元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編) 作:神羅の霊廟
「本ッ当に申し訳ない!!」
開口一番、箒はそう言ってその場に土下座して謝罪した。畳に座っている艦娘達は困惑した表情で箒を見、事情を知る三人の艦娘のうち神通と五十鈴がなんとか土下座を止めさせようと躍起になっている。
「ちょっと提督ったら!謝るのは別に良いけど事情話さずに土下座は駄目よ!先に事情話してからにしなさい!」
「篠ノ之少佐、トップの貴女がそのような醜態を晒しては皆さんに迷惑になりますから…」
二人の諌めも聴かず土下座を続ける箒。
どうしてこんな事になっているのか…それは三十分前に遡る。
全員で朝食を終えて、箒は食器や残った料理の片付けをしていた。流しに山と積まれた食器を手際良く洗って片し、食べ残った料理は小皿等に小分けにして冷蔵庫へ。泊地の艦娘は現状二十人もいないが、それでも使用した皿はかなりの数になる。いくら超人的な動きの出来る箒でもこれを全て片付けるには多少時間が掛かるというもの。それでも無駄なく忙しなく動き、積まれた食器はみるみるうちに綺麗に洗われ片付けられていく。
「…よし、終わったな」
そうしてあっという間に食器は全て片付けられ、残り物も軒並み冷蔵庫へ。汗を拭い一息つく。
「提督ー、終わったー?」
提供口から五十鈴が声を掛けてくる。「あぁ」と一言返して流しを水で軽く濯ぎ手を拭き、厨房からのそりと出てくる。
「0850よ。頃合いだから行きましょ」
「そうか、もうそんなに時間が経っていたのか…分かった」
食堂を出て会議室へ向かう。五十鈴以外の艦娘の皆は既に会議室に集まっているのだろうか、建物は鳥の囀りと波の音くらいしか聴こえない。静かな廊下を歩く二人もまた会話はなく静かだった。
「…ねぇ」
先に静寂を破ったのは五十鈴。
「なんだ?」
「…何人ついて来ると思う?」
その質問に箒は少し考えてから答える。
「…正直分からん。今回の件は色々複雑だからな、事情を知って皆がどう判断するかも読めん。私としては皆ついて来て欲しいが…」
「そうよね…特に姉妹艦の三日月や仲の良い松風や雲龍さんあたりがどんな反応を見せるのか…ちょっと心配ね」
懸念事項を挙げながら廊下を歩いていると、バタバタと誰かが廊下を走る音が。
「提督、大変です!」
正面から朧が駆けて来た。顔はかなり焦っており、全身は所々傷が見え制服もボロけている。
「何かあったのか?」
「文月ちゃんが…!文月ちゃんが、急に深海棲艦の姿になって…!」
その報告を聞き二人は顔を見合わせた。懸念していた事が起きてしまったのかと二人は顔面蒼白に。
「場所は会議室か!案内しろ!」
「は、はい!こちらです!」
三人は急ぎ会議室へ向かう。その道中、廊下を走りながら箒は朧に尋ねる。
「状況はどうなってる?」
「今文月ちゃんは神通さんと隼鷹さん、それに龍田さんが抑えてます。他の皆は一旦会議室から避難しました」
「怪我人は?」
「朧や神通さん達以外はいません。隣に座ってた松風ちゃんが早くに気付いたお陰で被害はあまり出てません、朧の怪我はその時松風ちゃんを庇って出来たやつです」
そう言う朧の表情はかなり悔しそうだった。
「提督、一体文月ちゃんに何があったんですか!?教えて下さい!」
箒は顔を伏せる。
「…実はこの後、文月の事を皆に話す予定だったんだ。しかしまさかそれよりも早くこうなってしまうとは…」
「提督…事が済んだら、納得のいく説明を朧は所望します!」
