『儂は千子村正。ただの刀鍛冶だよ』
「…………どういうことだ」
『なんだ、思ってたより冷静じゃねぇか。なに、簡単なことさ。お前さんは生前願っただろ、また恋人と添い遂げたいってな』
確かにそう願った、だが何故コイツがその事を知っているのか疑問に思っていると向こうも察したのかしてやったり顔で答えてくる。
『本来転生なんてすりゃ記憶が引き継げるはずもねぇだろ、だから儂という存在をお前さんの魂と無理矢理くっつかせたのさ。その時に余程相性がいいやつでもないかぎり「儂」に食いつくされちまうんだが、どうやらお前さんは儂に負けず劣らずの頑固者らしい。そしたらどうだ、名前に技量、挙げ句の果てに口調まで似てると来たもんだ!』
どうやら儂は気づかないうちに相当危ない橋を渡っていたらしい。
下手をこけば転生すら出来ずに消え、彼女と再び出会うことすら叶わなかったということだ。
だが、不思議と目の前の自分? を責める気にはなれなかった。
確かに紙一重の生還ならぬ生誕を果たしたわけだが、コイツが儂の願いを聞き届けてくれなければそのまま天国に行っていたかもしれないというわけだ。
「………………なあ、アンタ…………って、オイどうした!?」
せめて礼の一つでもくれてやろうと思ったが、村正の身体は消えかかっており少し触れただけでも砕け散ってしまいそうだった。
『ちっ、もう時間切れかよ。いいかよく聞いとけ、テメェは儂の力を引き継いでこそいるが身体能力も技量もまだ二割しか引き出せてねぇ。だから最後の段階に入る』
村正は手を差し出すと、儂に手を出すように催促してくる。
訳も分からないまま儂は手を差し出し、それを村正は強引に握ってきた。
その瞬間、儂の中から壮絶な力が溢れ出すのを感じた。
「なっ!? なんだ、コイツは!?」
『それが本来の儂のというか、お前さんの力だよ。細かい説明をしてる時間はねぇ…………ほら、とっとと行きやがれ!!』
全身が震え上がりそうになるほどの発破をかけられた儂は、村正の横を通り過ぎ角の女子の方に駆けていった。
「…………ありがとな、儂」
すれ違う刹那、ボソッと感謝の言葉を呟いていったがアイツがどんな表情をしていたのかは分からない。
◆◆◆◆
気づけば時の流れは通常通りに戻っており、女子の落下は再開していた。
再び焦燥感に駆られかけるが、すぐに冷静さを取り戻す。
さっきまでよりも遥かに身体が軽く、後方に流れ行く景色も早送りの映像を見ているかのようだった。
「間に合ぇえええええええええええええ!!」
女子が地面に衝突する直前、ぎりぎりまで伸ばした腕は女子の身体を抱き留めることが出来た。
0p敵から距離を取り、女子を抱えたまま瓦礫の裏に身を隠す。
どうやら落下のショックで意識を失っていただけで、どうやら大事には至っていないようだ。
内心ホッとしていると、角の女子は呻き声をあげながら目を覚ました。
「あ、あなたは…………」
ブロンドのロングヘアーは言うに及ばず、その整った愛らしい相貌も前世のアイツそっくりだった。
何もかもが瓜二つのコイツは、もしかしたら儂と同様に転生した彼女なのではないかとも思ったがその可能性は取っ払う。
仮にその推測が正しかったとしても、向こうは儂のことを覚えていないだろう。
だから、この世界では赤の他人だ。
「大きな怪我はねぇみたいだな。なら、すぐに逃げて余裕がありそうなら動けないヤツを見つけて助けてやってくれ」
儂はそれだけ言い残し、女子から離れようとするがいきなり袖を掴まれ動きを止められてしまう。
「あの、気をつけてくだサイ。絶対に死なないで、必ずまた会えると約束してほしいデス」
俯かせた顔には影が射してよく見えなかったが、その声音からは怯えのようなものが感じ取れた。
まるで一度失った悲しみをもう一度味わいたくない、そんな必死さがひしひしと伝わってくる。
「バカ、高校の入試ごときで死んでたまるかよ。…………わかった、またお前さんと話せるようにすっから行かせてくれ」
「っ! 約束、しまシタからね!」
…………ったく、声や喋り方までそっくりすぎていっそのこと笑えてくるな。
女子が角を利用しかなり離れたことを確認して、儂は0p敵と対峙する。
「さて、約束もしちまったしさっさと片付けるとするかねぇ!」
ぶっつけ本番だが、もう一人の村正に託されたこの力でコイツをぶっ飛ばす!
