奥へ進むにつれて、アンデッドの数が減ってきているのをウルリクムミは視認していた。敵のアンデッド召喚魔法の効力が消えてきたのかと安堵したいところだったが、本陣を守る敵の戦力を考慮し、いまだ油断せずに突き進む。
背後の冒険者達はポーションによる強化で士気は最高潮に達しており、もはやズーラーノーンなど恐るるに足りずとばかりにウルリクムミの背中に続く。この勢いのまま本陣の制圧を願うウルリクムミだったが、
「むうううう!?」
前方から見える人影に、突然立ち止まる。
「全員止まれえええ!!」
後ろ手に仲間を制すると、冒険者達は慌ててその場で止まる。何人かはスピードを殺しきれず前のめりに転んだらしく、後方からグエだのドシャドシャという音が響いた。
現れたのはフード付きの黒いローブを纏った小柄な女だ。彼女はニッコリと満面の笑みで口を開く。
「は~い、いらっしゃいませ~」
ヒラヒラと手を振り、間延びした猫なで声で挨拶する女は、陰鬱な墓地とは場違いとも言える異様な雰囲気を醸し出している。だがそれだけでウルリクムミは確信する。間違いない、彼女は先ほどバレアレの店を襲撃した女戦士だ。店では反撃を防ぐために切断されたはずの両腕は、回復魔法でも使ったのか元どおりに生えていた。
「女………?」
「組合長が言ってた、ズーラーノーンのメンバーか!?」
冒険者達は敵を前に武器を構えて身構えるが、ウルリクムミがバトルアックスを真横に向けて彼らを制した。
彼女の佇まいと雰囲気、そして長年の戦士としての勘から、ウルリクムミは最初に見た時から確信していたのだ。
(この女はあああ、強いいいい)
おそらく今この場にいる冒険者達が総出で挑んだとしても、この女を倒すことなど不可能だろう。倒せるとすれば、自分しかいない。
(アルラウネえええ、この女のほかに伏兵はいないかあああ?)
(周辺を探しましたが、彼女のみかと?)
女に聞き取られないように、二人は心中でのみ会話する。伏兵がいないことを知り少しだけ安堵したウルリクムミは、女に歩み寄る。
「待っていたよ~。私、君に会いたくて会いたくてしょうがなかったんだ~」
「俺としてはあああ、二度とその面を拝まずにいたかったがなあああ」
「あっそ~、残念」
間延びした猫なで声に混じるのは、眼前のウルリクムミに対する激しい憎悪。沸き立つ殺意を女は嗜虐的な笑みの下に隠しているが、それでも周囲の冒険者達は女から滲むどす黒い狂気を感じとったようで、僅かにたじろいでしまう。
「お前達はあああ、手を出すなあああ」
やや圧を込めた声で命じれば、戸惑いながらも冒険者達は二人から下がる。
改めてウルリクムミは現状を把握する。現在この場には彼女以外の伏兵はおらず、周囲のアンデッドも全て蹴散らした。そんな中で、かなりの強者と思しきこの女が立ちはだかったということは、現状我々を足止めできそうな戦力が彼女しかいないということなのだろう。
(この女がこの場に現れたということはあああ、敵も相当焦っているとみえるううう)
いわばこの女こそが敵の最終防衛線。ここを越えれば敵の本陣は目と鼻の先だ。
ただ一つだけ、ウルリクムミには気がかりがあった。バレアレの店で二人を救出した『蜂蜜色の炎の徒』だ。アルラウネの自在法を焼ききるほどの力を持っているならば、件の徒の力は甘く見積もっても優れた自在師には違いない。本陣で我々を待ち構えているのか、はたまたどこかに潜んで自身の不意をつこうとしているのか、いまだ行動と目的はわからない。
