2日目の朝、登校を終えて、昨日も潜ったデカい扉を開けて教室の中に入る。
教室の中を見渡すと疎らだが生徒が揃っていた。よくよく見ると昨日と生徒の席順が変わっている。黒板に貼ってあった座席表を確認してみると、しっかりと五十音順になっていた。やはり、昨日の席は生徒に配慮したものだったのだろう。
| 爆豪勝己 | 耳郎響香 | 尾白猿夫 | 青山優雅 |
| 伏黒恵 | 瀬呂範太 | 上鳴電気 | 芦戸三奈 |
| 緑谷出久 | 常闇踏陰 | 切島鋭児郎 | 蛙吹梅雨 |
| 峰田実 | 轟焦凍 | 砂糖力道 | 飯田天哉 |
| 八百万百 | 葉隠透 | 障子目蔵 | 麗日お茶子 |
どうやら俺の席は爆豪と緑谷の間の席のようだった。それを確認して自身の席に着くと、そのまま読書を始めた。
朝のホームルームが終了し、午前の授業が始まる。
雄英高校ヒーロー科のカリキュラムは他の科とは少々異なる。午前中は他の科と同じく、必修科目が行われる。英語や数学などの普通の授業が行われるのである。
「んじゃ、この英文の内、間違っているのは?」
プレゼントマイクの授業が普通過ぎて普段の姿とのギャップに、殆どの奴が驚いて固まってしまっている。そのせいか授業は全く盛り上がらない。
(スゲェ普通だな……。やり方も教科書で文法をチェックしてから、問題を解くって感じだし。あんなテンションしてるから、もっと変な授業なのかと思ってた…)
「エブリバディヘンズアップ!!!盛り上がれお前らーー!!」
先生からの問題には、真面目な百や飯田が率先して授業中に手を挙げて答えていた。
お昼は大食堂でプロヒーローのランチラッシュが作った、一流の料理を安く食べる事ができる。
「やっぱ、漢と言えば米だよな!!」
「そんなん聞いた事ねぇぞ」
「ラーメンうめぇ〜〜」
変な持論を展開する切島にツッコミつつ、ランチで頼んだカレーを食べる。そんな俺の横では上鳴がラーメンの美味さに感激していた。他には瀬呂などもおり、昨日の今日ですっかり仲良くなったメンツである。
「そういや伏黒よぉ、幼馴染みと飯食わなくてよかったのかァー?」
「あ?…ああ、別にいつも一緒って訳でもないしな。…それにアイツはアイツで他の奴らとランチを楽しんでんだろ」
瀬呂の質問に適当に答える。他の奴らもふーんと言った感じで、特に気にした様子もなかった。そんな風に友達と駄弁りながら食べるランチの味はなんだか優しい味がしたような気がした。
そして、お昼を過ごしていよいよ午後の授業が始まる。午後の授業はヒーロ基礎学である。
全員が席に着き、今か今かとヒーロー基礎学担当であるオールマイトの登場を待っていた。ヒーロー基礎学って何すんだろうなと考えていると、遂にヒーロー基礎学担当の先生が現れる。
「わーたーしーがーー、普通にドアから来たッ!!!」
そう言いながら現No.1ヒーロー、オールマイトが前の扉から教室へと入ってくる。周りの生徒達が興奮の余り声を上げる
「すげぇや!ホントに先生やってんだな!!」
「…アレ、シルバーエイジのコスチュームじゃない?」
「…画風違い過ぎて鳥肌が……」
切島、蛙吹、尾白がそれぞれ感嘆の声を発する。
合格発表の時も思ったが、画風が余りにも違いすぎる…。それに、映像で見るよりもデカくて迫力が段違いだ。こんな一流のヒーローから学ぶ事が出来るのだから、我ながらとんでもない学校に来たものである。
「私の担当はヒーロー基礎学。ヒーローの素地を作るため、様々な訓練を行う科目だ!単位数も最も多いぞ!!……さて、早速だが今日はコレッ!!!戦闘訓練!!」
マッスルポーズをしながら、ヒーロー基礎学について軽く説明したオールマイは、"BATTLE"と描かれた紙を此方に掲げて見せる。
オールマイトの言葉に、目の前の爆豪が興奮気味に戦闘訓練という言葉を繰り返す。それを見て思わず、コイツ実は戦闘狂なんじゃないのかと少々疑いの目を向けてしまう。
「そしてソイツに伴ってコチラ──」
その言葉と共に左の壁から番号が描かれたロッカーが現れる
「──入学前に送ってもらった個性届と要望に沿って誂えたコスチューム!」
「「「うおぉぉーー!!!」」」
男子の何人かは興奮し過ぎて叫んでいた。
「着替えたら順次、グラウンドβに集まるんだ!」
その言葉で一旦の自由となった。さっさと自身のロッカーからコスチュームを取ると、更衣室へと足速に向かう。
