棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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ようやく死の螺旋編にこれた……


襲撃者

それから森の賢王のその後の扱いに関して、一同で話し合いが行われた。ニニャは是非ともエ・ランテルに連れていき、モモンの凄さを誇示するために騎乗して凱旋すべきと強く主張していたが、ウルリクムミが先の帝国兵士の襲撃を例に出してたためにそれは却下された。結局森の賢王はモモンから『ハムスケ』という名前を与えられ、ンフィーレアの哀願でそのまま森に残すこととなったのだ。

 

そしてその後、ウルリクムミが採取した薬草で十分すぎるほどの成果を得られたために、一行は街に戻ってきた。

 

(なんか………思ったより見せ場がなかったなあ)

 

モモンもとい、アインズは内心でため息をつく。今回の依頼で漆黒の剣に自身の凄さを見せつけ、冒険者モモンの名声を広めてもらうはずだったのだが、どうにもウルリクムミに色々と割を食われてしまった気がする。

特に彼が採取した薬草の件。例の植物は全て希少価値のあるものなので、かなりの依頼料を期待できたはず。しかし一本も採取できなかった自分が、ここで報酬を全部貰おうなんて言い出せば、『金にがめつい男』と思われて冒険者組合に吹聴されかねない。なので無難に漆黒の剣六人と自分達二人から計算し、モモン達が三割・漆黒の剣が七割の報酬を受けとるという話で落ち着いた。

 

(森の賢王を服従させたっていう話も、信じてもらえるかどうかはわからないし………)

 

口で語るだけならいくらでも言える。ニニャが言うように、従えた魔獣を連れてくれば街の住人も信じてもらえたかもしれないが、村が一度襲撃されかけていたというのに守護してくれる魔獣を連れていくのはあんまりだというウルリクムミの言い分もわからなくはない。第一あんなデカイだけのハムスターに騎乗して街を練り歩くなんて、恥ずかしいにもほどがある。

 

(まあ、まだ初日だから仕方ないか)

 

ひとまず報酬は得られるわけだし、明日以降また別の依頼で成果を見せればいい。気持ちを切り替えて臨もうとするアインズに、ここで急に伝言(メッセージ)が繋がった。

 

(誰だ?)

 

(失礼アインズ様、アルベドでございます)

 

発信者はアルベドだった。いつも通りの事務的な口調で話しかける彼女に、アインズは問う。

 

(どうしたアルベド、定時報告まではまだ時間があるはずだが?)

 

(はっ、現在火急の事態が発生したため、大至急アインズ様にナザリックへご帰還いただきたく思いまして)

 

(なに?)

 

アルベドのいつになく真剣な口調に、アインズも訝しむ。彼女が火急と称するなど、一体なにがあったのだろうか?

すぐに戻ると告げ、アインズは漆黒の剣達に向き直る。

 

「すみません。急用を思い出したので、先に宿に戻ってもよろしいでしょうか?」

 

「ええ、構いませんよ」

 

漆黒の剣のメンバーは、一足先にンフィーレアの店へ荷下ろしをすませることになっている。あとは彼らだけでも十分なのでモモンが抜けても問題ないだろう。

 

「では、私はこれで」

 

足早に宿屋に向かうモモンとナーベを見送り、ウルリクムミはチラリとアルラウネを見る。視線の意味を察した彼女は指先から小さな花びらを一枚生み出し、風に乗せて二人のほうへ気づかれないように流す。監視と盗聴・隠蔽の自在式も込められているため、そう簡単には気づかれないはず。

 

「じゃあ、私達も行きましょう」

 

馬の手綱を引き、馬車に続くように一向は歩いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

宿屋からナザリックに転移したアインズが、デミウルゴスがアシズに惨殺されたという報せを受けたのは、それから間もなくのことだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

現在、クレマンティーヌは退屈していた。カジットが起こそうとしている『死の螺旋』の前倒しのために『叡者の額冠』を強奪したはいいが、それを唯一使いこなせるであろう薬師の少年が外出中だったのだ。しかたなく墓地の負のオーラを集めるために死体を集めてはいたが、さすがにカジットに咎められてそちらも中断だ。

情報によると少年は薬草採取の護衛を銅と銀と白金の冒険者に依頼し、トブの大森林の近くにあるカルネ村に向かったとのこと。街との往復時間を考慮に入れると、そろそろ戻ってきてもいいはず。

 

