が、今回……駆逐艦の単独演習において、その『狂化』を匂わせる娘が出てきてしまった……それが篠ノ之少佐、お前さんの連れてきた文月さ」
その言葉に、その場にいた全員の目が文月に釘付けになる。文月は「ぴっ……」と小さく驚いて箒の軍服の袖に顔を隠してしまった。箒が文月の頭を軽く撫でて上げ落ち着かせる。
「元帥。その『狂化』には、どのような特徴があるのですか?」
「あぁ……特徴的なのは通常では出せる筈のない威力の攻撃。砲艦なら砲撃や雷撃、空母なら艦攻・艦爆での攻撃が該当するね。あとは身体能力の大幅な向上。齋藤たちも見たろう?あの娘の砲雷撃の威力を」
言われて齋藤達はテレビで見た文月と時雨の演習を思い出す。確かに文月の砲雷撃は、普通なら戦艦のーーいや、戦艦を優に上回るレベルの砲雷撃だった。もし直撃すれば、時雨は無事では済まされなかっただろう。
「はっきり言ってしまえば……危険なんだよ。いつ深海棲艦に変貌して味方に牙を向くのか分かりゃしない。前例も鳳翔の時しかないから、他にどんな危険を孕んでいるのかも分からない。だからーー」
「だから……文月を解体せよ、と仰るのですか?」
定藤の言葉を遮るように箒が言う。危険だからこそ、それが起こってしまう前に災いの芽を摘み取る。確かにその通りではあるが、箒にはそれが受け入れられなかった。しかし定藤は小さく首を縦に振る。
「まぁ妥当でしょうな。そんな危険な艦娘を野放しにするのはリスクが高すぎるーーいや、リスクしかない」
「私も齋藤大将に同意するわ。いつ私達に牙を向くのかって恐怖に怯えるくらいなら、さっさと解体してしまった方が安全よ」
齋藤と中川は文月の解体を奨めてくる。齋藤は文月によって時雨をコテンパンにされているし、中川は後継者の件で箒とは確執がある(箒はその事を知らないが)故、この反応はまぁ仕方ないだろう。
「私も同じ、ですかな。鳳翔の時のように、なってしまってからでは遅いのです。それなら早めに行動に移すのが普通かと」
瀬尾もどうやら解体に肯定的だ。定藤の下で多くの作戦に参加してきた瀬尾は、定藤の心中をよく理解している。が、ここは海軍という組織。ならば主観は一切捨て置かなければならないーーそう考えての意見だろう。
「薙。あんたここにきてからほとんど黙りっこだけど、何か意見はないのかい?」
ここで定藤は先程から何も喋らずただじっと文月を見ていた提督ーー『薙淳一郎』に意見を求めた。
「佐世保の、お前はどう考える?解体か、それともそれ以外か……」
「今年の単独演習を担当して、あの光景を間近で見てたあんたはどう考えてるのよ?」
齋藤と中川にも聞かれ、薙は狐のような細い目を更に細めて考え込む。少ししてようやく薙は口を開いた。
「……この娘はまだ解体するには時期尚早かと考えます」
「何!?」
齋藤が驚いて薙を睨む。思っていた返答とは違ったのだろうか。
「……今まで『狂化』は、鳳翔以外の艦娘には起こらなかった。ゆえに僕達は、『狂化』の情報に乏しい。僕ならばこの娘をあえて生かしておき、様子を観察します。少しでも多く『狂化』の情報を集める為に。そして……以降に起こらぬよう対策を立てる為に」
「危険な艦を野放しにするつもりか!?それで民間人に被害が出たらどう責任を取るつもりだ!?薙、貴様ふざけているのか!?」
「何の対策も講じず、ただ危険だと言う理由で解体する方がふざけていると思いますよ?幸いまだ被害は横須賀の時雨一人だけで済んでいますし、『狂化』したと思われる当事者やその映像もあります。対策は立てておいてなんぼでしょう」
「貴様……!」
齋藤が立ち上がって掴み掛かろうとするが、瀬尾に制止され仕方なく座り込む。
「それに僕は彼女ーー文月が、『狂化』を防ぐ為の鍵になりうると考えています。今回の文月ですが、間近で見たそれと元帥が説明なさったそれは、明らかに異なっていました。彼女は普通に意識を保てていましたし、何よりーー深海棲艦に変貌していない」
「確かにそうだけど、だからと言って『狂化』ではないと決め付けるのは……」
「ええ、そうです。故に僕は二つ案を提出します。まず一つは、篠ノ之少佐に命じて文月の様子を逐一レポートに纏めて提出してもらい、何か危険な要素あらば即刻僕達で対処する……もう一つは大本営預りとして常に監視し、危険な要素あらば即刻対処する。いかがでしょうか?」
妥協案を出してきた薙に齋藤等は不満を露にしたが、定藤は「ふむ……」と考え出した。
