元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編) 作:神羅の霊廟
未だに目覚めない艦娘達を蔦の船に乗せて引っ張りながら、牙也は一路ヨーロッパへ向かう。インベス達の精神世界から読み取った光景に、牙也はこの世界の違和感を見いだした。
「ヨーロッパ……そこにあの惨劇を起こした元凶があると見て良いな」
移動の最中も、牙也はあの光景について色々考えていた。何故艦娘の艤装にヘルヘイムの力が混じっていたのか。何故傷つけられた訳でもないのにヘルヘイムの侵食伝播が起こったのか。そしてーー何故この世界にヘルヘイムの力が存在するのか。疑問は尽きなかった。
「誰の仕業か知らねぇが……ヘルヘイムの力を悪用しようとする輩がいるってんなら、絶対にとっちめてやる。どんな手を使ってでも……」
並々ならぬ決意や覚悟と共に、海上をズンズン進んでいく牙也。その瞳は、本人も気づかぬ程に漆黒に満ちていた。
そうして海上を進む事約3時間。牙也の目の前にようやく陸地が見えてきた。
「お、到着したな。さて、まずはこいつらを何処においとくか……どっかちょうど良い場所はないものかーーん?」
エンジン音に気づいた牙也が空を見上げると、頭上を偵察機と思われる飛行機が飛んでいた。その飛行機は牙也と蔦の船に気づいたのか、頭上をグルグル旋回しだす。
「やべ、気づかれたか!?仕方ねぇ!」
牙也は海面を叩いて水壁を起こすと、その隙に海中に潜った。水壁が無くなった時、そこには艦娘達を乗せた蔦の船しか残っていなかった。
その後蔦の船は偵察機から知らせを受けた艦娘達によって回収されたが、蔦の船は陸上まで曳航し艦娘達を全員下ろした途端に崩れ去り、跡形も無くなってしまった。
「へっくしょい!」
一方牙也は近くの海岸に上陸して、びしょ濡れになった羽織と袴を『炎刀鬼灯丸』の熱波で乾かしていた。代えの服に着替え、クラックから地図を取り出して現在地を確認する。
「えーと、さっきまでいた小島が確かこの辺りで……そこからこのルートで来たからーーここフランスかな、多分。取り敢えず無事にヨーロッパに上陸出来た訳だが……」
なんとか上陸出来た牙也だったが、この後の事まではまだ考えていなかった。何せ情報が少な過ぎるのだ。迂闊に動いて見つかりでもすれば、元凶に返り討ちにされかねない。それゆえに慎重に行動しなければならなかった。
「取り敢えずさっき見つけた建物を目指してみるか。予想が正しければ、あそこは艦娘達のいる鎮守府だからな。何かしら情報が拾えるだろ」
乾かした羽織や袴、それにその他の荷物をクラックに放り込むと、牙也は通常より大きめで桜が描かれたロックシードを取り出した。それを解錠して放り投げると、ロックシードは巨大化・変形してバイクとなった。それに乗り込み、鎮守府とおぼしき建物を探し始めるのであった。
「Admiral!ビスマルク姉さまの容態は!?」
一方こちらは、蔦の船を回収した鎮守府。その執務室に、一人の艦娘が駆け込んできた。
「こらプリンツオイゲン、お客様が来てらっしゃるんだから静かに入室しなさい」
「あ……す、すみません」
プリンツ・オイゲンと呼ばれた艦娘は、執務室の客用ソファに座ったスーツの男性客に気づき謝罪した。そして一端部屋を出て改めて入室し直した。
「えっと、それでAdmiral。ビスマルク姉さまの容態はどうなんですか?」
「うむ、私も彼女と同じ事が聞きたかったのだ。たまたま別の用事で近くにいた私に、君から情報が入った時は酷く驚いたよ、ハイリア君」
プリンツと客人は目の前にいる提督ーー『アルト・ハイリア』に本題を提示した。すると彼女は渋い表情を見せながら説明を始めた。
「ビスマルク達『欧州連合艦隊』に、今のところ目立った傷はなく、容態も今は安定しています。艤装は現在工廠にて検査中になります」
「ふむ。では何故彼女達はあのような状態で戻ってきたのかね?」
「それはまだ分かりません。抜錨して一時間ほど経過した時に突如通信が途絶し、以降連絡が取れなくなりました。その為急ぎ捜索艦隊を手配しておりました」
「なるほど。そしてその間残っていた空母達が偵察機で周辺を捜索していた時に、海面を漂う蔦の船と、それに乗せられたビスマルク達を発見した、と」
「はい。何者かがその蔦の船を引っ張っていたのが目撃されていますが、偵察機に気づいたのか逃走しました。ひとまず船は回収しましたが……」
「彼女達を降ろした後消滅した、と。船を引っ張っていた人物も逃走し、現在手掛かりはなし、か」
「申し訳ありません」