「カジッちゃ~ん、あの坊やまだ帰ってこないの~? いい加減待ってるの退屈なんだけど~」

 

少年の店のテーブルの上に寝転がり、手慰みにスティレットを弄る彼女に裏口から不機嫌そうな声がかかる。

 

「貴様はいい加減危機感を持たぬか。部下からの報告では、彼奴らはすでに街に戻ってきている」

 

カジットの言葉にガバリと起き上がり、クレマンティーヌの顔がニンマリと笑顔を見せる。それは嗜虐の笑み、新しいオモチャを得たことに喜ぶ殺人鬼の笑みだ。

 

「そっか~、なら早くお出迎えしてあげないとねえ」

 

「油断するな、小僧に同行している冒険者には『白金』も混じっているのだぞ」

 

「あ~、そうだったね~。確か『ウルリクムミ』と『アルラウネ』だっけ?」

 

三年の間に白金に上りつめた、エ・ランテルでも知らぬ者はいないとされる凄腕の冒険者。未来のアダマンタイトと期待されるだけのその二人が、果たしてどれほど自分を楽しませてくれるのか………

 

「楽しみだな~」

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーお疲れ様です」

 

と、表の入り口から話し声が聞こえてきた。

 

(来た!)

 

ようやくターゲットが帰ってきたらしい。テーブルから下りてクレマンティーヌは店の表へ、カジットは裏口から回って正面玄関へ向かう。

 

「おばあちゃん、いないのかな? 果実水が母屋に冷やしてあるはずですから、飲んでいってください」

 

「そいつはいいねぇ」

 

「ではこちらです」

 

これから血の惨劇を見るとも知らず、呑気な会話をしあうやつらを嘲笑いながらクレマンティーヌは暗闇の中から姿を表す。

 

「はーい、お帰りなさい」

 

無人と思われた店の奥から、見知らぬ女が現れたことに一同が固まる。

 

「……どなたでしょうか?」

 

最初に質問したのはターゲットであるンフィーレアで、戸惑いを隠せずクレマンティーヌを凝視する。当然だろう。今の時間帯は店じまいでお客は入ってこれないはず、この見知らぬ女はどうやって侵入したのだろうかと疑問に思う。

 

「ん? えへへ~、私はね。君を浚いに来たんだ~」

 

わざとらしく猫なで声で目的を明かせば、後ろの冒険者達が目を見開き身を固める。

 

「アンデッドの大群を召喚する『不死の軍勢(アンデスアーミー)』って魔法を、君に使って欲しいんだよね~。お姉さんの、お願い~」

 

ジリジリと歩み寄れば、ンフィーレアは恐怖から手にしたランプを落としてしまう。それを合図にしたようにペテルとルクルットが前に出て、ンフィーレアを守ろうとする。ニニャがンフィーレアの手を引いて玄関へ逃げようとするが、

 

「逃げられると困っちゃうんだよね~」

 

「遊び過ぎだ」

 

二人の眼前をカジットが阻む。退路を絶たれた状態に、追い詰められた一同の顔に焦りが浮かぶ。

 

「んじゃ、ちゃっちゃとやりましょうかね~」

 

ニタリと狂気の笑みを浮かべ、クレマンティーヌは跳ねる。まずは眼前の戦士で遊ぼうと、スティレットを彼の肩から袈裟懸けに切り裂いた。

 

 

 

 

 

ペテルの傷口から溢れたのは、鮮やかな赤い血ではなく、薄桃色の花びらだった。

 

「!?」

 

その光景に一瞬だけ思考が止まるクレマンティーヌとカジット。次の瞬間、ペテルのみならずほかの四人も形が崩れて花びらに変わる。部屋中を舞う花びらは二人の身体に大量に付着すると、その身が鉄のように重くなる。

 

「ガッ、カハ!?」

 

重量に耐えきれず二人はその場に倒れてしまう。そこへ正面玄関の扉を開けて何者かが入ってきた。

 

「…………『不死の軍勢』とは?」

 

一人は、クレマンティーヌ達を拘束する花びらと同じ色の美女。

 

「なぜアンデッドを大量に召喚する必要があるううう?」

 

もう一人は、濃紺のフルプレートアーマーを纏った大男。

 

「お前っ………らはあ……!」

 

その身体的特徴を見て、クレマンティーヌは確信する。この二人は例の白金級の冒険者、ウルリクムミとアルラウネだ。

 

(しくじった! さっきの冒険者達が四人しかいなかったことに違和感を持つべきだった!)

