弦巻こころの兄が秀知院学園に通って過ごす話(完結)   作:春はる

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本編です。



本編
第1話


 

 

~優心視点~

 

 

~昼休み~

 

 

ある日の昼休み。

 

 

私立秀知院学園の生徒会室で、俺……弦巻 優心(つるまき ゆうしん)は書記の藤原千花と会話をしていた。

 

二人で、会話をしていると扉の開く音が耳に届いた。扉の方を見てみると、会長の白銀御幸と副会長の四宮かぐやの二人が入ってきた所だった。

 

そして俺に気づいた会長が声を掛けてきた。

 

会長「話し声が聞こえると思っていたが、弦巻と藤原の二人だったんだな」

 

かぐや「二人で何の話をしていたんですか?」

 

優心「俺の妹の話ですよ。千花が最近の様子を聞いてきたので答えていた所です。あ、名前はこころって言います」

 

かぐや「妹さん……ですか?藤原さんは、弦巻くんの妹さんと会ったことがあるのですか?」

 

千花「もちろんですよ~。私が小さい時にこころちゃん達の誕生日パーティーにお父様が連れて行ってくれて、その時に優心くんとこころちゃんに会って仲良くなったんです」

 

会長「そこから毎年行ってたのか?」

 

千花「それから毎年、誕生日パーティーで会っていたんですが、去年は参加出来なかったので話を聞いてました。あ、因みに兄妹揃って同じ誕生日なんですよ」

 

かぐや「なるほど……」

 

千花の説明に会長とかぐやさんは、納得していた。それを横目に見ながら、こころの話を続けた。

 

優心「まぁ最近、こころはバンドを始めてそのメンバーと一緒にいることが多いからね」

 

千花「へ~、こころちゃんがバンド……、えっ何それ、初めて聞きましたけど!?」

 

優心「うん、今言ったから。てか、後で詳しく教えるから落ち着いて」

 

びっくりしている千花を落ち着かせていると、かぐやさんから声が掛かった。

 

かぐや「あの弦巻くん、私はその妹さんに会ったことがないのですが、妹さんはどんな子なんですか?」

 

優心(あぁそうか、かぐやさんもだけど千花以外の生徒会メンバーは、(うち)主催のパーティーとかには来た事がないから知らないのも当然か)

と、かぐやさんの言葉にそう思いながら、かぐやさん達にこころの事を教えてあげた。

 

優心「えっと……今、妹は高校1年生で、性格は天真爛漫、好奇心旺盛でポジティブな性格ですよ。見た目は……写真を見てもらった方が早いか」

 

俺はスマホを出して、こころの写真をかぐやさんと会長に見せた。

 

かぐや「見た目は、金色の髪で金色の瞳ですか。写真でも天真爛漫さなどが分かるぐらいの笑顔ですね。しかも可愛い……美少女ですね」

 

会長「確かに四宮の言う通りだな。それに聞いた性格だと小さい子がそのまま大きくなった感じか?」

 

優心「あー、そんな感じだよ。それに純粋さと無邪気さとかもある感じだよ」

 

かぐや「それを聞いていると振り回されたりして大変そうに感じますが?」

 

優心「んー、別に大変とかは思った事は無いかな。まぁ振り回される事に慣れてるっていうのもあると思うけど、俺は楽しいと思ってるよ。他の人だったら大変とかきついとか思うかもしれないけど」

 

かぐやさんに妹の事を聞かれたのでスマホを見せながら答えると、二人は"へ~"みたいな顔をしていた。すると落ち着いた千花が会話に復帰してきた。

 

千花「そういえば、今週末までの期限の映画のチケットが二枚当たったんですけが、私は家から禁止されていて行けないので、誰か要りますか?」

 

千花が出したのは恋愛映画のチケットだった。"確か、男女で見ると結ばれるってジンクスがある映画だったよな"と思いながら会長に小声で話しかけた。

 

優心「会長ここでかぐやさんを映画に誘って見に行った方が良いと思う。映画自体、シンプルにいいストーリーって話題だから、見てみて損はないしね。それに映画の感想とか言い合ったりすれば、二人の仲の進展のきっかけになると思うよ

 

会長「なるほど、映画の話題でうまくやるわけか。お前が言うんだったらその通りなんだろう。それに四宮と二人で出掛けるきっかけが無かったからいいかも知れないな。今週末は予定が無いからな。…確か、週末は何も無かったな。……四宮、だったら俺と……」

 

千花「何でも男女で見ると結ばれるジンクスがあるとか」

 