箒は「分かった」と言い走り続ける。やがて会議室が目の前に見えてきた。会議室前は避難してきた艦娘達が集まって心配そうに様子を伺っている。外まで出てきて暴れた様子はないらしく、会議室の外までは被害は出ていないようだ。箒達が到着すると艦娘達が駆け寄ってきた。
「提督…!ふみちゃんが、ふみちゃんが…!」
そう言う松風は泣きそうな表情で縋ってきた。落ち着かせる為に箒は彼女を優しく抱き締めて頭を撫でる。
「話は聞いた。文月は私が何とかする、取り敢えずお前達はここから離れなさい」
そう促し艦娘達を会議室から遠ざけ、箒が中へ入ろうとすると、その肩を雲龍が掴んで静止させた。箒が顔を向けると、彼女の表情は悲哀に満ちていた。
「どうか…どうか、文月をお願いします」
そう言い頭を下げる雲龍。目が見えないので文月に何が起こったのかは分からなかっただろうが、何かまずい事になったというのは理解できたのだろう、箒の肩を掴む手に無意識ながら力が入っていた。
「…分かっている。お前も早くここを離れるんだ」
そう言い朧に雲龍を任せ、箒は会議室の扉の前に立つ。一度深呼吸し、心を落ち着かせる。この扉の先で何が起こったのかは予想出来た。だからこそ箒の心中は『自分がなんとかしなきゃ』という思いと『どうにかなるのか』という不安が入り交じる。
と、不意に背中を叩かれる。
「少し落ち着きなさいよ、当事者の貴女がそんなんじゃ駄目でしょ。大丈夫、五十鈴達がついてるんだから…ね?」
五十鈴に諭され、箒は決意を固める。もう一度深呼吸し、そして扉に手をかけ…勢い良く開け放った。そして目の前にあった光景はーー
「駄目、だよぉ…!しれーかんが怒っちゃう、から…待って…!お願い…!」
深海棲艦化した半身を必死に抑えつけつつそう涙目で懇願している文月と、すぐ対応出来るよう構えて様子見している神通達。抑えつけようとした際室内で暴れたのか一部の机と椅子が薙ぎ倒され破損している。半身は抑えを振り解こうと文月の意志を無視して暴れていた。
「文月!」
叫んで走り寄ると、不意に半身の暴れが止まった。素早く神通と龍田が動き半身側を抑えつけようとすると、それを察知してかまた半身が暴れ始めた。
「神通、龍田、一旦抑えるのを止めてくれ。私がやる」
「少佐、危険です!貴女はお下がり下さい!」
「怪我するわよ、離れて!」
二人の声も聴かず押し退けて文月の前にしゃがみ込む。するとまた半身は暴れるのを止めた。半身側を抑えつけて疲弊している文月の無事な方の腕を引っ張り抱き寄せる。その間何故か半身側は暴れもせずただ身を委ねていた。
「文月、良く頑張ったな。後は私に任せて少し休むと良い」
「しれー、かん…あのね、あの娘がね、しれーかんと話したいって…それで出てこようとして…」
「そうか…そういう事だったのか」
息も絶え絶えに話す文月の頭を撫でながらそう話し、次いで深海棲艦化した半身に目を向ける。黒く染まった腕に歪な形状の艤装の一部。まさに深海棲艦のそれだった。こちらに興味を持ったのか、半身は箒の顔をベタベタ触ってきた。敵対の意志が無いのが救いだろうか…
「…今日中に、お前と話す場を設ける。だから…私を信じてもう少しだけ待っていてくれないか?お前としても、宿主を危険に晒すのは本意ではないだろう?」
小さい子供を諭すように優しく小さな声で話し掛ける。するとそれを理解したのか半身はゆっくりと変化して元の文月の姿へ戻った。文月の言っていた『あの娘』が何を示しているかはまだはっきりとは分からないが、少なくとも文月の『中』にいる存在は話は通じるしコミュニケーションもちゃんと取れるようだ。