「篠ノ之少佐。お前さんはどうしたいかね?正直に言ってごらん」
定藤は箒にも意見を求めてきた。箒はまだ怯えている文月をあやしながら自身の意見を述べた。
「……私としては、薙大将の提示した案ーー前者の案に賛同します。後者の案は大本営預り、それに近くに横須賀鎮守府がある。確かに何か起こった際の対処は容易いでしょう。ですが見ての通り、文月は私に良くなついています。もし長期に渡り離ればなれにされて、文月の心身に影響を及ぼし、それが『狂化』のトリガーになれば……」
「その時は我等で対処すれば良いだろう」
「果たして出来るのですか?『狂化』は予測すら出来ないのですよ?何なら今この場で文月が深海棲艦になってしまうかもしれない。もしそうなったらこの場にいる私達は間違いなく全滅。指揮系統を失えば、今ここにいる艦娘達だけで対処出来るとは思えません」
箒の発言に、後ろに控える艦娘達の目が鋭くなり、箒を捉える。薙以外の大将達の目も同じく鋭くなった。
「ほう……つまり私達の艦娘では力不足と?」
「提督の存在あっての艦娘でしょう?艦娘達は貴方達を慕い、そして戦っている。もし貴方達がいなくなれば、彼女達の精神的ダメージは間違いなく大きい。そんな状況で、まともな指揮など出来る訳がないです」
その言葉に、齋藤の後ろにいた艦娘がズカズカと箒に近付き、襟を掴んで無理やり立ち上がらせて睨み付けてきた。
「しれいかん!」
「長門、止めんか!」
「貴様は私達の事を馬鹿にしているのか!?私達はこれまで数々の作戦に挑み、そして成し遂げてきた!こんなちっぽけな奴を相手して、後手に回る訳がないだろう!私達の愚弄は、私達の提督への愚弄と取るぞ!」
長門と呼ばれた艦娘は怒りのままに叫び箒を睨み付ける。しかし箒は涼しい顔。
「……好きに考えれば良い。だが」
箒はそこまで言うと、自らの襟を掴んでいる長門の手首を右手で掴み、そして軽く力を入れる。
「ぎいっ!?」
途端に長門の手首を襲ったのは、軽く力を入れたとは思えぬ程の激痛。ビキッという音まで響いた。思わず襟を掴んでいた手を離してしまう。長門は呆然として先程軽く掴まれた自身の手首を見、そして箒を見た。
「……貴様のーーいや、貴様達のその傲慢は、いずれ貴様達自身を滅ぼす。ゆめゆめ忘れるな」
箒はそう言って乱れてしまった襟を整え始める。長門はまだ呆然としており、他の艦娘達もあり得ないといった表情で箒を見ていた。大本営所属の大和型戦艦に匹敵するパワーを持ち、横須賀でもトップクラスの実力を備えた長門。それを箒は赤子の手をひねるかのように軽々と退けてみせた。明らかに異常である。
「しれいかん、大丈夫?」
「大丈夫だ。だから泣くな、文月」
「……全く、わんぱくな娘が多くて困るよあたしゃ」
涙目で箒を気遣う文月に、箒も優しく応えてまた頭を撫でてあげる。その光景に定藤は思わずため息をつく。と、執務室のドアが三回ノックされた。
「神通です。工廠から練度測定器を借りてきました」
入ってきたのは先程まで工廠に出向いていた神通だった。手には何やら箱型の機械を持っている。
「来たかぇ神通。どれ、ちと文月の練度を測らせてもらうよ。『狂化』を知る為にも、様々な可能性を探らなくちゃいけないからね」
定藤は神通から箱型の機械を受け取ると、それを机の上に置いた。箱にはちょうど一人分の手が入るくらいの隙間があった。
「文月や、ここに手を入れてごらん」
「……怖い事、しない?」
「大丈夫だよ、あたしゃ文月の練度が知りたいだけさ」
文月は心配そうにしていたが、ふと箒を見ると箒も小さく頷いて文月にそれを奨めた。文月も小さく頷き、恐る恐る右手を箱の隙間に入れる。ピピッ、ピピッ……と音がする。
「よし、もう手を抜いて良いよ。さて……」
文月が機械から手を抜くと、定藤はお茶を啜りながら何か機械に打ち込み始めた。
「これは今文月の所属とかを打ち込んでるのさ。そうすればこの機械が、登録された艦娘を検索して練度等の情報を出してくれるーー!?」
と、機械の液晶に何かが表示された時、定藤は思わず飲んでいたお茶を噴き出してしまった。慌てて龍瀬が拭く物を取ってきて噴いてしまったお茶を拭く。
「げ、元帥?いかがなさいましたか?」
「篠ノ之少佐!あんた一体、この娘にどんな育成をしたんだい!?」
「え?」