 

幻術系魔法か、はたまたそれとも違った魔法か。元漆黒聖典として名を馳せた自分ですら気づけなかったとは、この女は相当の腕を持った術師のようだ。

と、ウルリクムミが背中に担いでいたバトルアックスを、クレマンティーヌに向けて高く掲げる。

 

「!?」

 

バトルアックスは武器の重量と彼の腕力が上乗せされた勢いのまま、クレマンティーヌの右腕に振り下ろされる。

 

「ああああああああああああ!?」

 

切断された腕から血飛沫が溢れ、クレマンティーヌは苦痛の絶叫をあげる。肉体は苦痛を誤魔化すためにのたうち回りたいが、重い花びらのせいで転がることもできない。

 

「アルラウネえええ」

 

「お待ちを?」

 

部屋中に散らばる余った花びらが再び舞い、今度はクレマンティーヌの傷口を覆うように付着する。斬られた肉の断面が何枚もの花びらで見えなくなると、溢れる血は止血されて痛みも驚くほどに消えた。

それに安堵したのも束の間、ウルリクムミが今度はクレマンティーヌの反対側に立ち、再び彼女の腕に斧を振り下ろす。

 

「ぎゃああああああああああ!?」

 

またも激痛に悶えるクレマンティーヌだが、再び花びらが傷口を塞ぎ苦痛がなくなる。涙目でヒュウヒュウと浅く呼吸する彼女に、ウルリクムミは斧をしまって声をかける。

 

「手荒なことをしてすまなんだあああ。だが貴様は見る限りはあああ、かなりの強者であると見受けるううう。ゆえに念のためえええ、反撃の機会を奪う必要があるううう」

 

「クッ………!」

 

最悪だと、クレマンティーヌは内心で歯噛みする。屋内に潜んでいたことを察知されて偽物をあてがわれたうえに、戦士職である彼女の最大の武器である両腕を真っ先に奪われた。これで彼女が戦う術は完全になくなってしまった。

 

「物取り………ではなさそうですね?」

 

「であれば家主を待ち伏せする必要はないはずだあああ。それに先ほどの発言んんん、どうやら貴様らの狙いはンフィーレア少年であったようだなあああ?」

 

ここに来てクレマンティーヌは自身の浅はかさを呪う。この大男は鈍重そうな見た目のくせにかなり頭が回るようだ。

 

「彼に魔法を使ってほしいようで?」

 

「ンフィーレア少年はあああ、あらゆるアイテムを使用できるタレントを持っていると言っていたあああ。つまり彼になんらかの高位のアイテムを使用させえええ、アンデッドを召喚するつもりだったのだろうううう」

 

カジットが言うように、油断せず最初からいけばよかったのか?

それとももっと別の方法で挑むべきだったのか?

 

どうすればいい? どうすればこの場を切り抜けられる?

起死回生の一手を必死に導きだそうとするクレマンティーヌだったが、カジットは身動き一つ取れていなさそうで当てにならない。

 

「それで、貴方達はどちら様でしょうか?」

 

「アンデッドを大量に召喚して何を企んでいるううう?」

 

見下ろす二人を睨むも、クレマンティーヌには文字通り打つ手がない。もはやここまでかと彼女が俯いた瞬間、ガシャンと音を立てて店の窓から何かが投げ込まれた。

 

「?」

 

見ればそれは、先の鋭利な十字型の結晶体だ。そしてほんの数秒だけ、一同の動きが固まった瞬間、結晶体から蜂蜜色の炎が部屋中に溢れかえった。

 

「!?」

 

「なああああ!?」

 

明らかに強い火力の炎に、ウルリクムミは咄嗟にアルラウネの手を引き、彼女を守るように自身の胸に抱き寄せる。炎はアルラウネの花びらを全て焼きつくすも、彼らの身体はおろか店内の備品や壁が燃える様子はない。自らを縛る花びらがなくなったことでようやく自由になれた二人は、炎に乗じて裏口から逃げていった。

 

しばらくしてから部屋を包む炎は消え去り、その場に静寂が訪れる。

 

「…………逃げられたかあああ」

 

撹乱目的の炎に不覚をとったことを悔しむウルリクムミに、アルラウネがフォローするように優しく語りかける。

 

「印はついていると思いますが?」

 