気が付くと文月は安心したのかスヤスヤ寝息を立てている。全身は傷付いておらず綺麗なままだ。一安心していると、その首筋に刃が突き付けられる。
「…どういう事か、説明してくれるわよね〜?」
愛用の薙刀を構え、伸びやかながらも殺気の籠もった声で説明を求める龍田。それを退かし箒は文月を抱っこして立ち上がる。
「元々この場で説明する予定だったんだ、この三日間に何が起きたのかを。そして文月に何があったのかを」
「説明する気ではいたのね~」
「あぁ…だが起こった事象に対しての私の認識が甘かった。予測出来た筈なんだ、こうなる事は…」
腕の中で寝息を立てる文月を優しく抱き締めながら箒は悔しそうに歯噛みする。
「とにかく少佐は文月ちゃんを医務室へ。皆さんへの説明は別の部屋でやりましょう、ここは使えません」
「DVDはどうする?会議室以外で見れる部屋があったか?」
「談話室のプレーヤーとスクリーンが使えるんじゃない?ずっと使ってなかったから分かんないけどさ」
「じゃあ私が確認してくるわぁ。使えそうだったら皆をそこへ集めれば良いのね」
「あぁ、それで良い。だが先にお前達も怪我の治療をしに医務室へ行け、切り傷だらけだぞ」
箒に指摘され三人はそれぞれの体に目を向ける。先程までは皆気に留めていなかったが、三人の体はあちこち切り傷だらけ。軽傷ではあるが見ててどうにも痛々しい。
「ありゃりゃ…かなり抵抗されてたからねぇ」
「被害がこれだけだったと考えれば安い方かと…とにかく医務室へ行きましょう」
皆で頷き、駆け足で医務室へ向かう(念の為に会議室は封鎖しておいて)。そして医務室でそれぞれの治療を行い、龍田は談話室へ、神通と隼鷹は他の皆の元へそれぞれ向かった。医務室に残った箒は文月をベッドに寝かせる。スヤスヤ寝息を立てる文月の頭を優しく撫で、箒はため息をつく。
「…もっと危機感を持つべきだったか。数百年の歳月の間に私も平和ボケが進んでいたようだ」
頬をポリポリ掻きながらそう呟く箒。
箒達が拠点とするヘルヘイムの森は、元を辿ればとある植物の侵食を受けて滅んだ異世界の中の一つである。牙也は箒と共に故郷を離れた後、拠点とした森と牙也自身を接続する事で森そのものを支配下に置きヘルヘイムの植物の侵食行動を抑制。これにより牙也達が気づかぬ間に他の世界がヘルヘイムの植物に侵食されないようにした。
更に各地に点在していたヘルヘイムの森をその規模を問わず二人の拠点であるヘルヘイムの森と融合させていった。これは支配者の存在しないヘルヘイムの森を極力減らす事を目的としており、ヘルヘイムの森とほぼ一体化した牙也は自らがそれらの森の支配者となる事で植物の侵食を食い止めてきた。
こうして数百年、牙也達は各地の森を支配下に置き続け、また融合した森にいたインベス達も従えた。その規模は牙也本人ですら把握し切れない程になりこそしたが、牙也は変わらず森の支配者として君臨し続け、箒はそんな彼を支える良妻としての立ち位置を確立。またエフィンムとエファジェの二体の協力を得て森全体を管理している。
そして現在。この艦娘達のいる世界に降り立つまでの約百数年は戦乱や新たなヘルヘイムの森の発見もなく平穏な日々が続いており、箒達は鍛錬こそ怠りなく続けてこそいたがそれを試す機会に恵まれずやきもきする日々でもあった。それはそれで良いのだが、長らく実戦から離れているというのも箒としてはよろしく無いようでかなりストレスを溜めていた。
そこにやって来たまたとない実戦の機会。意気揚々と出陣したは良いが…それに浮かれた結果がこれである。
