元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編)   作:神羅の霊廟

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 第八話、牙也sideになります。




各々の動き

 「ビスマルク姉さま!」

 

 鎮守府の医務室に、ビスマルク達の見舞いに訪れたハイリア達四人。プリンツは既に目を覚ましていたビスマルクを見るなり、大喜びでビスマルクに飛び付いた。ビスマルクは困惑しながらも優しくプリンツを受け止めてあげる。

 

 「こらこらオイゲン、ビスマルクは一応怪我人なんだから止めてあげなさい。まだ目が覚めてない娘もここにいるんだから」

 「あ……ごめんなさい、ビスマルク姉さま」

 

 ハイリアに注意され、プリンツは少し残念そうにビスマルクから離れる。ビスマルクもまた困った笑みを浮かべながら彼女の頭を軽く撫でてあげた。

 

 「良いのよ、オイゲン。それとごめんなさい、Admiral。せっかくの作戦をこんな形で失敗に終わらせてしまって……」

 「気にしないで、ビスマルク。貴女達が無事に帰ってこれたのが一番の救いよ」

 

 ハイリアはそう言ってビスマルクを励ます。

 

 「それよりもビスマルク。貴女達に一体何が起こったのか、詳しく話してくれないかしら?」

 「えぇ……」

 

 ビスマルクは自身が覚えている限りの事をハイリア達に説明し始めた。

 

 「鎮守府沖40kmを航行中、妖精達が艤装の不調を見つけたのよ。それで一旦全員に警戒態勢を取ってもらって、簡単な応急処置をしてもらったの。その後は特に問題なかったのだけれど……50km地点で急に艤装から植物みたいなのが伸びてきて……それ以降は全く記憶にないわ」

 「艤装から、植物が?」

 「信じられないと思うけど、事実よ」

 「……いえ、信じるわ。大事な艦娘が実際に見たっていう事だもの。それに……」

 

 ハイリアがそこまで言った時ガラガラとドアが音を立てて、レイスが医務室に入ってきた。

 

 「お話中失礼します。ハイリア大佐、捕縛した彼と妖精達からも話を聞いてきました」

 「そう、ご苦労様。それで何か分かった?」

 「はい。まず妖精達の話なのですが……工廠を滅茶苦茶にしたあの蔦は、原因究明の為に保管していたビスマルクの艤装から伸びたもののようです。彼が艤装から取り出したこの小さな本が原因だと思われますが……」

 

 レイスはポケットから紫と紅の色鮮やかな本を出してその場の全員に見せた。

 

 「妖精達はこの本に覚えはないとの事。となれば、何者かが工廠に侵入してこの本を艤装に隠したと思われます」

 「ふーん……でももし工廠に侵入者があれば、いち早く妖精達が気づく筈じゃない?防犯カメラだってあるし」

 「それが、工廠の防犯カメラには何も映っていませんでした。妖精達に聞いても、ここ最近侵入者は一人としていなかったと証言しています」

 「えぇっ!?じゃあどうやってビスマルク姉さまの艤装にこれを……!?」

 

 「可能性なら一つあるぜ」

 

 聞き覚えのある声にハイリア達は辺りを見回し、ビスマルクは突然聞こえた声に警戒を強めた。

 

 「上だ、上」

 

 そう指摘され全員が上を見ると、ビスマルクの頭上に開いたクラックから牙也が顔を出していた。

 

 「誰!?」

 「落ち着きなさい、ビスマルク。牙也、その可能性について教えて?」

 「あぁ」

 

 牙也は一旦クラックを閉じると、今度はレイスの背後にクラックを開いてそこから出てきた。

 

 「俺も工廠の防犯カメラを確認させてもらった。確かに防犯カメラには何も……誰も映ってなかった」

 「そう……誰も侵入してないのね」

 「いや……深掘りして調べてみたら、内部の誰かが侵入した可能性が出てきた」

 「何!?どういう事だ!?」

 

 アークロイヤルが凄い剣幕で掴み掛かる。それを振りほどき、牙也は話を続けた。

 

 「防犯カメラのデータを確認したら……三日前の昼頃の映像の部分だけが綺麗に無くなってた。誰かがそこの映像だけ切り取って消去したんだ」

 「じゃあレイスが確認した映像は、誰かが編集した物って事?」

 「恐らくな。素人も玄人も分からない程に綺麗な編集がしてあった。ほら、これだ」

 

 牙也は防犯カメラから取り出したデータをレイスに渡す。レイスが急いでそれをノートパソコンに入れて中のデータを確認し始め、他の皆もパソコン画面を覗き込んだ。

 

 「切り取られてたのは三日前の昼下がりの頃だ……ほら、ここ」

 

 牙也が編集された箇所を指す。そこは普通に見ても分からないが、よく見ると一瞬だけだが映像が途切れていた。

 