はてさて、コスチュームは要望書に書いておいた通りの物になっているのだろうか。なんて僅かな期待感に、思わず歩く速度が速くなる。
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着替えを終えてグラウンドβの入り口の前に向かうと、既に百がいた。百のコスチュームは随分と肌の露出の多い、寒そうな物であった。
「着替えるの早いんだな」
「あら、恵さん。そうですわね。個性の都合上肌を出すため、着る物が少なくて着替えも早く済むんですの。…それにしても、恵さんのは……何処かの制服でしょうか?」
「まあ、そんな感じだな。…コスチュームにするならコレしか無いって、決めてたんだ」
俺のコスチュームは至ってシンプルだ。漫画、『呪術廻戦』に登場する呪術高専の制服。それが俺のコスチュームである。ただし、要望通りであるのなら、耐熱、耐寒、耐刃仕様の優れ物である。それとは別に、サポート会社側の趣味なのか知らないが、黒の薄くて丈夫なグローブが入っていた。スーツケースに同封されていた説明書によれば、俺の組む影絵が正面の敵から察知されにくくするために、コスチュームと同じ色のグローブを付け加えてくれたらしい。正直そこまで思考が回っていなかったのでありがたいくらいである。また、コスチューム自体にはあまり重さが無く、とても動きやすい物となっていた。
(ああ……。俺は今〝彼等〟と同じ、あの制服を着てるんだな。……そう思うとヤベェな。ちょっとニヤけそうだわ……)
「どうしたんですの?そんな顔して、何かいい事でもありましたの?」
どうやら百に見られてしまっていたらしい。なんとか表情を元に戻すと、何でもないと慌てて答える。それに対して百は「はぁ…?」と、曖昧な返事をして首を傾げていた。
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1年A組の全員でオールマイトの待つグラウンドβの中へと歩いて入っていく。そんな俺達を見ながら目前に佇むオールマイトが語り出す。
「格好から入るってのも、大切な事だぜ、少年少女!!……自覚するのだ。今日から自分は──」
「──ヒーローなのだと!!!」
被服控除。ヒーロー科入学者が、入学前に自身の個性届や自身の身体情報やデザインなどの要望を紙に書いて送ると、学校専属のサポート会社がそれに沿ったコスチュームを制作してくれるというシステムである。自身のコスチュームという、ヒーローを目指す者ならば誰もが一度は妄想している様な物が、あっさりと手に入ってしまうのだから贅沢なものである。
「良いじゃないかみんな!カッコいいぜ!!」
「──さぁ、戦闘訓練のお時間だ」
オールマイトのその宣言で授業が始まる。
「先生!ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」
そんな飯田の質問に答える形で今回の戦闘訓練の内容説明が始まる。
「いいや、もう二歩先に踏み込む。…ヴィラン退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば屋内の方が凶悪ヴィラン出現率が高いんだ」
(そうだったのか…。屋内での出現率が高いなんて、言われて初めて気づいた……。それにしても、ヒーローになると屋内戦の割合が多くなるのか?……屋内戦は周りに障害が多くて気を遣ってしまうから、少し苦手なんだがな…)
屋内戦は少し苦手である。狭い通路などでの戦闘では長物の武器は扱えないし、移動範囲が限られている事もあり動きでの翻弄があまり出来ないのである。満象とか使えたならば、もう少し苦手意識も無くなっていたのかも知れない。
なんて馬鹿な事を考えている俺とは違い、オールマイトの発言を全員真剣に聞いていた。
「監禁、軟禁、裏商売。このヒーロー飽和社かi……」
何かを言いかけていたのを、咳き込んで誤魔化すと改めて続きを語る。
「真の賢しいヴィランは闇に潜む。という事で、君達にはこれからヴィランとヒーローに別れて2対2の屋内戦を行ってもらう」
凶悪なヴィランの犯行は時にヒーローや警察と言った者達の目を容易く欺く事もある。昨日まで居たはずの人が、ある日を境に忽然と姿を消すなんて事件もザラにあるのだ。
「基礎を知るための実戦だ!ただし、今度はぶっ壊せば終わりなロボットじゃないのがミソさ」
蛙吹の質問に答えたオールマイトに、他の生徒から次々と質問が投げつけられる。余りの質問の多さに、オールマイトは聞きとる事ができず、緑谷などはオドオドとしていた。
