パリピなウマ娘とパリピ(偽)トレーナー 作:勢い任せ
あと誤字脱字あったらすみません
中央トレセン学園
一流のウマ娘達を輩出し続ける名門中の名門。
そんなこの国生きるものならば当たり前に知っているほどの知名度の施設。
そんな施設に入れるのはウマ娘の中でも極1部の才能が認められたウマ娘達だけだ。
そして、その選ばれた1人であるダイタクヘリオスは昼休みにふらふらと廊下を歩いていた。
学園に入学したばかりの彼女はまだとてつもない広さを誇る学園を把握しきれておらず、探索という名目で散歩をしていたのだ。
ヘリオスは首をキョロキョロと動かし、黒に青いメッシュが混じった長めの髪を揺らしながら歩いて行く。
「ねぇそこの彼女!君良い脚してるね〜。体もチョベリグって感じでいい感じにキマってるし、レースでもいい感じに結果出せそうだよね〜。どう?これから俺とお茶でもしながら話しようよ、丁度そこにナウイ感じの食堂があるからさ!」
ヘリオスが人気があまりない外と繋がる通路まで到着した時、そんな声が聞こえた。
トレセン学園ではあまり聞きなれない低い男性の声に思わず足を止める。
声の距離感から自らに向けられた言葉ではないことは分かったが、格式あるトレセン学園では聞きなれない言葉の羅列にどうしても興味をそそられてしまった。
頭に生えた耳が無意識に揺れる。
声の聞こえた方に顔を向けると、そこには1人の男と自分と同じ新入生と思われるウマ娘の姿があった。
「げ……嘘でしょ…」
その姿を見た時、思わずそう呟いた。
男の姿はスーツ姿で、胸にトレセン学園のバッチがあることからトレーナーであることは分かるのだが、しかし、そのバッチが偽物であることを疑いたくなるくらい怪しい格好だった。
明らかに染められたものである金色の髪は、左右に剃り込みを入れられていて、なおかつ顔には何故かサングラスをかけている。
よく見ればスーツも着崩されていて、胸の部分も開けているのが見えた。
指にはじゃらじゃらという効果音が似合いそうなほどに大量の指輪をつけている。
そんな姿はあまりにも自身が想像するトレーナー像とはかけ離れていて、底抜けに明るく大抵のことは笑って流してしまうヘ彼女であっても思わず後退りしてしまうほどだった。
遠くから見ているだけのヘリオスでもこうなのだ、そんな人物にあんなに近距離で話しかけられているウマ娘本人は恐怖で体を震わせながら、涙目になって腰を抜かしそうになっていた。
話をちゃんと聞けばただトレーナーがウマ娘をスカウトしているというトレセン学園ではよくある構図なのだが、見た目と少し古臭い言葉遣いからか、話しかけられているウマ娘は悪い男にナンパされているような気持ちになっているようだった。
「君も今年入学したばっかりの子だよね〜、俺もそうなのよ。だからかなぁ〜みんな俺のことアウトオブ眼中っていうか、お呼びでない!って感じでさ、話も碌に聞いてくれないわけ!だからどうか俺のこと助けると思って話だけでも聞いてよ!ザギンのシースーみたいな高いのは無理だけど奢るからさ〜」
完全に怯えた様子のウマ娘にも気づかずにトレーナー…と思われる人物は距離を詰めていく。
それにヘリオスは藁をも掴むような切実なものを少しだけ感じたが、話しかけられているウマ娘にとってはそんな様子ですら恐怖を煽るようなものでしかないようで、さらに震えてしまう。
「む…」
絞り出すような小さな声…それはウマ娘が発したはじめての言葉だった。
「む?」
ようやく反応をもらえたトレーナーはウマ娘の言葉をよく聞こうとしたのか耳をウマ娘の方へ向けて傾ける。
言葉が聞けたことが嬉しいのか少しだけ口角が上がっているのがヘリオスには見えた。
「無理ですぅうううううううううう!!!」
恐らくキャパシティを超えてしまったのだろう、絶叫と言っていい大きな声を出しながら、ウマ娘の脚力を存分に活かし、トレーナーとは逆方向にダッシュで走り抜けていくウマ娘。
そんな様子にトレーナーは呆然と見つめることしかできない。
