元世捨て人の気ままな旅路(艦隊これくしょん編)   作:神羅の霊廟

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第十七話、牙也sideです、お待たせしました。




工廠でドンパチ

 

 鎮守府の工廠は、日が落ちて夜になっても煌々と明かりが灯っていた。中からは艤装の調整や修理に奔走する艦娘達の声が響く。

 

 「隅々まで綺麗にするわよ!大事な時に動かないんじゃシャレにならないからね!」

 「ちょっと、こんな所に魚雷とか爆雷放置しないでよ!危うく蹴っ飛ばしそうになったじゃない!」

 「艦載機が足りん!開発を急いでくれ!」

 

 工廠の床に乱雑に置かれた艤装の間を縫うように移動する艦娘達。そして忙しない彼女達の手伝いをする妖精達。皆が一丸となり大急ぎで艤装点検や装備開発を進めていく。

 

 「補給・修理用の資材だけは残して、他は全部開発に回して!出来る限り装備を充実させて、使い物にならなくなったらすぐ交換出来るように!」

 

 その中心にいるのはビスマルクだ。工廠の中央に陣取り、工廠内の全員に届く程に声を張り上げて指示を出している。

 

 「良いの、ビスマルク?勝手に資材をガンガン使っちゃって。後でamiralに何て言われるか……」

 

 そこへリシュリューが近寄ってきてビスマルクに尋ねた。本来はこのような準備は提督であるハイリアの指示が無ければ行ってはいけない事なのだが、ビスマルクはお構い無し。

 

 「良いのよ。admiralだって分かってる筈よ、これくらい準備を念入りにしとかないと危険だって。それに、いつ奴等が襲撃してくるか分からないのよ、指示なんて待ってられないわ」

 「それはそうでしょうけど……」

 「納得いかないなら、今ここで選びなさい。準備怠ってあいつらにボコられて屈服するか、きっちり準備してあいつらを迎撃してここを守り抜くか」

 

 そう聞かれリシュリューは「うっ……」と呻く。が、すぐに持ち直してため息一つ。

 

 「……私の負けね。本当感服するわ、貴女の胆力には」

 「そう。だったら貴女も早く艤装の調整済ませなさいな、まだ終わってないでしょう?」

 「確かに終わってないけど……そう言うビスマルクこそ艤装調整しなくて良いのかしら?」

 「オイゲンに任せてきたから問題ないわ」

 「自分でやりなさいよ!」

 

 リシュリューの的確なツッコミが入った所で、工廠の鉄扉が重々しく開かれた。

 

 「あら、言われなくても動いてるのね、皆。感心感心」

 

 そう言いながらハイリアが入ってきた。手には何かの書類を持っている。その場にいた全員が立ち上がってハイリアに敬礼し、ハイリアは対して右手を軽く挙げて応えた。

 

 「お疲れ様、admiral。勝手に艤装調整してるけど、問題ないでしょ?」

 「えぇ、問題ないわ。それと、はいこれ。今後の近海警備のメンバー表よ、皆確認しておいてね」

 

 ハイリアはそう言って工廠の壁にメンバー表を張り付けた。途端に書類の前に艦娘達が群がりワイワイ騒いでいる。

 

 「オイゲン、私の名前も確認しといてちょうだいな」

 「だから自分でやりなさいったら!まったくもう……」

 

 呆れ顔のリシュリューは置いといて、ハイリアはビスマルクと共に今後の予定を話し合う。

 

 「それじゃあ鎮守府内の夜間警備は主に私達が担当するのね?」

 「えぇ、基本的に近海警備を駆逐艦や軽巡洋艦が、建物内を戦艦や重巡洋艦が担当するように振り分けてるわ。空母は近海警備のサポートをやってもらうの」

 「良いんじゃないかしら?私達戦艦は航行だけで燃料やら何やら消費するし、節約の為と考えれば充分でしょ」

 「そうね、激戦になるでしょうし、出来る限り節約しなくちゃね」

 