(さりげなく1人だけ質問でもなんでもねぇ奴がいたな……。それに、こんだけ色々言われると何言ってるか全く分かんねぇな……)
「んーーー、聖徳太子ィー!!」
そう叫ぶと、オールマイトは懐からカンペを取り出してそれを読み上げ始めた。
説明された内容をまとめると、ヒーローチームは制限時間内に建物の何処かにある核のレプリカを回収するか、ヴィランチームの人間を捕縛する。ヴィランチームは核を模したレプリカを時間制限の間守り切る事。または、ヒーローを捕まえる事。これらがそれぞれのチームの勝利条件のようだ。そして、コンビおよび対戦相手はくじ引きによるランダムで決めるという事のようであった。
くじ引きの結果、各コンビが決定する。
チームA:麗日・緑谷 チームB:障子・轟
チームC:峰田・八百万 チームD:飯田・爆豪
チームE:青山・芦戸 チームF:砂糖・伏黒
チームG:上鳴・耳郎 チームH:蛙吹・常闇
チームI:尾白・葉隠 チームJ:切島・瀬呂
以上のコンビで戦闘訓練を行う事となった。どうやら、俺は砂糖という奴とペアらしい。確か昨日の個性把握テストでは何個かの競技で結構な記録を出していたはずだ。
「…最初の対戦相手はー、コイツらだ!!」
そう言ってオールマイトが引いたボールには、ヒーローチームの方のボールにA、ヴィランチームの方にはDと描かれていた。
「Aコンビがヒーロー、Dコンビがヴィランだ!他の者はモニタールームへ向かってくれ」
いきなり、緑谷対爆豪か……。昨日の緑谷へのあの反応は、明らかに何かあるんだろうな。何の因果か、凄い組み合わせだな。…まぁ、アイツらの関係性は大して興味無いが、入試一位がどれくらいなのか少し気になるな。
これから対戦する4人はオールマイトに対戦を行う建物へと連れて行かれ、他のクラスメイトは揃ってモニタールームへと移動を開始した。
モニタールームに着いてしばらくするとオールマイトがバトル開始の宣言をする。
「それでは、Aコンビ対Dコンビによる屋内対人戦闘訓練、
「……さぁ、君達も考えてみるんだぞ」
戦闘訓練が始まって数分、いきなり戦闘が開始した。周りを気にしながら慎重に建物の中を進むヒーローチームの麗日と緑谷に、爆豪が奇襲を仕掛けたのである。
「爆豪ズッケェ!奇襲なんて男らしくねぇ!」
「奇襲も戦略。彼らは今、実戦の最中だぜ」
爆豪の奇襲をギリギリで躱した緑谷は、そのまま突っ込んでくる爆豪の腕を避け、背負い投げを決める。
「……今の上手いな。しっかりと相手の動きを読んでた…。まるで昔から動きを研究してたみてぇだな」
緑谷の行動に思わずそう呟く。先程の反撃は完璧に読んでいたが故に行えたモノであろう。緑谷は爆豪が右の大振りで攻撃して来ると、確信している様な動き方をしていた。
「あの緑髪くん、無個性ながらしっかりと、入試1位と渡り合ってるよ!!」
一度お互いの距離が空き戦闘が止む。その間、爆豪と緑谷は何かを喋っている様だがコチラ側からは何を言ってるか全く分からないのが酷くもどかしかった。
「爆豪の奴、何話してんだ?定点カメラで音声ないと分かんねぇな」
切島がそんな風に文句を言うと、オールマイトがそれに答える。それにプラスして今回の戦闘訓練のさらに細かいルールを説明していく。
どうやら確保テープと建物の地図がそれぞれに渡され、テープを対象に巻く事で拘束した事になるらしい。また、制限時間は15分と非常に短く、ヒーロー側は核の場所まで分からないという、ヒーロー側が酷く不利な内容であった。
「ピンチを覆してこそのヒーローさ!それに、相澤先生にも言われたろ?アレだよ。アレ──」
「「「──Plus Ultra!!」」」
全員でその言葉を叫ぶ。
その後もしばらく、波乱の戦闘訓練は続いていく。
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Aチーム対Dチームの戦いは突然に終わりを告げた。爆豪と緑谷のぶつかり合い。緑谷は爆豪の爆破を片腕で受け止め、右のアッパーの拳圧で建物の中心をぶち抜く事によって核のある部屋を崩す。そして、その隙に麗日が飯田へと瓦礫を使った攻撃を行い、自身の重力を無くして核に飛びつく事によって、ヒーローチームの勝利をもぎ取った。
(まじかよ……。ここまでボロボロになってまでやるなんて、流石にどうかしてんぞ……。こんな作戦、常人じゃ思いついても普通実行しねぇぞ!?)
