元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編)   作:神羅の霊廟

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 第三話、牙也sideです。






対レ級、二戦目

 次の日ーー

 

 

 

 「一晩だけだったが、部屋を貸してくれてありがとう」

 「良いよ良いよ、君は大事なお客さんなんだし……うー、いたた」

 

 鎮守府の堤防に、牙也と彼を見送りに来たフロリダ鎮守府の面々の姿があった。マークは昨日散々飲まされたせいか、酷い頭痛のようだ。アイオワとサウスダコタが申し訳なさそうに顔を背けている。

 

 「大丈夫ですか、提督?これを機に、少しは自重して下さいね」

 「ほとんど飲まされたんだけどね……まぁ気を付けるよ」

 「本当よ!アイオワ達のせいで昨日まったく彼と話せなかったじゃない!」

 「貴女は一緒になって飲んだくれてたからでしょ……自業自得よ」

 「ホーネットもでしょ……」

 「二人も大概にしとけよ。大事な時に提督が動けませんなんてシャレにならないからな」

 「すまん……以後気を付けるよ」

 「Sorry……」

 

 すっかりショボくれた二人は申し訳なさそうにマークに謝る。

 

 「まぁ今回は不問にするけど、その後の結果によってはキツイ罰を与える事になってたかもね。これからは気をつけてよ」

 「おぅ……」

 「Yes……」

 「さ、そんなショボくれてないで牙也君を笑顔で見送ってあげよう。ショボくれ顔だと、牙也君もいい気分じゃないだろ?」

 「……そう、ね。キバヤ、Me達を助けてくれて本当にThank youね。ちょっと違うかもしれないけど、これからの航海に幸運がある事を祈ってるわ」

 「疑ってすまなかったな。あんたは間違いなくあたし達の恩人だ。何かあったらあたし達に連絡をくれよ、すぐに飛んでってやるからな!」

 「おー、その時はよろしくな」

 

 その後も牙也は他の艦娘達からお礼の言葉を沢山もらった。更にフレッチャーとジョンストンからはクッキーを追加でもらった。

 

 「はい、私からはこれ!」

 

 そしてイントレピッドから渡されたのは、手作りのお守りだった。

 

 「インターネットで調べて、私なりに作ってみたわ。キバヤの無事を祈って作ったから、大切にしてね?」

 「ありがたいな……こういう贈り物、久々に貰った気がするよ、ありがとう」

 

 牙也はお礼を言ってイントレピッドの頭を優しく撫でた。イントレピッドは少し恥ずかしそうな笑みを見せる。

 

 「You're welcome。気をつけて行ってね?」

 「奥さん、見つかると良いですね。サラ、応援してます」

 「サムもー!次会ったら紹介してね!」

 「あぁ、その時が来たらな。じゃ、そろそろ行くよ」

 「またおいで。いつでも僕達は君を歓迎するよ」

 「あぁ、元気で」

 

 牙也はマーク達に手を振りながら大きく跳躍し、港から少し離れた海面に着地した。そしてそのまま沖合いへ向けて走り出す。マーク達はその後ろ姿へ向けて、その姿が見えなくなるまで手を振っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 そしてフロリダ鎮守府から十数キロ離れた沖合いにて。

 

 「さて、これから何処を探すかな……あ、このクッキー旨い」

 

 フレッチャーとジョンストンから貰ったクッキーをつまみながら、牙也はマークから貰った世界地図を広げる。地図には牙也が泊まったフロリダ鎮守府の位置と、現在の深海棲艦の活動領域が簡潔に記されていた。それによると、現在大西洋周辺の深海棲艦はヨーロッパ、特にフランスやドイツあたりに多く出没していると書かれていた。またアフリカ沿岸にも多くの深海棲艦ーー特に鬼級・姫級と呼ばれる個体ーーがたむろし、船の行く手を塞いでいるらしい。

 

 「戦闘を出来る限り避けて進むならヨーロッパ方面か……ヨーロッパ上陸して、ロシア経由して日本に行くルートが一番良いんだろうが……」

 

 これからの行き先をぶつぶつ考えていると、

 

 (……敵の気配。それも覚えのある奴の)ピクッ

 

 牙也は地図やクッキー等持っていた物を全てクラックに放り込み、薙刀『紫炎』を構える。いつでも迎撃できる態勢で敵の出現を待っていると、

 

 「見ィツケタァ……!」

 

 牙也の足元の海面が大きく揺れたかと思うと、海中から化け物とも言える巨大な口を持った艤装が現れて牙也に足元から噛みついてきた。それを牙也は跳躍してかわし、少し離れた場所に着地する。と、着地した海面が大きく揺れた。そして何かが海中から飛び出したかと思うと、牙也に向けて牙を剥いた。

 

 (しまった、フェイクか!)

