パリピなウマ娘とパリピ(偽)トレーナー 作:勢い任せ
無駄に暗い感じになってしまったり、レース結果は忠実通りですが結構捏造入ってるところもあったり、アプリやアニメのパーマーとは違う所もあります。
メジロパーマーというウマ娘は、一言で言えば期待されないウマ娘であった。
パーマーはメジロ家という一族に産まれた。
メジロ家と言えばウマ娘達の中でも一種の憧れのような存在だ。
メジロの名のつくウマ娘達は偉大な結果をレースで出し続け、その血を繋いでいくことでその存在を強固なものとしてきた。
メジロ家に産まれたものは産まれた時から英才教育を受け、最高峰の施設で訓練を行うことが出来る。
ウマ娘という走ることを求める存在にとって、走りだけに集中することが出来るその待遇、そしてそんな中で訓練をし結果を出し続ける存在に憧れを抱かずにはいられない。
しかし、そんな誰もが羨むような境遇がパーマーにとってはそうではなかった。
周りでメジロ家を持て囃すもの達は、メジロ家のものが皆平等な期待を、待遇を受けていると思っている。
だからこそ、周りにいる学校の友達はメジロの名を持つパーマーを羨む。
けれでも現実はそうではない。メジロの名を持つウマ娘達にも格差というものがあり、期待されたものは確かに過保護と言えるほど丁重に扱われ、普段の食事や睡眠時間ですらメジロ家の専属トレーナーが管理している。
逆に期待されないもの達はトレーナーなどつくはずもなく、放任主義と言えば聞こえはいいが、ただ放置するだけのそれをそんな綺麗な言葉では表現出来ない扱いだった。
これだけを聞くと冷たく感じてしまうが、仕方のないことでもある。
ウマ娘を…更に言えばG1レースで勝つようなものを1人育てるというのはとてもお金のかかることであるので、いかにメジロ家といえども全てのものに平等に労力をかけられるわけではない。
1部の期待される、才能のあるウマ娘達に力が集中していくというのは合理的なことだった。
常に結果を残す必要がある。
そんなことはメジロ家に産まれたものにとっては息をすることと同じくらい当たり前のことで、なおかつ絶対的なものだった。
息ができないものが死んでいくように、勝つことが出来ないウマ娘はメジロ家にとって死んでいるも同然な存在だった。
そういう意味で言えばパーマーは死んでいる側のウマ娘と言える。
期待は同世代であるマックイーンとライアンに集まり、彼女は常に蚊帳の外。
メジロ家のトレーナーなど当然つくはずもなく、広大な施設をただ1人走り続ける毎日を繰り返す。
ウマ娘としてレースに出る道を諦めてしまえば楽だったのかもしれない。
ウマ娘としての指導が受けれないだけで、普通に暮らしていく分にはメジロ家は不自由のない場所であったからだ。
走ることをやめ、パーマーが大好きなお花畑の中でのんびりと毎日過ごすという道も悪くはないだろう。
しかし、彼女の中に流れるウマ娘としての血がそれを許さない。
走れるにも関わらず1番を諦めてしまう道を、彼女は選ぶことが出来なかった。
毎日毎日1人で走り続けた。
メジロ家の中で期待されないことは分かっている。
学校でみんなから羨望の眼差し見られるのも、それが自分に向けられたものでなくメジロの名に向けられていることを知っている。
それでも走り続ける。
別にそのことに上等な理由なんてものはない。
自分に期待しないメジロ家のもの達を見返したいとも思っていないし、期待されるマックイーンやライアンに嫉妬があるわけでもない。
ただ走ることが好き。
そんなウマ娘ならば誰もが当たり前に思っていることを、パーマーも当然の様に思っているだけだ。
風を切って走るのが気持ちいい。
移り変わる周りの景色を見ていると、自分だけが特別な世界にいるようで気分がいい。
メジロ家にとっては死んでいるウマ娘かもしれないが、走っている時には誰よりも生きていると感じることが出来る。
そんなことの積み重ねが、パーマーを走りの世界から逃げるという思考をどんどんと消し去っていく。
1人でもいい、期待されなくてもいい、走ることさえ出来ればそれで十分だ。