緑谷のイカれ具合に改めて戦慄させられる。
「…なんだこれ、負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてらぁ……」
全員が訓練の結果に驚いて、空いた口が塞がっていなかった。
緑谷が保健室へと運ばれ、残りの3人がモニタールームに到着すると、講評が始まった。
「つっても……、今戦のベストは飯田少年だけどな!」
「…そうだなぁ、何故飯田少年がベストなのか分かる人?」
飯田少年がベストだと言うオールマイトの発言に、周りが困惑を浮かべる中、百が手を挙げる。ああ、幼馴染みの講評が始まるぞ……。と、考えて思わず頭を抱えそうになる。
自身が言いたかった事を殆ど言ってしまった八百万に、オールマイトは少し気落ちしているようだった。
「ま、まぁ、飯田少年もまだ硬すぎる節はあったりする訳なのだが。まあ…、正解だよ……!!」
「常に下学上達!一意専心に励まねばトップヒーローになど、なれませんので!」
「…はぁ……」
幼馴染みの相変わらずのクソ真面目さに溜息が溢れた。
(やっぱ変わってねぇよ。……そのクソ真面目さは相変わらず健在のようで俺は嬉しいよ……。…はぁ……)
その後場所を変えて訓練を続行する。そのまま何組かの訓練を終えると、とうとう俺の番がやってきた。
「それじゃあ…、ラストはコイツらだ!ヴィランチームFコンビ、ヒーローチームEコンビだ!それじゃ、早速行ってみようか!!」
やっとか。なんて思いながら、訓練を行うビルへと歩いて行く。
とある建物の中の最上階の一室、砂糖と2人で話す。
「なぁ砂糖、お前の個性ってどんな感じなんだ?」
「俺の個性はシュガードープって言って、糖分を摂ると身体能力が上がるっつー個性だ!」
「…そうか、良い個性だな。……そんじゃ、守備は任せた。俺の個性で2人とも何とかなりそうだ」
「任せろ!危なかったら通信しろよ!!………そんで、役割は分かったんだがよ、伏黒の個性って何なんだ?個性把握テストの50メートル走の時の記録、速かったよな?俺と同じ増強型の個性なのか?」
そんな事を聞いてくる砂糖に、こっちだけ教えないのも不公平か、などと考えて、自身の個性を少しだけ、話す。
「俺の個性は……。まあ、肉体を強化するのが今のところ、主な能力だ。…あとはまあ、影を操る事も出来る」
そう言うと、砂糖はよく分かっていないのか首を傾げる。
「…影を操る?まあ、取り敢えず肉体強化って事で良いのか?」
「…そう考えてくれて良いぞ」
そんな感じで、訓練開始までの時間を砂糖と喋りながら過ごした。
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オールマイトの合図を聞いた青山と芦戸の、ヒーローチームの2人がスタートする。建物に入って進んで行く2人。
しばらくすると、とある部屋の中を通って、先へ行こうとしている2人の元へ、ゆっくりと伏黒が歩きながら近づいて来る。
「余裕って感じだけど、そんなに油断してるとアタシ達に負けちゃうよ!」
そう言って戦闘体勢に入る青山と芦戸の2人。それを見た伏黒は全身を呪力で強化すると、一瞬のタメを置いて駆け出す。
そんな伏黒に対して2人は個性での迎撃を行う。
酸を使っての攻撃と、ビームが伏黒へと向かって行く。それを難なく躱すと、近くにいた芦戸へと接近する伏黒。
迎撃しようと芦戸が蹴りを放とうとしたところで、芦戸と青山の2人が泥の様な何かに足を取られてバランスを崩す。
「ちょっ!ナニコレ!?動けないんだけど!!」
突然の出来事に呆気に取られ、隙を晒してしまう2人。そんな2人の隙を見逃す事なく。ある程度、手加減をした拳を腹に叩き込み気絶させる。
「…これで、一丁上がりだな」
2人を瞬時に封殺した伏黒は意識の無い、青山、芦戸の両名に確保テープを巻いて戦闘訓練を終わらせる。