 「なるほど、これは確かに分かりづらいな……見落としたのも無理はない」

 「犯人は相当手慣れていますね……ここまで正確に編集して私達を欺くとは」

 「けどここまで正確だと、自然と犯人は絞り易くなるわね。この手の作業に従事した経験のある人物……か」

 「このビスマルクをあんな眼に遭わせるなんて……ただじゃおかないわ!」

 

 その後も思い思いに意見を出し合うハイリア達。今後の対応について様々な意見・提案が次々出てきてちょっとした騒ぎになる。その間に牙也はレイスに渡していたあの小さな本を回収すると、書き置きを残してこっそり医務室を抜け出した。

 

 

 

 

 

 

 自身が入っていた独房に戻ってきた牙也は、独房の床に沢山の資料を広げた。その資料はハイリアが運営する鎮守府とレイスが運営する鎮守府の詳細な情報を含んでおり、その中には鎮守府に勤める人間や艦娘の情報も混じっていた。牙也はハイリア達にあの防犯カメラの映像を見せる前にこっそり情報を抜き取っていたのだ。乱雑に広げられた資料を片っ端から読み漁り、その全てを頭に入れる。

 

 「エフィンム」

 

 そして牙也は誰もいない筈の虚空に向かって名を呼ぶ。すると牙也の背後にクラックが開き、その内部からエフィンムが出てきた。

 

 「お呼びでしょうか、神王様」

 「あぁ。この鎮守府で働く全員の情報がこの資料に入ってる。お前はこれから、この全員の情報を洗い直せ」

 

 牙也はそう言って読み終わった資料の中から、鎮守府に勤める人間と艦娘の情報が入った資料を抜き取ってエフィンムに渡した。

 

 「ははっ」

 「良いか、俺達の行動は何者かに監視されている可能性がある。それを念頭に入れて動け、無茶な行動は絶対に控えろ」

 「はっ……お言葉、肝に命じます」

 

 エフィンムは軽く一礼すると、影に溶け込むかのようにスッと消えた。それを見送り、牙也は残った資料を全てかき集めると、その上に左手を置いた。すると積み重ねられた資料は一瞬で黒く染まり、灰のようにボロボロと崩れ落ちてしまった。それを牢の外に掃き出し、牙也は床に寝転がる。

 

 「さて、後は結果を待つだけか。それ次第では……」

 

 そんな事を考えつつ、牙也は眠りに落ちるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ムキー!!アイツ全然帰ッテ来ナイジャンカァ!!」

 

 一方こちらは牙也と拳を交えたレ級の拠点である無人島。そこに出来た天然の洞窟の内部で、レ級は牙也がいつまで経っても帰ってこない事にキレてジタバタ大暴れしていた。

 

 「ヌガー!!スグ帰ッテ来ルッテ言ッテタノニー!嘘ツキー!」

 

 言ってません。

 

 「アラアラ、ゴ機嫌斜メネ、レ級」

 

 その声にレ級がガバッと起き上がると、レ級の目の前には、非常に長い黒髪にネグリジェ風の黒ワンピースという姿の深海棲艦が立っていた。

 

 「ナンダ、戦艦棲姫カヨ。テカナンデオ前ココニイルノサ?」

 「ウフフ、太平洋ノ方ガダイブ落チ着イタカラ、チョットコッチノ様子ヲ見二来タノヨ。元気二シテタ?」

 

 妖艶な笑みを見せながら戦艦棲姫はレ級を気にかける。

 

 「マァネ。向コウハソンナニ手応エ無イノ?」

 「建造シタテノ新人ラシイ娘バッカリ来ルカラ退屈ナノヨ。マダコッチデ戦ウ方ガ楽シメルワ」

 「ナーンダ、ソレナラチャチャット制圧スリャ良イノニ。新人バッカリナラ簡単デショ?」

 「ソノ代ワリ、後方ノ艦娘ガ滅法強イノガ揃ッテテネ。一回侵攻シテミタケド、追イ返サレチャッタワ」

 「フーン……」

 

 レ級は太平洋の戦況を退屈そうに聞いている。

 

 「ソレデレ級、コッチノ生活ハドウナノヨ?強イ娘見ツケタ?」

 「!ソウ、ソレナンダ!アタシ見ツケタゼ、将来ノ旦那様ヲ!」

 「ハイ?」

 

 突然聞こえた謎の単語に、戦艦棲姫が意味不明とでも言いたげな表情で聞き返す。

 

 「ダカラァ、見ツケタンダヨ!アタシヨリ滅茶苦茶強クテ、アタシノ将来ノ旦那様二ナル奴ガサ!」

 「……旦那様?」

 「ソウ!アタシソイツ二挑ンダンダケドサ、一撃デ負ケチャッタンダヨナ。ンデ、モウ一回挑ンダ時ハ勝負付カズダゼ!アタシヲ目ノ前ニシテ一歩モ退カナカッタ奴ナンテ、今マデデアイツガ始メテダゼ!」