「そうかあああ、ならば追うのは容易かあああ」

 

むしろ彼らのアジトを探るには絶好のチャンスだ。ひとまず憲兵に事情を説明して、応援を呼んだほうがいいかもしれない。

 

 

 

 

「ウルリクムミさん、アルラウネさん! 大丈夫ですか!?」

 

「なんか窓から炎が見えたけど、ケガとかしてねえか!?」

 

二人に外へ待機するよう指示されていたペテルとルクルットが、慌てた様子で正面玄関を開けて入ってきた。

 

「ただの幻術のようだあああ。それよりも侵入者を取り逃がしたあああ、すぐに憲兵と冒険者組合に連絡しいいい、ンフィーレア少年を保護してもらうのだあああ」

 

「了解したである!」

 

一同はンフィーレアの手を引き、冒険者ギルドに向かって走る。その後ろ姿を見送り、二人は顔を見合わせた。

 

「…………しかし御大将、今のは?」

 

「うむううう、間違いないいいい」

 

この世界の魔法と違い、紅世の徒の自在法で作られたアルラウネの花びらが燃やされた。今までの経験上、彼女の自在法が魔法の炎ごときで燃えることなどなかったはず。それにあの蜂蜜色の炎、あの炎の質に二人は覚えがあった。

 

 

 

「今のは徒の炎であったあああ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

両腕を失い逃走を余儀なくされたクレマンティーヌとカジット。二人はある者に抱えられて夜空を飛行していた。

 

「てんめえ………助けるんならもっと早く助けろよ鳥野郎!!」

 

「『薬師の坊やを捕まえるぐらいチョロいチョロい』。って言ってらしたのはどなたでしたっけ?」

 

苛立たしげに悪態をつくクレマンティーヌに返されるのは、襲撃前の彼女の言葉をそのまま引用し淡々とした口調の嫌味で返す異形の怪物だ。金色の羽毛に四対の翼、鋭い嘴と眼光、頭部からたなびく烏の濡れ羽色の髪。黄色のローブを羽織り、両腕にそれぞれ二人を抱えて空を飛ぶその姿は、バードマンと呼ばれる異形種だ。

 

「うるせえな! あんなに強いとは思わなかったんだよ!!」

 

「まあご自慢の逃げ足が斬られずにすんだのは、不幸中の幸いでしたね。『疾風走破』殿?」

 

バードマンがさらに嫌味で返せば、黙っていれば麗しいであろう顔を歪ませて、クレマンティーヌは思いつく限りの罵詈雑言を並べたてる。だがそんな彼女を無視してバードマンはもう片方に抱えたカジットに声をかける。

 

「宝珠は奪われてませんか?」

 

「こ………この通りだ……」

 

弱々しい声で片手に握りしめる宝珠を高く掲げるのを見て、バードマンは頷く。

 

「なら大丈夫そうですね」

 

「何が大丈夫なものか! 件のタレント使いがいなくば『不死の軍勢』は使えんのだぞ!?」

 

『叡者の額冠』を使えそうな人材の誘拐に失敗した以上、もはや『死の螺旋』の前倒しは不可能。おまけに冒険者組合と憲兵に連絡がいくのも時間の問題。もはや自身の悲願は潰えたも同然だ。

 

「ああ、それならなんとかなりますから」

 

「は………?」

 

だというのに、バードマンはなんでもないかのように淡々と答える。

 

「大丈夫ですよ。私がなんとかしますから」

 




その頃のナザリック


デミ「私の牧場と羊があああああああああ!!」(´;□;`)

コキュ「ゲ、元気ヲ出セデミウルゴス! 羊ナラマタ飼育スレバイイ!!;」

アルベド「今すぐナザリックの全軍をもってロイツに進軍よ! 我らに歯向かった愚かな天使に死よりも重い苦痛と絶望を与えるのよ!!」

アウラ「そのアシズとかいう天使を取っ捕まえて、ニューロニストに拷問して貰おうよ!!」

マーレ「こ、ここは恐怖公さんの眷族のご飯にしたほうがいいんじゃないでしょうか?」

シャルティア「そんなんじゃぬるいでありんす! 飢食孤蟲王の新しい住みかにしてやるほうが苦痛に違いないでありんす!!」

アインズ「まあ待て、まずは相手の戦力を見極めてから作戦を練るのだ」







アインズ(アシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すアシズ殺すうううううううううううう!!!!)(゜言゜)
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