こうして、伏黒1人であっさりと最後の戦闘訓練は終了した。
戦いが終了した事により、静寂に支配されている建物内とは違い、モニタールームは驚愕に包まれていた。
「……マジかよ。伏黒の奴、あんなに強かったのかよ!しかも、あの黒い泥みたいなのなんだよ!?」
「轟の時もすぐに終わったけどよ、こっちも決着つくの早すぎるだろ…!!」
そんなモニタールームへと、先程まで戦闘訓練をしていた4人を連れてオールマイトが帰ってくる。
「あぁーー、伏黒強すぎるよぉ〜。何あの個性!?あの泥みたいなのズル過ぎるよぉー!!」
「とてもスマートで良いパンチだったよ☆」
そして、そんな事を言う2人に他の生徒はうんうんと頷いていた。
「泥じゃねぇ……。影だ」
芦戸の言葉にボソッと呟いて、訂正を入れるのだった。
────────────────────
講評が終了し、全員で最初の場所に戻ってオールマイトからの話を聞いていた。
「お疲れさん!緑谷少年以外は大きな怪我もなし。…しかし、真剣に取り組んだ。初めての訓練にしちゃみんな上出来だったぜ!!」
そんな事を言うオールマイトに蛙吹が昨日の相澤先生の後だと拍子抜けだと語る。そんな蛙吹の発言にみんなと一緒に首を縦に振って頷く。
「真っ当な授業もまた、私達の自由さ!」
そう言った後、無理矢理授業を締め括ると急いで帰っていった。オールマイトの相変わらずの速さにみんなが驚く。それにしても、昔見た映像より遅かった様な気がするのは自身の思い違いだろうか?……やはり、オールマイトでも歳には敵わないのかと呑気に一人考えていた。
午後の授業を終えて、今は教室でヒーロー基礎学の反省会を、残った何人かの生徒と行っていた。因みに爆豪は下らないとか言って帰っていった。爆豪と同じく既に帰宅している轟は用事があるとの事だった。
自宅での自主訓練の時や、昨日の体力測定の時も思ったが、あの時の黒閃を経験してから、呪力の質が上がった気がする。やはり、黒閃経験前と後では感覚がまるで違っていた。呪力の訓練も続けつつ、早く摩虎羅の力を引き出せる様にならないといけないな。
そうやって、1人で反省会をしながら色々と考えていると緑谷が教室へと帰ってくる。ボロボロだった右腕はどうやら未だに完治していない様であった。
扉の前にいる緑谷に何人かの生徒が集まって自己紹介などをしているのを、俺は遠くからぼーっと眺める。緑谷は他の奴らとしばらく話した後、爆豪が先に帰った事を知ると、走って何処かへと行ってしまった。爆豪に何か用でもあったのだろうか。
「忙しない奴だな…」
そう呟きながら帰る準備を済ませると、百の席へと向かう。
「…おい、百。お前か、千蔵さんに頼みたい事があるんだが、今日家行っていいか?」
「……私かお父様に頼みたい事ですか?」
「ああ」
「ど、どんな内容でしょうか!?何でも言って下さいまし!私に出来る事であれば、何でもお任せ下さいですわ!!」
突然テンションが高くなる幼馴染みに、少し戸惑ってしまう。こんなにテンションが高い幼馴染みを久しぶりに見た気がするのは気のせいではないのだろう。
「さあ、帰りましょう!恵さん!ディナーは私の家で食べていきますよね?…ああ!お母様とお父様に連絡しないと!2人ともとても喜びますわ!」
「……お、おお。……とりあえず、早く行くぞ」
周りの目がコチラに集中していて恥ずかしい。峰田なんかはコッチを見る目が血走っていたくらいだ。これは呪われてしまうのではないだろうか?
(そういや2人で帰るのなんて、小学生以来か?…あん時は姉貴も一緒に居たっけか…。懐かしいな……)
そんな感じでその日は2人で家へと帰った。
それから数日後、俺達1年A組はさかしいヴィランの、その本当の恐ろしさを目の当たりにする事になるのであった。
今回も読んで下さり本当にありがとうございます。