いずれにせよ、ウルリクムミがやることは一つだ。
「どうだ貴様あああ、この俺とおおお、一騎討ちをする気はないかあああ?」
「………はあん?」
ウルリクムミの提案に、女のそれまでの笑みが引っ込んで不愉快そうに歪んだ。
「先ほどの一件もあってえええ、貴様は俺をなぶり殺したい欲求が強いことだろうううう」
ウルリクムミの見解では、この女はサディスティックで傲慢。己の力に対する絶対的な自信がある。それを不意打ちとはいえ、自分よりも格下と思われる相手に手傷を負わされたとあっては、彼女のプライドとしては相当腸が煮え繰り返る思いのはず。
「それともおおお、俺と直接戦うのは恐ろしいかあああ?」
背後に控える仲間達に女の毒牙が及ばぬよう、あえて挑発的な態度で誘う。
「ムカつくな~………さっき不意打ちで私の腕を斬れたからって、調子乗ってんじゃねえよ」
案の定、女の意識は完全にウルリクムミにのみ向けられた。顔を俯かせて両腕をダランと下げて脱力しているが、依然としてその佇まいに隙はない。
「この国で私に勝てる戦士なんかほとんどいないよ~。この国で私とまともに戦えるのは五人。ガゼフ・ストロノーフ、蒼の薔薇のガガーラン、朱の雫のルイセンベルク・アルベリオン。あとはブレイン・アングラウス、そして引退したヴェスチャー・クロフ・ディ・ローファン……」
女が挙げる名は全て、王国の冒険者であれば知らぬ者はいない強者ばかりだ。そしてその言葉が虚言でも妄想でもないことを一同は確信する。
「たかだか白金級程度のてめえにさあ………!」
狂気の顔をさらに歪ませ、女の口元が弧を描く。
「人外ーーー英雄の領域に踏み込んだ、このクレマンティーヌ様が………負けるはずがねぇんだよお!!」
吐き出された叫びに空気がビリビリと震える。空中に待機している魔法詠唱者達でさえも、それを肌で感じ震えた。
「あはははは………!!」
高笑いと同時に、クレマンティーヌは纏っていた黒いローブを脱ぎ捨てる。マントの下に隠されていたのは、鎧と呼ぶにはあまりにも露出度の高い装備。一見すると鱗鎧のようにも見えるその鎧の表面には、あろうことか何枚もの冒険者プレートが打ち込まれていた。
大部分は銅や鉄。だが中には銀や金………数枚ほどだが白金と思われるものも見える。それを見た冒険者達………特にニニャがヒッと小さく声を漏らした。もしもあの時、アルラウネ達が止めてくれなければ、自分達のプレートもあの鎧の一部にされていたかもしれないと思いゾッとする。
「うんじゃ、いきますよ~!」
右足を後ろに伸ばし、左手を前に伸ばして地を押さえ、身を低く屈めるようにクレマンティーヌは四つん這いの体勢になる。極限まで低いその構え方は戦士というよりは、さながら四足歩行の獣の姿に近い。
ウルリクムミがバトルアックスを持ち直した瞬間、クレマンティーヌが右足を蹴って駆けた。
「ぬうううう!」
まさに俊足。それほど近くなかった二人の距離が瞬時に縮まり、ウルリクムミは彼女を迎え撃とうとバトルアックスを振るうが、
「『不落要塞』」
クレマンティーヌはすかさず防御特化の武技を発動し、ウルリクムミの重い一撃を片手で防ぐ。
「!!」
防がれたことに驚愕するウルリクムミの僅かな隙をクレマンティーヌは見逃さず、彼が反応するよりも早く左肩にスティレットを突き刺した。
カキィンッ!
