元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編)   作:神羅の霊廟

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 第二話、牙也sideです。




異文化交流は楽し

 「艦隊が帰投したわ!」

 

 アイオワ達が母港に帰投した時、時刻は既に夜9時を回っていた。

 

 「Accidentですっかり遅くなっちゃったわ」

 「そうだね……取り敢えずあたしは二人をドックに運んでくる」

 「OK、報告はこちらでしておくわ」

 「俺はどうすれば良い?」

 「Me達と一緒に来て。Admiralに会って、状況の説明をしてほしいの」

 「分かった、案内頼む」

 

 牙也はアイオワに連れられて執務室へと歩いていく。その後ろ姿を追いかけながら、救援艦隊を率いていたサウスダコタは怪しみの目で見ていた。

 

 「サウスダコタ、やっぱり気になるの?」

 「そりゃ気になるさ。いかにも怪しさ満点だぜ?」

 「まぁ確かに……艤装もなしに海面を動けるなんてあり得ないわよ。しかも自分の事を堂々とVariantだなんて……どうかしてるわ」

 「だな。さて、アイツはあたし達の味方か敵か……見定めようか」

 

 サウスダコタもアイオワの後を追いかけていく。その後をコロラド、サラトガ、ガンビア・ベイが追う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ここよ、ちょっと待ってね」

 

 執務室に到着し、アイオワがドアをノックしようとすると、それよりも早くドアが開いた。

 

 「皆帰ってきたんだね!大丈夫かい?」

 

 執務室から出てきたのは、真っ白な軍服に身を包み、黄土色のボサボサ髪が特徴の男性だった。

 

 「ちょっとAdmiral!急に出てこないでよ、びっくりしたじゃない!」

 「Sorry、コロラド。アイオワ達がレ級と交戦中と報告を受けて、いてもたってもいられなくてね」

 「心配が過ぎるんだよ、提督はさ。ほら、皆無事に帰ってきたんだからさ、喜びなよ」

 「そっか、良かった……!皆に何かあったらどうしようかと……あれ、そちらの人は?」

 

 ここでその男性は牙也の存在に気づいてアイオワ達に聞いた。

 

 「Admiral、この人はMe達を助けてくれた人よ、恩人ね」

 「おぉ、それはそれは……ありがとう、僕の大事な部下達を助けてくれて……」

 「礼を言われる程の事じゃないさ。ところでAdmiralって言われてたけど、ここのトップ?」

 「Yes。僕はこの『フロリダ鎮守府』の提督のマーク・フレイアだよ、よろしく。君は?」

 「篠ノ之牙也だ、よろしく。ってフロリダって事は……ここアメリカ?」

 「そう、ここはアメリカのフロリダ州に置かれた鎮守府さ。と言っても、ニューヨークやサンフランシスコの鎮守府よりは小さいけどね」

 

 マークは少年のような無邪気な笑みを浮かべてそう言う。

 

 「そうか、アメリカか……」

 「どうかしたのかい?」

 「いや、今人を探しててな。あいつなら何処を目指すかと思ってな」

 「誰か仲間がいたの?」

 「仲間っつーか……嫁だよ、俺の。一緒に旅してたんだが、トラブルではぐれちまってな」

 

 そう言って牙也は左手薬指の指輪を見せる。

 

 「Oh、結婚してたの?」

 「かなり前にな。あいつなら一人でも心配ないとは思うが、早めに合流しないとなぁ……」

 「心配事でもあるのか?」

 「そんなんじゃない。ただ俺が早く会いたいってだけだよ」

 「ふふ、随分と彼女にLoveなのね。ご馳走さま」

 「自慢の嫁だからな。さて、急いで探しに行かないと……」

 

 そう言って牙也が行こうとすると、それをイントレピッドが引き止めた。

 

 「Heyキバヤ、もう夜の9時よ。流石に夜間に捜索は危険だわ。それにレ級とも戦闘したんだし……今日は一旦ここに泊まって、明日改めて捜索したら?」

 「そうですね、それが良いです。貴方もあちこち探し回ってお疲れでしょう?」

 「うーん、けどなぁ……」

 