トレセン学園に入学するまでパーマーは、本気でそう思っていた。
☆
トレセン学園に入学して、パーマーは現実を知った。
トレセン学園では、自身の実力がどの程度の位置にあるのか、それを嫌でも知ることになる。
今までずっと1人で走っていたから分からなかったものが、レースの順位という結果で目に見えるものになるからだ。
そのある意味残酷な世界で、彼女の実力は決して低いものではなかった。
同世代の中で行う模擬レースでは常に上位だったし、選抜レースでも結果を残すことが出来た。
そうなれば当然期待する。
テレビの向こうで見た輝かしいウマ娘達。そんな存在になれるんじゃないかという期待と、そしてもう一つは、自分を見てくれるトレーナーがいるんじゃないかという期待。
メジロ家の中では期待されなかった自分を見つけ出して、憧れの舞台に連れて行ってくれる存在、それがいるんじゃないかと期待した。
メジロの名を持つパーマーじゃない、等身大の自分を見てくれる存在がいるんじゃないかと。
ずっと昔に封じ込めた筈の気持ちが飛び出してきて、選抜レースが終わった後にソワソワと周りを見渡してしまった。
『君、ちょっといいかな』
そんな爆発しそうなほどの気持ちが表に出るように、聞こえてきた言葉に反応した。
遂に自分を見てくれる存在がいた、そんなふうに思ったからだ。
「はい!もしかしてスカウトですか!?」
自分でも信じられないほどの嬉しそうな笑顔をパーマーは浮かべ、しかしその反対で声をかけた筈のトレーナーは引き攣った笑顔を浮かべる。
『え、いやごめん。僕が声かけたのは君の後ろにいる子なんだ…』
申し訳なさそうにそう言うトレーナー。
どうやらパーマーは早とちりをしてしまったらしい。
彼女は恥ずかしさで真っ赤になる顔を見られないように両手を手の前で振りながら笑って誤魔化すと、いたたまれなくなりその場から離れた。
今度はこんな間違いが起きないように周りの子達から距離を取って、なおかつトレーナー達の目に入るような位置で待機する。
話しかけやすいように精一杯の笑顔を浮かべながら、自分に声をかけていると勘違いしたトレーナーに話しかけられている自分よりも順位が低かった子を横目に、泣きそうになる目頭を必死に抑える。
そんなことをしながらパーマーはスカウトを待ち続けたが、結局次のレースが始まっても声はかけられなかった。
全部のレースを見終わってから声をかける子を決めているのかもしれない。
その時の彼女はそう思った。
トレーナーが一度に担当出来る人数は限られているから、序盤に多くのウマ娘をスカウトしてしまっては後半に出てきたウマ娘が粒揃いだった場合困るだろうし、全てのレースを見終わってから総合的に判断したいというのがトレーナーの気持ちなのだろう。
そんな理があるようなないような自分に都合の良い妄想をし、パーマーはコース外のトレーナー達からよく見えるような位置に座り込みただただスカウトを待ち続けた。
(1着だったんだし、きっと誰かスカウトしてくれるよね。いつ話しかけられてもいいように姿勢正しくしないと…)
そんな考えは本当に思っただけなのか、それとも自らを安心するために思ったことなのか、その時の彼女には分からなかった。
そんな風に彼女が思っているうちにもどんどんとレースは進んでいき、ついには全てのレースが終わってしまった。
トレーナー達が最後に走った子達の元に駆け寄っていくのを横目に見ながら、パーマーは心の中で訴える。
自分はここにいる。
ただそれだけを心の中でずっと叫び続けた。
口に出していれば喉が枯れ果ててしまうであろうほど繰り返すが、一向にパーマーに声はかからなかった。
1人、また1人と、トレーナー達は減っていく。
スカウトに成功したウマ娘と楽しそうに話をしながらゆっくりと学園へと戻っていく姿を見ていると、パーマーの目には自然と涙が溢れていた。
スカウトされるためには笑顔じゃなければ、そう思い必死に涙を止めようとするが一度流れ出したものを止めることは難しく、せめて泣いている所を見られないように膝に顔を埋めて隠す。
