棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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翌日のソリュシャン、セバスと合流。馬車に乗り王都へ

セバス「そうですか………さすがにたっち・みー様ほどではないでしょうが、なかなかの手練れがいたものですね」

ソリュ「何一つ結果を残せず、申し訳ありません……」

セバス「いえ、むしろ貴女はよくぞ無事に生還しました。危うくナザリックの金貨をさらに消費するところでしたからね」

ソリュ「え?」

セバス「実は夕べ、デミウルゴス様が死亡しまして……」

ソリュ「ヱ?」(゜ロ゜)


アダマンタイト

明朝まで宿屋の一室の中央に立ち続けるナーベラル。彼女は御方がいつ戻ってきてもいいように、一睡もせず待ち続けていた。そこへ上位転移の穴が開き、漆黒の鎧を纏ったアインズがやや慌てた様子で現れた。

 

「ナーベラル! すまん、遅くなった!!」

 

「いえ、御方のご指示を受けるのがシモベの本懐でございます」

 

曇りなき目で自身を見つめるナーベラルに、アインズは心の底から申し訳なくなってしまいついため息をついてしまう。

 

「………本当にすまない」

 

「な、なぜ御方が謝られるのですか!?」

 

すぐさま沈静化が働き、アインズはナザリック支配者としての仮面を被り直す。

 

「実は、ナザリックのほうで一大事が起こっていてな。その話し合いに追われていたのだ」

 

そして、ナザリックで報告されたことを彼女にも話した。

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そんな………デミウルゴス様が!?」

 

アインズには遠く及ばないとはいえ、自身より遥かに強大な力を持つ階層守護者の一人が戦死したという報せに、ナーベラルは信じられないと身を震わせて動揺する。

 

「守護者では一番スペックが低いとはいえ、100レベルのデミウルゴスが殺されたとなると、件の天使は相当な強さと思われる」

 

時間停止対策、次元封鎖(ディメンジョナルロック)に似た転移阻害、物理・魔法の完全無効、どれをとっても強力なスキルを持つ天使。しかも途中まではデミウルゴスが配備したシャドウ・デーモン達が彼を追跡していたのだが、ロイツへ向かう街道を通ったあたりで彼らからの連絡が途絶えてしまった。多分尾行に気付かれた天使に殺されたのだろう。ならばニグレドの魔法で監視しようとしたが、どういうわけか彼女が持つあらゆる情報系魔法でも天使を発見できなかった。もしかしたら探知対策(カウンター・ディテクト)に似た魔法を使っているかもしれない。おそらくはロイツへ向かったと思われるため、話し合いの結果、翌日改めて小都市へシャドウ・デーモンを差し向けて様子を見るということになった。

それを聞いたナーベラルは、美しい顔を憤怒に歪めて歯ぎしりする。

 

「おのれ………ナザリックの階層守護者であらせられるデミウルゴス様にむごたらしい仕打ちをするに飽き足らず、デミウルゴス様がスクロールの材料にするべく手塩にかけて飼育していた羊を強奪するなど………盗人カイコガがあ!! 」

 

「落ち着けナーベラル」

 

正直なところ、アインズ自身も今すぐ天使に復讐したい気持ちでいっぱいだが、今はまだどのくらいの位階の魔法やアイテムならば対抗できるかを色々と調べてみる必要がある。復讐はその後で、じっくりと行えばいい………

 

 

 

 

「それで、私がいない間に異常はなかったか?」

 

一晩とはいえ街から離れていたが、まあさして異常はないだろうと思ったアインズだったが、

 

「はい。街のウジムシどもが騒がしかったくらいで、特に問題はありませんでした」

 

「………街が騒がしかった?」

 

ふとナーベラルの言葉に違和感を覚えた。

アインズがナザリックに戻ってから宿屋に転移する間はちょうど夜間。なぜそんな時間帯に住民達は騒いでいたのだろうか?

 

「はい、何度も戸を叩いては出てこいと煩く喚いておりましたが、それ以外は特に」

 

アインズはここで彼女の発言がおかしいことに気づく。戸を叩かれたということは、何かしらの急務があったのではないのか?