 その後も様々話し合う三人。警備任務以外にも作っておく装備の量や別に残しておく資材の量、その他諸々の動きを詰めていく。

 

 「チャオ、提督!」

 「ラッキージャーヴィス、ドックから戻ったわ!」

 

 とそこへ、グレカーレとジャーヴィスが小走りでやって来た。彼女の後ろには他にもグレカーレと似たような制服を着た娘が三人。それとジャーヴィスと同じような制服の娘が一人ついてきている。

 

 「あら、皆入渠は終わったのね。体の方は大丈夫?」

 「皆すっかり良くなったワ!あのお兄さんが来てくれて本当Lucky!」

 「皆でお兄さんに改めてお礼を言いたいんだけど、何処にいるか知らない?」

 「あら、そう言えば……オルディエン中将と会談してからは牙也の姿は見てないわね……ビスマルク達はどう?」

 

 ハイリアに尋ねられるも、ビスマルク達は揃って首を横に振った。

 

 「夕方以降牙也は見てないわ。何処に行ったのかも聞いてない。エフィンム、貴方はどうなの?」

 

 ビスマルクがハイリアの足元に向けて声を掛けると、ハイリアの影からエフィンムが顔を出した。グレカーレ達が一瞬ビクッとなるが、ハイリアが「大丈夫、牙也の連れで味方よ」と言って安心させる。

 

 「残念ながら、私も神王様の行き先は存じ上げません。私にハイリア様とレイス殿の護衛を命じた後に何処かへ向かったのは確認致しましたが、何処に行ったかまでは……」

 「そう。まぁこういう事よ、お礼を言うのは牙也が帰ってきてからにしなさいな」

 

 グレカーレ達は「はぁい!」と元気良く返事すると、自身の艤装調整の為に他の艦娘達に混じっていった。彼女達と入れ替わりに、改造された軍服と黒のラップスカートを身につけた金髪碧眼の艦娘がズンズン近寄ってきた。

 

 「余の艤装の整備は終わったぞ。貴様、次は何をすれば良い?」

 「あらネルソン、もう終わったの?早いわね」

 

 ネルソンと呼ばれたその艦娘は、何故か不機嫌な表情でハイリアと話す。さっきまで顔を出していたエフィンムはいつの間にか姿を消していた。

 

 「余は艤装の手入れは自ら行っているからな。普段からキチンとやっていれば早く終わらせるなど造作もない事よ。おいビスマルク、貴様もお付きの重巡に任せっきりにしないでたまには自分で整備をやったらどうだ」

 「良いのよ私は。以前私が整備やったら、その後の出撃で艤装がバグ起こして全く動けなくなって皆に迷惑かけたんだから」

 「な……!?」

 「そうなの、amiral?」

 

 ビスマルクの暴露にネルソンとリシュリューは驚き、ハイリアに顔を向ける。

 

 「えぇ、本当よ。その後も何回か整備を自分でやったけど、その度に艤装がバグを起こしてね。それ以来ビスマルクの艤装はオイゲンが担当してるのよ」

 「なるほど、な。つまりビスマルクは手先が不器用という事か」

 「不器用どころじゃないでしょ、艤装がバグを起こしてるのよ、壊滅的って表現の方が良いわ」

 「五月蝿いわね!」

 

 平然とディスってくる二人にビスマルクが噛み付いていると、再び工廠の扉が開いてレイスが入ってきた。

 

 「ハイリア大佐、それに艦娘の皆さん、簡単な物ばかりですが食事を持ってきました。一旦整備は中断して一休みしませんか?」

 「食糧も節約しなければならんから、少量で腹に溜まる物ばかりだがな。皆しっかり食べておけ」

 

 彼の後ろにはアークやレーベ、マックス等が山盛りになった料理を持って入ってきて、近くのテーブルに並べている。途端に工廠にいた艦娘達が料理に群がっていく。並べ終わると、アークはレーベとマックスに追加を持ってくるよう頼み、二人が工廠を出ていくのを見送ってから艤装整備に入った。

 

