棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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一体あの青紫は何式さんなんだ……!?


隠されたメッセージ

 

………よう、元気だったかコキュートス?

 

まず最初に言っとくが、俺は今日限りでユグドラシルを引退することになった。

 

最近リアルのゴタゴタが酷くなってきてな………親父殿の手伝いに専念しなきゃならなくなったもんで、もうこっちに時間を回せないんだよ。

 

だからこのゲームでお前に会うのも、これが最後になると思う。

 

………なあコキュートス。どうせお前、()()()()()()んだろ?

 

もう最後だし、俺の話を聞いてくれないか? 戯れ言だと思って聞き流してくれても構わない。

 

俺には憧れている人がいたんだ。多分お前も知ってるやつ。

 

俺さ………『主を護る剣であれ』ってコンセプトで造られたせいなのか、戦うことが………特に強いやつと戦うことが好きなんだけどな。

 

どうやら親父殿が()()()()をモデルにした結果、こんな性格になっちまったらしい。

 

ただこっちに来てから、強いやつどころか戦う機会そのものがなくて、正直退屈してたんだよな。

 

だからさ、本物の戦場みたいに戦えるこのDMMORPGは、俺にとって楽しい場所だったよ。

 

そして………そこであの人に……たっちさんに出会えた。

 

俺みたいに強者と戦うために生まれたわけでもない、本物の戦場なんて知らないはずの、ただの人間だったあの人に。

 

本当に凄かったよ。ゲームの中とはいえ、俺は全然勝てなかった。

 

同時に胸の奥から沸き上がってきたよ、『あの人を越えたい』って思いが。

 

それは今までの『システムとしての本能的な欲望』なんかじゃない、正真正銘『俺自身の欲望』だった。

 

それからは本当に楽しかった。俺みたいにたっちさんに勝ちたいと思ってクランに入るやつらとか………特に弐式やウルベルトさんと仲良くなれてさ。

 

本当に……楽しかったんだ……

 

 

………どこで、俺達は間違えちまったんだろうな。

 

身も蓋もないことを言えば、ユグドラシルを始めたこと自体が間違いだったんだろうけど。

 

でも………でも俺は……たっちさんやウルベルトさん、モモンガさん、ペロロンチーノさん、茶釜さん、やまいこさん、ぷにっとさん、るし☆ふぁーさん達と出会えたこの因果を、否定したくない。

 

もちろん、弐式のやつともな……

 

………もう、今のあの人達は手遅れだ。

すっかりユグドラシルに捕らわれちまった。

 

だから………だからコキュートス。せめて最後に、お前に俺の『希望』を託すことにしたよ。

 

この先お前がプレイヤーの命令をただ忠実に聞くだけの人形になってから、もしお前の設定(システム)を凌駕するほどの欲望を感じた時は、その欲望に忠実になれ。

 

階層守護者・凍牙の支配者コキュートスじゃなくて、お前自身になるんだ。

 

これは俺の一世一代の賭け、俺達の命運を左右するだろう大博打だ。それでお前がお前になれば、俺の勝ち。

 

………もし賭けに負けた時は、俺は責任を持ってお前を討つ。でも俺は、お前を信じているよ。

 

お前は………俺の息子だからな。

 

………話が長くなったな。一方的に喋ってなんだが、その時になるまでこの記憶は封じておく。あいつらに見られたら台無しになるからな。

 

んじゃコキュートス、今度こそさようならだ。

 

願わくば、因果の交差路でまた会おうぜ。

 

………ああ、そうだ。どうせ忘れるだろうし、俺の本当の名前も教えておくよ。

 

俺の名は………。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………ン」

 

水底からゆっくりと浮かび上がるように、コキュートスの意識が覚醒していく。

とても懐かしい夢を見ていた。そう、あれは武人建御雷が自分に会いに来た最後の日。どこか思い詰めた雰囲気で、変わらないはずの表情を曇らせていた彼の姿とその言葉を、自分はようやく思い出せた。

 

「………ソウカ」

 

これがそうなのかと、コキュートスは納得したように小さく呟く。この胸に沸き上がる思い、これこそが創造主が自身に託した『本物の欲望』だったのだと。なるほど確かに、この熱さに比べればシモベとしての欲望のなんと虚ろなことか。

 

「アリガトウ」

 

今ここにはいないであろう、自身をナザリックの業から解き放ってくれたかの蜥蜴人に、感謝の言葉を小さく呟く。主よ、どうか誇ってほしい。貴方は賭けに勝ったのだと。貴方が希望を託した人形は、今間違いなく真なる『己』を得た。ならば後は、この欲望に従おう。

 

「今日コノ日、コキュートスハ『親離レ』ヲ致シマス」

 

まだ右も左もわからない、巣立ったばかりの羽虫だけれど。きっと貴方に胸を張れる自分になってみせる。

 

「ドウカ見守ッテクダサイマセ………“皇宝の剣”ザトガ様」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ナザリックの宝物殿には、今はいないギルドメンバー達が所持していたアイテムが保管されている区画が存在する。といってもレベルが上がったことで役に立たなくなった初期装備などが乱雑に置かれているだけで、世界級アイテムの保管庫や霊廟に比べれば大した価値のあるアイテムはない。

その区画の廊下の真ん中で、ポッと青紫色の小さな火が灯る。火は徐々に大きくなって人型となると、青紫色の着物と覆面をした典型的な忍者の姿に変わった。

 

「………」

 

忍者はキョロキョロと周囲を見渡し、計四十一個の部屋の中から『武人建御雷』と書かれた扉を見つける。彼の身体はサラサラと青紫色の砂になり、ドアの隙間から中に侵入して再び形をとると部屋の中を物色し始めた。

押し入れ、引き出し、壺、畳の裏から掛け軸の裏まで、部屋の持ち主の趣味を反映した和風調な内装を細かく調べること数十分。

 

「………あ~、やっぱりか」

 

額を手で覆い、天井を見上げてため息をついた。

 

思っていた通り、霊廟に飾られていた装備を含めて武人建御雷が作成・所有していた装備が、ナザリックから()()()()()()()()()()()()のだ。

 

「イベント報酬のジャージもねえじゃん。どんだけ不正改造しやがったんだよアイツ」

 

武人建御雷の()() ()が発覚してからは、彼のゲーム履歴から作成物に至るまで厳重に調べたはずだった。それにナザリックのアイテムやギミックはサトゥラ達が目を光らせているはずなので、自在師でもない彼が自分達の目を盗んで改造するのは不可能だ。もしそのセキュリティを掻い潜れるものがいるとしたら、一人しか思い付かない。

 

「………クトゥーガさんか」

 

スッと、覆面から覗く目が感情を失ったように冷たくなり、忍者は懐からクナイを取り出す。そしてその刃で自身の頭のてっぺんから股下まで縦一直線に切り裂いた。

 

真っ二つになった身体は左右に倒れると、それぞれ青紫色の炎となり形を変えていき二つの人型となる。

 

うち片方はより煌びやかな装いになった忍者。

もう片方は……

 

「んじゃ早速プランBに移るぞ、『(アインズ)』」

 

「ああ任せろ、『(壱式風林)』」

 

青紫色の眼光が揺らめく、オーバーロードとなった。




そして武人さんは一体、なにの徒なんだ!?
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