うわ、千花がジンクスの事を言っちゃたから、会長誘うの躊躇ってるし、"ジンクスの事聞いてねーぞ"みたいな事を目で見て来てる。

 

それを言ったら誘わないと思ったから、言わなかったんだけど。……ん?かぐやさん、上目遣いして会長にアピールしてるしなんか演技してる感じがするけど、それより二人の間を取り持った方がいいかな。

 

優心「……二人で行ってきたら良いんじゃないですか?俺は相手いないからさ。それに二人が映画にも詳しいって分かれば、他生徒からの評価も上がると思うよ」

 

俺が行くメリットを言うと、駆け引きをしていた二人は少し考えた後に納得したのか頷いた。

 

かぐや「……言われてみるとそうですね。確かに、こういった機会でないと映画を見に行くというのはないですから、見に行くのもいいでしょう」

 

会長「……まぁ、せっかくチケットがあるなら使わないと勿体ないから行くか。別に他人からの評価はどうでもいいがな」

 

二人は行く事にした様で安心した。二人が映画に行くという事で話が纏まった時に、千花の方は"とっとり鳥の助"というタイトルの映画をなぜか薦めようとしていた。

 

その映画のチケットを、会長とかぐやさんに言おうとした千花の口を押さえて、言わせないようにした。

 

暫くしてから千花の口から手を離し、かぐやさんに声を掛けた。口が開放された千花が会長に俺の文句を言い始めた。

 

優心「そうだ。かぐやさん、映画館って座席指定というものがあるんですよ。意味は分かると思いますが、そういった事は初めてだと思うので、会長と一緒に行動してた方がいいですよ」

 

かぐやさんに座席指定の事を教えると、一言呟いてから俺に近づいてきて小声で話しかけてきた。

 

かぐや「座席指定……。弦巻くん、それって自分で席を選んでそれ以外の席には座れないという事ですよね。もし会長と私が一緒に選べば隣同士で座れる、という事ですか?

 

優心「そういう事です。会長と隣同士で座れるかはかぐやさん次第だと思うから、頑張ってくださいね。………じゃあ会長、俺教室に戻るね~」

 

会長「ああ」

 

千花「あっ!優心くん、ちょっと待ってくださいよ~」

 

かぐやさんと話をしてから会長に教室に戻ることを伝えて生徒会を出て教室に向かった。

 

千花「ちょっと優心くん、いきなり口を塞がないでくださいよ。びっくりしたじゃないですか!それに、かぐやさんと何を話してたんですか?」

 

後ろを付いてきた千花が、口を塞がれたことに対して文句を言って来たので教室まで歩きながら会話をする。

 

優心「いや、会長達が恋愛映画を見に行く事にしたから、別の映画の話は話題に出さない方が良いかなって思ったからだよ。それと、かぐやさんとは座席指定の事を話してたんだよ」

 

千花「そうですか。じゃあ、"とっとり鳥の助"のチケットは、代わりに優心くんがもらってくれますか?捨てたら勿体無いですから」

 

優心「……そういえば、前に子供が見たがってるって話を黒服さんが言ってたな……。黒服さんに渡したいから貰って良い?」

 

千花「良いですよ。優心くん優しいですね、黒服の人に渡してあげるなんて。はいこれがチケットです」

 

優心「ん、ありがと。…………はいこれ、期限は今週末らしいからそれまでに行って楽しんできてって、本人に伝えといて」

 

黒服「分かりました。しかし、なぜ優心様本人がお渡ししないのですか?それに家にはシアタールームがありますので、映画館に行かなくても見れますが?」

 

優心「まぁ、俺から渡すと遠慮して受け取ってくれないかもしれないからね。それに、チケットがあるのに使わないのは勿体無いから、映画館に行って見てもらった方が良いかなと思ったんだ」

 

黒服「なるほど。では本人に渡しておきますね」

 

千花「それで優心くん、こころちゃんのバンドの事をちゃんと教えてくださいよ」

 

黒服さんに渡した後、千花が妹のバンドの事を聞いてきたのでその事を話をしながら教室に入った。

 

 

 

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~放課後・生徒会室~

 

放課後になり、生徒会室に入ると会長から話し掛けられた。

 

会長「なぁ、弦巻。あのさ、昼の事なんだが四宮が上目遣いしてきた時に弦巻は反応が薄かった感じがしたんだが、なんかこう、ドキッと来なかったのか?」

 

優心「あ~、だってさ、妹のこころの方が可愛いもん。かぐやさんのあれも可愛かったけど、なんか演技?とか裏がある?って感じがしてさ」

 

