FAIRY TAIL〜影の帰還者〜   作:茶々丸さん

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Prologue:帰還

 

 

浮力を失い次々に墜落していく浮島。

空中を謎の生き物に跨りながら争いを繰り広げる兵士といつか見た仲間の顔。

ドラゴンを模した兵器とそれに立ち向かう竜狩りの魔導師達。

俺は自身を乗せて上空を飛ぶ飛龍をそっと撫で、それぞれの戦場を見据えて言った。

 

「行け」

 

俺の影から飛び出した無数の人影は瞬く間に各戦場に舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▷▶︎▷

 

 

 

 

 

 

 

 

「このままじゃみんな死んじゃうよ……」

 

無数の兵に囲まれ倒れていく仲間達を見ながら1匹の青い猫は嘆く。

 

「誰か……助けて……」

 

「ぐあぁぁぁぁ!?」

 

「な、なんだ!?」

 

「ひっ!?」

 

目を上げるとそこには複数の黒い騎士が倒れた仲間の前に立ち兵士達に剣を向けていた。

それと同時に地面からツルが生えてくると見慣れた看板をぶら下げた建物が現れた。

 

「行くぞォ!」

 

「「「オオッ!!!!」」」

 

「仲間の絆見せてやる!!」

 

「すまねぇ遅くなったなアースルーシィ」

 

「エドルーシィ」

 

同じ顔をした2人の少女、アースランドのルーシィとエドラスのルーシィはお互いの顔を見合わせて再び兵士に目を向ける。

 

「なぁ、あいつら誰だ?」

 

「分からないの……けど、味方だと思う。」

 

エドラスのフェアリーテイルが参戦したことで戦場の流れは再び変わった。

 

 

 

 

▷▶︎▷

 

 

 

 

場所は変わりドラゴンを模した兵器、ドロマ・アニムは着実に竜狩りの魔導師、ナツ、ガジル、ウェンディを追い詰めていた。

 

「うぅ」

 

「かはっ」

 

「マズい、もう…魔力が…」

 

『尽きたようだな。いくら無限の魔導師とはいえど1度尽きた魔力はしばらく回復はせんだろう。

 

おとなしく我が世界の魔力となれ。

態度次第ではそれなりの待遇を考えてやってもよいぞ。』

 

魔力が尽き動かない身体、絶望が意識を徐々に蝕んでいた。

しかし、そんな絶望に抗う男が立ち上がった。

 

「あきらめんな。

まだ終わってねぇ……かかってこいやコノヤロウ……

俺はここに立っているぞ!!!!」

 

 

『ええい!!どこまでも強情な小僧じゃ!!!!』

 

ドロマ・アニムは立ち上がったナツに向かった大きく足を振り下ろす。

 

「ナツさん……」

 

「バカヤロウ……魔力がねぇんじゃどうしようもねぇ」

 

「ひねり出す!!!!明日の分をひねり出すんだ!!」

 

ナツは受け止めたドロマ・アニムの足を勢いよく投げ飛ばす。

 

「滅竜魔導士なめんじゃねぇーぞ!!アァ!?」

 

『身の程をわきま……ヌォ!?!?』

 

「な、なんですか……あれ」

 

「分からねぇ」

 

「敵じゃねぇ……みたいだな」

 

『貴様ァ!!ドロマ・アニムの腕をォォ!!!!』

 

マントを靡かせ剣を構える黒い騎士の前には片腕を切り落とされて吠えるドロマ・アニムの姿があった。

 

『クッ…ワシを誰だと思っておるかー!!!!』

 

【お前が誰だろうと関係ない】

 

『ヌッ!?……貴様足を!?』

 

「行けェ火竜!!お前しかいねェ!!!!お前がやれ!!!!」

 

「ウェンディ!!俺に向かって咆哮だ!!」

 

「え?」

 

「立ち上がれ!!」

 

『小癪な……離さんかッ!!』

 

「話すかよクズ野郎!」

 