ウマ娘の脚力で全力で逃げられてしまっては、ただの人間であるトレーナーには追いつきようもないし、ここで逃げた相手を追いかけるのは絵面的に不審者でしかない。
そんなことを理解しているのかトレーナーは腕をウマ娘が逃げていった方向へと伸ばし、力なく空中で何かを掴むような動作をしながら固まり、頭を落とした。
そんな姿のまま数秒呆けたように固まったトレーナーは、今度は膝から崩れ落ちて両手を地面につけて分かりやすく絶望しているようなポーズを取る。
そんな様子を見てヘリオスは自分はどうするべきなのかと固まってしまう。
普段テンションの向くままに行動する彼女らしくない長考をし、手を付き震えているトレーナーを見ながら右往左往してしまう。
勧誘したウマ娘に逃げられてしまうトレーナーを可哀想という気持ちもあるし、見た目と話し方の問題だろうという気持ちもある。
そんな複雑な感情の狭間の中で、ヘリオスは引き攣った笑顔を浮かべていた。
そんなヘリオスに、トレーナーのか細い声が聞こえてくる。
「あぁ…もうダメだ。折角トレセン学園のトレーナーになれたのに1人もスカウトできないし…理事長とかたづなさんにもなんか引き攣った笑顔で見られるし…田舎のお袋になんて言えばいいんだ。トレセン学園に内定決まってあんなに喜んでくれたのに、1人も担当出来ませんでしたなんて口が裂けても言えない。
あぁもう死のうかな…このまま生き恥晒すよりマシだろうし…」
「ちょちょ!トレーナーさんなーに暗いこと言ってんの!さっきみたいにテンションぶち上げでいこーよ☆」
どんどんと暗い方向へと思考を伸ばすトレーナーを見かねて、ヘリオスは気付くとそう声をかけていた。
客観的に見て関わりたくない人物ではあるのだが、そんな人物にさえも咄嗟に声をかけてしまうのがヘリオスの良い所だ。
さっきのような引き攣った笑顔ではなく、見るものが自然と目を奪われるような溌剌とした笑顔で、両手を胸の前でクロスさせながらポーズを決める。
そんな彼女にトレーナーは初めて気づいたのか顔を上げ、口を鯉のように開けて驚く。
「あぁ、申し訳ない…みっともない所を見せてしまったな。目の前のことに集中しすぎて周りに人がいることに気がつかなかった、これじゃあトレーナー失格だな」
流石に膝をついた状態ではまずいと思ったのか姿勢を正し、立ち上がりながら膝についた泥を払い、トレーナーは申し訳なさそうにそう言った。
スカウト時とは似ても似つかない言葉遣いで、落ち着いた口調になると元々低いであろう声が更に低くなり、少しだけドスが効いたような感じになっていた。
先程の口調は素ではないのだろうか…ヘリオスはそんな疑問を持つが、一旦それは頭の隅に置いて言葉を続ける。
「トレーナーさんマジぴえんってなってるけど一回振られたくらいでめげてちゃダメだよ!確かに逃げられて辛いのは分かりみが深いけどさー、トレーナーさんも見た目エグいからそこはもっとちゃんとしないと!」
「ぴえん…?分かりみ…?慰めてくれてるのは分かるが所々何を言ってるか分からないんだが…」
「MJK……トレーナーさんパリピ語分かんないの!?あんなにノリノリで話してたから分かる人だと思ってたのに!」
「え…いや、パリピ語は分かるはずなんだが、トレセンに来る前に知人に教えてもらったし…」
「じゃあフロリダって分かる?別件バウワーは?」
「なんだそれは、全然聞いたことないぞ」
「これも分かんないの!?…というか口調も最初と全然違うし!トレーナーさん偽パリピじゃん!」
偽パリピという言葉にショックを受けたのか、少しだけ元気を取り戻していたはずのトレーナーはまたガックリと肩落とす。
そのまま大きく息を吸い、大きなため息と共に言葉を吐き出す。
「そうか、俺のパリピは所詮偽物だったのか…内定貰ってから必死に勉強して、知り合いに頭下げてまで教えてもらってまで習得したものが偽物だったなんて…滑稽すぎて笑えてくるな」
両手を顔に当てて天を仰ぐトレーナー。
