棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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年末が近くなって忙しくなってきました。


這い寄る略奪者

湿地帯の激闘を観察するデミウルゴス達はかつてないほど焦る。まさか下等な亜人共がここまで粘るとは思いもしなかったのだ。

蜥蜴人に効果がなく、それ以外の種族に状態異常を与える雨は≪ザ・クリエイション≫で無効化できるだろうが、一番の脅威は彼らが持つアイテムだ。たった一撃当たるだけで悪魔達を倒せるそれらは、本来ならば彼らから見て圧倒的な強さを持つ魔将達にさえ深手を負わせている。もしアレの力が階層守護者にも及ぶとしたら、迂闊に攻めるのは危険過ぎる。せめてあのアイテムの効果が自分達にも効くかどうかがわかれば対処法も考えつくが、仮に守護者の誰かが捨て石になったとして蘇生はできるのだろうか。ただでさえコキュートスが裏切り階層守護者に実質欠落が出てしまったのに、もし蘇生できなければナザリックの戦力は大幅に下がる。

 

このままでは主に失望される。

どうすればいい、どうすれば。

 

頭を抱えて必死に知恵を絞り出すデミウルゴス達。するとここで伝言が繋がった。

 

『ずいぶん手をこまねいているようだな』

 

「あ、アインズ様!?」

 

伝言越しに聞こえた主の声に一同がビシリと背筋を伸ばし緊張する。

 

「申し訳ありません! 必ずやあの亜人どもを塵殺してみせま『まあ聞け』っ!」

 

しかしアインズはデミウルゴスの言葉を制するようにやんわりと言葉を挟んだ。

 

「一つ、手を貸してやろう」

 

ふふっと伝言越しに笑みを溢すアインズが指を鳴らす音が響くと、デミウルゴスの前に一枚のスクロールが現れた。恐る恐る手に取ればその羊皮紙の質がナザリックにあるものとは全く違う素材であると、日頃羊皮紙開発に従事するデミウルゴスには確信できた。

 

「アインズ様、これは?」

 

『私が独自に作った新しいスクロールだ。実験もかねて使ってみるがいい』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ソカルの猛攻から命からがら生還したハスターは、地面に這いつくばりながらぜえぜえと荒く呼吸していた。寸でのところで転移の自在式がギリギリ間に合いはしたものの、あの時はハスター自身も本気でもうダメかと思った。転移した場所はナザリックの付近に事前に設置した避難用の『封界』であり、ナザリック内部の者を含めて外からハスターを感知することは誰にもできない。うつぶせたせいか雑草と泥で黄色いローブが汚れるも、ハスターにはそんなことを気にする余裕などない。

 

「お疲れ様~」

 

だというのにそんな彼に呑気な口調で話しかけてくる者が一人。青紫色の髪の『村娘』がハスターの目の前にしゃがみこんでニッコリと笑っている。力なくローブのフードをもたげる今の彼に顔があったならば、忌々しそうに彼女を睨み付けていたことだろう。

相変わらず何を考えいるのかわからない得体のしれない笑顔は、それを向けるだけで他者の神経を逆撫でしてくる。

 

「………今度は何の雑用ですか?」

 

ハスターは経験上、この“紅世の王”がこんな笑顔を見せるのは、大抵何かしらの無茶振りをする時であると理解している。

 

「ごめんな~、仕事から帰ってきたところ悪いんだけど……」

 

『村娘』が虚空に手を伸ばし、インベントリから何かを探る。

 

「ちょっくら、デミウルゴス達を手伝ってきてあげてよ」

 

黒い孔から取り出したその手にあるのは、黄金の弓。それを見たハスターの息がヒュッと詰まり、しばし硬直するとローブの袖が地面を引っ掻くように抉り、視線を反らすようにフードがそっぽを向く。

 

「………やりますけど、そちらはいりません」

 

「え~? だいぶ疲れているんだから、無理すんなって」

 

見たところハスターはウルリクムミとの戦いとソカルからの逃亡で満身創痍である。今の消耗から考えるに、もう彼らを足止めできるだけの自在法を使う余裕はないはずだ。

 

「いらないって言っているでしょう!!」

 

しかしハスターは声を荒げてなおその弓を拒む。

 

「そんなこと言うなって~。()()()()()()()()()、しっかり稼がないといけないだろ?」

 

「っ………!!」

 

小首を傾げる『村娘』の笑顔から滲み出る、有無を言わさぬ強者の圧力(プレッシャー)。それを見たハスターの身体が小刻みに震える。それが恐怖からなのか、怒りからなのか、空っぽのローブのみで表情のない今の彼からは区別できない。

 

ただ、弓へと伸びる震える袖から、苦渋の決断を自らに下したのは、間違いなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

黝色の生命の雨が降り注ぐ戦場。当初出現した悪魔の数に対し、蜥蜴人側の犠牲は奇跡的ともいえるほど最小限に抑えられていた。周りを見ればすでに悪魔達の姿はチラホラとしか見えない。

 

(ニヌルタ、ウルリクムミの回収が完了したぞ!)

 

さらにダメ押しとばかりにソカルからの吉報が入る。

 

(心得た!)

 

これであとはウルリクムミが到着するまでの辛抱だ。今一度自らの魔力を研ぎ澄ませ、戦いに集中するニーガだったが

 

 

 

 

 

 

 

≪ジャッジメント・ハンマー≫

 

 

 

 

 

 

 

戦場の空が、突如炎に包まれる。

 

「………え?」

 

呆気に取られた蜥蜴人達に向けて燃え盛る怒涛が降り注ぎ、それを見て考えるより先に身体が動いたニーガが、懐から取り出した分厚い紙の束が黝色に輝いた。

 

「うおおおおおおおお!!」

 

爆炎と地上を隔てるように黝色の氷の壁が蜥蜴人達を覆いつくす。開戦の合間に用意していた、ウルリクムミの物資の一つであるスクロールを元に作成した、防御特化型“燐子”により増幅させた自在法。炎の熱量を浴びた氷壁は爆音とともに大量の蒸気を上げていき、拮抗を保つ二つの魔法が互いを消し去ろうと魔力を高めあう。

 

しかし、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「穿て、≪属性重爆撃(フィフス・アティル)≫」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

鮮やかに輝く五色の閃光が、自在法の維持に手一杯だったニーガに向けて一斉に放たれたのだった。

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