棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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要約……こっちも再会(仮)させてあげれるよ……長かった


ツアレニーニャ・ベイロン

同じ頃、勢揃いした『蒼の薔薇』は『とむらいの鐘』と互いに自己紹介し合っていた。

 

「貴公があああ、イビルアイ殿かあああ?」

 

「ああ、貴殿らの噂は私達も耳にしている。会えて光栄だ」

 

イビルアイと固く握手する現在のウルリクムミは、挨拶のために兜を外し素顔を見せている。ガガーランが「なかなかの男前じゃねえか」と褒める一方、赤色のイジャニーヤ…ティナはウルリクムミをジッと見つめて不満そうに呟く。

 

「…………大きいにもほどがある」

 

「?」

 

「ちょっとティナ!」

 

「鬼ボス、私にはわかる。あの手のイケオジは絶対幼少期が完璧だった」

 

逆に青色のイジャニーヤ…ティアはアルラウネを凝視していた。

 

「なにか?」

 

「………美しい」

 

「………? ありがとうございます?」

 

 

妙なことを言う双子に慌てて説教しだすラキュースに、『とむらいの鐘』の二人はただ不思議そうに首を傾げるしかなかった。

 

「それにしても、何か用なのか?」

 

ここでイビルアイの何気ない言葉に、目的を思い出したようにウルリクムミが手を叩く。

 

「実は俺達はあああ、イビルアイ殿に用があったのだあああ」

 

「私に?」

 

「ニーガ・ルールーという蜥蜴人をおおお、知っているかあああ?」

 

ウルリクムミの口から出た弟子(ニーガ)の名に、仮面越しでもわかるほどイビルアイの声が明るくなる。

 

「ニーガ…? お前達、ニーガの知り合いなのか!?」

 

「うむううう、あやつとは旧知の仲ゆえええ」

 

「そうだったのか! なあ、あいつは元気か?」

 

「実はその件なのだがあああ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後互いの状況を話し合い、ひとまずその場はお開きとなって『とむらいの鐘』は外に出て夜空を見上げていた。

 

「それにしても……御大将?」

 

「うむううう」

 

アルラウネのやや嬉しそうな声に対し、ウルリクムミはただ頷く。ニヌルタの手紙を届けに来ただけのはずが、まさかモレクとチェルノボーグに再会できるとは………とんだ因果の交差があったものだと二人はただただしみじみする。

 

 

 

「あの……」

 

「んんん?」

 

ここで声をかけられて振り返れば、そこにはメイドが立っていた。確か彼女はチェルノボーグの従者だという人間の娘らしい。

 

「ウルリクムミ様と、アルラウネ様……ですよね? 改めて助けていただいてありがとうございます」

 

深々と頭を下げる彼女に二人は苦笑で返す。

 

「否あああ、礼には及ばぬううう」

 

「クローム公は?」

 

「そ、それがその……急にチェル様が泣きついてしまいまして……」

 

「………泣く?」

 

メイドの言葉にアルラウネはもちろん、ウルリクムミも驚愕せざるを得ない。

 

あのチェルノボーグが?

 

どういうことかと詳しく聞いてみると、彼女はクロームが部屋に入ってきた途端に彼に抱きついたかと思えば、静かに啜り泣いてしまったのだという。

なぜ悲しむのかと聞く二人に答えられる様子ではなく、最終的には泣きつかれて眠ってしまったチェルノボーグは、モレクの服の袖を強く握りしめて離さなかったというのだ。

 

「あんなチェル様、始めて見ました」

 

まるで迷子の子猫が母猫を見つけたような安堵を抱きながら眠る主に、メイドはなんとなく二人きりにさせてあげたほうがいいのではないかと思い、外に出たところだと言う。それらを一通り聞き、ウルリクムミは納得する。チラリとアルラウネを見やれば、彼女も察したようで穏やかに微笑んでいた。

かつての大戦で、彼女がどのタイミングで死んだのかは定かではないが、死別したと思われた愛する男との再会に感極まったのだろう。

 

そういう意味では二人が再会するきっかけを作ってくれた彼女には、感謝してもいいくらいかもしれない。

 

「そういえばあああ、まだ名を聞いていなかったなあああ」

 

 

「は、はい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私、ツアレニーニャと申します」

 

 

 

「………ツアレニーニャ?」

 

メイドの名前……ツアレニーニャという響きに二人は何か引っかかりを覚え、つい首を傾げてしまう。

 

なんだか、どこかで聞いたような名前だ。

いつだったか……確かあれは漆黒の剣を始めとする、顔なじみ達と酒を飲みながら話していたような。

確かその時の内容は………

 

 

 

 

『姉さんの名前は、ツアレニーニャ・ベイロンです』

 

 

 

 

 

「………」

 

 

 

「どうされました?」

 

 

急に黙り込んだ二人に、ツアレニーニャは何か失言でもしてしまったのかと戸惑うも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「あああああああああああああああ!?」」

 

 

「!?」

 