 牙也はそう言ってサウスダコタとコロラドの方を見る。

 

 「お前さん達はどうなんだ?」

 「どう、って?」

 「あからさまに俺を怪しんでたからな。お前さん達の返答によっては断る事も考えてる」

 「いや別にそこまでしなくても。まぁ怪しんでたのは事実だけどさぁ……」

 「Me達は別に構わないわよ。アイオワ達の恩人なんだし、無下に扱うのも失礼でしょ」

 「彼女達もこう言ってるし、是非とも泊まって行きなよ」

 「……まぁ良いか。それなら一日だけ泊まらせてもらうよ」

 「Thank you。ベイ、客間の準備をお願いできるかな?必要ならサムとかヒューストンとかにヘルプを頼みなさい」

 「イ、Yes……じ、じゃあすぐに……」

 

 ガンビア・ベイは急いで執務室を出ていく。何やら牙也を怖がっているようにも見えた。

 

 「うーん……やっぱ怖がられてるのかねぇ、俺」

 「Don't worry。あの子は元々怖がりなのよ、貴方が初めて会う人だから、萎縮してるんじゃないかしら」

 「多分そうだろうね。ガンビア・ベイの怖がりは早く直して欲しい事ではあるけど」

 「あの子の怖がりは筋金入りよ、なかなか直るものじゃないわよ」

 「そこが可愛いところでもあるけどね。はいAdmiral、報告書」

 

 アイオワはそう言ってマークに報告書を手渡した。受け取ったマークは素早く書類に目を通す。

 

 「OK、だいたい把握したよ。あのレ級は、今後も僕達の前に立ち塞がるかもね」

 「キバヤが乱入してくれなかったら、Me達も危なかったわ」

 「そうだね。キバヤ、改めてお礼を言うよ、Thank you very much」

 「良いって、礼なんか……たまたま通りすがっただけだし」

 「お礼と言ってはなんだけど、食堂に夕飯を用意してあるんだ、食べていってよ。勿論アイオワ達も一緒にね」

 「Oh、Yes!ハンバーガーはある!?」

 「ピザやポテトもあるよ」

 「Good!早く行きましょ!」

 

 アイオワはさっさと執務室を出ていってしまった。

 

 「もう、アイオワったら」

 「いつも通りで良いじゃない」

 「だな。さて、あたし達も食堂に行こうぜ。早くしないと全部アイオワが食べちまうよ」

 「ハハハ、彼女ならあり得るねぇ。さ、食堂に案内するよ、ついて来て」

 (……自由だなぁ。流石アメリカ、というべきか)

 

 牙也はマーク達と共に食堂へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 「Hey、遅いわよ!」

 

 牙也達が食堂に着いた時、アイオワは既に食堂の椅子に座って到着を今か今かと待っている状態だった。アイオワの周りには、アトランタとホーネット、ガンビア・ベイ、それに駆逐艦と思われる少女が三人と重巡洋艦と思われる女の子が一人いた。彼女達の目の前には、ハンバーガーやらフライドポテトやら沢山の料理が山盛りになって置かれている。

 

 「ごめんごめん。フレッチャーとジョンストンはもう大丈夫なのかい?」

 「あ、はい。ご心配おかけしました」

 「事後報告になるけど、高速修復剤使わせてもらったよ」

 「了解。後で報告書よろしくね」

 「ごめんね、Admiral。いきなり攻撃されたから、対応出来なくて簡単にやられちゃったわ」

 「仕方ないよ、レ級は鬼級・姫級の深海棲艦と同じくらいの強さだからね。次に活かしていこう」

 「そうですね……あら?そちらの方は?」

 

 フレッチャーは牙也を示してそう聞いた。

 