必死にズボンで拭うが止まることのない涙。
それがパーマーにとっては、なぜ流れているのか分からなかった。
期待されないのはいつものことなのに、1人ぼっちなのもいつも通りなのに、走ることさえ出来ればいい筈だったのに。
そうやって自分を納得させるための考えを必死に浮かべても涙は止まらない。
そんな涙を見てしまうと、パーマーは自分の本心を理解せざるを得なかった。
パーマーは期待していたのだ。
みんなから期待されることを、そしてそれを一心に受ける自分自身の力を。
しかし、現実は1着を取ったのにも関わらずスカウトの1人も来ない。
パーマーよりも順位が低かったウマ娘でさえスカウトを受けているにも関わらずだ。
その理由は分からない、知ろうとする気力すら残っていなかった。
ただ一つ分かることは、パーマーに期待してるものはいないということだけだった。
☆
選抜レースが終わった後、結局パーマーはメジロ家のトレーナーに引き取られることになった。
寮長のフジキセキから渡された手紙から事務的に紹介を受け、書類に自分の名前を書くだけでトレーナーは決まった。
それまでに顔合わせは一度もなく、ただレースに出る時に名前を貸してくれるだけの契約だった。
トレーニングを1人で行い、ただレースに出るだけの生活。
それはメジロ家にいた時と同じ状況で、トレセン学園に来ても変わらない生活にパーマーは呆れて笑ってしまった。
後で風の噂で聞いたのだが、パーマーに名前を貸してくれたトレーナーはライアンの担当らしかった。
それを聞いた時、パーマーは初めて怒りの感情を持った。
今まで当たり前に受け入れてきたもののはずだが、自らの本心を理解してしまったパーマーは、それを受け入れることが出来なかった。
ふざけるな。
人生で初めて心の底から思った。
拳から血が出るほどに強く握りしめ、パーマーは覚悟を決めた。
期待されないのならば期待されるほどの結果を出せばいいだけだ。
ウマ娘の誰もが憧れるG1の舞台での勝利。
それを成し遂げれば、みんなパーマーに期待せざるをえない。
選抜レースなんて小さな舞台ではなく、多くの観客が見守るレース場で結果を残す。
誰もが目を離せないほどの眩い光になると、この日パーマーは誓った。
☆
それからパーマーは1人でトレーニング、レース出場を繰り返した。
初勝利に3戦を使ったが、負けた2戦も共に2着と十分に実力を見せる結果だった。
その後のコスモス賞も1着で勝利。
生涯一度も勝てないで引退していくウマ娘も多い中で、着実に結果を出した彼女は確かに才能のあるウマ娘だった。
しかし、それで満足したりはしない。パーマーの目標はあくまでもG1での勝利なのだ。
それを成すためには、足りないものが多いとその時のパーマーは思っていた。
その足りないものを埋めるように短期間でのレース出場を繰り返し、その無茶が祟ってか怪我をした。
その時の絶望は忘れられない。
初めて過ごした走れない時間をどうすればいいか分からず、何をするにも上の空だった。
マックイーンやライアンがお見舞いに来てくれたりもしたが、その2人をパーマーはどんな顔で見ればいいのかわからなかった。
明らかに優遇されている2人と、その逆で放置されている自分。
メジロ家にいた時には感じなかった不満を、何故かその時は感じてしまった。
2人が優しいウマ娘であることをパーマーは知っている。
一回だけではあったが、トレーナーの指導が受けられないならばと合同訓練を提案して、一緒にトレーニングをしてくれたこともあった。
それが一回で終わってしまったのは、彼女達とトレーニングをする時に居心地の悪さを感じてしまったからだ。
2人からではなく、他のメジロ家のもの達の何か言いたげな視線に耐えられなくて、1人が好きだからとか適当な理由をつけて2回目からは断った。
そんな経験から、2人がパーマーに優しくしてくれているのは知っているし、メジロ家では仲良く話もしていた。
けれでも病室にお見舞いの品を持ってやってきた2人に、苦笑いを浮かべながらやり過ごすことしか出来なかった。
