元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編)   作:神羅の霊廟

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 お久しぶりです。かなり間が空いてしまいました、申し訳ない


話し合いは穏便に

 

 「えー…あれがこうで、これがあーで…」

 「これは確か…こうでしたね。そしてこれが…」

 

 執務机に向かい積み上げられた書類と格闘を続ける箒と神通。時刻はとっくに2100を過ぎていた。

 

 あの後無事に帰還した箒達は補給と入渠、そして簡単な食事を済ませ、神通以外の全員はそれぞれの部屋へ返した。大破まで追い込まれた海風と朧は目こそ覚ましていないが傷は完治し、今は入渠ドック近くの休憩室のベッドに寝かされている。医務室は文月が寝かされているので念の為の措置だ。遠征から帰った山風が大破して戻ってきた姉を心配し「今日は休憩室に泊まる」と意気地になっていたが、箒が優しく説得したお陰で取り敢えず事なきを得たのがほんの二時間前の事。

 

 「…よし。この書類で最後だ」

 

 最後の書類を対応済の書類の山に重ね体を伸ばすと、ポキポキと関節音が鳴る。長時間座りっぱなしだったので相当凝り固まってしまったようだ。

 

 「お疲れ様です。こちらもちょうど終わりました、お茶でもお飲みになりますか?」

 「頼む」

 

 パタパタと流し場へ駆けていく神通を見つつ、箒は背凭れに体を預けて天井を見上げる。

 

 (今日も今日とて色々あったな…文月は深海棲艦の力が出てこようとしてたし、それを抑えたと思ったら本家深海棲艦の襲撃…しかも奴等の目的が文月だと分かって…あぁもう、頭がこんがらがる…)

 

 会議の時もそうだったが、泊地着任から半年も経たぬ間に色々あり過ぎた。その分の疲労も溜まり、箒は珍しく全身の疲れをひしひしと感じていた。

 

 (…牙也もいつもこうだったのだろうか。私の見てない所で、こんな苦労を続けていたのだろうか)

 

 愛する旦那の顔を脳裏に浮かべながら独りごちる。

 

 ヘルヘイムの森で生活している間、箒は主に家事全般を、牙也は主にヘルヘイムの森の管理をそれぞれ行ってきた。卓越した運動スキルと家事スキルのお陰で家事は割とすぐに終わるが、森の管理はそうはいかない。常に森の様相や森に住むインベス達の個体数の把握等、やるべき事は家事全般の比にならぬくらい多い。

 

 また牙也は森の特性とも言える『他世界との接続』を出来る限り防止する為、森そのものと同化し常に森全体にレーダーを張るが如く監視の目を巡らせる事で有事の際素早く対応出来るよう努めてきた。お陰でここ最近は平和に過ごす事が出来ていたのだ。

 

 (今回の一件に片を付けた暁には、牙也の仕事に私も一枚噛ませてくれるよう頼んでみるか…妻として、家族として、仲間としてな)

 

 そんな事を考えていると、目の前に熱々のお茶が注がれた湯呑みがコトリと置かれた。

 

 「どうぞ。淹れたてなのでお気を付けて」

 

 お盆を持った神通に促され、箒は熱々のお茶を啜る。茶葉の香りがフワリと鼻腔を擽り、心を落ち着かせる。それに倣い神通も自分用に注いだお茶を啜る。

 

 「ふぅ…今日もまた忙しい一日だったな」

 「はい。先日あんな事があったばかりなのに、どうしてこんな立て続けに…」

 

 悲痛な表情で神通が言う。彼女の湯呑みを持つ手は小刻みに震えている。お茶をもう一啜りし、箒は切り出した。

 

 「…神通。その理由なんだが、どうやら今から三ヶ月前…私が着任するより以前にあるらしい」

 「三ヶ月前に?それはどういう…」

 

 箒は一旦湯呑みを置き、経緯を語り始めた。

 