 「君達が苦戦してたところを助けてくれた人さ。二人とも、ちゃんとお礼を言いなよ」

 「そうでしたか。私はFletcher級駆逐艦の『Fletcher』です、この度はありがとうございました」

 「妹の『Johnston』よ。あたしからもお礼を言うわ、ありがとう」

 「どういたしまして。俺は篠ノ之牙也だ、よろしく頼む」

 「それと紹介してなかったけど、戦艦の『South Dakota』と『Colorado』、空母の『Saratoga』と『Hornet』、軽巡洋艦の『Atlanta』。あとアイオワの隣にいるのが重巡洋艦の『Houston』、それと駆逐艦の『Samuel・B・Roberts』、それに護衛空母の『Gambier・Bay』だよ」

 

 マークに紹介され、それぞれの艦娘は手を振ったり一礼したりして牙也に挨拶する。挨拶の仕方に、それぞれの艦娘の個性が見えた。

 

 「本当色々いるんだな、艦娘って」

 「艦種だけじゃなくて姉妹の数も多いからね。一人一人個性があって良いでしょう?」

 「確かにな。そんな彼女達を自在に指揮できるあんたもなかなかのもんだな」

 「素直に嬉しいね、そう言ってもらえるのは」

 「Hey、Admiral!話はそれくらいにして早く食べましょ!I'm very hungry!」

 「もう、アイオワったら!せっかく良い話だったのに……」

 「はいはい怒らない怒らない。それじゃ楽しく食事と行こうか」

 

 こうして遅い夕食が始まった。

 

 

 

 

 

 

 「AHAHAHAHA!ほらほら提督、もっと飲めよぉ!」

 「Me達のお酒が飲めないの!?」

 「分かった分かった、ちゃんと飲むからそんな怒らないで……うっぷ」

 「zzz……ヒック」

 「ベーイ……zzz」

 「むにゃ……」

 「もう飲めない……ウップ」

 

 始まって30分程で酒盛りに変わったが。マークは戦艦の二人にビールをガンガン勧められて沈没しかけており、一緒になって酒盛りを始めた娘達も早々に酔いつぶれて眠っていた。そして食堂の床はビール瓶や缶、ウイスキーの空瓶等が散乱している。なお駆逐艦達は酒盛りが過激になる前に、さっさと自室に引っ込んだ。

 

 「あーあ、食堂が大惨事だよ……」

 「まぁ今日くらいは許してあげましょ?どうせ明日は皆揃ってゆっくり休めるから……ね?」

 「このまま寝かせるので大丈夫よね?念のためタオルケット持ってきたけど」

 「Good。酔いつぶれたらそのまま寝かせてあげましょ、片付けは明日に回せば良いわ」

 「賛成、これ今から片付けるのはめんどいよ……あれ、キバヤは?」

 

 三人が食堂内を見回すと、いつの間にか牙也の姿がなくなっていた。酒盛りを嫌ってさっさと引っ込んだのだろうか。

 

 「あら、いつの間にかいないわ……何処に行ったのかしら……?」

 「Oh!もしかしてあれじゃない?」

 

 何かに気づいたイントレピッドが港の方を指差す。二人が指差した方を見ると、桟橋に誰かが腰かけていた。

 

 

 

 

 

 

 「ふぃ~……やっぱ酒はゆっくり自分のペースで飲むに限るよ」

 

 桟橋には、イントレピッドの指摘通り牙也がいた。ウイスキーと炭酸水と氷、それにおつまみをいくらか持ち出して酒盛りの現場から避難してきたのだ。自分で即席のハイボールを作り、持ち出したポテトやベーコン等を肴に、牙也はのんびりと酒を嗜む。

 

 「Hey、キバヤ!」

 

 と、後ろから誰かに呼ばれて振り向くと、イントレピッドが追加の酒とおつまみを持ってやって来た。

 

 「私も一緒に良いかしら?」

 「構わんよ。他の面子は?」

 「アイオワとサウスダコタはAdmiralと酒盛り中、他は酒盛りに参加して酔いつぶれたか部屋に戻ったかのどちらかよ」

 「やっぱ避難して正解だったか……イントレピッドはこっちに来て大丈夫なのか?」

 「No problemよ。どうせ明日はお休みだから」

 