メジロ家ではどんな会話をしていたんだっけ、どんな風に笑っていたんだっけ、そんなことを思いながら中身のない会話を繰り返した。
そんな風に2人と微妙な距離感を保ちながら病院生活をし、そして退院した。
その後はまたトレーナーに碌に指導すらされない状態でトレーニングをし、自らメンタルを整えて、作戦を立てハイペースでレースに臨む。
そんなことが当たり前に出来るのならばウマ娘にトレーナーがいる理由はなく、当然のようにパーマーは精彩をかいた。
レースに出て、そして負ける。
1人で反省をするのも限界があり、反省点が絞りきれないままトレーニングを行い、そしてレースに出て負ける。
そんな負のループを永遠と繰り返し、結局また怪我をした。
2度目の怪我にパーマーはどんな感情でいればいいのか分からなかった。
悲しめばいいのか怒ればいいのか…そんなことも分からなくなるほどに荒んだ気持ちは、怪我が治っても治ることはなく、復帰戦では無様に負けた。
その結果にさらに精神を乱された心は、突如現れたトレーナーの一言によってまた乱された。
『パーマー、君は夏のレースの結果次第で障害の方に行ってもらうことになった』
障害レース、それは名前の通り生垣やハードルなどを乗り越えて走っていくレースだ。
そんなレースを勧められて、パーマーの感情はさらに荒れた。
障害も立派なレースではある。
障害レースを誇りを持ってやっているウマ娘達をパーマーは知っているし、それを勧められたからって怒ることはおかしいのかもしれない。
けれど、吐き捨てるようにそれだけを言って去っていくトレーナーは、パーマーが障害に向いているから勧めたわけではきっとない。
ーー結果を出せないお前は障害くらいでしか使い物にならないだろう
そんな裏を考えてしまうのはパーマーの考えすぎか、しかしそんなことを考えてしまってもおかしくはない状況ではあった。
腹の奥から込み上げてくる人生で2度目の激情を、パーマーは寮の枕に顔を埋めて吐き出した。
それは誰にも届くことがない、人生初めての絶叫だった。
☆
その後、パーマーはまた同じことを繰り返してた。
トレーニングをしてレースに出る、ただそれだけの作業。
それに以前とは違う所があるとするならば危機感だろうか。
明確に定められたデットライン、少しづつ近づいてくるそれから必死に逃げるようにパーマーはトレーニングを続け、その結果は少しずつ出始めた。
復帰から何戦かは結果は振るわなかったが、夢であるG1の舞台にも出ることができた。
天皇賞春。
それはパーマーが初めて踏んだG1の芝。
いつも踏んでいるものとはどこか違うようなものを感じて、久々に笑顔が戻ってくるのをパーマーは感じた。
そんないつもと違う面持ちで参加した初G1は見事なまでの惨敗だった。
いつものように逃げの一手を打ち、途中までは気持ちよく走っていた。
今まで感じたことがないくらい脚が軽くて、どこまででも走って行けそうな気持ちだった。
そんな気持ちが揺らいだのは、突如感じた後ろからの強烈なプレッシャーからだ。
パーマーの首に食らいつかんとする圧倒的な威圧感。
そんな存在を確認するほどの精神力はパーマーにはなく、とにかく気配から逃げようと脚に力を入れたその一瞬、自らの横を通り過ぎていく存在を認識した。
「マックイーン…!」
レース中であるにも関わらず思わずそう呟いてしまったのは、その存在がパーマーにとってとても大きいものであったからだ。
同じメジロ家で育ったウマ娘。
自分と違い期待されたウマ娘。
しかし、そんなマックイーンにパーマーは親近感を感じていた。
マックイーンも確かに大事にされていたが、メジロ家の期待を受けていたのはどちらかといえばライアンの方だった。
優遇されている中でも区分がしっかりとあって、マックイーンはメジロ家の1番ではなかった。
そんなマックイーンに、パーマーは同族意識を少しだけ持っていたのだ。
そんなマックイーンが、パーマーの横を通り過ぎて行く。
前だけを見つめて、その視線はゴールだけを向いている。