「構わん。取り敢えず彼女達が目を覚まし次第、詳しい話を聞いてみたまえ。それと、船を引っ張っていたその人物についても急ぎ捜索するのだ、良いね?」
「はっ!」
客人は「うむ」と言うと、今度は横に立っていたプリンツに目を向けた。
「君もできる限り、彼女に協力してあげて欲しい。今回の出来事は多くの謎が残っている、それらを一刻も早く解明するためにもな」
「は、はい!」
「頼んだよ。では私はそろそろ戻る、後の事は任せたよ」
「はっ。プリンツ、門までお見送りしなさい」
「いや、結構。大事な作戦の最中なんだ、私一人の見送りに時間を割く必要もないだろう」
「……そう言われるのでしたら」
「ではまた会おう」
客人はそう言って執務室を出ていった。それを見送ると、ハイリアは倒れ込むように椅子に座り込んだ。
「あ~……あの人の相手は何故か疲れるわぁ」
「あの、Admiral。さっきの人は誰なんですか?Admiralが頭を下げるなんて珍しい……」
「私の新しい上司よ。名前は『アイナス・デュノア』、階級は中将よ」
「そ、そうだったんですか!?てっきり何処かの業者さんかと……」
「まぁ提督には見えないわよね。でも有能よ、あの人は」
ハイリアはそこまで言うと、提出された開発報告書に目を通した。
「レ級をはじめとしたeliteやflagship、更に鬼級・姫級の多いこの欧州……その戦線を維持するどころか、押し返す程の技量があの人にはある。実際に敵の侵攻を何度も食い止めてるからね」
「ほぇぇ……凄い方なんですね」
「人は見かけによらないものよ。さて、私はビスマルク達の様子を見に行くわ、プリンツも来る?」
「はい、是非!」
ハイリアはプリンツを伴い医務室へ向かった。
その道中、
「おぉ、これはハイリア大佐。彼女達の所へ向かうのですか?」
「お疲れ様です」
反対側から歩いてきたのは、同じような軍服を着た壮年の男性と、ボブ風の赤毛の髪が特徴の艦娘だった。
「お疲れ様、レイス中佐。貴方も彼女達の所へ行ってきたの?」
「はい、先程。まだ目覚めてはいませんでしたがね」
「そう、まだか。アークロイヤルもありがとうね、非番だったのに」
「いえ、これくらいなんという事はありません。最もあれを見つけたのは私ではないですがね」
「謙遜しないで、皆が協力してくれたお陰で素早く発見出来たんだから」
「光栄です」
「ありがとうございました、助かりました!」
お互いにお礼を言い合い、握手を交わす四人。
「それで、今後はどうしましょうか?」
「本隊がああなった以上、作戦は練り直しね。今動ける娘達で再編成を行い、後日再度出撃するわよ!」
「ビスマルク姉さま達が動けない分を、私達で補わないといけないですからね!」
「微力ながら、私達も尽力させていただきます」
「彼女達の為にも、この作戦を必ず成功させなければなりませんからね」
「果たしてそう上手くいくかな?」
『!?』
突如響いた声に四人が辺りを見回すと、四人の周囲にクラックが開いて、その中から機械でできた兵士が溢れ出てきた。その数実に数十体。
「な、何ですかこいつらは!?」
「誰!?何が目的なの!?」
「悪いが、お前達の作戦を成功させる訳にはいかないのだ。ここで消えてもらう……『カッシーン』達よ、こやつらを始末しろ!」
その声に導かれるように、カッシーンと呼ばれた機械兵士は四人に襲い掛かった。その時、何処からかエンジン音が響いたかと思うと、四人の頭上を飛び越えてバイクが現れ、周囲のカッシーン達を次々と轢いていった。
何者かが乗ったバイクはカッシーンを次々と蹴散らしていった。超スピードで突進して突き飛ばしたり、急なUターンで吹き飛ばしたり。派手に暴れてカッシーンを翻弄していく。やがて粗方蹴散らすと、バイクは呆然としている四人の前で停止し、運転手はバイクから降りてきた。
「おいおい、主役の登場を彩るにゃやり過ぎじゃねぇか?」
バイクから降りた牙也はそう言うと、ヘルメットを脱いでバイクのハンドルに掛け、ケラケラと笑う。そこへカッシーン達が三又槍で襲い掛かるが、牙也は襲ってくるカッシーンを次々殴り飛ばし蹴り飛ばしていった。
「しっかしこいつら何なんだ?カッシーンとか言ってたみたいだが。ま、これから調べりゃ良いか」
カッシーンを蹴散らした牙也は、愛用の薙刀『紫炎』を抜くと、迫ってきたカッシーンを斬り裂いていった。三又槍の槍術を紫炎でいなし、カウンターキックも入れていく。途中何体かがハイリア達に襲い掛かろうとしたが、牙也が『スネークサリガマ』で捕縛して妨害する。
「めんどいから終わるか」
紫炎にエネルギーを溜め、牙也はそれを斬撃にして複数飛ばした。斬撃はカッシーンを次々と斬り裂き、カッシーンはスパークを上げて次々爆散した。