 

 反応が少し遅れた牙也は、飛び出した何かに左腕を噛み千切られた。牙也の左腕を噛み千切ったそれは、左腕を咥えたまま牙也から少し離れて戦いの姿勢をとる。

 

 「ぐううううっ!?くそっ!」

 

 牙也は自己治癒能力を最大限引き出して噛み千切られた左腕部分を止血すると、止血した所から蔦を伸ばして腕の形にした。仮の左腕だ。

 

 「てめぇ……囮を使った奇襲とは、随分頭が回るな、レ級!」

 

 噛み千切った左腕を咥えたのは、前回牙也が圧倒したレ級だった。

 

 「引ッ掛カッテクレテドウモ!ソレジャコノ左腕ハアリガタクイタダクヨ!」

 「あっ、馬鹿!それを食ったらーー」

 

 牙也の忠告を無視し、レ級は咥えた左腕を尻尾の艤装に食べさせた。ゴクリと音をたてて尻尾は左腕を飲み込む。と、

 

 「ギッ!?ガガ……!カ、体ガ……グガッ!?」

 

 レ級の全身を激しい紫電と数多の蔦が包み込み、苦しみ出した。

 

 「やりやがった……!拒絶反応を起こしてやがる!」

 

 その様子に牙也は小さく舌打ちをする。そもそも牙也は黄金の果実を魂とし、それを人形に埋め込む事で作られた人造オーバーロードである。故に体の隅々までが黄金の果実の影響を持つ。一度彼の体の一部を取り込もうものなら、黄金の果実が拒絶反応を起こし取り込んだ者の体を瞬く間に侵食、最期を迎えるのみ。

 

 「おい、レ級!早く飲み込んだ左腕を吐き出せ!」

 

 苦しむレ級に牙也はそう呼び掛けるが、

 

 「ヤダネ……!アイツカラ聞イタンダ、オ前ノ体ノ一部ヲ手二入レラレレバ、アタシハ最強ノ力ヲ手二入レラレルッテ……!」

 「はぁ!?誰だそんな事言った奴は!?」

 「誰ガ教エルモンカ……!アタシハ最強二、ググ、ナルンダ……ソシテオ前ヲ……グガッ!?」

 

 レ級の体に更に強く紫電が走る。しかしレ級はそれでも飲み込んだ左腕を吐き出そうとせず、その苦しみに耐えている。

 

 「アタシハ負ケナイ……!コノ苦シミ二勝ッテ、オ前ヲ……オ前ヲォォォォォ!!」

 

 その叫び声と共に、レ級から放たれた紫電が海全体に広がり、強烈な光と爆発のような衝撃波が全てを包み込んだーー。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「きゃっ!?」

 

 その衝撃波は、遠くフロリダ鎮守府の港まで届いた。この日非番のイントレピッドは牙也と別れた後も残って海を見つめていたが、襲ってきた衝撃波によろめき転んでしまった。ヨロヨロと起き上がり、イントレピッドは衝撃波がやって来た方向を見る。

 

 「キバヤ……大丈夫かしら?」

 

 ポツリと呟き、彼女は牙也の無事を心から祈った。

 

 

 

 

 

 

 

 「ケホッケホッ……な、なんとか耐えた……」

 

 衝撃波を至近距離で受けた牙也だったが、父・準也の武器である大剣を盾代わりにしてなんとか衝撃波を防ぐ事ができた。衝撃波は治まったもののまだ油断は出来ないと、牙也は大剣を構えて様子を伺う。やがて光が晴れてくると、

 

 「な……!?」

 