なぜパリピ語を必死に勉強していたかはヘリオスには1mmたりとも理解出来なかったが、彼が相応の努力をして手に入れたであるということはなんとなく分かった。
それが分かるとヘリオスは不憫に思えてしまい、次の瞬間には無意識にトレーナーの手を取っていた。
「トレーナーさん、今から一緒にお茶しよ☆うちで良かったら相談乗るよ〜。ここでエンカしたのも何かの縁だし全集中で聞いちゃうよ!」
無意識にそんな誘いをしてしまったのはヘリオスの持つ優しさか、単純にどこかチグハグさを感じさせるトレーナーに関する興味が大きいのか、それはヘリオス自身にも分からなかった。
しかし、いつもテンションに身を任せて行動するヘリオスにとってはそんなことすらどうでもいいことではあった。
ただ自分がそうしたいからそうした、彼女はそんなウマ娘だった。
そんなヘリオスの言葉を聞いて、トレーナーは明らかにテンションが上がっていくのがわかった。
恐らくこれまで断られ続けて碌に話も出来なかったのだろう。そんなことを感じるほど熱が入っていくのをヘリオスは感じていた。
「え、良いのか!?ぜひ頼む!」
そう言いながらヘリオスの両手をキツく握りしめるトレーナーに若干の苦笑いをしながら、ヘリオスはトレーナーの手を引いた。
☆ ☆
「それで、トレーナーは何でそんな格好と言葉遣いしてたの?」
学園に作られたテラスでお茶を飲みながら、ヘリオスはそう言った。
ちなみにテラスにくる前にもお喋りをし、さん付けはしなくても良いと許可を貰っていた。
それは元々敬語が苦手な彼女にとっては有難い申し出だった。
そんな彼女がお茶に口を付け言った第一声の言葉は、ヘリオスが一番気になっていた所だった。トレーナーの話し方はどちらかというと自分と話していたものだというのは何となく分かっていたので、わざわざ無理やり口調を変えている理由がヘリオスには分からなかったのだ。
ヘリオスは両肘をテーブルにかけて手を顎にかけながらトレーナーの発言を促す。
「いや、これはな…色々あって」
言いづらそうにそう話し始めたトレーナーは、ゆっくりとではあるが自分のことを語り始めた。
「元から無愛想なやつだっていう自覚はあったんだ。昔から勉強しかしてこなくて、トレーナーになるために遊びも友達付き合いも全部捨てて努力してきた。
その結果もあってトレーナーの養成学校では常に成績は1番だった。
同期の奴らに無愛想なのを馬鹿にされていたのは知っていたが、結果さえ出し続ければ良いんだと無視してきた。
そうやって勉強を続けてトレセン学園の内定を貰った時、同期の1人にこんなことを言われた。
お前みたいな無愛想なやつをトレーナーにしたがるウマ娘はいない…ってな。
そいつはトレセンに落ちたやつで多分負け惜しみで言ったんだろう、俺はいつものように気にしないつもりだった」
「だった?」
「そう…だったんだが、良く考えてみれば確かにそうかもしれないって思ったんだ。
どんなに勉強して指導力を得たとしてもそれについて来てくれるウマ娘がいなきゃなんの意味もない。
それにもしウマ娘の担当ができたとしてもやる気管理やウマ娘たちの不安を汲み取るためにはウマ娘達との意思疎通が出来なきゃいけない。
今までの俺はトレセン学園に受かるための知識を詰め込むだけで精一杯だったが、実際にウマ娘の担当になるためにはコミュニケーション能力っていうのが欠けていると考えた。
それで知り合いのウマ娘に今の子達が使うナウイ言葉を教えてもらったんだ」
「それであの言葉遣いだったんだ〜。んで、その格好は?」
ヘリオスは一旦言葉遣いの件には納得し、ウマ娘を怖がらせている原因の多くを占めているいるであろう格好の説明を求めた。
「格好も同じウマ娘に今流行ってる格好っていうのを色々雑誌で教えてもらった。その子は現役の子達のほとんどが憧れているような子だし、その子に聞けば間違いないと思った」
どうやら彼の格好は一部の偏った意見を聞いた結果のものらしい。
そう思ったヘリオスはなんとかその認識を直すために口を開く。