唐突に定藤からそう聞かれ、箒は頭上に?マークを浮かべる。何の事かと齋藤達大将や艦娘達が機械の前に集まって機械の液晶を覗き込む。途端に齋藤達の表情も驚愕のそれになった。
「なん……だと……!?」
「じょ、冗談でしょ!?神通、貴女壊れてる機械工廠から借りてきた訳じゃないでしょうね!?」
「そ、それは有り得ません!借りてきたのは最近使い始めたばかりの新品同然の物です!」
「じゃあこれは一体どういう事ですか!?こんな事ケッコン(仮)していたとしてもあり得ません!」
何やら機械の前で騒いでいるが、箒と文月は何の事やらさっぱりで首を傾げるばかり。
「元帥、何をそんなに驚いているのですか?」
「篠ノ之少佐、お前さんもこれ見てご覧よ!」
定藤に急かされて箒と文月も液晶を覗き込む。そこに表示されていたのは確かに文月の練度を含めた情報だった。
宿毛湾泊地所属 睦月型駆逐艦七番艦 文月
練度 250
頭おかしい練度が表示されている事を除けば、どれも正常な文月の情報だった。
「に、250!?昨日の時点では練度99だったのに、何故倍以上に……!?」
「通常の艦娘の練度限界どころか、ケッコン艦の限界すら越えてるだなんてーーん?ちょっと待っておくれ。篠ノ之少佐、聞き間違いじゃなけりゃ今お前さん、練度99って……」
「はい、文月は昨日の時点で練度99でしたよ?」
「そんな馬鹿な!?あたしが以前確認した時はまだ練度30くらいだったじゃないか!?」
「一体誰が文月の育成を担当したのですか!?こんな馬鹿げた練度は今まで一度もありませんよ!?」
定藤と薙が机から体を乗り出して箒に迫る。箒はまだ実感が沸いていないのかキョトンとしていた。
「私ですよ?今回の単独演習の為に、文月ともう一人……朧という駆逐艦が当時最高練度で並んでたので、他を神通に任せて私が二人を重点的に育てていました。最終的に同じ練度99で並んだので、くじ引きで誰が演習に出るかを決めました」
箒の爆弾発言に、定藤達は呆然とするばかり。やがて我に返った定藤は、フラフラよろめきながらソファに座り込んだ。
「ははは……どうやらあたしゃ、とんでもない掘り出し物を提督として迎えちまったんだねぇ……」
最早頭を抱えるしかなく、そう言った定藤はそのまま黙り込んでしまった。齋藤と長門達艦娘はまだ測定器の液晶と文月を交互に見ており、中川はショックのあまり腰が抜けて床に座り込んでしまっている。瀬尾や龍瀬、それに武藤は呆然としたままで、薙に至っては口をパクパクさせており、言葉も出ないようだ。
「こんな事があり得て良いのか……!?時雨どころか長門にも勝るのか、この駆逐艦の練度は……!」
「時雨は練度89、私でもまだ練度165だぞ……!元は練度30ぽっちの駆逐艦、それをこの提督はたった数週間で私達の練度を越える程に育て上げたと言うのか……!」
ちなみに通常の艦娘の練度限界は99で、ケッコン(仮)した艦娘でも現状の限界は175である為、文月の練度は明らかに異常である。
「元帥、発言しても良いでしょうか?」
とここでさっきまで口をパクパクさせていた薙が挙手した。その表情はさっきと違い真剣なそれである。
「……何だい、薙や?」
「これは僕の予想なのですが……もしや文月の異常な練度は『狂化』の影響なのでは?」
「『狂化』の?」
「はい。『狂化』の特徴に艦娘の攻撃力と身体能力の大幅な上昇があると先程元帥は説明されました。もしそれが練度にも影響し、練度限界の枠に納まり切らなくなって限界を突き破ってしまった、としたら……」
薙の説明を聞き定藤達は考え込み始めた。確かに可能性としてはあり得なくはない。鳳翔の件も然り、文月の件も然り、駆逐艦や空母とは思えないパワーで相手を圧倒していた。
「鳳翔さんが『狂化』してしまった際の練度は94……もしかしてその時の鳳翔さんも、今の文月と同じくらいの練度に達していたのでしょうか」
「多分そうかもしれないね。そうでなければ、あの異常なパワーの説明がつかないよ」
「今まで出た『狂化』のパターンは二つ。一つは身も心も深海棲艦に成り果てるもの、一つは艦娘としての姿を維持出来ているもの」
「一体『狂化』とは何なのだ……?まさか艦娘達に与えられた新たな可能性とでも言うのか……?」
その後も定藤達の議論は、理解が追い付いていない箒と文月を置き去りにして続いた。
海軍の禁忌として今まで奥深くに封じられていた現象『狂化』。これの謎が解ける日は果たしてやって来るのかーーそれは誰にも分からない。