「ほほぅ、あの数のカッシーンを倒すとは。なかなかやるではないか」
「けっ。隠れてないで出てきたらどうだ、えぇ?」
牙也が周囲に向かって声を張り上げると、牙也の目の前の空間が突如歪み始めた。そしてその歪みの中から、ガシャリ、ガシャリと何かが歩いてくる音が聞こえてきた。やがてその音の主は歪みから出てくると、目の前の牙也を見据えた。白銀のアーマーに身を包むその主は、圧倒的な王者の風格を見せつけていた。
「私は、『シャドームーン』。世紀王である」
「シャドームーン?それに世紀王だと?」
「左様。私は皆既日食の起きし日に生まれ、世紀王となる運命を、そして創生王となる資格を得た……そう教えられている」
「教えられている?」
「……この世界に降り立った時、私は全ての記憶を失っていた。あてもなくさ迷っていた私に、誰とも分からぬ者が私の記憶についてとうとうと語り更にこう付け加えた……」
『今の私には君の力が必要だ。もし力を貸してくれると言うのならば、君の記憶を完璧に取り戻す手助けをしてやろう』
「私はその者の提案を受け、先程貴様が倒したカッシーンを託された……」
「なるほど。で、お前にカッシーンを託した奴の事は分からない、と」
「そうだ。そしてその者はこうも言った」
『もし貴様の前に立ち塞がる者あれば、それは私の敵。故に倒せ。お前の全力を以て』
「私の前に立ち塞がる貴様は、敵。よってーー」
そこまで言って、シャドームーンは専用武器『サタンサーベル』を抜いて牙也にその切っ先を向けた。
「私の全力を以て、貴様を粛清する」
サタンサーベルを構え、戦う姿勢を見せるシャドームーン。対して牙也は「ふぅ」とため息を吐いた。
「この世界の謎を解く為にも避けられない戦い、か」
牙也は懐から『戦極ドライバー』を取り出すて腰に付け、更にベルト部分のホルダーから『ゼロロックシード』を外して右手に、『絆ロックシード』を外して左手に持った。
「シャドームーン……あんたのその姿勢に敬意を評し、俺の全力で相手しよう」
《ゼロ》
《フルーツアイランド》
両手に持った二つのロックシードを解錠すると、牙也の頭上に巨大なクラックが開き、そこから果物を模した沢山のアーマーと、それらとは異なる漆黒で重厚なアーマーが現れた。牙也はゼロロックシードを戦極ドライバーにロックしてドライバーの小刀で切り、更に絆ロックシードを差して手前に捻った。
「変身」
《ロック・オープン!絆アームズ!名・冥・名・冥・名軍師!!》
重厚なアーマーが牙也に被さって展開し、更にそこへ果物のアーマーが融合して、彼の姿を変えた。黒袴に紫の軽装鎧、『絆』と達筆で書かれた意匠が目を引く兜。そして肩から背中、腰を通り踵にかけてを覆い隠すほどの大きさのマント。その姿は古き日本の戦国武将にも見えた。
《絆羽扇!》
絆ロックシードを捻り、牙也は『絆羽扇』を呼び出して口元を隠すような持ち方をする。
「俺の謀略……全て読み切れるかな?」
「面白い……全て読み切った上で、私が勝利しよう!」
シャドームーンがサタンサーベルを構えて突進、牙也に斬り掛かったーー。
絆アームズのスペック
身長 218cm
体重 101kg
パンチ力 12.5t
キック力 20.2t
ジャンプ力 一飛び25m
走力 100m5.1秒
牙也がオーバーロードとしての宿命を受け入れた事で到達した仮面ライダー零の最終形態。モチーフは直江兼続。
戦闘スタイルは主に基本形態のブルーベリーアームズ専用アームズウェポン『紫炎』による近接戦闘。大群を相手取る際は絆ロックシードでのアームズウェポン召喚または専用アームズウェポン『絆軍配』による擬似ライダー召喚による物量押し。
仮面ライダー鎧武極アームズと比べ純粋なパワーで劣るが機動力に優れる。また呼び出せるアームズウェポンの量は鎧武の比ではなく、余程の強者でなければ直接戦闘よりもアームズウェポンや擬似ライダーでの物量押しで終わらせる事も。
また専用アームズウェポン『絆羽扇』を用い、『十の計略』を使用。炎攻撃の火・水攻撃の水・風攻撃の風・土攻撃の土・雷攻撃の雷・敵を鎖で縛り付ける環・敵のヘイトを自身に全て向けさせる挑・敵にデバフを付与する弱・味方にバフを付与する奮・味方を回復する浄の十つあり、必要に応じて使い分ける。
変身に使用する絆ロックシードには人間の『善意』のデータが保存されており、絆アームズに変身している間はこのデータが牙也の体を蝕む人間の『悪意』のデータを『善意』のデータに変換し、更に変換したデータを全身に行き渡らせる事で爆発的パワーを生み出すため、スペック以上の能力を常に発揮可能。