 そこにはあまりにも姿が変わり過ぎたレ級がいた。着込んでいたフードは漆黒に純白入り交じる物に変わり、尻尾の艤装は二本に増えている。その瞳は鮮やかな緑となり、紫のオーラのようなものが噴き出す。蔦が巻き付いた左腕に至っては、紛れもなく牙也の左腕そのものであった。

 

 「嘘だろ……まさかあれを克服したばかりか、自分の物にしやがったのか……!?」

 

 予想していなかった出来事に、牙也はたじろぐ。早く左腕を取り返さなければマズイ。そう直感した牙也は大剣を構え直す。

 

 「アハハハハ!凄イ凄イ!力ガミナギル!魂ガ震エル!アタシハ紛レモナク強クナッタ!コレナラ!」

 

 レ級は喜びの声を上げ、二本に増えた尻尾の艤装を両方とも牙也に向けた。そして主砲を放ち、魚雷を飛ばし、それらを追い掛けるように牙也に向かって全力接近してきた。

 

 「アタシハ、オ前二勝ツ!!」

 「やってみろ……コピーキャットごときが、オリジナルに勝てると思うなよ!」

 

 牙也は大剣を振るい、自身へ向けて飛んできた砲弾や魚雷を一振りで全て叩き斬った。そして突っ込んできたレ級をその大剣で迎撃する。大剣とレ級の左拳がぶつかり合い、衝撃波が起こる。そして互いに弾かれ、またぶつかり合う。

 

 「キャハハ、良イネ良イネ!ジャアコレナラドウ!?」

 

 そう言うとレ級は二本の尻尾型艤装の口内から漆黒の艦載機を次々と飛ばし、主砲・魚雷と合わせて多段攻撃を仕掛けてきた。しかし牙也は意にも介さず、それらを叩き斬ったりアクロバティックに回避して自滅を誘う。艦載機は『セイヴァーアロー』で爆弾や魚雷を撃ち抜く事で空中爆破させる。

 

 「アハハハハ!楽シイネ!」

 「こっちは全く楽しくねぇ!」

 「キャハハ!アァ……ヤッパリ強者トノ戦イコソアタシノ生キ甲斐ダ!昂ルヨ、心ガ!アタシハオ前ミタイナ強者ヲ待ッテタヨ!」

 「ちっ……まだ奴に果実の力が馴染んでないのが幸いってとこか。しゃあない、軽く本気を出すか……『サモンウェポン・プラム』」

 

 牙也がそう唱えると、頭上に小型クラックが開き、そこから二対の鉄扇『プラム鉄扇』が飛び出してきた。それをキャッチし、牙也は片方を広げもう片方は閉じた状態でレ級に向ける。

 

 「お前には勿体ない力だ……何としてもそれは返してもらう!」

 

 牙也は広げた方の鉄扇をブーメランのように投げつけ、それを追い掛けるようにレ級に突撃した。投げつけた鉄扇は仕込み刃によって次々と艦載機や砲弾を斬り裂いていく。牙也は閉じた状態の鉄扇を剣のように振るいレ級に直接攻撃を仕掛ける。一方レ級はその攻撃を左腕一本でいなし、尻尾の噛みつき攻撃で応戦してきた。牙也もまたそれを障壁で防ぐ。

 

 「アハハ、モットモット頂戴!」

 

 力に酔いしれ興奮状態のレ級は、更に艦載機を発艦させて次々と牙也に攻撃してきた。蒼天を覆う程の数の艦載機が牙也に魚雷や爆弾を落としていく。更に尻尾の艤装からの砲撃は着弾すると海を割り、そのパンチ一発で海に穴を穿つ。今のレ級は、最早『戦艦レ級』という一個体と呼ぶにはあまりにもかけ離れた存在と化していた。

 

 「無茶苦茶だな……黄金の果実を取り込んで、元々オーバースペックだったのが余計酷くなったってとこか。だが!」

 

 レ級の接近を障壁でいなしつつ、牙也は『火縄冥々DJ銃』を呼び出しスクラッチしてマシンガンモードにすると、上空の艦載機へ次々と弾をばらまくように攻撃した。艦載機はDJ銃とプラム鉄扇で次々と撃ち落とされていくが、その数が減る気配は一向にない。むしろレ級は止まる事なく尻尾から艦載機を飛ばし続け、更に牙也に接近戦を仕掛けている。