 「ありがとう、レイス中佐。本館の方はどうだった?」

 「先程一通り回って来ましたが、特にこれと言って問題はありませんでした。まぁ警戒するに越した事は無いかと、いくつか罠を仕掛けて来ました。引っ掛かるかは分かりませんがね」

 「ご苦労様。まぁ書類とか機密に関わる物は全部こことは別の場所に隠したから、たとえ向こうが狙われても被害は無いに等しいわ。それより問題は……」

 「向こうの出方、ですか」

 

 ハイリアは頷く。

 

 「対策は出来ても予測は難しいのよね……いつここに攻めてくるのか、どんな手段を使ってくるのか……あのソロモンって奴は、私達の常識の範疇に収まらないのが厄介ね」

 「少しでも分かれば、これからの戦いに苦労しにくくなりますがね。まぁ無理でしょうな」

 「同時に本部の出方も気にしなきゃいけないのよね。面倒だわ」

 

 ソロモン、海軍本部、そして深海棲艦。三つの勢力に挟まれ身動きも儘ならない状況にあるこの鎮守府。生き残る為には、一つの判断ミスも許されない。ハイリア達の精神はゆっくりと磨り減り始めていた。

 

 「暫くラム酒はお預けか……あれが無くては気分も上がらぬというのに」

 「全部終わってからのお楽しみに取って置きなさいな、ネルソン。全てを達成した後の一杯は、それはもう格別よ?」

 「分かっている、分かっているが……」

 

 ネルソンは不満げだ。と、工廠の外が何やら騒がしい。

 

 「この声は、レーベ?何かあったのかしら」

 

 ビスマルクが怪訝な表情でそう言ったその時、工廠の扉が勢い良く開かれ、二人の艦娘が誰かを寝かせた担架と共に入ってきた。

 

 「て、提督!あの、さっき食堂の近くを通ったら、この人が血だらけで倒れてて!」

 「誰かベッドと救急箱を持ってきて、大至急!」

 

 担架と共に入ってきたのはレーベとマックスの姉妹。にわかに慌ただしくなる工廠。運び込まれた人物の顔を覗き込んで、ハイリアは驚愕の表情になった。

 

 「デュノア中将!?」

 

 担架で運ばれてきたのは、数日前に自身の直属の上司になったばかりのアイナス・デュノア中将だったからだ。全身にかなりの数の傷があり、軍服はあちこち切られ、血が滲んでいる。急いで持ってこられた医療用ベッドにそっとデュノアを寝かせ、すぐさま治療が行われる。

 

 「切り傷多数、銃創複数、その他傷が沢山……集団で襲われたのかしら」

 「銃創が多い……襲った者は明らかに中将の命を狙ってますね。思ったより軽傷なのとここまで来れたのが不幸中の幸いと言ったところでしょうか」

 

 レイスが治療をしながらそう言う。手早く傷の消毒を行い、包帯を巻いていく。手慣れた様子にハイリア達は感心していた。

 

 「レイス中佐、上手いですね」

 「提督になる以前、医療班に応援に行った事がありましてね。その時に色々教えてもらったんですよ」

 

 話しながらもレイスはてきぱきと治療を続ける。

 

 「よし、終わりました。後は目が覚めるまでゆっくり寝かせてあげましょう。レーベ、マックス、中将を別室に」

 「分かったよ」

 「了解」

 

 デュノアを担架に乗せ替え、レーベとマックスが工廠に設けられた仮眠室へ運ぶ。

 

 「中将が目を覚ましたら、色々事情を聞いてみなくちゃね」

 「そうですね。聞くべき事は様々です」

 

 二人の話にビスマルク達も頷く。と、急にハイリアの影からエフィンムが飛び出してきた。そして腰に携えた剣を抜いて工廠の扉を注視し始める。

 

 「エフィンム、どうかしたの?」

 「しっ……皆様、お下がりあれ。誰か来ます。それも明確な悪意を持った者達が……」

 

 それを聞きハイリア達は急いで扉から離れる。一つの集団になって扉に目線を集中させる。すると

 

 ドゴン!!

 

 ドゴン!!