「トレーナー!その格好じゃぜんっぜんだめだよ☆うちもマジでエグくてドン引きって感じだし〜、とりま手についてるの外そっ!」
「え…格好もダメなのか?言葉遣いだけじゃなくて?」
「言葉遣いはウチ的にはありよりのありって感じ〜それより格好がなしよりのなしかな☆みんなビビっちゃってると思うし!」
「なるほど…この格好はダメなのか…」
「そそ!スーツもちゃんと着て、サングラスも外そっ!そうすればみんなのバイブスも上がってくると思うよ☆」
自分の今までしてきたことが間違っていると言われトレーナーは大分ショックを受けたようだったが、これまで1人もスカウトがうまくいっていないという危機感があるのか、ヘリオスの言うことを素直に聞いて指輪とサングラスを外し、スーツもしっかりとボタンを留める。
「お!やっぱりこっちの方がエモくていいじゃん!」
「エモい?良く分からないけど褒めてくれてるんだよな?周りから目つきが悪い言われるんだがどうだろうか、やはりこの年代の女の子から見たら怖くないか?」
不安そうにトレーナーは言う。
それに反応してヘリオスはゆっくりと目を細めながらトレーナーの顔の造形を確認する。
確かに本人が言うようにトレーナーの目は常に何処かを睨んでいるようなそんな印象を受ける。
恐らく意識していないと下がってしまうのであろうキツく下がった口角と合わさって、お世辞にも話しかけやすい人物ではなかった。
それを正直に伝えるかヘリオスは迷い、唸り声をあげながら悩む。
そうしていると当然の如く数秒の間が生まれてしまい、そうなればトレーナーはヘリオスが自身に気を使って言えないのであろうということが容易に想像がついてしまう。
「そうだよな、正直自分でも怖いと思うし…女の子目線だと余計にそうだよなぁ…」
乾いた笑いを浮かべながらトレーナーは外したサングラスを手持ち無沙汰に弄る。
それにヘリオスはどうフォローするべきか慌てるが、そんな時ふと自虐的に笑うトレーナーの口角が上がっている所に目が行く。
細められた目とともに下がった目尻と合わさって、先ほどよりかは怖いという印象は薄れていた。
「ちょ!その顔だよトレーナー!結構イケてんじゃん!」
「へ?」
「トレーナー!笑って笑って!もっと目尻下げて口角バク上げで…ほらこんな風に!」
ヘリオスはそう言うと見本を見せるように自身も目を細め、人差し指を口の端に当てて口角を上げるポーズを取る。
そんな体を張った見本を見せられてはトレーナーも従わざるおえず、ヘリオスの真似をして自信ができる精一杯の笑顔を浮かべる。
「お、いいねぇ!トレーナーもっとバイブス上げてこう!思いっきり!」
「え、まだダメか?それならこれでどうだ!?」
トレーナーはやけになっているのか更に表情を崩す。
そんな風に必死に笑顔をトレーナーを見て、ヘリオスも自然と自身の口角が上がっていくのを感じた。
そして、ヘリオスは必死に自分にどうだと聞いてくるトレーナーを一旦無視し、ポケットからスマホを取り出す。
そして精一杯の笑顔を浮かべるトレーナーにスマホを向ける。
カシャ
そんな音がスマホから鳴った。
「え、今お前写真撮ったのか?普通に恥ずかしいんだが…」
笑顔を作るのに必死だったトレーナーはヘリオスにスマホを向けられてことすら気付いていなかったようで、呆けたように言った。
笑顔作ることすら忘れ、いつもの怖い顔に戻っている。
「うん☆だって自分で見ないとトレーナーも分かんないっしょ?トレーナーのサイコーの笑顔撮ったから、自分で見てみてよ」
そう言ってヘリオスはスマホをトレーナーへと向けて写真を見せる。
それをトレーナーはじっと見つめると、信じられないものを見たように口に手をあてて目を見開く。
「大分マシになってる…笑っただけでこんなに変わるものなのか…」
しみじみと、信じられないというニュアンスも含ませながらそう言うトレーナー。
そんな様子がなんだか可笑しくて、ヘリオスは吹き出すように笑った。
「ぷっ、今まで自分の笑顔見たことないの?」