 

 「無尽蔵に呼べるのかよ……厄介なモン生んじまったなぁ」

 

 油断した自身を責めつつ、牙也は更に大量の蔦を槍の如く扱い、艦載機を落としていく。これにより、若干だが艦載機の減りが早くなった。また接近してくるレ級は念導力で押し返す事で、艦載機対処の為の時間稼ぎをする。

 

 「キャハハ!ターノシー!モットモット遊ボー!」

 

 と、レ級は急に艦載機の発艦を止め、近接戦闘に切り替えた。ボクシングのジャブの如く鋭い連続パンチで牙也を攻撃する。障壁で防ぐ牙也だったが、やがて段々と障壁によるガードが押し込まれてきた。

 

 「くっ……!」

 「ウリャッ!」

 

 対空戦闘を行いながら近接戦闘の対処をしている牙也だが、同時対処が出来なくなるのも時間の問題だった。そして、

 

 「ダアッ!」

 

 バキンッ!!

 

 「障壁が……!」

 「モラッタ!!」

 「ごふっ!?」

 

 遂に障壁が破られ、レ級の左拳が牙也の右脇腹にめり込んだ。脇腹を陥没させる程の一撃に、牙也はよろめき持っていた武器を取り落とし、口から血を吐く。

 

 「アハハ……!アタシノ勝チダ!!」

 「……それはどうかな?」

 「!?」

 

 レ級が気づいた時、いつの間にか空へ向けて牙也の仮の左腕から蔦が伸び、上空を飛んでいたプラム鉄扇を掴んでいた。そして右手は脇腹にめり込んだレ級の左腕をガッチリと掴んでいる。

 

 「その腕……ご返却願うぜ!」

 

 そして牙也は伸ばした蔦を思い切り引っ張った。引っ張られた蔦は仕込み刃を出したままのプラム鉄扇を急降下させ、勢いそのままにその左腕を切断した。

 

 「ギャアアアアアア!?」

 

 左腕を斬り落とされ、レ級は痛みに叫び声を上げた。斬り落とされた箇所からはボタボタと真っ黒い血が流れ落ちる。左腕を切り取られた影響か、レ級の姿も元に戻っていった。一方牙也はその左腕を自身にくっ付け、治癒能力を働かせた。そして軽く腕や指を動かして完全にくっついた事を確認する。

 

 「アハハ……ヤルネェ、敢エテ一撃受ケテ、腕ヲ取リ返スナンテサ……!」

 「悪用されるのは御免被るぜ……さて、今度はこっちの反撃ーー」

 

 そこまで言ったところで、牙也は横からの攻撃に意識を刈り取られた。

 

 

 

 

 

 「!?」

 

 突然起こった事に、レ級は目を見開いた。目の前にいた男は、突如横から攻撃を受けて海面を滑るように吹き飛び、そのまま気絶した。レ級は男を見、そして男がいた場所を見ると、そこには自分とはまた違う個体の『戦艦レ級』がいた。

 

 「アハハ、楽シソウナ事シテルネェ!アタシモ混ゼテヨ!」

 

 乱入してきた別個体のレ級は楽しそうにそう言う。そして倒れている男に近寄り首根っこを掴んで引き起こす。

 

 「ナンダ、コレクライデ気絶ナンテ、モロイネェ。コンナノデ楽シンデタノ、アンタ?」

 

 別個体のレ級はそう聞く。が次の瞬間、そのレ級の頭部が一瞬で吹き飛んだ。頭部を失った体が、スローモーションのように海面に倒れる。

 

 「……アタシノ獲物、勝手二取ルンジャナイヨ、馬鹿」

 

 先程まで男と戦っていたレ級が殺気全開の表情でそこにいた。同個体が視認出来ない程のスピードで接近したレ級の拳が、もう一方のレ級の頭部だけを吹き飛ばしたのだ。残った体を蹴飛ばし、レ級は男に近寄り、頬をプニプニつつく。

 

 「……コイツハアタシノ物ダ。誰ニモ渡スモンカ」

 

 レ級は男を背負うと、何処かへ走り去っていった。

 

 

 

 

 

 

 




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