 

 と何かが扉にぶつかるような音が響き渡った。それにつれて工廠の扉が少しずつひしゃげていく。そして

 

 ドゴシャアンッ!!

 

 工廠の扉が破られ、何者かがズカズカと入ってきた。グレー系のスーツに肩まで伸びた金髪が特徴的なその人物、胸部にビスマルクと競り合える程度の膨らみが確認出来るので、女性である事は間違いない。彼女はハイリアを見るなりクククと笑った。

 

 「アイナス・デュノアをどこに隠しましたか?大人しく私に引き渡して下さい」

 「…!デュノア中将を襲ったのは、貴方ね?」

 「正解です。あの男は我々の意志に反し、我々を追放しようとした。だから先手を取って始末しようとしたのですが…まさか逃げられるとは思っても見ませんでしたよ」

 

 金髪の女はそう言って指をパチンと鳴らす。と、工廠の外からバタバタと数人が走る音が聞こえる。闇夜で姿は見えないが、恐らく外で待機しているのだろう。ハイリアは警棒を抜き、レイスは拳銃を構え、艦娘達も拳を構えて戦闘態勢を取る。

 

 「貴女達の目的は何なの?こんな事して、ただで済むと思ってるの!?」

 「ええ、思ってますよ。どうせ貴女達にはこれから消えてもらうんですから」

 

 女はクスクス笑いながら、懐から何かを抜き出した。それは見た目こそUSBメモリのようだが、所々骨にも似た意匠が施されていた。見た事のないアイテムにハイリア達の警戒心は更に上がる。

 

 《TRICERATOPS》

 

 女は持ったメモリを自身の左肩に差した。と、女の姿はみるみる間に変化していき、かの有名な恐竜『トリケラトプス』を模した見た目の怪物に変わった。一部の艦娘が「ひっ…」と小さく悲鳴を上げる。

 

 「…『ドーパント』ですか。我が主から聞いていましたが、実際に見るのは初めてですな」

 「あら、ご存知だった?まぁ知ってたとしても、私達には勝てないけどね」

 

 『トライセラトップスドーパント』に変貌した女が言うと、体を縮めて力を溜め始めた。するとその体がみるみる間に大きく膨れ上がり、巨大な二足歩行のトリケラトプスに変貌した。その周りには頭部に骨と百足を模した仮面を付けた男達が揃い、戦闘態勢を取る。

 

 「あのドーパントは私めにお任せを。皆様は露払いをお願いします」

 「わかったけど、あの仮面の奴等は私達でも何とかなるの?」

 「所詮普通の人間に毛が生えた程度の強さです、恐れる事はありませんよ。戦艦のパワーであれば制圧は苦にもなりますまい」

 

 エフィンムはそう言って『ビッグ・トライセラトップス』に突撃した。阻止しようと掴み掛かってくる『マスカレイドドーパント』を払い除け、その紫色の表皮に一太刀浴びせると、斬り裂かれた箇所がパックリと割れる。が、すぐにその傷は塞がった。

 

 「なるほど、再生能力ですか。ならばこれはどうですか!?」

 

 エフィンムは剣に黒いエネルギーを纏わせて斬撃を飛ばした。同じ箇所が斬り裂かれ、また再生しようとするが、先程と違い傷が塞がらない。見ると傷口が黒いエネルギーに蝕まれ、再生を阻害していた。鋭い痛みに襲われ大気を震わす程の鳴き声が辺りに響き渡る。

 

 「この斬撃は斬り裂いた箇所から体内に侵入し、徐々に貴女の体を蝕んでいきます。やがてそれは全身を覆い、貴女自身を呑み込むでしょう。生き残るには、私を倒すしかありませんよ?」

 

 エフィンムが諭すように言うと、今度は尻尾や角を豪快に振るって攻撃してきた。しかし巨体故に攻撃スピードは遅く、エフィンムには余裕をもって回避される。すると今度は加えて噛み付き攻撃が挟まれるようになった。巨体と裏腹に素早い噛み付き攻撃、と言ってもそれまでの攻撃手段に毛が生えた程度のスピードなので、エフィンムにはそれほど脅威にすらならなかった。