 「あの戦闘の後、私は辛うじて生き残っていた深海棲艦を一体捕らえて、その場で尋問したんだ。お陰で色々情報を得られた…奴等から得た情報によると、どうやら深海棲艦側は文月の深海棲艦化ーー狂化に、私達よりも前には気付いていたようだ。それもタイミングにして、三ヶ月前に」

 「本当ですか!?」

 「あぁ。その頃から奴等は定期的に軍勢をここへ差し向けて文月奪取の機会を伺っていたらしい」

 「三ヶ月前…そう言えば小耳に挟んだ事があります。宿毛湾泊地周辺における深海棲艦との大規模な戦闘が、三ヶ月前から爆発的に増えているとか…」

 

 神通の話によれば、亜道が宿毛湾泊地に着任した頃に突如として宿毛湾泊地に高頻度で深海棲艦が大軍で襲来するようになり、亜道は深海棲艦との内通を一時期疑われていたらしい。これは結局確たる証拠もなかった事、また亜道が宿毛湾泊地に着任したばかりだった為に嫌疑はすぐ晴れたとの事だが、それ以後も深海棲艦の襲来は収まらず、大本営も対応に苦慮していた矢先の箒の着任だった。

 

 「前任の亜道が宿毛湾泊地に着任したのは確かに三ヶ月前です。以前いた鎮守府の時も、そして宿毛湾泊地着任後も亜道は無謀な出撃を繰り返し、その度に周辺の鎮守府や泊地に助けられてきたとか…それ故にその短絡的な行動と戦果を出せない自身への焦りが深海棲艦を呼び寄せたのではないか、と当時は噂されていました」

 「なるほど。戦果や評価の為に深海棲艦を呼び寄せたのでは…と疑われた訳か。無実だったとは言え、疑われても仕方ない運営だったのだな」

 「はい、ですのでその頃から元帥閣下は亜道の後任を探し求めていました。そして…」

 「無名の私に白羽の矢が立った、と」

 

 神通が頷く。

 

 「性格が鬼畜なのかあの人は!もしくはボケが進んでるのか!素人に任せるような事ではないだろうこの問題は!」

 

 机をバンバン両手で叩いてキレ散らかす箒に流石の神通も何も言えず。と、電話のコール音が響く。

 

 「もしもし」

 『夜分遅く済まないね、あたしだよ』

 

 箒が受話器を取ると、受話器からは先程二人で噂していた定藤の声が。一瞬イラッとした表情になった箒だったが、すぐにそれを引っ込めあくまで冷静に切り出す。

 

 「これはこれは性格鬼畜な元帥閣下。こんな夜分遅くにお電話とは何か理由あっての事ですか?」

 『…だいぶキレ散らかしてないかい?口調にそれとなく怒気が混じってるよ?』

 「ハードモードから始まる泊地に素人を着任させたご立派な御方に対して私がキレないとでも?」

 『…ごめんよぉ』

 

 若干涙声の定藤に箒はため息一つ。

 

 「取り敢えずご要件を聴かせて下さい」

 『あぁ、以前話したお前さん達の引っ越し先の事なんだがね。今日その周辺海域が片付いたと斎藤から報告が上がってね、安全が確保され次第鎮守府の建築に移るとの事だったよ。出来る限り急いで造ってもらう予定だから、早くて一ヶ月ちょいといったところかね。だから異動は最速で二ヶ月後になると思っといてね』

 「二ヶ月後ですか、分かりました」

 『それと、お前さんの異動に合わせて一部療養組と出向組の復帰、それと新鎮守府への艦娘増員が決定したよ』

 「新しく艦娘が着任するのですか?」

 『そうさ、と言ってもお前さんもよく知る娘達だけどね』

 

 定藤は電話口で「ほっほ」と笑う。箒は何となく増員される艦娘が誰なのか予想がついたが、ここでは口に出さない事にした。

 

 「ご要件は以上ですか?」

 『あぁ、それだけだよ。そっちは何かあるかい?』

 「一つ…私が文月と共に育成した朧の事なのですが」

 『…やっぱり出てきたかい?深海棲艦の側面が。文月と一緒に育てられたと聴いたからまさかとは思ってたけどねぇ』

 「いえ、まだ確定とは…ただ、彼女の『もう一つの人格』が顔を出しました」

 『…詳細は?』

 「明日一番に文月の経過の内容と合わせて詳細をそちらに送ります。念の為彼女の様子を注視していますが、文月の時のような狂化の兆候はありません。見立てでは狂化とはまた別の何かか…それか、元々『中にいた』かですね」

