棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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オバロ四期・原作最新刊おめでたいですね!

回想に武人さんは出るのかな……? 出るなら稲田徹さんの声でやってほしいなあ……


第二陣・結末

≪遠隔視の鏡≫から戦いの結末を見届けたエントマは、アルベドとアインズにその旨を報告するべく符術を使う。

結果はコキュートス率いるアンデッド軍の惨敗。切り札たるエルダーリッチ四体とコープス・ブライドのザンディアも倒され、雑兵アンデッドは軒並み全滅してしまった。しかしアインズ自身はこうなることを知っていたようで、エントマを派遣する寸前に彼女にそう伝えていたおかげかそこまで驚きはしなかった。だがそれを知るよしもないコキュートスの配下の蟲人達は、自身らから見て明らかに低レベルの蜥蜴人達が勝利を収めたという結果に、信じられないと言わんばかりに互いの顔を見合っている。

本来であれば自害しても償いきれないほどの大失態だが、アインズがこれを予測していたのであれば、コキュートスにそこまで重い罰を与えることはないだろう。

そう確信するエントマは報告を終えると、コキュートスに向き直る。

 

「コキュートス様ぁ、アインズ様がお呼びみたいですぅ」

 

「…………」

 

アインズからの帰還命令を告げるエントマの呼び掛けに、しかしコキュートスは何も答えない。

 

「………コキュートス様ぁ?」

 

小首を傾げて再び呼び掛けるも、彼は鏡に映る四人の蜥蜴人達を凝視するだけで反応がない。御方からの命令を無視しているかのようなその態度に、エントマの胸の内から不快な感情がじわじわと沸き上がってくる。

 

「コキュートス様ぁ!!」

 

エントマが耳元に顔を寄せて大声を上げれば、コキュートスはビクリと身体を震わせてからようやく返事をした。

 

「ッ!! ア、アア………承ッタ」

 

ナザリックへ転移するための準備をするために席を立つも、一度立ち止まってからコキュートスは再び鏡をチラリと見る。

 

「…………」

 

意識を失う蜥蜴人に肩を貸し、白い蜥蜴人の魔法で動けるほどに回復したヒュドラの背中に乗せようとする、黝色の蜥蜴人。フードが脱げて顕になったその素顔を今一度目に焼き付けるように、コキュートスはジッと見つめる。

 

(…………美シイ)

 

ほうと小さく白い息を吐き出し、コキュートスが感じたのはそれのみだった。

 

 

 

 

 

いつの間にか『青紫色のウスバカゲロウの蟲人』がその場からいなくなってはいたが、誰一人としてそれに気づくことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トーチのタレントですか。それは盲点でしたね」

 

同じ頃、『平地のカナヘビ』を通してハスターにもその結果が知らされることとなった。

 

「ほ~んと、これだから『タレント』っていうのは油断できねえもんだよな」

 

カナヘビは小さな石をテーブルにするように頬杖をついてため息をつく。かなり強引な抜け道を使ったとはいえ、まさかトーチでフレイムヘイズを量産できるとは想定外だった。

どうやら彼らが屋内でこそこそと何かをしていたのは、短い帰還の間にフレイムヘイズとしての自在法を身につけるためだったようだ。しかしたった四日でそれだけの力を制御できるほどになっているのは、自在師であるハスターから見ても驚きである。ニヌルタの指導の賜物か、彼ら自身にそういったセンスが備わっていたのか。やはりザンディア達を派遣しての『テストプレイ』は正解だった。

 

「ちなみにその疑似フレイムヘイズ達と、“天凍の俱”自身の強さはどのくらいで?」

 

「まだ序盤だから断定はしきれないだろうけど、トーチ状態ではプレアデス級ってところだな。魔法の技術とかはイビルアイを上回ってた」

 

個々人の強さだけで見れば、現在のモモンガと階層守護者達が束になって力押しすれば、さほど脅威にはならないだろう強さ。しかしその自在法の中核を担っているのが、あの『大天使の宝剣』であれば話は変わってくる。

はたしてフレイムヘイズ化の人数に制限はあるのか。付与する相手によってはプレアデス級を上回れるのか。何よりその戦力でどのような戦略を練ってくるのか。確認したいことは山ほどある。

 

「ではプランは………」

 

「もう少しAを続けてみる。多分これが終わったら、本格的にプランBに移ったほうがよさそうだな」

 

「了解しました」

 

ハスターが頷くと同時に、背後の卵から轟音が鳴り響く。振り返って見ればウルリクムミ達を閉じ込める卵の表面には、今にも孵化しそうな僅かな皹が入っていた。

 

「………」

 

それにハスターはウンザリしたようにため息をつき、袖から小さな蜂蜜色の結晶を投げつけて卵を修復する。

 

「………もうちょっと頑丈にできないわけ?」

 

「無茶言わないでくださいよ。私は自在師であることを除けは極々普通の“徒”なんですから」

 

ハスターの自在法を補助する『ミードボンボン』は、作るだけでも手間がかかる。それでも彼自身の自在師としての技量のおかげで、卵修復のタイミングに合わせて完成するために、どうにか維持し続けられるのだ。

 

「まあいいや。『俺』は自在師じゃないし、こうやって伝令するくらいしか取り柄がないからな」

 

話が終わったのか『カナヘビ』はチョロチョロと地面を滑るように這い、穴の中に入り気配を消して待機する。

 

 

 

 

 

(………よく言いますよ。その気になれば“千変”とも拮抗出来るほど、規格外の“紅世の王(化け物)”のくせに)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

例えば凍えた場所から、突然ぬるい水に入れられたかのように。

ピシリと、『それ』には大きな亀裂が入るのだった。

 

 

 

 

 

 




解説

自在法『ミードボンボン』
ハスターが自身の自在法を補助する為に作成した蜂蜜色の結晶体。結晶一つ一つに高度な自在式が刻まれており、炎弾・燐子の作成と改造・複雑な自在法の触媒など、作成の難しさにふさわしいほど汎用性が高い。また燐子の動力としても使用可能で、内部に組み込んでおけば短くても一ヶ月は存在の力を直接補給する必要が無くなる。
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