「!?」
金属同士のぶつかり合う甲高い音が響き、すかさずクレマンティーヌは距離をとる。刺突したウルリクムミの鎧を見れば、彼女が攻撃した箇所には凹みすらついていなかった。
「………固ったいな~。一体何で出来てるの? その鎧」
口では間延びした余裕の態度を崩さないが、クレマンティーヌは内心でウルリクムミの鎧の頑強さに驚愕する。剣を軽く弄る振りをしながら愛用のスティレットを見れば、先が少しだけ欠けてしまっている。
(しゃあないな~。関節や鎧の隙間とか、防御の薄い箇所を狙うしかなさそうね~)
その戦いを固唾を飲んで見守る冒険者達だったが、彼らの目には何が起こったのか理解できないでいた。速度と機動性に特化したクレマンティーヌの動きは、オリハルコン級の視力でも追いきれない。これでは重戦士のウルリクムミとは相性が悪いのではないかと、一同に不安が過る。
そしてまた四つん這いの構えになるクレマンティーヌは、再び地を蹴りウルリクムミに迫る。変わらずバトルアックスを構えているウルリクムミだったが、今度は彼女を迎え撃たない。
「『流水加速』」
それに気をよくしたクレマンティーヌは、今度は速度強化の武技を発動した。
真正面から急カーブしてウルリクムミの真横に入った瞬間、勢いのままにウルリクムミのヘルムの僅かな隙間に向けてスティレットを突き刺そうとする。
だがその攻撃は、バトルアックスの幅広い刃がスティレットを阻んだことで失敗した。
「!?」
その結果にクレマンティーヌの目が見開く。慌ててまた距離を取り、眉間に皺を寄せてウルリクムミの構えをじっと観察する。先ほどの攻撃はクレマンティーヌ自身の素早さに武技を上乗せされたもの、そう易々と防がれるものではないはずだ。おそらくたまたまに違いないと思い直し、クレマンティーヌはまた構えて地を駆ける。今度は背後に回って右肩の関節の僅かな隙間に突き刺そうとするが、今度はよろけるようにウルリクムミの身体が左に傾き、スティレットが空を切る。
「な…………!?」
そんなばかな、とさらに追い討ちをかけるように連続で攻撃するクレマンティーヌだったが、ウルリクムミはまるで千鳥足のようにふらつきながらその全てを躱しきっていた。
(こいつ………さっきから絶妙なタイミングで避けていやがる……!)
もはやここまでくると、彼が攻撃を躱せているのがまぐれでもなんでもないとクレマンティーヌは悟らざるをえなかった。再び距離をとり、クレマンティーヌは叫ぶ。
「っ………! てめえ! なんで私の攻撃が当たらないんだよお!?」
自身が誰よりも誇っている力が、こんな見るからに鈍重そうな戦士に通用しないでいる。これで彼が自分と同じく、速度強化か回避の武技を使っていたならまだ納得できた。だがクレマンティーヌの見立てでは、ウルリクムミは戦い初めてからずっと武技を使用している素振りはまったくなかった。
ありえない、そんなことがありえるはずがない!
そんな苛立ちをぶつける彼女に、ウルリクムミは至って冷静な態度でその問いに答える。
「俺も長いこと戦っているとおおお、似たような戦い方をする戦士とおおお、何度も交戦することはあったあああ」
クレマンティーヌの嗜虐的な性格から考えて、相手をすぐに殺すということはしないはず。じわりじわりと相手をいたぶり、その後で最大の苦痛をもって殺すやり方を好むだろうと、ウルリクムミは確信していた。そうなると彼女が狙いそうなのは、守りの薄そうな部分が主流になるはず。現に先ほどから彼女が執拗に狙っていたのは、ウルリクムミの肩や膝や脇腹など、フルプレートの境目辺りだ。
「ゆえにお前の戦い方あああ、次の一手えええ、あらゆる手段がだいたいは予測できるううう」
だから避けるだけならば、なんとなくできるとウルリクムミは語る。
(思えばあああ、『震威の結い手』に敗北したのもおおお、それが原因だったあああ)
頑丈な鋼の身体も、繋ぎ目が小さい関節などに強大な一撃を受ければ、砕かれてしまう。かつての大戦でも『震威の結い手』はそれを理解した上で、ウルリクムミの肩を重点的に攻撃して大穴を開けたのだ。彼の本性が鋼の巨人であることもあり、どうしても小回りのきく動きや敵との戦いは苦手であった。
だが今は違う。人化したことでもとの姿よりも身軽で動きやすくなっている今のウルリクムミは、クレマンティーヌの速さにも十分対応しきれていた。
だが対するクレマンティーヌは、その言葉にどうしても納得ができなかった。
(こんな………こんな武技さえ使っていない三下野郎なんかに……!)