 すると痺れを切らしたのか、トライセラトップスは金切り声に近い咆哮を上げ、ドスドスと足音を響かせながら突進してきた。エフィンムは再度剣を構える。と、その後方からマスカレイドドーパントが数体吹き飛んできて、トライセラトップスの顔面にぶつかった。ぶつかった箇所がちょうど目元だったため、痛みに奇声が上がる。何事かとエフィンムがチラリと目線を向けると、ネルソンとグラーフの二人がパンパンと手元や制服を払っていた。

 

 「いらん世話だったか?」

 「いえ、寧ろ助かりました」

 「そうか。では後は任せるぞ」

 

 どうやら二人がエフィンムのサポートの為に投げ付けたようだった。エフィンムの返答を聴くや否やネルソンはそのまま工廠へ引っ込み、グラーフも後に続く。

 

 「ふむ。早めの決着をご所望のようですし、終わらせてしまいましょうか」

 

 そう言った途端に、エフィンムの姿がその場から掻き消えた。そしてヒュンッ、ヒュンッ、と風を切るような音が数回。トライセラトップスの周囲を囲うように風が起こる。そしてエフィンムが元の場所に現れると、トライセラトップスは一瞬フリーズしたかと思うと、その巨体がフラつき後退りを始める。数歩後ろに下がったところでその巨体はバランスを崩し、そのまま防波堤を越えて尻尾から海に転落していった。巨体が海に落ちた事で水柱が高く上がる。

 

 「終了です。もう大丈夫ですよ、皆様」

 

 エフィンムはそう言って剣を鞘に収め、一息つく。工廠の壊れた扉からはハイリアが顔を出して様子を伺っていた。

 

 「終わったのね」

 「はい。周辺に敵影はありません、こやつら以外他にはもういないでしょう」

 

 ハイリアはホッと胸を撫で下ろす。エフィンムはというと、防波堤に近付くとそこから真下の海を覗き込んだ。そこには先程ドーパントになって襲ってきた金髪の女がプカプカと浮かんでいる。エフィンムはそれを蔦を器用に操って引き上げると、防波堤に寝かせ顔を覗き込んだ。

 

 「ぁ…う、ぁ…」

 

 女の顔は真っ青になっており、同じ人とは思えない程に痩せこけてしまっていた。目は虚ろで声も上手く出せなくなっている。それを見てエフィンムは深くため息を吐き首を横に振った。

 

 「…駄目ですな、これは。ガイアメモリの毒素が全身に回っている…」

 「治せないの?」

 「この女が使ったあのアイテム…あれは『ガイアメモリ』と言いまして、本来ならフィルターの役割を持つベルトがある筈なのですが…この女は直にメモリを体に差しています。ですのでメモリに含まれる毒素によって全身を蝕まれております。この感じだと、この女はかなりの年月メモリを使っていたと見えますな。こうなるともう手遅れとしか言い様がありません」

 「つまり治したところで尋問は無理って事ね…」

 「えぇ…致し方ありませんが、この女から直接情報を取り出すより他にありません。後は私めがやっておきますので、ハイリア様はもうお休み下さい」

 「分かったけど…貴方は休まなくて良いの?」

 「私は休まずとも動き続ける事が可能ですので。それに…そもそも私には『休む』という概念がございません。ご心配なく」

 

 それを聞きハイリアは「…そう」とだけ言って工廠に戻っていった。彼女を見送り、エフィンムは自身と寝かせた女を隠すように蔦のドームを作り上げた。そしてドームを作ったそれとは別に新たに蔦を伸ばすと、それを女の背中側に通して体を持ち上げた。

 

 「…貴女に恨みがある訳ではありません。ですが、ハイリア様やレイス殿、そして艦娘の皆様がこれからを生きる為…貴女の全てを使わせて頂きます」

 

 深夜の防波堤に、『何か』を頬張り咀嚼する音が夜通し響き渡っていた。

 

 

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