 「ソ、ソウ……デモ旦那様ッテ一体……」

 「エ?強イ奴ト戦ッテ勝テバ、ソイツヲ旦那様二迎エラレルンジャナイノカ?」

 「……ソレ何処情報ヨ?」

 「集積地ノ奴」

 

 情報元を聞いて、思わず戦艦棲姫は頭を抱えた。

 

 「アイツカ……後デオ仕置キシナキャ……」

 「?ナンダ、違ウノカ?」

 「……イエ、貴女モイズレ分カルワヨ」

 「?」

 

 言葉を濁し、戦艦棲姫はため息をつく。思えばレ級は非常に純粋であった。他人から仕入れた情報は基本的に事実確認をせずにそれが正しいと思い込んでしまったり、己の欲望に常に忠実だったり。戦闘ではとても頼りになるが、それを楽しむあまり敵味方構わず攻撃する事も屡々あった。そのせいで仲間内ではとても浮いた存在として認識されてしまい、随分と苦労していた。そんなレ級を戦艦棲姫は常に気にかけ、当時レ級に似た境遇の深海棲艦が多かった大西洋の方に送り出したのだ。

 

 「ソレデ、貴女ガ言ッテタ奴ハ何処ノ鎮守府二イルノ?」

 「何処ッテ……ンー?ソウイヤアイツ艦娘ジャネェナァ。男ダッタシ」

 「分カラナイノ?」

 「分カンネ!ソレニアイツ、スグ戻ルッテ言ッテタ癖二、イツマデ経ッテモ帰ッテ来ナインダヨ!」

 

 言ってません(二回目)。

 

 「ソウ……ソレナラ捜シニ行ッテミル?」

 「行ク!」

 

 戦艦棲姫の提案に即答するレ級。戦艦棲姫はそんなレ級を見て「ヤレヤレ」と呟きながらふと洞窟の外に目を向けた。見ると、何やら外が少し騒がしい。

 

 「……誰カ外二イルワネ」

 「艦娘カ?」

 「イエ、違ウワ。何カ機械ガ動ク音ガ聞コエルワネ」

 

 二人は洞窟の出入口に集中する。と、突如洞窟の天井を破壊して何かが戦艦棲姫の頭上に降ってきた。それは何やら機械で作られた人形のようであった。

 

 「敵襲!?」

 

 戦艦棲姫は咄嗟に攻撃を回避すると、降ってきた機械人形の一体を蹴りで洞窟外に吹き飛ばした。残りはレ級に捕まえられて一瞬でスクラップに早変わりした。すると洞窟内部へ次々と同じ機械人形が三又槍を構えて侵入してきた。

 

 「レ級、ココハ狭イワカラ外デヤルワヨ!」

 「イエーイ!!」

 

 レ級がわんさか現れた機械人形をラリアットと尻尾の攻撃でまとめて外に追い出す。それを追い掛けて外に飛び出すレ級を、戦艦棲姫が追い掛けていく。外に出ると、戦艦棲姫の艤装が自立可動して沢山の機械人形を相手していた。その豪腕で近寄ってくる機械人形を粉々に砕き、その大きな口で機械人形を噛み砕いていく。

 

 「数ダケハ無駄二多イミタイネ……面倒ダワ、マトメテ沈ミナサイ!!」

 

 戦艦棲姫の号令で艤装の砲塔から漆黒の弾が放たれ、機械人形達に着弾し破片一つ残さず吹き飛ばす。一方レ級は次々現れる機械人形を殴る蹴るで応戦し、スクラップの山を築いていた。

 

 「アハハハハ!!コイツラ滅茶苦茶二ブッ壊スノターノシー!!」

 

 一発殴れば機械人形の体に大きな穴が空き、頭が吹き飛び、手足がもげ、一回蹴れば機械人形の体を切れ味の良い刀のように両断していく。更に尻尾が近づいてくる機械人形を噛み砕き、撃ち砕いていく。極めつけにレ級が発艦させた艦載機の絨毯爆撃で、襲撃してきた機械人形は丸々全部が破片一つ残さず吹き飛んだ。

 

 「オシマーイ!アー、楽シカッタ!」

 

 全部片付け終えて、レ級は艦載機を着艦させる。

 

 「フゥ……一体何ダッタノカシラ、コノ機械人形……人間ガ作ッタニシテハ精巧過ギルワ」

 「ソンナノ何デモ良イジャーン!ソレヨリ早クアイツヲ捜シニ行コウゼ!」

 「ハイハイ、分カッタワヨ」

 

 戦艦棲姫はレ級に引っ張られるようにして目的の人物ーー牙也を探しに行く。頭の隅っこに、あの機械人形の問題を残しながら。

 

 

 

 

 

 「……あいつらについて行けば、何か分かるかもしれないな。この世界がどんな物語を秘めているのか」

 

 そして、自分達の後をこっそり追い掛けてくる一つの影に気づく事もないまま。

 

 

 

 

 

 

 

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