「久々の実戦に浮かれて、気を抜いてしまっていたな…私も上に立つ者となったのだ、ここで一層気を引き締めねばいかんな」
両頬をパチンと叩き、箒は気合を入れ直す。そんな彼女の背後から音もなく近付く影が一つ。
「…エファジェ、何か用件か?」
「はい。王妃様の命に従い、各鎮守府に見張りの眼を設置して参りました」
「そうか、ご苦労。バレてはないか?」
「はい、問題なく。そもそも神王様がお作りになられたこの最高の監視システム…易易と見つかるとは思えませんが」
「それが油断というものだ。私達はまだこの世界の事を詳しく知らん。故にどんな強敵が隠れているかすら分からない。油断は死を意味する…決して気を抜くな。何も情報が無い内は尚更な」
「ははっ」
エファジェは恭しくお辞儀。箒も頷くと立ち上がり出入口の方へ。
「さて…エファジェ、ここは任せる。文月に何かあれば早急に連絡を入れろ」
「はっ、行ってらっしゃいませ」
文月の事はエファジェに任せ、箒は足早に医務室を出て談話室へ向かう。談話室まではそこまで遠くなく、僅か三十秒くらい歩いただけで到着した。談話室の前には神通が立っており、箒を見つけるやすぐに駆け寄ってきた。
「お待ちしていました。談話室のプレーヤー類その他は問題なく使えましたので、皆さんを集めて待機させています」
「ありがとう。文月もだいぶ落ち着いたからそのまま寝かせてある。何かあればすぐ連絡が来るようにもした」
「はい、宜しいかと。では…お入り下さい」
神通に連れられて談話室へ入る。談話室の床は半分がフローリング、半分が畳敷きという設計。フローリング側にテレビとプレーヤーが置かれ、畳側に艦娘達が座っている。皆一様に箒の方に目を向けては心配そうな表情になる。そんな彼女達を横目に箒はテレビの前に立つ。そして
「本ッ当に申し訳ない!!」
そして冒頭に戻る。
「落ち着いた?」
「あぁ…すまん」
躊躇いなく土下座した箒を五十鈴が無理やり起こして椅子に座らせ両頬をバチンと叩き強引に落ち着かせたのが、ちょうど五分前。箒の頬は紅く腫れ上がり、神通は思わず頭を抱え、他の艦娘達は唖然。
「仮にもここのトップの貴女がそんな情けない光景を簡単に見せたら駄目でしょ?取り敢えず皆に分かるように説明しなさい」
「説明、と言ってもなぁ…実際の映像を観た方が早いと思うがな。あれを言葉で説明するのは難しい」
「ならそうしましょ。神通、準備」
五十鈴に急かされ神通は素早くDVDの準備を始める。その間箒が簡単に説明をした。
「今から流す映像は、三日前の単独演習の映像だ。今回文月に何が起こったのか…その全てがこのDVDに収められている」
「五十鈴は昨日先に観させてもらったわ。はっきり言っちゃうと…観てて気分の良いものではなかったわね」
五十鈴の発言に俄にザワつく艦娘達。
「そんなにヤバい映像なの?」
「ヤバいな。それこそ隼鷹…いや隼鷹含めお前達艦娘の根幹に関わる映像だ」
「そんなに!?うげぇ〜、観たいような観たくないような…」
またザワつく艦娘達。
「正直なところ、私個人としてはこれはお前達には観て欲しくなかったが…事が起きてしまった以上観せない訳には、な」
「文月姉さんの身体の異常、ですか」
三日月が怖ず怖ずと聴いてくる。姉である文月のあの光景を間近で見たせいか顔色は悪く、無意識に制服のスカートを握り締めている。
「そうだ。そしてこの映像は、お前達の今後を左右する映像でもある」
「…どういう意味かしらぁ?」
「龍田、それから他の皆も。取り敢えずまずはこの映像を最後まで観てくれ。説明はそれが終わってからやる…神通、いけるか?」
「はい、いつでも」