なんとなくだとか、だいたいだとかで、己の攻撃が掠りもしないという事実に、自身のプライドがズタズタにされるのを感じてスティレットを握る手を震わせる。
「なんか………いけそうじゃないか……?」
「いいぞウルリクムミ! その調子だ!」
「そんなイカれ女、ぶっとばしちまってください!!」
それを見て活気づいたのは、外野に徹していた冒険者達だ。俊足の戦士の攻撃をいなす英雄の姿に彼らの不安が払拭され、激励するように騒ぎだす。
眼前のウルリクムミはおろか、彼より圧倒的に弱いであろう冒険者達にさえコケにされ、クレマンティーヌの怒りはすでに限界を超えていた。
「ならこれも………避けれんのかよお!?」
憤怒の顔で激情の叫びをあげ、クレマンティーヌは再び四つん這いの構えになる。
「『疾風走破』………『超回避』っ………『能力向上』! 『能力超向上』!!」
クレマンティーヌの動き、高位の武技の重ね掛け、それらをみて騒いでいた一同は再び青褪める。冒険者としての勘から彼らは悟った、あれはダメだと。
(これを食らって、生き残れたやつはいねえ!!)
ありったけの怒りと殺意を込めて、クレマンティーヌの右足にグッと力がこもる。
「ウルリクムミさん、逃げてー!!」
それを見たニニャが叫ぶも、すでに手遅れだった。全能力を強化されたクレマンティーヌの一閃が、光の如くウルリクムミに迫る。だが能力が向上されたことで動体視力が上がったクレマンティーヌは見た。
ウルリクムミがあろうことか、自身の武器であり盾でもあるバトルアックスを地面に突き刺し、リラックスするかのように動きを止めたのを。
(直立不動!? こいつ、何を考えて………!?)
まさかこれも避けれるとほざく気か。私を侮辱するのもいい加減にしろ!
血管がぶちギレる音を脳内で聞きながら、クレマンティーヌはスティレットの先端を三列スリットに向けて突き刺そうとする。
「死ねええええええ!!」
『ウルリクムミいいいいいいいいい!!!!』
冒険者達の叫びも虚しく、文字通り手の届く距離まで接近したクレマンティーヌの切先が、ウルリクムミの顔面を貫く…………
寸前にスティレットの先端が、彼の片手でガシリと素早く掴まれた。
「は!?」
そのありえない結果に、クレマンティーヌは一瞬だけ頭が真っ白になる。スティレットの先からヘルムまでのその差、僅か数ミリ。速度に極振りした彼女の一撃が、まぎれもなく彼の腕に阻まれてしまったのだ。
「っ……もうひとつ!!」
動揺する気持ちを必死で抑え、もう一本のスティレットで再び刺そうとするが、そちらも片手で掴まれてしまった。
「な!?」
「むうううううう!!」
驚愕のあまり今度こそ身体が硬直した彼女は、手にした両剣ごと腕を引っ張られてウルリクムミの強固な鎧で覆われた胴体にぶつかる。
「ゴハ!?」
ウルリクムミの鎧の胸当てに顔面を強打し、痛みと衝撃でクレマンティーヌの思考が混濁してしまう。その僅かな隙を見逃さず、ウルリクムミは握っていたスティレットを手放し今度は彼女の首を片手で掴んだ。
「がぁっ!! な……なんっで……!?」
ウルリクムミが首を握る力は呼吸が可能な程度の力加減にも関わらず、クレマンティーヌの両腕でも引き剥がせない。バタバタと両足を振り、彼の鎧を蹴って離れようとするも、カンカンと固い音を響かせるだけでびくともしなかった。
「戦って気づいたがあああ、貴様の必勝パターンはあああ、刺突による一撃必殺のようだなあああ?」
尋常ならざる速度から放たれる突き。なるほど確かに、こんな攻撃を並の冒険者が受ければ間違いなく即死していただろう。先ほど彼女がアダマンタイト級にも勝てると豪語するだけの自信があるのも当然だ。
しかし今回はウルリクムミの鎧が予想以上に固すぎるため、なかなかダメージを与えられなかったのだろう。
「そうなるとおおお、俺に確実に攻撃できる箇所があるとすればあああ、あとはもうここしかないいいい」
そう言ったウルリクムミは、コンコンと指先で自身のヘルムの三列スリットを叩く。消去法から考えて、彼女が次に攻撃してくる箇所がヘルムの隙間と予想したのだ。
あとはウルリクムミの反射神経の問題だ。双剣を使う以上は二連撃がくるだろうとふんで、あえて武器を手放していつでも素手で掴める状態を保った。そしてその判断に誤りはなかった。
「確かにお前は早いいいい。鈍重な俺の攻撃ではあああ、かすることさえ不可能だろうううう」
ゆえにウルリクムミは待ち続けていた。彼女が必殺の一撃を放つために、自分の手の届く範囲に接近する瞬間を。そのためにクレマンティーヌを攻撃するのではなく、彼女の攻撃を躱し続けることで逆上させ、思考の余裕を与えずに懐に誘い込んだのだ。
(何もかも………読まれていた………!?)