「あぁ、正直自分の顔は好きじゃなかったし…笑顔の自分なんて想像もしたこともなかった」
「そんなんじゃダメっしょトレーナー!ウマ娘ってのはみんなを笑顔に出来る存在なんだから!それを1番近くで見てるトレーナーもアゲアゲじゃなくっちゃ☆」
ヘリオスはそう言いながら両手を顔の前まで持ってきてピースする。
それを見たトレーナーは顔に手を当てる。
それによって表情は伺うことは出来ないが、震えている肩と僅かに漏れる嗚咽から泣いているのだということが分かった。
トレーナーがなぜ急に泣き出してしまったのかがヘリオスには分からず、混乱しながら慌てて声をかける。
「ちょちょ!なんで泣いてんのトレーナー!?ウチの話聞いてた!?アゲアゲじゃなくちゃダメなんだって!」
「申し訳ない…こんな大事なことをウマ娘に教えてもらうなんて…やっぱり俺はダメなトレーナーだと思ったら自然と涙が…」
「ネガティヴ禁止!テンアゲでうぇーいって感じじゃないと!」
ヘリオスはトレーナーを励ますようにまた声をかける。
ヘリオスは人の泣き顔が好きではない、勿論誰しもそうだとは思うのだが、常に自らが笑顔で周りも笑顔で囲まれているのが好きなヘリオスは余計にそう思うのだ。
片手でトレーナーの肩を叩きながらもう片方の手でピースを作る。
人を励ます時、楽しい時、テンションが上がった時、彼女の手は自然とその形になる。
周りを笑顔にしたいという彼女の、ウマ娘としての本能がそこに現れている。
そんな姿を見て、トレーナーは涙が溢れる目をスーツの裾で拭い、笑顔を作る。
「そうだよな、君のおかげで目が覚めた」
「ヘリオス」
「え?」
「ダイタクヘリオス、それがウチの名前だよトレーナー☆呼ぶときはヘリオスでいいよ!」
君と言われたことに引っかかったのか、ヘリオスは訂正の言葉を挟んだ。
それを聞いたトレーナーは一瞬戸惑ったが、すぐに納得し、言葉を訂正する。
「…ヘリオス本当にありがとう。ヘリオスのおかげでトレーナーとしてもう一度頑張っていく覚悟ができた」
「全然気にしなくていいよ!ウチが好きでやったことだしっ」
「よし!そうと決まれば俺はすぐに笑顔とパリピ語の練習をしてくる!せめてヘリオスの言葉を全部理解出来るくらいにならないと!」
トレーナーはそう言うと勢いよく立ち上がり、立ち去ろうとする。
恐らく目標が決まったことですぐに行動に移したくてしょうがないのだろう、子供のような笑顔を浮かべる姿を見てヘリオスはそう思った。
しかし、このまま行かせてしまうのはヘリオスとしては少し面白くなかった。
折角出来たトレセン学園のトレーナーとの縁なのだ、それをみすみす逃してしまうほどヘリオスも馬鹿ではなかった。
「待ってよトレーナー☆」
トレーナーのスーツの裾を掴み、ヘリオスは止める。
それにトレーナーは不思議そうな顔を浮かべる。何か用があるのか、そんな表情だった。
「パリピ語ならウチが教えてあげる!」
そう宣言をした。
トレセン学園でトレーナーというものがどれだけ貴重であるかヘリオスは知っている。
2000を超えるウマ娘が在籍するトレセン学園で、トレーナーがそれに見合うだけの数がいるかといえばそうではなく、担当してもらうということがウマ娘にとって最初の試練であると授業では教えてもらっていた。
打算なく彼の話を聞いたというのは彼女の本心ではあるのだが、それはそれ。
真っ直ぐとトレーナーを見つめるヘリオスの笑顔は、少しだけ悪い笑顔だった。
「いいのか!?ヘリオスに教えてもらうのが1番良いというのは思っていたんだが、これ以上君に迷惑をかけるのはいけないと…」
そんな黒い思惑にも気づかずに、トレーナーは嬉しそうな、それでいて申し訳そうなそんな表情を浮かべた。
「ウチもパリピ語分かるいつメン出来たらアゲって感じだし〜それにトレーナーのこと心配だしね☆だから、今日からウチがトレーナーのパリピ先生だから!」
そう言いピース姿でバッチリと決めるヘリオスの笑顔は、今日1番のものだった。
最近のパリピ語調べるのが1番大変でした。