棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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抗戦1

「!!」

 

「ニーガ!?」

 

ソカルの報せを聞き反射的にダッと檻の外に駆け出すニーガに、ザリュース達も慌てて続いていく。外に出た一同の目にまず飛び込んだのは、沼の向こう側の岸辺から現れるおびただしい数の異形の姿だった。

 

「なんだあれは……!?」

 

いずれも強大なモンスターばかりであり、ザリュース達は目を見開き硬直する。しかしこういった状況には慣れているニーガだけは、至って冷静にソカルと連絡を取り合っている。

 

 

(ソカル、敵の数はどれほどだ!?)

 

(ざっと200体は下らないかと………碑堅陣で確認できる限り、集落を完全に包囲しておりまする!)

 

(ウルリクムミとの連絡は!?)

 

(まだ取れません!)

 

内容を理解してつい苛立たしげに舌打ちしてしまう。先日の戦いでもソカルの介入を控えたとはいえ、かなりギリギリだったというのにこれだけの戦力。今度こそ我々を全滅させるつもりなのか、反逆者を捕らえにきたのかは定かではないが、敵も本腰を入れてきたのは理解できる。

 

「アーマゲドン・イビル………!」

 

そんな外の様子が檻の隙間から僅かに見えたのか、コキュートスが緊張を滲ませる声で呟く。

 

「あーま、なに?」

 

振り返るスーキュからの問いに、≪最終戦争・悪≫とは様々な種類の悪魔を大量召喚する第10位階の召喚魔法であると答える。

 

「第10………位階……!?」

 

先ほど聞いた第七位階でさえとんでもない強さだというのに、第10位階という言葉にクルシュが青褪める。どう考えても現存する蜥蜴人達の戦力では話にならない規模だ。

 

(………やむを得んか)

 

もはや出し惜しみなどしてはいられないと、今一度ソカルに確認をとる。

 

(ソカル、()()の準備はどうだ?)

 

(もう充分かと)

 

(ならば防衛のほうに手を回せ、少しでも時間を稼ぐぞ!)

 

(御意!)

 

ニーガが地面に手をついたのを合図に、ソカルの碑堅陣が砦と集落の周りを生い茂り、悪魔達の行く手を阻む。

 

『グオオオオオオオオ!!』

 

悪魔達は眼前の石林をなぎ倒そうと攻撃するも、傷一つ与えることもできない。しかし安心したのもつかの間だった。

 

 

 

『ギャオオオオオオオオ!!』

 

 

 

いつの間に潜んでいたのか沼地から一体の悪魔が水飛沫を上げて飛び出し、たまたま近くにいたザリュースに向けて飛びかかる

 

 

 

「ザリュース!!」

 

「!!」

 

シャースーリューが走り出すも、間に合わない。迫り来る鋭利な爪にザリュースは反射的に手に持った刀を眼前につきだして防ぐ構えをとる。

 

 

 

 

そして悪魔の爪が刀身に当たった瞬間だった。

 

『!?』

 

突如刀身が光輝いたかと思えば、触れた爪を始点にして悪魔の身体が光に包み込まれる。

 

『ぎゃあああああああ!?』

 

断末魔の叫びを上げる悪魔の身体は崩れていき、そのまま刀に吸収されていった。

目の前で起こった光景に悪魔達や蜥蜴人達どころか、刀を構えていたザリュース本人も混乱する。

 

「………何が、起こった?」

 

ニーガがよくよく観察すれば、刀の表面に朱色の自在式が浮かび上がるのが見える。そしてニーガとソカルはこの現象に見覚えがあった。

これは“紅世の徒”が人間を喰らう際の『存在の力』の変換に似ている。ただ見たところ()()()()()()()()()()()()()()()

まさかと他のアイテムにもチラリと視線を向ければ、ザトガのアイテム全てに同じ自在式が刻まれていることに気づく。

 

これならば、あるいは。

すかさずアイテムの山からいくつかのアイテムを引っ張り出し、シャースーリュー達にそれぞれの愛用武器に近いアイテムを投げ渡す。

 

「戦える者はみな、これらの武具で応戦しろ!」

 

怒鳴るように命じれば、仲間達ははっと我に帰り急いでアイテムを手に取り悪魔達に向き直る。

 

うおおおおおおおお!!

 

勝てる可能性が出てきたことに仲間の中で僅かながら希望が芽生え、自らを鼓舞するように蜥蜴人達は戦いに挑むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方の壱式風林達も、遠隔視の鏡を通してその光景を目撃し驚愕する。

 

「………おいアインズ、あれって!」

 

「間違いないな」

 

唯一アインズだけは平静を保っており、その現象がなんなのかを言い当てる。

 

 

「ラグナロク・システムだ」

 

 

なるほど、だから“皇宝の剣”はあのアイテムを転移させたのかと感心する。

 

「クソが! あの野郎、とんでもない置き土産を残しやがって!!」

 

エイトエッジアサシン達は両手の鎌で床を切り裂き荒れ狂う。

 

 

ラグナロク・システム。

おそらくユグドラシル由来の存在にとって最大の天敵。あれがある以上、ユグドラシルのNPCでも負ける可能性が高い。いや、負けて死ぬだけまだマシだろう。

最悪の場合、()()()()()()()()()()()()()()()のだから。

 

(まあ100レベルのNPC達ならば、そう易々とはやられないだろうが………)

 

見たところあの自在式はかなり旧型のものだ。すでに最新バージョンにアップデートしてある現在のユグドラシルにとって脅威になるほどではないだろう。

チラリともう一枚の≪遠隔視の鏡≫に視線を移せば、別の場所から戦況を観察する守護者達の姿が見える。彼らも蜥蜴人達が持つアイテムの効果に動揺しているのが見てとれた。

 

「ふふ………やはりお前達との戦いは飽きないよ。建やん、クトゥーガさん」

 

怒る『己達』を他所にアインズの眼窪からは青紫色の火花が散る。それはさながら嬉しい誤算に喜悦する彼の心が漏れ出ているかのようだった。

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