それを聞いて、クレマンティーヌは愕然とする。自身の戦い方・性格・自尊心さえも適格に分析したうえでの、無駄のない鮮やかな戦略。
この瞬間、彼女はようやく理解した。眼前のこの男こそが、本物の人外………正真正銘の『英雄』であるということを。
クレマンティーヌを掴む手を離さないまま、ウルリクムミはゆっくりとした動作で地面に刺したバトルアックスを手に取る。彼が柄を掴む手に力を込めた瞬間、バトルアックスの刃が濃紺の炎を纏った。
「ま、まさか………!? 待て! やめろ! やめてえええええええええ!!」
それを見た瞬間、クレマンティーヌの脳裏に先刻の苦痛の記憶が甦る。頭を振り乱し必死に懇願する彼女を無視するように、ウルリクムミは燃えるバトルアックスを高く掲げた。
振り下ろされたのは一度のみだった。
だがその一閃のもと、クレマンティーヌの四肢が全て切り落とされた。
「ぎゃああああああああああああ!!!!」
もはや反撃することは不可能と判断したのか、ウルリクムミはクレマンティーヌの首から手を離し、絶叫を放つ彼女の胴体を地に落とした。
熱せられた刃で斬られたためか、彼女の四肢の傷口は焼き潰されており、血は流れていない。とはいえ激痛には変わりないため、彼女は顔中からあらゆる液体を垂れ流しながら泣き叫び、達磨状態でその場を転げまわっている。
「この女は憲兵につきだせえええ。今回の騒ぎの首謀者としてえええ、いろいろと聞きたいことがあるううう」
「わ、わかりました!」
ウルリクムミが上空の魔法詠唱者二人に指示すると、若干身を強ばらせながらも花びらを降下させる。念のために手拭いで猿靴を噛ませるようにウルリクムミが言い加えてから、尚も暴れる彼女は花びらに乗せられて後方へと運ばれていった。
「ウルリクムミさん!」
ニニャの声に上を見上げればポーションの瓶を投げてよこされ、ウルリクムミはなんなくそれをキャッチする。
ヘルムを少しあげてポーションを飲みつつ、ウルリクムミは周囲の警戒を怠らない。
彼の経験上、不意打ちをするにはこのタイミングがベストなはず。だが敵の徒の攻撃が一向に来ないということは、やはり本陣で我々を迎え撃つ腹積もりなのだろうか?
(しかしいいい、なかなか難しい戦いだったあああ)
正直なところ、普段のウルリクムミの速さではクレマンティーヌに追い付くことは不可能だった。彼がそれでも勝利を納められたのは、アルラウネの身体強化の自在法に加え、ンフィーレアのポーションによる強化、これらが合わさったことで彼女の速度に追い付けるだけの素早さを身に付けられたからだ。
(まあ当たったところでえええ、あれくらいならばあああ、俺の身体に傷など負わないがあああ)
本性が鋼の身体を持つウルリクムミにとって、あの攻撃では刃の先が刺さることさえ1ミリもないだろう。だが観戦する仲間達にどうやって攻撃を防いだかをあとあと説明するのが面倒なため、寸でのところで止めるという方法を選んだのだ。
ウルリクムミは口の端から垂れるのも構わずにポーションを飲みきると、口元を拭いヘルムを被り直す。そして再び仲間達を鼓舞する。
「敵の最終防衛線は突破したあああ!! 戦友達よおおお、本陣まではもう少しだあああ!!」
『うおおおおおおおおおお!!』
夜明けまで、あと少し
それをちょっと遠くから見てたカジッちゃん
「クレマンティーヌウウウウウウウウウウウウウウウ!!!!!」(゜Д゜;)ヒイイイイ