 『…そうかい。問題が増えそうだねぇ』

 「申し訳ありません」

 『仕方ないよ。あたしもお前さんも、他の誰もこうなる事なんて予測出来なかった筈さ。ま、こうなりゃ死なば諸共。あたしはお前さんやお前さん所の艦娘達の行く末を最期まで見守るだけさ』

 

 定藤はそう言ってカラカラ笑う。ただその口調がどうにも空元気を匂わせる事を箒は気付いていたが、やはり口には出さない。

 

 「取り敢えず文月と同じく経過観察を行い、逐一報告します」

 『そうしとくれ。それじゃまた要件があれば連絡するよ』

 

 そう言って電話は切られた。ため息を吐きながら受話器を置き箒はすっかり冷めたお茶を一啜り。

 

 「…本当に、お伝えするべきだったのでしょうか」

 

 ふと神通が零すと、箒は肩を竦めて

 

 「問題を後回しにして、後でギャーギャー言われるのは御免被りたいからな。それに嘘や隠し事はな、隠したところでいずれ何処かでボロが出てバレるのがオチと相場は決まっている」

 「しかしそれでは提督の立場が…」

 「神通」

 

 神通の言葉を遮り、箒は鋭い目線を向ける。

 

 「いいか?物事には常に犠牲が付き纏う…お前達艦娘を建造する際や艦娘用の武器開発の際に遠征で持ち帰ってきた資材を消費するようにな。今回の場合、立場を犠牲にして文月達の安全を確保しただけの事だ」

 「提督…」

 「犠牲から逃げられないのならば、私がすべきはその犠牲をなるべく最小限に収める事。そうして行き着いたのが今回の結果だ。そこに後悔など無い」

 「…本音は?」

 「面倒事を片付けて育成に専念したい」

 「そうだろうと思いました」

 

 呆れ顔の神通は無視して箒は茶をもう一啜り。

 

 「さて、今日はもう店終いだ。神通も部屋に戻って良いぞ」

 「はい。提督は文月ちゃんの所へ?」

 「あぁ。文月の容態も心配だが…何よりも、文月の『中』にいる存在と話をしたい」

 「…まともにお話が出来るのでしょうか」

 「私が割って入った時には暴れるのを止めたし、後で話をしようという私の提案に対して大人しく引き下がった事も踏まえると、話が出来ない訳ではないだろう。寧ろ他の娘がいると暴れそうだからな。心配なら部屋の外から監視してくれても良いぞ?」

 「出来ればそうしたいのですが…ご遠慮させて頂きます。私がいない方が話しやすいでしょうから」

 「妥当な判断か。ならば吉報を待っていてくれ」

 「はい。ではお休みなさい、提督」

 

 神通は箒に挨拶して執務室を足早に出ていった。箒も湯呑みを片付けて机を軽く掃除し、電気を消して執務室を出る。そして文月が眠る医務室へ歩を進めた。

 

 

 

 

 「あ、箒さん。お疲れ様」

 

 医務室の前には既に松風がスタンバイしており、その隣には何故か雲龍の姿もあった。

 

 「雲龍も来たのか。さしずめ松風が誘ったとみえるが」

 「あはは…ごめん、つい口が滑っちゃって」

 「…私も、あの娘が心配で、つい」

 「はぁ…来てしまったものは仕方ない。先に松風にも言ったが、基本は私が会話する。二人は私の後ろで大人しくしておいてほしい」

 「…分かりました」

 「よし。では入るぞ」

 

 意を決し箒は医務室のドアをノックした。

 

 「文月、起きてるか?」

 