「よし、では始めるぞ」
箒がスクリーンを降ろしてから部屋の照明を消し、神通がDVDを再生する。これから彼女達が観る映像が彼女達にどんな未来を齎すのか…それは誰にも分からない。
「ハァ…ハァ…」
同時刻、何処かの洞窟。干潮時に海路からしか入れない天然の洞窟の奥に、一人ーーいや、一体の姿があった。
「逃ゲ切レタデショウカ…ハァ…」
洞窟の壁に凭れているその者は、透き通る程に真っ白い髪を左側頭部で片括りにしその上に鬼の意匠を施したかのような帽子を被る。服はノースリーブタイプのセーラー服だが激しい戦闘の為かそれ以外の理由なのかボロボロで所々大穴が空き、そこから髪と同じく真っ白い肌が見えている。
そして戦闘で失った為か、それとも元から無かったのか、本来あるべき両足は無く、人間のものとは違う黒い血が全身の怪我した箇所から滲み出ている。
「電探ニ感ハ無シ…近クニ敵ハイマセンネ…味方モイマセンケド…」
自虐を重ねながら独り言を零す彼女『駆逐棲姫』。装備していた電探はボロボロではあったがその機能はまだ死んでいない。周辺の安全は一時的に確保出来こそしたが、いつ見つかるかも分からない。しかも電探以外の装備は逃走の際放棄してしまったので戦闘も出来ない。手負いの状態の今見つかりでもすれば、自分はあっという間に撃沈させられるだろう。
「姉サン達…元気ソウデ、本当ニ良カッタデス…ハイ。デモ…結局、気ヅイテ貰エマセンデシタ」
この洞窟に逃げ込む以前、彼女は沖ノ鳥島周辺を配下の深海棲艦達と共にあてもなく彷徨いていた。別に侵攻の為にいた訳では無いし、偵察だとかそういう事の為にいた訳でもない。ただ単純に散歩していただけだ。人間にも時々あるだろう、あてもなく家の周りをブラブラ散歩したくなる事がーーそれと同義である。
ならばそれを艦娘達が見逃すのか、と問われればーー答えは『否』であった。
つい最近、そんな彼女達を艦娘の一団が襲った。編成は駆逐と軽巡メインだったが恐ろしく練度が高く、前線にいた配下達を蹴散らして迫ってきた。そしてその艦隊には、駆逐棲姫が見知った者の姿もあった。
迫り来る敵艦隊に彼女も配下達と共に応戦したが、敵は強く配下達は一人、また一人と倒れていった。自身も傷付き、配下の数も減り、いよいよ全滅か…という時、最後まで生き残っていた配下の内の一体『戦艦タ級』が徐ろに言った。
「姫様…貴女ハオ逃ゲ下サイ。貴女ハマダ…倒レテハイケナイオ人ナノデス」
そう言うとタ級は駆逐棲姫の艤装を無理矢理引っ剥がすと、それと散らばった仲間の残骸を使って即席のデコイを作成した。
「タ級…!?貴女ハ何ヲ…!」
「姫様…貴女ニ仕エル事ガ出来テ、私ハ幸セデシタ。ココデオ別レデス…失礼!」
そう言うとタ級は駆逐棲姫を抱え上げ、遥か遠くへ放り投げた。
「タ級ーーーーーー!!」
駆逐棲姫が最後に見たのは、デコイや残った配下達と共に艦娘達へ特攻する光景だったーー。
海面に叩き付けられる形で何処かの海域に不時着した駆逐棲姫はその後もあてもなく海底を逃げ続け、ようやく何処とも知れぬ洞窟に辿り着いたのである。両足無き下半身を引き摺りながら上陸し、やっと落ち着ける場所を見つけたが、最早動く体力も燃料もなく、壁に凭れ掛かるので精一杯だった。
「タ級…ヲ級…ヘ級…皆居ナクナッチャイマシタ、ハイ。私モココマデ、カナァ…」
段々と視界がぼやけていく。全身に力も入らない。耳も聴こえなくなってきた。いよいよ最期が近い…
「セメテ…最期ダケデモ、姉サン達ニ…気ヅイテ、欲シカッタデス…ハイ」
その独り言を最後に、駆逐棲姫はグッタリとして動かなくなったーー