棺の織手と不死者の王   作:ペペック

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こちらではお久しぶりです。



ハーメルンが復帰して本当によかったです……(´;ω;`)


宰相と大将

宿の主人に頼んでもらい部屋の一室を空けてもらったクロームは、部下に入り口の見張りを頼んでおきウルリクムミとアルラウネだけを中に招いた。互いに向かい合うように立ち尽くす三人のうち、クロームは平静を装っているがその指先は震えている。

 

眼前に立つ二人の冒険者。

容姿こそ記憶とは違うが、この圧倒的な存在の質をクロームはみまごうはずがなかった。

 

「………炎を」

 

それでも、どうしても確認しなければならない。

彼らが自分の最もよく知る二人であるという、確固たる証拠を見なければ信じてはいけないと、ある種の使命感を支えに震える声でクロームは乞い願う。

 

「炎を、見せていただけませんか?」

 

静かに頷く二人がクロームに向けて片手を差し出すと、それぞれの手のひらで濃紺と薄桃色の炎が小さくも力強く燃え上がった。

 

「………本当に、ウルリクムミ殿とアルラウネ殿なんですね」

 

それを見届けたクロームの見開く目から、一筋の涙が溢れ落ちる。

 

「久方ぶりだあああ、宰相殿おおお」

 

懐かしい声と懐かしい呼び名。

ああ、間違いない。この御仁は誰よりも頼もしき先手大将にほかならない。クロームの胸中が再会の喜びに沸き立つと同時に、彼の聡明な頭脳はある答えを導き出してしまう。

 

彼がここにいるということは、あの戦いで死んでしまったという意味で……。

 

 

「………申し訳ありません!」

 

次いで心を蝕む後悔と罪悪の念からバッと頭を下げる。

 

「否あああ、謝罪するべきは俺だあああ」

 

大柄な体躯に似合わないほど優しく肩を叩くウルリクムミに、クロームは嗚咽を漏らしてしゃくりあげる。彼が謝罪する理由こそ、何一つないというのに。

 

 

あの時、己の慢心による勝利の確信に目が眩み、炎髪灼眼の奇策を予測することができなかった。

苦肉の策として自らを犠牲に、両翼をはじめとする仲間達を爆風から守ったはいいが、きっと優しい主は自身の死すら悲しまれただろう。

もっと早くに炎髪灼眼の企みに気づいていれば、まだ対処の仕様はあったかもしれなかったのに。その結果前線で戦う彼に援軍を送る余裕もなかったのだろう、彼のことだから最期まで兵を守ったのだ。己の愚鈍さから戦友の足を引っ張ってしまった事実にクロームは………いや、“大擁炉”モレクは心から恥じている。

 

なのに………こんな形でもかつての戦友に会えて嬉しいと思っている自分がいて、その卑しさになおさら情けなくなる。

 

そんなクロームの内心を察してか、二人は俯く彼の肩をそっと撫でてゆるく首を振る。

 

 

貴方が貴方自身を責める通りなどないと、言葉にはせずともそう返す二人。クロームは袖口で涙を拭いおずおずと問う。

 

「その………こちらに来ておられるのは、お二方だけなのですか?」

 

「確認できる限り、あと二名はいらっしゃるかと?」

 

「ニヌルタとソカルがあああ、トブの大森林という場所にいるううう」

 

ある意味では予想通りの懐かしき名に、会えるものならば会いたいと願うクロームだったが……

 

 

 

 

 

 

 

「クローム様、お話中のところ申し訳ありません!」

 

会話を遮るようにノックする音に、三人の視線が扉に集まる。見張りを頼んでいた部下の声だが何事だろうかと、クロームは一度ウルリクムミと視線を交わして入れていいかと確認すれば彼は頷く。

 

 

 

「何事ですか?」

 

ゆっくりと開いた扉の先に立っていた部下は一度起立を正してからハキハキと喋りだす。

 

「見回りの憲兵からの報告です。とある宿屋が荒らされていて、宿泊客が一名行方不明になっているとのことです」

 

「行方不明……?」

 

報告内容に一瞬だけ怪訝な顔になるも、クロームの頭脳は原因を解明するべく素早く回転しだす。

 

まさか八本指の仕業か?

しかし王都に実質包囲されたこのタイミングで、こんな悪目立ちするような騒ぎを起こすなどなんだか不自然に思える。単に構成員を逃がすための陽動だろうか。

一体彼らになにがあった?