 

「………ナーベラル、ちなみになんて言っていた?」

 

「ええと確か………『墓地が大変なんです!』だの『力を貸してください!』という感じの雑音を撒き散らしていましたね」

 

「………」

 

ふと、アインズの脳裏を嫌な予感が過る。

すぐさま遠隔視(リモート・ビューイング)完全不可知化(パーフェクト・アウンノウアブル)、さらには会話を聞く魔法を駆使して街を覗いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

避難解除が出され、戻ってきた街の人々の荷物を力自慢の冒険者達が次々に運んでいく。その光景をウルリクムミとアルラウネは長椅子に腰かけて眺めていた。

 

「私達だけが休んでよろしいのでしょうか?」

 

「何を言っているんだ。むしろ夜間ずっと戦い続けてきた君達にこそ、十分な休息が必要だ」

 

そう笑顔で言うのは、組合長のアインザックだ。今回の騒動で誰一人犠牲者を出さずにすんだのは、ほかでもないウルリクムミとアルラウネの力があってのものだ。そんな最大の功労者をこれ以上働かせるなど、横暴にもほどがあるというものだと彼は語る。

 

「アインザック殿おおお……」

 

正直なところ、すでに二人が内包する存在の力は全回復しているのでもう休憩する必要はないのだが、アインザックの厚意を無下にするのも忍びないので、ここはやむなく大人しくしているウルリクムミとアルラウネであった。

 

「いや~。しかし話には聞いていたが、実際にこの目で見るととんでもない威力なんだな。君のタレントというのは」

 

昨夜の騒動で、逃げ遅れた住民がいないかを確認していたアインザックもまた、ウルリクムミの『ネサの鉄槌』を遠くから目撃していた。あれだけの威力ならば、カッツェ平野のアンデッドを一掃したのも頷けるというものだ。

 

「否あああ、あの場でアレを使えたのはあああ、この『ウベルリ』があってのことだあああ。もしこれが手に入っていなければあああ、街を破壊しかねなかったあああ」

 

「なんと……!」

 

彼の愛用のバトルアックスが、タレントを制御するためのものであることは聞いてはいたが、制御した状態であの威力ならば、全力を使えばどれほどのものだったのだろうか。想像して思わずアインザックは冷や汗を流す。

 

「件の首謀者達はどうだあああ?」

 

「ああ、彼らならばエ・ランテルの牢獄に閉じ込めているよ」

 

今回の騒動の元凶であるズーラーノーン一派は、魔法を封じるアイテムで拘束した上で厳重に牢に入れられている。特に英雄級の実力を持つクレマンティーヌは、逃亡の可能性を考慮して、いまだ四肢を治さずに閉じ込められているとのことだ。

それを聞いて、安心すると同時にウルリクムミは一つの気がかりがあった。はたしてあの『蜂蜜の鷹』は、彼らを利用して何を企てるつもりだったのだろうか。アレが撤退する際に回収した『サークレット』と『死の宝珠』とはなんなのか………。

 

 

 

「それにしても、組合長はなぜこちらに?」

 

アインザックも立場柄、現在進行形で忙しいはずなのだが、なぜこちらに赴いたのだろうか?

小首を傾げるアルラウネに、アインザックは思い出したように手をポンと叩く。

 

「ああ、そうだったそうだった」

 

そして腰の雑嚢を探ると、何かを取り出す。

 

「実は………今回の君たちの功績を称えて、これを送ろうと思ってな」

 

開かれた彼の手のひらにはアダマンタイトのプレートが二枚輝いている。それが意味することは、二人の冒険者階級昇格を正式に認めるということだ。

 

「………我々の今の階級は白金のはずですが?」

 

「ミスリルすら飛び越してえええ、アダマンタイトになってしまうとおおお、先達のミスリル方が不満に思うのではないかあああ?」

 

これまでにも組合長からミスリル昇格を薦められてきてはいたが、低階級から一気に高位の階級になってしまうと周囲と軋轢が生まれると何度も断り、少しずつ階級を上げていった二人だったが、今回はまさかのアダマンタイトだ。

驚きはしたが、これは今まで以上に軋轢の危険性が高くなるのではないかと心配になり、彼はいつも通りやんわりと断ろうとするが、

 

「何を言っているんだ。むしろこれだけの偉業を成して昇格無しでは、逆に私達が街の人々に叩かれてしまうよ」

 

やや厳しい口調で食い下がるアインザックの気迫に、二人は彼が本気なのだと悟る。しかもわざわざ冒険者組合の面子を持ち出してくるあたり、逃げ道を無くそうと必死だ。

 

「むうううう、しかしいいい………」

 

それでも思い悩むウルリクムミだったが、

 

 

 

 

 

 

 

「るっせえな! 謙虚も度が過ぎると嫌みにしかならねえんだよ!!」

 

「ぬううう?」

 

横から怒号を飛ばされ、そちらを振り向くと不愉快そうに顔を歪ませる一人の男が立っていた。

 

「イグヴァルジ様?」

 

ミスリル級冒険者チーム『クラルグラ』のリーダー、イグヴァルジだ。

彼は墓地の騒動では、ほかの魔法詠唱者や弓兵とともに後方支援を行ってくれた優秀な冒険者である。かなり野心的な人物ではあるが、それさえ絡まなければそこまで悪い人間ではない。

