今俺がいるのは、横須賀から沖合約200km地点の海上。
無事追撃を振り切る事に成功した俺達は深海棲艦の本隊と合流し、安全な場所に連れて行かれている訳なのだが。
「恥ずかし過ぎて死にそうだ……」
大の男が身長頭1つ分小さい少女に抱き抱えられながら逃げるというなんともシュールな光景が出来上がっていた。
「恥ズカシガッテルキョウモ可愛イ……」
こうやってレ級の慈愛の眼差しを向けられる度に余計に危ない感じがしてくる。
俺は別にそのような趣味は無い。
はずだ。
「レ級、アマリ遊ビスギルナヨ。 人間、オ前モダ。 マダマダ目的地ハ遠イノダカラ我慢シロ」
「こんな状況で言われてもな……」
「キョウ! キョォォウ!」
「うわぁ頬擦りすんな!!」
まるでぬいぐるみのように弄ばれる俺を他所に目の前の彼女達は先を行き続ける。
陣形的に一番先頭にいるのが隊長……いや、旗艦のようだ。
セーラー服を纏い、下半身はパンツなのかブルマなのかよく分からん服装をしていて色々と股間に非常に宜しくない格好だ。
それと左肩のやたら自己主張の激しい肩パッドが気になる。
あれも何かしらの装備なのだろうか。
「……」
セーラー服姿のグラドルみたいな深海棲艦を眺めていると、何やら無表情のレ級がこちらを見下ろしていた。
「ど、どうした──」
「駄目ダヨ」
俺の言葉を遮り、恐ろしさのあまり底冷えする程にトーンの低い声で呟くように言うと凄まじい力で俺を抱き締め始めた。
「な、何を──」
「見チャ、駄目」
自分に向けられているレ級の視線が恐ろしくて、上を向くことが出来ない。
今彼女と目を合わせてはいけないような気がする。
レ級の胸に顔を埋もれさせながら、取り敢えず余計な行動は謹んでおくことにした。
「分カッテルヨ、キョウモ男ノ子ダモンネ。 モウ、見タカッタラ言ッテクレレバ私ガ見セテアゲルノニ……」
胸に顔を埋めているとどうやらレ級も機嫌を取り戻したようで、上機嫌になりながら相変わらず俺を抱き締めている。
というか、今に至るまで殆ど眠れていないので眠気が今になって襲って来た。
レ級の胸の中の安心感がトリガーとなったのだろう。
それにレ級も気付いたようで、俺が眠りやすいように元のお姫様抱っこに戻してくれた。
「眠イノ? イイヨ、眠ッテテ。 着イタラ起コシテアゲルカラネ」
「あぁ、そう……じゃあ…頼むわ……」
潮風に当たりながら、俺はそのまま眠りに落ちた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
一方で、日本国内ではレ級の討伐作戦の失敗により大騒ぎになっていた。
横須賀鎮守府の提督、宮嶋 遼平は追撃艦隊の出撃も考えたが太平洋沖では天候が悪化し始めていると報告があり、やむを得ず追撃は諦めた。
その次の日、遼平は鎮守府の外庭である艦娘と話していた。
「すまなかったな、折角のお前の出番を潰してしまって」
遼平が頭を下げようとするのを、彼女は手で制した。
「構いません。 チャンスがある限り、私は幾らでも待ちます。 しかし、
彼女の瞳には、強い決意が宿っていた。
大切な物を奪われ、そして尚も戦おうとする意志の強さに遼平は改めて感嘆した。
「奴は、私が仕留めます」
「そうだな、レ級はお前の姉の仇だからな……」
「武蔵」
それは、復讐に燃え狂った者の目ではない。
彼女は復讐と仇討ちの分別がついていた。
◇◆◇◆◇◆◇◆
レ級の腕の中で眠ってからどれ程経っただろうか。
目を覚ました時、俺は薄暗い縦長の部屋のような空間でベッドに寝かされていた。
ベッドで寝たまま、周囲の状況をよく確認してみるとどうやらここはコンテナを改造した家のようだ。
「ここは……ん?」
掛け布団を退かし、起き上がろうとすると何かに動きを阻まれる。
体に何かが絡まってる感じがする。
恐る恐る自分の左隣に目をやる。
左隣には、俺の体に抱き着いたまま寝ているレ級の姿があった。
そういえばこんな光景はついこの間にもあったな、と俺は思った。
しかしこのままでは動けないので、レ級を起こそうと試みる。
「おい、起きろ」
「ン…ウゥ……」
体を揺さぶったり、軽く頬を叩いてもレ級が起きる気配は無い。
それどころか余計にレ級は俺の体に絡み付き、傍から見ると色々と不味い絵面になってしまった。
そろそろ無理矢理引き剥がしてやろうかと考え始めた頃、唐突に足音が聞こえて来た。
逆光で誰かはよく分からないが、人影がコンテナの中に入って来た。
不味い、非常に不味い。
「ちょ、ちょっとストップ!!」
静止を呼び掛けるが、人影はなんの躊躇も無くベッドに近付いてきた。
言葉が通じないのか、それとも分かってて応じないのか。
「離れろぉぉ……!!」
俺は必死にレ級を引っペがそうとする。
「キヒヒ……キョウ……好キィ…………モット……」
レ級はにへら顔で寝言を呟きながら木にへばりついた甲虫のように凄まじい力で体にしがみついている。
人の筋力では到底動かせそうもない。
ジタバタしている内にもう人影はすぐ目の前に来ていた。
そして、遂に人影と目が合ってしまった。
それもレ級に乗っかられながら体を擦り付けられてる状態で
「あっ………いや!! これは! 違うんだよ! 決してそういう意図があってやったとかじゃねえからな!」
俺はレ級に抱き着かれながらも必死に弁解をする。
目の前にいる人影、少女は疑問の表情を浮かべながら首を傾げている。
「ヲッ?」
暗くてよく見えないが、彼女は何故か頭にとても大きく禍々しい見た目の帽子を被っていた。
バーに色が着きました。
なのでこれからどんどんこの赤色のバーを伸ばしていっちゃって下さい。
あとついでに感想も下さいお願いします何でもしますから。