部下からの情報だけでは結論を出すには少なすぎる。出来れば直接現場を見ておきたいが、仮にもし自分を炙り出す罠だとすれば素直に出てくるのは危険過ぎる。そうなると出来れば六腕級の実力の護衛がほしいところだが、間が悪いことに現在エドストレーム達には別件で仕事を割り振ってしまい別行動をとってしまっている。

 

クロームは色々と思考した末にちらりとウルリクムミ達を伺う。

 

「ウルリクムミ殿、大変申し訳ないのですが……」

 

今回の彼らは騙された形で王国に来てしまった身であり、この上自分達の都合に付き合わせるのはいささか図々しい頼みだとクロームは思ったが、

 

「みなまで言うなあああ」

 

おどおどと懐かしい挙動で懇願する盟友に対し、ウルリクムミは肩を竦めて苦笑で返す。

今さら彼がそれを断る道理などなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

とある廃墟の地下室にて、ツアレは両手を後ろ手に縛られ床に転がされている状態にあった。

 

しくじった。

やっぱり無理をしてでも逃げるべきだったと、ツアレはつい舌打ちしてしまう。

 

「よくも俺らの縄張りを荒らしてくれたじゃねえか」

 

そんな彼女の頭を踏みつけるのは、男性的な口調で喋る黒い革素材でできた露出度の高い服を着た長身の女で、苛立たしげに手に持つ赤い鞭で床を叩いている。

 

“血濡れた鞭”レイジア。

巧みな鞭さばきで敵をいたぶる生粋のサディストと名高い女である。

 

 

「おいレイジア、あまり傷をつけるなよ」

 

そんな彼女を嗜めるのは壁に背をもたれて立つ一人の男で、レイジアとは対照的に一切肌を露出させない緑色の装束を纏ったイジャニーヤ。

 

“瞬血刃”ルベア

音も無く標的に接近し、一撃のもとに仕留める凄腕の暗殺者である。

 

「なかなか綺麗な顔をしてるしね、売ればそれなりに値がつくでしょ」

 

三人目は古い椅子に座りテーブルに両足を上げて組んでいる。先ほどから上機嫌でハープを演奏する手を止めない、中性的な顔立ちの吟遊詩人の少年。

 

“呪作詞”ボイス

三爪華の中では一番若いが、歌を歌うことで相手に呪いを与えるタレントを持っており、その力を頼りに裏社会で成り上がった末にリーダーとして二人を従えている。

 

 

 

ツアレの記憶が確かならば、彼は先の襲撃で幹部もろとも殺したはずだ。蘇生魔法でも使ったのだろうか。

どうやら彼らの中ではツアレを売りに出す算段がついているらしいが、それよりも気になることがもう一つ。

 

「私に構っていてよろしいのでしょうか?」

 

彼らからすれば自分達は、組織崩壊の切っ掛けをもたらした憎い存在には違いないだろう。しかしチェルの報告では『八本指』はすでに王都に包囲され、逃げようにも八方塞がりになっていると聞く。もはやこいつらには今さら自分達に報復する余裕などないはずだが………

 

「かはははは!」

 

ツアレの疑問を察してかレイジアが突然高笑いする。

 

「もう八本指なんざ、俺達には関係ないんだよ」

 

レイジアの凶悪な笑みでツアレを見下ろす姿は、追い詰められた末の自棄にしては余裕のある素振りで、どういう意味だろうかと訝しむ。

 

 

なにかここから逃げる手段がないだろうかと周囲を観察してみると、ふとツアレの視界に部屋の雰囲気に似つかわしくない物体が見えた。

荒れ果ててカビ臭い地下室とは不釣り合いなほど真新しいそれは、どっしりとした三角形の台座の表面には細長い金属の棒が嵌め込まれた置物のようで、棒はカチリカチリと左右に揺れ一定のリズムを刻んでいたのだった。

 




先日のサーバー攻撃のせいで一時期絶望しかけていた身ですが、引き続き自作品の投稿と神作品の閲覧ができるようになって嬉しい限りです。


ところで今回の騒動に対して、私は支部に上げている他の二次作品もこちらにあげるべきかどうか、ハーメルンではなく支部に限定して投稿するべき悩んでいるところなのですが、みなさんのご意見はいかがでしょうか?

どっちで見たい?

  • ハーメルンで見たい!
  • じゃあ支部に行こう
  • 両方に載せて
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