 そう言うとイントレピッドは牙也の隣に座り込み、持ってきたビールを開けて美味しそうに飲んだ。「ぷはっ」と一息つくと、ビールと一緒に持ってきたポテトをつまむ。

 

 「ところでキバヤはビール飲まないの?」

 「苦味がちょっとな。飲むのはもっぱらハイボールか焼酎だな」

 「ふふ……大人なのか子供なのか分からないわね」

 「ほっとけ」

 

 牙也はそう言ってポテトをつまみ、左手に持っていたハイボールのグラスを一気にあおる。左手薬指に付けた結婚指輪が、月の光に反射してキラリと輝く。

 

 「……どんな人なの?奥さん」

 「ん?」

 「その指輪……結婚してるんだったわね。どんな人なのかなって」

 「んー……普段はキッチリしてるんだけど、デレるとめっちゃ可愛いな。何て言うか、からかい甲斐のある嫁だな。抱き締めたり撫でたりするとめっちゃ可愛い反応するんだぜ?」

 「ふーん。スタイルとかも良いの?」

 「剣道やってるからな、スタイルは良いぞ。背は俺より少し低いくらいかな」

 「そう……ご自慢のお嫁さんなのね」

 「おう。いずれ紹介するぜ、自慢の嫁をな」

 「ふふ、楽しみにしてるわ」

 

 嫁自慢を終えて再び一人酒を始める牙也を、イントレピッドは恋しそうな目で見ていた。

 

 「……ねぇ、ハニー」

 「!?」ブハッ

 

 突然の「ハニー」発言に、牙也は飲んでいたハイボールを盛大に吹き出した。

 

 「ゴホッゴホッ……!ハ、ハニー……!?」

 「Oh、Sorry。恋人でもないのについ」クスクス

 「ケホッ……ご、誤解招くから止めてくれ……てかなんで急にハニー?」

 「ん~……」

 

 イントレピッドは少し考えると、唐突に牙也の後ろに回って優しく牙也を抱き締めた。

 

 「……ちょっと羨ましく感じたのよ。貴方の奥さんがね。嫉妬、なのかしら」

 「嫉妬ねぇ……随分まぁ可愛らしい嫉妬だこと」

 「それと……寂しさを感じたのよね、貴方の背中から」

 「寂しさ、か」

 「Yes。何て言うのかしら、何かに飢えてるみたいな……そんな感じよ」

 「飢え……」

 

 思い当たる事があるのか、牙也は顎に手を当てて考え始めた。そんな表情の牙也を、イントレピッドは彼を抱き締めたまま見つめる。

 

 「寂しさから来る飢え、か……なるほど」

 「?何か思い当たる事がーーいえ、聞くのは無粋かしら?」

 「あぁ、思い当たる事はある。沢山ね……さて、話と酒盛りは終わりだ。酔いも覚めちまったし、時間も遅いから戻るか。お先に」

 「えぇ。Good Night、キバヤ」

 

 イントレピッドは事情を察し、パッと牙也から離れる。そして牙也は残った酒とおつまみをお盆にまとめると、イントレピッドに向けて軽く手を振りその場を後にした。それを見送り、イントレピッドもまた自分が持ってきた酒とおつまみをお盆にまとめ始める。その顔は少し赤らんでいた。

 

 (……少し大胆だったかしら。けどあれだけ押し付けても、キバヤは無反応だったわね。やっぱり奥さん一筋なのかしら)

 

 イントレピッドは牙也を抱き締めた際、彼の反応を観察していた。結果特に反応もなく空振りであったが。自身のスタイルに自信があっただけに、イントレピッドは少しショックであった。

 

 (でも分かったわ、彼は間違いなく飢えてる……『家族愛』に)

 

 客間へ戻る牙也の後ろ姿を見つめながら、イントレピッドは悲しそうな表情を見せた。

 

 

 




 いかがでしたか?

 質問・意見は常時受け付けてますので、ジャンジャン送って下さいね。

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