「真髄、解明。完成理念、収束。鍛造技法、臨界────」
燃え盛る無数の剣の荒野が出現、すべての剣が一斉に砕け散り儂の手に荒野同様に燃え盛る刀が形を成す。
そして、儂はそれを己の全てを込めて振り抜いた。
「冥土の土産に拝みやがれ!これが
凄まじい衝撃とともに地面から紅蓮の炎が吹き出し、0p敵を包み込んだ。
炎が消えた後、ようやく視界が開けたときには0p敵は真っ二つに切り裂かれ、全身を真っ黒焦げにするという悲惨な姿に成り果てていた。
『終了~!!』
0p敵の稼働停止を確認すると同時に、プレゼント·マイクの終了の宣言が響く。
さっきの女子を探すべく周囲を見渡していたが、人だかりができその中に彼女の目立つ角が辛うじて見えた。
儂の言い付け通り、どうやら他の受験者たちを助けて回っていたらしい。
ちらほらと聞こえてくる感謝の言葉に邪魔するのも無粋か、そう思った儂は会場の出入口へと向かった。
アイツも必ず合格している、そんな漠然とした確信が儂にはあったからだ。
◆◆◆◆
入試が終わって一週間が経ち、儂は妹と一緒に夕飯を取っていた。
妹の名前はイリヤスフィール·フォン·アインツベルン。
小学5年生で身体もまだまだ小さく、性格も良く言えば素直で悪く言えば単純という内面も見事な子供っぷり。
そして、何故名字が違うのかと言えば、儂は俗に言う養子というやつでイリヤと同じ年のころに引き取られたからだ。
親父の名字は衛宮だが、儂は引き取られる前の千子を名乗っている。
当初こそ悲しい顔をされたものだが、実の両親を忘れたくないという儂の言い分を受け入れてくれた。
今思えばそんな感動的な理由ではなく、実際には魂に刻まれた千子村正という名前以外を名乗るのが嫌だっただけかもしれないが。
「ね、ねえお兄ちゃん」
「なんだ? イリヤ」
「そろそろだよね? お兄ちゃんの学校の合格発表」
夕飯を食べ終えると、イリヤは若干緊張した面持ちで聞いてくる。
自分が受験したわけでもなかろうに、何故そんなに緊張しているのかを問いたいぐらいだった。
「心配はいらねぇよ。筆記も自己採点した限り問題ねぇし、実技に至っては充分な結果を出せた。だから、安心していい」
そっと頭を撫でてやると固まっていた表情はふにゃりととろけ、しばらくされるがままになっていた。
食器を片付けるために儂が席を立つと、一瞬残念そうな顔をしていたがあんまりやり過ぎて普段からねだられるようになっても困るから当分はお預けだな。
イリヤがとぼとぼとリビングから出ていくのを見つつ、食器を洗っていく。
食器を洗いながら、ぼんやりと入試の時に出会った女子のことを思い出していた。
前世の彼女に瓜二つなアイツの顔がどうも頭から離れず、時折こうして考えてしまう。
決して本人と限らないのに、何故こうも執着しているのか。
「お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん!!」
ドタバタと慌ててリビングに飛び込んできたかと思えば、『ビターン!!』と漫画みたいな擬音を立ててイリヤが顔面から派手にすっ転んだ。
その手には手紙が握られており、十中八九雄英からの手紙で間違いないだろう。
「こ、これ……雄英からの…………お手紙……」
「ありがとな、イリヤ」
鼻を押さえながら顔を上げるイリヤから手紙を受け取り、自室へと戻って中身を確認する。
小型の投影機が同封され、いざ起動してみれば視界いっぱいになるほどの大きさでナンバーワンヒーロー·オールマイトの顔が空中に映し出される。
『私が投影された!!』
来年度から雄英に勤めることになったらしいが、どういう意図があってのものかの方が儂からすれば気になるところだ。
どうやら時間が迫っているらしく、本題の合格発表に移行した。
『まずは筆記試験だが、ほぼ満点!! 実技も73pとトップクラスだ!!』
雑な計算だったが、見事に正答を出していたらしい。
合格であることを確信し、イリヤに報告するため部屋を出ようとしたところでまだオールマイトの話が終わっていないことに気づく。
『先の入試! 見ていたのは
非公開の評価基準も含まれていたってわけか、随分と味な真似しやがるな。
『
「おいおい、マジかよ」
驚愕のあまりドアノブにかけていた手を無意識に離し、一瞬呆然としてしまった。
だが、これで道は開かれたってわけだ。
『来いよ千子少年!
今度こそイリヤに報告すると、想像通り狂喜乱舞していたのはイリヤの方だった。
コイツが受験に合格したときとか、ぶっ倒れたりしないだろうなという不安を儂は抱いていたのだった。
オリ主の村正は身体能力がサーヴァント並みにレベルアップです!!
実はポニーちゃんにも重大な秘密が…………!!