 声を掛けてみるが反応はない。まだ眠っているのだろうか。箒は文月を起こさないよう静かにドアを開け、中の様子を隙間から見る。松風と雲龍もつられて隙間から部屋を覗くと、文月は窓辺に置かれた椅子に座り空を見上げていた。雲一つない夜の空には大きな満月が顔を出している。

 

 「文月?」

 

 音を立てないよう隙間からゆっくりと入室して声を掛けると、文月はビクッと体を震わせてゆっくりと振り向いた。振り向いた時の表情は少し怯えているような印象だったが、声を掛けていたのが箒だと分かると途端に笑顔になり、

 

 「おはよぉ」

 

 と挨拶してきた。椅子から立ち上がり満面の笑みでトテトテと近付いてくる。後から入ってきた松風はその様子を見て安堵の表情を浮かべ、雲龍は声質から大丈夫そうだと察したのかこちらも安堵の表情を浮かべる。が、

 

 「…動くなよ二人とも。私の後ろにいろ」

 

 箒は違った。二人が文月に近付こうとするのを手で制し、額には冷や汗を浮かべて文月を睨む。

 

 「ほ、箒さん?どうして…」

 「良いから下がれ。私より前に出るなよ、その瞬間にーー」

 

 

 

 シャッ

 

 

 

 箒が言い終わるより早く文月の恐ろしく早い手刀が松風を襲うも、それ以上の早さの手刀で箒がそれを制した。互いの手刀が松風の首筋辺りで交差する。

 

 「…ひぇ」

 

 搾り出すように出た松風の呻き声が夜の医務室に響く。

 

 「…貴女、だぁれ?」

 

 手刀に力を籠めたまま文月が尋ねる。未だその手刀には殺意が籠っており、それを制す箒の手刀にも力が入る。嫌な空気を察してか雲龍が手探りで松風の服を掴み引き寄せて全身で守るように抱き締めた。盲目とは言え危険な状況だという事を瞬時に理解したあたり、雲龍も盲目になる前は相当の実力者だった事が伺える。

 

 「…貴女は、分かる。あたしと話したいって、言ってた人。でも」

 

 箒を見ながら文月は言い、続けて松風達を見ながら続ける。

 

 「貴女は、知らない娘。後ろの貴女も、知らない。だぁれ?」

 

 そう話す文月は真顔で、しかも目が笑ってない。視線だけで誰かを殺してしまいそうなドス黒い瞳が三人を射抜く。そんな文月に、箒が進み出て答えた。

 

 「お前が借りてる体の持ち主の友達だ。お前と話をしたいと言って聞かなくてな、今回連れてきた」

 「…友、達?」

 「そう、友達。傷付けないでくれよ、文月が泣く」

 「…あたし、嫌われる?フミヅキに?」

 「それ以上手を出せば確かに嫌われるだろうな。だから手を下ろしてくれ」

 

 小さな子供を諭すように説得したお陰か、文月は素直に手刀を下ろした。箒は「ありがとう」と礼を言ってから松風の方に目を向ける。幸い文月の手刀が当たる前に箒が止めたので傷は無い。だが先程の手刀が余程怖かったのか松風は隠れてしまった。雲龍もまた文月のただならぬ様子に警戒心を強めており、引き続き松風を守るように抱き締め文月がいるであろう方向を睨んでいる。

 

 「…箒さん。もしかして、今のふみちゃんは」

 「間違いなく、今朝暴れた深海棲艦だな。恐らくまだ文月本人が目を覚ましてないから、一時的に体を借りているのだろう」

 

 箒の私見に文月ーーの体を借りた深海棲艦が頷く。

 

 「…フミヅキ、まだ起きないの。あたしが勝手な事して困らせたから…あたしが傷付けちゃったから…」

 

 その深海棲艦は泣きそうな顔で下を向いている。箒は困ったような笑みを浮かべつつ、松風を雲龍に任せて深海棲艦にゆっくりと歩み寄った。そして正面にしゃがみ込み肩にそっと手を置く。深海棲艦はビクッと肩を震わせ恐る恐る顔を上げる。目線の先の箒は慈しみの表情をしていた。

 

