あれはレ級マーン、レ級マアアアアアアアアアアン!!!
半ば廃墟となりかけている、このボロアパートのとある部屋。
そこで少女……いや、コードネーム『戦艦レ級』は目を覚ました。
見知らぬ部屋で目を覚ましたレ級は辺りを見回しそして、今に至るまでの経緯を思い出そうとする。
当時レ級の所属していた深海棲艦の艦隊。
彼女らはフィリピン海沖での作戦行動中、敵の陽動に引っ掛かり横須賀と佐世保鎮守府の精鋭部隊による奇襲攻撃を受けた。
相手は既に
横須賀と佐世保のほぼ全戦力による猛攻で精鋭揃いだったはずの深海棲艦達も物量によって圧死し、最後は旗艦の戦艦棲姫と空母ヲ級の決死の反撃によってまだ小破であったレ級のみを逃がす事に成功。
夜間戦闘且つ猛反撃で偵察機などは全て撃ち落とされていたのではっきりとは分からなかったが艦隊はレ級を残して全滅したと見られる。
本当は、レ級が旗艦を勤める筈だった。
しかしレ級の好戦的な性格と単独での非凡なる戦闘能力を鑑みて戦艦棲姫が旗艦を名乗り出たのだ。
レ級を逃がしたのも、彼女の命令だった。
◇◆◇◆◇◆◇◆
もう日も落ち切って辺りが暗くなり始めてきた頃、俺はバイトを終えて帰って来た。
昨日は少女が目を覚ますまでバイトを休んで家で待っていようとも考えたが、今の生活費からしてそんな事をしている余裕は無かった。
元は大企業の工場で働いていたが、深海棲艦の侵攻による財政悪化に伴いリストラの標的となった。
しかし、俺はまだマシな方で酷い所では深海棲艦の空襲で会社や工場が物理的に吹っ飛ばされた所もある。
数年前にも大手の物流企業が倒産し、多くの社員が路頭に迷う羽目になった。
斯くして職を失った俺は社宅を追い出され、ボロアパートで暮らしながら飲食店でのバイトで乏しい生活費を稼いでいる。
自室に荷物を置き、風呂で汗を流そうと風呂場に向かうと異変に気付いた。
ソファに寝かせていた彼女の姿が無いのもそうだが、辺りの引き出しや押し入れなどに漁られた後があった。
それと、ベランダに続く窓が開いていた。
閉め切ったカーテンの先に人影が見える。
その傍らでは大きな尻尾が一緒に蠢いていた。
恐る恐る窓に近付き、ベランダの柵に腰掛けている影に話し掛ける。
「……め、目ぇ覚ましたのか───」
その瞬間、凄まじい速さで尻尾が鞭のようにしなりながら動き出し、尻尾の先に付いていた獣の顔のような物が俺に向けられた。
口の中や頭の上には何やら火砲のようなものが見える。
昔暇潰しで読んでいた資料で見た深海棲艦の主砲とよく似ていた。
激しく動いた尻尾によってカーテンが吹っ飛び、その先にいる人影の正体が顕となる。
「……キ?」
「……!」
深海棲艦の主砲を突き付けられて硬直していても尚、彼女の姿を目に焼き付ける。
その姿を、その顔を、その表情を、そして紫色の瞳を見た時、俺は確信した。
「やっぱり、お前……あの時の……」
「……ッ!!」
俺がそう呟くように言うと、彼女も気付いたのかあからさまな驚愕の表情を見せる。
「キョ…ウ?」
◇◆◇◆◇◆◇◆
「いだだだだだだだだ!!!」
「キョウ……! キョウ……!!」
俺……こと福嶋 享は現在進行形で少女に絞め殺されようとしている。
凄まじい腕力で体を締め付けられ、オマケにその上から尻尾で更に絞められている。
一歩間違えれば肋骨の1本や2本は逝くだろう。
「分かった!分かったから離せ!!」
彼女の拘束をなんとか解こうとするも、彼女は余計に腕に力を込めている。
そんなに再会が嬉しかったのだろうか。
数分後に漸く開放された俺は少女をソファに座らせ、テーブルを挟む形で向かい合った。
俺は彼女に対して聞きたい事が山ほどあるんだ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
彼女、レ級は俺の質問に対して至って冷静に、淡々と答えた。
曰く、レ級は深海棲艦の一種であると。
曰く、レ級以外にも人型の個体は複数存在すると。
曰く、20年前に日本にやってきたのは侵攻前の敵情視察の為であったと。
確かに、今思い返してみればレ級はやたら港に行きたがったり、当時一番新しい日本地図を欲しがったりしていた。
そして最後にレ級はこう言った。
「艦娘モ、人間モ、全員殺ス。 ソシテ私達ノ大地を奪イ返ス。 同志達ハミンナソウ言ッテル」
レ級はどさくさに紛れてとんでもない爆弾発言をしていた。
20年前の侵攻開始から今に至るまで不明だった深海棲艦の戦争目的をあっさりと喋ってしまったのだ。
これはとんでもない事を聞いてしまった、と冷や汗を流しているとレ級は唐突に俺の両頬に手を当てる。
その目は、慈愛に満ちていた。
「ダケド、安心シテ。 キョウハ私ガ守ッテアゲルカラ。 誰ニモ傷ツケサセナイシ、殺サセナイ」
「何故、そこまで……」
「ソンナノ、当タリ前」
たかだか30日ちょっとの短い関わりしかなく、そしてそれも20年も前だなんて人間の感覚で言えばそれはただの知り合いと変わりない。
名前を覚えている事すら奇跡と言える。
俺が頭の片隅に追いやり、もう忘れようとしていた事を彼女はまるで昨日の事のように鮮明に覚えているようだ。
「ダッテ、キョウハ私ノ大事ナ大事ナ……」
「
そう言いながら微笑むレ級に、俺はただ黙って苦笑いをするしかなかった。
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