パーマーなんて眼中にないような…いや、ようなではなくないんだろう。
1度抜いた逃げウマ娘に差し返されると思うウマ娘はいない。
マックイーンにとってパーマーはすでに乗り越えた壁であって、その壁がもう一度目の前に来ることはない。
そんなことを乗り越えられた壁であるパーマーは分からされて、先程まであれだけ軽かった脚が気付けば沼に嵌ったかのように重い。
遠ざかっていくマックイーンの背中へと無意識に伸ばした手は空を切り、離されていく背中をパーマーはただ絶望しながら見ていた。
マックイーンの背中を見ながら思うのは、納得だった。
G1の舞台で結果を出せるウマ娘。そんな一握りの存在がマックイーンで、それに力を入れて育成をするメジロ家は正しい存在であったのだ。
間違っているのは結果を出せない自分の方で、そんな存在が期待されないのは当たり前のことだった。
そんな納得というか、諦めの気持ちをパーマーは抱えながらゴールした。
結果は13着。
1着を取り観客席へと手を振るマックイーンを横目に見ながら、パーマーは誰よりも早く会場を後にした。
☆
現実を知ったパーマーはその後も走り続けた。
今までのような必死さはなくなり、最低限の練習メニューをこなす。
しかし、結果を出すことは諦めきれないのかレースの頻度は落とすことはなかった。
そんな状態でレースで結果は出ないと思っていたが、何故か結果は出た。
恐らく今までオーバーワーク気味だった分が上手く調整されたのだろう。
熱が入らない分レースでかかってしまうこともなくなって、冷静に戦略を立てられた。
無意識に重なった偶然が勝利を呼び込んだ。
天皇賞春の次のレースでは2着を取り、次のレースは1着。
重賞ではないものの久しぶりの勝利に、パーマーはウイニングライブでセンターを飾ったが、うまく笑えていた自信はなかった。
後に続いたG3でも勝利した。
それはパーマーにとって初めての重賞制覇。しかし、彼女の中に嬉しいという感情はなかった
脳裏にこびりついたマックイーンの姿が離れない。
自分を抜き去っていく時のゴールだけを見る横顔。
勝った後の観客へと手を振る姿。
そんなマックイーンに溢れんばかりの賛辞を送る観客達。
そして、そんなマックイーンから逃げるように去る自分。
それを思い出してしまって、パーマーは喜ぶことができなかった。
頭の中でマックイーンが、ライアンが、重賞制覇如きで喜ぶ自分を馬鹿にしているように感じてしまって。
2人がそんな人物ではないと分かっているはずなのに、メジロ家で自分の手を引いてくれた2人がそんなことするはずがないのに…けれど妄想は止まらなくて。
この日、パーマーはウイニングライブで笑わなかった。
☆
最低限の練習しかしない状況で結果が出続けるわけもなく、パーマーはその後3連敗した。
そして、そんな身が入らないパーマーの気持ちを察知したように、トレーナーから障害行きを告げられた。
拒否しようという気持ちすら沸かず、黙ってそれに従った。
障害のコースを無心で走り、障害を超えていく。
そこで初めて知ったのだが、パーマーは飛び越えが苦手で、何度も柵に足を打ちつけた。
痛めた足にため息を吐きながら練習を繰り返すものの、飛び越えは一向に上手くならない。
やる気も気力もない状態で練習しても上達なんてする筈もなく、不完全な状態のまま挑んだレースでは当然の如く負けた。
怪我のリスクが高い障害でそんな様ではレースに出続けることは流石に許可されず、僅か2戦でパーマーは平場へと戻ってきた。
2度と走れない可能性すらあった平場に戻ってきてもパーマーの気持ちは上の空で、練習にも手がつかなかった。
学園の中庭にある丸太へと腰を下ろし、手持ち無沙汰に足を揺らす。
自分は何をしたいんだろう。そんな自問自答を繰り返し、無駄に日々を過ごすパーマー。
そんなどん底のパーマーが変わったのはあるバカコンビに出会ってからだ。
「君、これから一緒にバイブス上げてかない?」
そんなわけも分からない誘いから、彼女の物語は始まった。
出会いって言いながら出会ったの最後だけに…すみません。