ガジルの攻撃によってドロマ・アニムは地面に固定され動けずにいた。

 

「ハアハア……天竜の……咆哮!!」

 

ウェンディの放った咆哮の特性である回転を利用してナツはドンドン回転していき炎は渦巻いていった。

 

「火竜の……劍角!!!!」

 

ナツはそのままドロマ・アニムを突き破りその中にいたエドラス王を引きずり下ろした。

戦いに勝利した喜びも束の間、浮力を失っていなかった浮島までもが墜落を始め可視化できる程の魔力がエドラスの大陸から空のアニマへ流れ出ていた。

 

「あ、そうだ!あいつは……あれ?」

 

「消えた?」

 

「居なくなっちゃいましたね…。」

 

ナツ達が気付いた頃には既にそこには人影すら存在せず謎の助太刀者、黒い騎士は姿を消していたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▷▶︎▷

 

 

 

その後、ナツが魔王ドラグニルとしてエドラスの王都で暴れる事でミストガンが国王として国の再建をする事が出来るようになり、エドラスに存在する魔力という魔力、魔力を持つ者はアースランドへと消えていったのだった。

 

新しい仲間の加入とアースランドで死んだと思われていたリサーナの帰還はギルドを盛大に盛り上げた。

 

「なんかギルドも変わってるし、ミラ姉も雰囲気変わってるけど妖精の尻尾は妖精の尻尾だね」

 

「めでてぇ日だぜベイビー」

 

「本当に無事で良かった」

 

「雷神衆!!ギルドにいるなんて珍しいね」

 

「そんな事ないわよ。だって私こそが妖精ですもの!」

 

リサーナの帰還を喜び合うのを他所にナツとガジルによる相棒対決が始まると思いきや結局当人達の喧嘩に発展してしまいそれを見て笑っていたリサーナはふと思い出したように姉の元に駆け寄る。

 

「あ、そうだミラ姉。」

 

「どうしたの?」

 

「シュン兄ちゃんはどうしたの?」

 

「……リサーナは知らなかったわね。リサーナが消えちゃった後にね、仕事先で死んでしまったの。」

 

「え……?」

 

「他のギルドとの合同の仕事で遺跡の調査に向かったんだけど……その最中にトラブルがあったみたいで。」

 

悲しそうに顔を俯かせるミラに対しリサーナはどこか納得のいかないような表情を浮かべていた。

 

「そっか……うん。分かった。ごめんね、辛いこと思い出させちゃって」

 

「気にしないで。貴方が戻ってくれただけでも私は幸せだから」

 

ギルド内の盛り上がりが最高潮になり、ミラもリサーナも気持ちを切り替えようと輪の中に入って行ったのだった。

 

 

 

 

 

▷▶︎▷

 

夜も深け宴が終わった頃、ギルド内でルーシィは1人目が覚めていた。

 

「これ…みんなどんだけ騒いだのかしら」

 

ギルドのメンバーは全員が寝静まりかえっていた。

会えなかった2年の時を埋めるかのように抱き合いながら眠るミラ姉弟妹を見ながら優しい気持ちになるのを感じながらふと扉が開いたことに気が付いた。

 

「こんな時間に誰……?」

 

「あー、みんな寝てたか。」

 

「えっと、貴方は?」

 

「?あぁ、俺はシュン。一応ここのメンバーなんだけど。君は新人?」

 

「え、あ、はい!ルーシィです。よろしくお願いしますシュンさん!」

 

「うん、よろしく。」

 

「えっと、シュンさんって今まで何してたんですか?」

 

「あー、帰ってきたくても来れない事情があってさ。」

 

「そうだったんですね……」

 

「それじゃあ、今日は出直すよ。リサーナも無事帰ってこれためでたい日だしな。」

 

男はそれだけ言い残しギルドを出ていった。

後に超越者、影の君主と呼ばれる男の帰還によって妖精の尻尾を中心にこの世界の物語は大きく動き始める。

 


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