間を開けてからの叫び声に、思わず猫のように飛び上がってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同時刻、漆黒の剣が依頼を終えて帰って来た頃、エ・ランテルの冒険者組合はそろそろ受付時間が終了する時間帯に迫っていた。

 

「あ〜、疲れた……」

 

検問を潜ったところでまずルクルットがその場に崩れ落ち、続けてニニャも大きく息をつく。今回の依頼はだいぶ骨の折れる戦いがあったためか、仲間達は今すぐベッドで寝たいくらいクタクタだった。この重たい身体を引きずって今から組合に行っても、正直間に合うかどうかわからない。

 

もう報告は明日にしようかと悩んでいた時だった。

 

 

「ニニャ君! ニニャ君はいるかい!?」

 

遠くからニニャを呼ぶ声が聞こえて一同の視線がそちらに向けば、暗がりの向こうからアインザックが慌ててこちらに走ってくる姿が見えた。

 

「組合長?」

 

「ああよかった! ちょうど戻って来てくれて!」

 

アインザックはよほど急いで来たのか、ニニャの前で立ち止まり膝に手をつき荒く呼吸している。

 

「ど、どうされたんですか?」

 

組合長のいつにない慌てように戸惑いつつ、ニニャは彼に声をかけた。

 

 

「う、ウルリクムミ君達から……連絡が……!」

 

 

ニニャの眼前に差し出されたのは、桃色の光を帯びた一輪の花だった。それは『とむらいの鐘』の二人が王都へ向かう前日に、『自分達が不在の間、エ・ランテルに何かあった時はこれで連絡してほしい』と、アルラウネからアインザックに託した『伝言』が使えるアイテムらしい。

それをわざわざ自分達に持ってきたアインザックの慌てぶり、もしや二人の身に何かあったのだろうか?

彼らの実力を信頼している『漆黒の剣』ではあるが、いささか不安がよぎってしまう。

 

「………はい、ニニャです」

 

アインザックから受け取ったニニャは恐る恐る花に話しかけてみる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『セリー!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「………え?」

 

しかし花から聞こえてきたのは、重く響くような男声でも、常に疑問形を末尾に加える女声でも、どちらのものでもなかった。

 

 

 

だがニニャだけは、女の声を聞いた途端に目を見開き呆けた声を漏らしてしまう。

何よりもその声の主が呼んだ名前は、今となっては知る者が少ないはずの自身の本名で……。

 

『その声……やっぱりセリーなのね!? 私よ、ツアレニーニャよ!』

 

懐かしい声と、忘れようがない名前は、間違いない。

 

「………姉さん?」

 

ずっと探し求めていた、大好きな姉の声だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ええええええええええええええ!?」」」

 

 

 

花越しに交わされる二人の会話に聞き耳を立てていた仲間達は、互いに顔を見合わせて絶叫する。

正直当事者であるニニャよりも3人のほうが驚いているのではないだろうか。

 

「どう……して……!?」

 

動揺するニニャ……もとい妹のセリーに対し、ツアレは顔など見えなくともわかるほど涙混じりの声で、これまでなにがあったのかを話し出すのだった。

 

 

 

 

貴族に拐われたものの紆余曲折あって逃げ出せた彼女は、妹との再会を願いながら各地を旅していた。今はちょうど王都に来ていたところだったのだが、そこで『とむらいの鐘』の二人に出会って自身の名を明かしたところ、二人から『同名の姉を探す冒険者の知り合いがいる』と言われ、もしかしたらと二人の伝手でアインザックに連絡したのだというのだ。

 

 

「じゃあ……っ……無事、なんだね? 姉さん……!」

 

『ええ、ええ! 助けてくれた方のおかげで、怪我とかもせずにいられたわ!』

 

ツアレ曰く、とある恩人が彼女を貴族から助けてくれたそうで、以降の道中もツアレを守ってくれたという。 

 

ニニャの花を握る手が震える。

言いたいことがたくさんあるのに、溢れる涙のせいで上手く言葉が出てこない。

それでもせめて、彼にこの言葉だけは伝えたい。

 

「う、ウルリクムミさん……本当に……なにからなにまで……ありがとうございます…!」

 

『本当にただの偶然だあああ。感謝ならばあああ、ツアレ嬢の恩人とやらにでも伝えよおおお』

 

あいも変わらず頼もしくも謙虚な英雄の声が彼女の胸をうつ。

 

「はいっ……はいっ……!」

 

安堵のあまり張り詰めていた気持ちが緩んだのか、ニニャは涙を流してその場にへたり込んだ。

 

「やったじゃねえかニニャ!」

 

「こんな偶然てあるんだ……」

 

「なにはともあれ、おめでとうである!」

 

黙って見守っていたルクルット達も、ニニャの背中を叩き満面の笑顔で心から祝福する。

 

 

 

 

「ああ、まさかこんな……! 神様、ありがとうございます!」

 

 

 

 

 

かくして言葉のみではあったものの、ある姉妹の再会は為された。

同時に『とむらいの鐘』の武勇伝が、また一つ増えたのだった。

 




今は言葉越しの再会。直接の再会はまた後日に

次回からエピローグ。

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