 「大丈夫、文月は必ず目を覚ます。そしたらちゃんと謝ろうな、勝手な事してごめんなさい、って」

 「…フミヅキ、許してくれる?」

 「悪い事したとちゃんと理解して、その上で心から謝れば大丈夫。文月なら許してくれるさ、きっとな」

 「…分かった」

 「よし、良い娘だ。それともう一人…謝らないといけない娘がいるな?」

 

 そう言って箒は松風に目線を向けると、松風は雲龍の肩あたりからそっと顔を出してこちらを見ていた。まだ恐怖が勝っているのか少し震えている。深海棲艦は松風を怖がらせないようゆっくりと松風に歩み寄る。そして小さく頭を下げた。

 

 「…手を出してごめんなさい。痛く、なかった?」

 「う、うん…大丈夫。箒さんが防いでくれたから」

 

 松風の返答に深海棲艦はホッとした表情になる。謝られた松風は多少警戒は解けたようで緊張した表情が少しだけ緩んだが、雲龍はまだ警戒しているのか松風を抱き締める腕の力を緩めていない。そんな彼女の様子を感じ取ってか深海棲艦はそれ以上無闇に近付こうとせず、一定の距離を保って話す。

 

 「えっと、その…」

 

 が、何を話せば良いのか分からないようで、言葉に詰まっている。そんな様子を目が見えないながらも感じ取った雲龍はため息をつき、松風を箒に任せてから言った。

 

 「…松風に手を出そうとした事は、ちゃんと謝ったから不問にするわ。でも…まだ私は、貴女を信じる事は出来ない。さっきの事もそうだけど、何より貴女は深海棲艦ーーつまり私達の敵。深海棲艦から海を、国を、人を守る為に生まれてきた私達にとって、貴女と私達は相容れない者同士なの、分かるわね?」

 

 厳しい口調で話す雲龍に深海棲艦は縮こまり頷くだけ。やはり手を出した事への罪悪感が強いようだ。雲龍は続ける。

 

 「だから…貴女には二つ、ここで約束してもらうわ。提督を含めたこの鎮守府の皆に手を出さない事…そして、もし仮に今後文月の身に何かあれば、貴女が文月を守る事。それを今ここで約束して頂戴。分かった?」

 

 対して深海棲艦が「…分かった」と小さく頷くと雲龍は今度は箒がいるであろう方向に目を向ける。

 

 「…提督。この娘が信頼出来るか否か…私は、この娘のこれからの行動で判断するつもりでいます。だから約束して下さい…私に、この娘を信頼させる事を」

 

 光無かれど真剣な目をして言う雲龍に、箒はただ一言「勿論」とだけ返す。

 

 「ありがとうございます。それでは今日はこの辺りで…松風、部屋に帰りましょう。今日は私が一緒にいるわ」

 「うん、ありがとう雲龍さん。それじゃ箒さん、お休みなさい」

 「お休み、しっかり休むんだぞ」

 

 松風と雲龍は揃って医務室を出ていった。二人を見送った箒はふと深海棲艦に目を向ける。深海棲艦と目が合うと、深海棲艦は何故かニッコリと笑いかけてきたので、箒はため息一つ。

 

 「…狸だな、お前は。私から見れば三文芝居にもならんが」

 「あ、バレた?」

 「演技にしても口調がどこかわざとらしい。もう少し精進することだな」

 

 先程とはうって変わり、深海棲艦は流暢ながら飄々とした口調になり悪戯な笑みを浮かべて箒を見上げてくる。

 

 「あはは、やるねーあんたも。幼い娘を演じるなら口調も幼くすればワンチャンあるかなー、なんて考えてたんだけどね。誤魔化せたと思ったんだけどな〜、甘かったかぁ」

 「…それがデフォルトか」

 「まーね。文月も知らないよ、アタシの本性はさ。ま、知らなくても良いか」

 「知らせる知らせないはお前の好きにすれば良い。さて…」

 

 箒はベッドの近くに置いてあったパイプ椅子に座ると鋭い目つきで深海棲艦を睨む。

 

 「…話してもらおうか。お前の全てを」

 

 

 

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