そんな彼がウルリクムミの肩を掴み、怒りの顔を近づけて彼に怒鳴る。

 

「墓地で見せた力、統率力、戦略、カリスマ性………あれらを見せつけてまだ自分らは半人前だってほざく気かよ!? いい加減にしやがれ!!」

 

「イグヴァルジ殿おおお………」

 

一見すると喧嘩を売られているように見えるが、イグヴァルジが口にする言葉の端々にはウルリクムミに対する嫌悪感は微塵もない。それを理解したウルリクムミの肩を掴んだまま、彼は顔を見せないようにうつむく。

 

「てめえらは本物だ………悔しいけどな、正真正銘本物の『英雄』と呼ぶにふさわしい冒険者だって、嫌でも認めるほかないんだよ……!」

 

墓地で見せた彼の偉業の数々、それはイグヴァルジが憧れた英雄の姿そのものだった。それを間近で行った彼らがアダマンタイト級になって、どうして文句など言えるだろうか。

 

「イグヴァルジの言う通りですよ、ウルリクムミさん」

 

そんなイグヴァルジに賛同するように、ミスリル級冒険者チーム『虹』のリーダー、モックナックが歩みよってきて笑う。

 

「逆にこれで文句を抜かすやつらがいたら、俺らが叩きのめしてやりますよ」

 

次いで現れたミスリル級冒険者チーム『天狼』のリーダー、ベロテが頼もしげに己の胸を叩いた。

 

「皆あああ……」

 

態度こそそれぞれ違っていたが、彼らが伝えたい気持ちは皆同じであるとウルリクムミは理解した。彼がアルラウネを見ると、彼女は微笑みを浮かべるだけだ。

 

「…………」

 

異を決した二人は首から下げていた白金のプレートを外し、アインザックに手渡す。そしてアインザックの手に置かれたアダマンタイトのプレートを手に取ると、それを自身の首にかけた。

その動作を一つ余さず目に焼き付けるように見届けたアインザックは、いまだ荷運びをする冒険者達を初めとする街の人々に向けて大声で告げる。

 

「今ここエ・ランテルに、新たなるアダマンタイト級冒険者が二人誕生した! これは盛大に祝うべきことだろう!!」

 

彼の言葉に、居合わせた一同が注視するなか、アインザックはさらに続けてこう言った。

 

「そこでなんだが………街が落ち着いた頃合いには、彼らのための祝勝パレードを行おうと思いたい!」

 

「ぬうううう!?」

 

彼の言葉に、思わず椅子からずり落ちそうになったウルリクムミはどうにか踏ん張ってとどまる。どうしてそういう話になるううう!? と文句ありげにアインザックを睨むが、街の一同はおおっと感嘆の声を漏らし、嬉しそうな表情を浮かべている。

 

「祝勝パレード?」

 

「うむ、今回の騒動を解決した君たちを、是非とも街をあげて祝いたいのだ」

 

「俺達などよりもおおお、墓地の復興のほうに力を注いでくれたほうが有意義ではないかあああ?」

 

アダマンタイトにして貰えただけでも十分だというのに、そこまでして貰っていいのだろうかと戸惑う二人に、ミスリルの三人もやれやれとため息をついてしまう。

 

「君達は本当に謙虚というか………」

 

苦笑するアインザックは、真っ直ぐな目で見つめて答える。

 

「だが今回のパレードは、我々冒険者組合の面子がかかっているのだ。ここはどうか、我々を助けると思って受けてくれ」

 

面子と言われ、ウルリクムミが口を紡ぐ。さすがにそういう言い方をされると断れない。

 

「うむううう、そういうことならば致し方ないいいい」

 

「御大将がそうおっしゃるなら?」

 

アルラウネも頷き、一同は沸き立った。

街の歴史に残るパレードにしようと、冒険者達や商人達が一気に張り切る。

 

 

なんだか上手いことおおお、丸め込まれてしまったような気がするううう………。そう思いながら、肩を落とすウルリクムミであった。




その時のアシズ様

影悪魔(あれがデミウルゴス様を殺した天使か……追跡して御方に少しでも情報を捧げねば……!)

アシズ「………」前を向いたまま指を鳴らす

影悪魔(ホギャアアアアアア!?)影の中で爆散

村人「……? 天使様、今何か聞こえませんでしたか?」

アシズ「おそらく珍妙な鳴き声の鳥だろう」

アシズ(………雑な隠れ方だな、それから近寄りすぎる。チェルノボーグならもっと上手く尾行するものを……)
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