会長「え、そうなのか?で、でも仮に裏があっても、あれは誰でもドキッとはすると思うが、本当に無かったのか?」

 

優心「そうだよ。こころは、"ありがとう"や"好き"とかのお礼や好意を純粋にストレートに言う子で小さい時から一緒にいるから、相手のそういうのが感覚だけど何となく分かるんだ」

 

聞かれた事に答えていると、"そ、そうか"と会長が答えた。その後、俺は生徒会の仕事をしてから家に帰った。

 

 

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そして家の門の所に着いた時に、執事とメイドさん達が出迎えてくれた。玄関に向かってる最中に執事の一人に声を掛けた。

 

優心「ねぇ、家の前にタクシーが停まってるのを見たけど、お客様が来てるの?」

 

執事「千花様がお越しになってます。今はお部屋でこころ様とお話しておられます」

 

優心「え、千花が来てるの?」

 

執事「ええ、いらしてますよ」

 

家にお客様が来ているのかと執事に聞くと、千花が来ていると教えてくれた。

 

執事から話を聞いた俺は、華さんに声をかけた。

 

優心「華さん、千花から話聞いてた?」

 

黒服(華)「はい、クラスのHR(ホームルーム)が始まるまでの間にお聞きしました」

 

優心「どんな事を言ってたの?」

 

黒服(華)「優心様がこころ様の話をした際に、どうしても会いたくなったそうなので、家に遊びに行くと仰ってました。その際、優心様には内緒にして欲しいとお願いされましたので、報告しませんでした」

 

優心「そっか。あと、待ってくれてるタクシーの人に帰りの送迎の断りを伝えてくれる?」

 

黒服(華)「伝えてますよ。それとお車の準備も進めています」

 

話を聞くと、千花が来ていると教えてくれたので、送迎の車の事をお願いして、こころの部屋に向かった。

 

 

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優心「こころ、入るよ」

 

こころ「あっお兄様、お帰り!」

 

優心「うん。ただいま、こころ。……それで千花、こころに会いにきたんだって?」

 

部屋に入るとこころが抱きついてきたので、受け止めて頭撫でながら千花に声をかけた。

 

千花「そうですよ。昼休みに話をしたので、どうしても会いたくなったので来ちゃいました」

 

優心「でも、何で家にくるのを俺に内緒にしたんだ?」

 

千花「だって優心くんに言うと、こころちゃんに教えちゃうから言わなかったんですよ」

 

優心「こころには秘密してとか言ってくれれば言わなかったよ」

 

千花「それでもですよ。それに、こころちゃんに久しぶりに会うから、びっくりさせて会った方が楽しそうでしょう」

 

優心「それは確かにそうだね」

 

千花の言葉に納得しつつ、一つ質問をした。

 

優心「そういえば、黒服さんに家に行くって言った時に、車で送る事を提案されたと思うけど、何でタクシーで来たんだ?」

 

千花「それは、単純に優心くんの家の車って慣れなくて落ち着かないので」

 

優心「そういうことか。でも帰りの時ぐらいは車で送るようにお願いしてるから、帰りは我慢してもらっても大丈夫?」

 

千花「優心くんが言うなら我慢するけど、だったら家の前に待ってくれてるタクシーに伝えないと……」

 

優心「あぁ、それだったら大丈夫だよ。黒服さんが伝えてくれてるから」

 

千花「そうなんですか?ありがとう」

 

千花の言葉を聞いてから、俺はこころに声をかけた。

 

優心「こころ、千花が来たときびっくりした?」

 

こころ「ええ、本当にびっくりしたわ!だって学校から家に帰って過ごしてたら、お兄様じゃなくて千花が来たんだもの!」

 

千花「びっくりしたでしょ~。こころちゃんがバンドをやってるって優心くんから聞いて、楽しそうな話が聞きたくて来たんだ」

 

こころ「バンドの事ね!お兄様から聞いてるって事は知ってると思うけど、バンドの名前は"ハロー・ハッピーワールド"って言うの!」

 

こころがそう切り出して、千花と話を始めた。

 

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こころと話を暫くしてから、帰宅する時間になった千花を家の門の前まで見送った。家の中に戻ろうとした時に、スマホに着信を示す音が鳴り手に取る。

 

優心「もしもし、どうしたの?早坂」

 

 





台詞の前の名前で、黒服(華)と()に書いてあるのはその黒服さんの名前です。黒服のみの場合は優心を護衛している男性の黒服さんです。

(華)と書いてる場合は、華が話しており、()がない場合は華以外の黒服さんが話してます。

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