棺の織手と不死者の王   作:ペペック

64 / 107
お知らせ
なんか最近支部のほうが正常に開きにくくなってきたので、しばらくはこちらでのみ上げていくことになると思います。


絡まる真実

「………つまり何か? 俺達はアンタの戦争練習のためにこんな目に遭ったってことか?」

 

コキュートスからもたらされた敵軍のおおまかな情報、それらを全て耳にしたゼンベルの隠しきれない怒りに、コキュートスは罪悪感からか思わず口をつぐむ。

 

「ふざけやがって!!」

 

次いでガンッと木の壁を殴るシャースーリューに彼らの視線が集まる。基本冷静沈着な彼だが今回ばかりは怒りを抑えずにはいられなかったようだ。

これがせめて『領地の拡大』か『奴隷集め』などのよくある理由であれば、まだザリュース達も納得はしたかもしれない。しかし蓋を開けてみれば『配下の練習』というあまりにも身勝手な理由。ナザリックの異常さを自覚したコキュートスも、その胸中は蜥蜴人達に対する申し訳なさで満ちていた。

 

一方のニーガはそちらとは違う情報に食いついていた。

 

(アインズとモモンガは同一人物だったのか……)

 

正確に言えば、もともとかのアンデッドの真名は『モモンガ』のほうで、『アインズ・ウール・ゴウン』という名は、かつて彼と彼の仲間達が興した組織の名前から取ったのだという。

 

そしてコキュートスの口から語られた、彼らのルーツと思われる言葉。

彼らが本来住んでいた、歩いては行けない隣『ユグドラシル』。

彼らの本拠地である『ナザリック地下大墳墓』。

コキュートスを初めとする、本拠地の番人『階層守護者』。

それら全てを作ったとされる『至高の四十一人』呼ばれる異界の客人『プレイヤー』。

そして………彼らが『リアル』と呼ぶさらなる異世界。

 

(………似ている)

 

それはかつて自分達を取り巻いていた環境と酷似する部分が多い。特にコキュートス達シモベの特性が引っ掛かる。人工的に作られ、生まれながらに創造主へ絶対の忠誠を誓う。そんなのはまるで……

 

(“燐子”そのものではないか……)

 

決定的なのは、コキュートスの産みの親だという“皇宝の剣”ザトガが去り際に呟いた言葉。

 

『因果の交差路でまた会おう』

 

ここから推測するに彼らの主人だという『至高の四十一人』とやらは、恐らく“紅世の徒”と思われる。そして現在モモンガ以外の彼らはナザリックを去り、行方がわからないという。全てを鵜呑みにするのは早計だろうが、ソカルを通して聞いたモモンガの言動の疑念とコキュートスの情報と照らし合わせれば辻褄は合う。

しかしその『ユグドラシル』のせいで彼の仲間になんらかの異変が起こり、ザトガは後悔の念からナザリックを去り、配下に己の最後の希望を託した。一体彼らの身に何が起こったのだろうか。

 

(それに………)

 

自らの手にある一振りの刀に視線を落とす。コキュートスとともに転移してきたこちらのアイテム達は、見ただけでもかなり高位のアイテムと理解できる。なんの意図を持ってザトガはコキュートスとともにこれらを転移してきたのだろうか。

知らない情報、理解できない情報がごちゃ混ぜになってどうにもまとまらない。

 

(こんな時、宰相殿がいてくれれば………)

 

頭脳面で最も頼りになる戦友の顔が脳裏を過るもハッとして首を振る。いけない、かつて中軍主将の役目を任されていた自分がここで弱気になってどうする。

ひとまずナザリックのルーツは後回しにし、ニーガは再びコキュートスに問う。

 

「では次に、お前達ナザリックとやらが対立……もしくは警戒している存在はいるか?」

 

呉越同舟、敵の敵は味方。仮に彼らに匹敵しうる存在がいるならば、弱点を探る足掛かりとして是非とも把握しておきたい。場合によっては手を組めればいいが、そこまで都合よくはいかないだろう。

 

「ソウダナ、ツイ最近デアレバ二人イル」

 

まず一人は“懐刃”サブラクという剣士。

卓越した剣技と傷を広げる呪いのようなスキルを扱い、人間に化けた異形種の正体を看破できたという。とはいえ相対したのがプレアデスであったため、まだ底がどれほどのものかはコキュートスにもわからない。

 

「ではそのプレアデスとやらは、どのくらいの強さなのだ?」

 

「平均レベルハ50相当……イヤ、オ前達ニハレベルトイウ概念ハナイノダッタカ」

 

「?」

 

聞きなれない単語に首を傾げる蜥蜴人達を察してか、コキュートスは彼らの言葉で分かりやすく伝えるべくしばし考えてから答えた。

 

「所謂『逸脱者』トヤラガ扱エル魔法ガ第六位階マデトシテ、プレアデスノ魔法詠唱者ハ第七位階以上ノ魔法ヲ扱エルト言エバワカルカ?」

 

「第七位階!?」

 

その言葉に驚愕したのはクルシュだ。祭司の部族である“朱の瞳”の彼女からすれば、第三位階を扱えるだけでも神童と称えられるほどだというのに、それを三段も飛び越えた位階など聞いたことがない。ましてや兄ですら第五位階までしか扱えないのにだ。

 

対するニーガはその言葉で、プレアデスとやらのだいたいの強さのイメージが固まった。

 

(師匠の限界は第五位階……つまりプレアデスの強さは師匠を越える。そして“壊刃”サブラクはそのプレアデスよりも強い、か……)

 

名前から察するにその者も“紅世の徒”、それも“王”である可能性が高い。とはいえ一口に“王”といってもその強さには個体差があり、“紅世”の神やアシズなどの規格外の存在もいれば、相性次第で容易に倒せる並みの存在もいる。一概にサブラクがコキュートス達と互角の強さを持つとは限らないだろう。となると気になるのは……

 

「もう一人の強さはどのくらいだ?」

 

「コチラハ明確ニ、私達階層守護者ト互角カソレ以上ダト断言デキル強サダ」

 

最弱とはいえ階層守護者の一人がなす術がなく惨敗したという話に、ザリュース達の目に僅かながら希望が芽生える。問題は共闘できるかどうかだ。

 

「確カ名前ハ……」

 

コキュートスが記憶からその強者の名前を引っ張り出そうとした瞬間、

 

 

 

 

 

 

 

 

(ニヌルタ! 敵襲だぞ!!)

 

 

 

 

 

 

 

ソカルの甲高い叫びが、ニーガの脳内に響いた。




こういうニアミスな会話って好き。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。