メイドは主人を殺したい   作:朱花

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悪魔討伐②

「俺が前衛、セリカが援護だ」

 

 それだけ言い残してサーチェは、回復薬によって塞がった傷のあった部分を少し触って確認した後、カイナだったものに向かって走り出す。

 異論は無い。 僕の魔力量は、あの悪魔と比べて遥かに劣っているため不意をついても『魔眼解放』が効かないと考えたからだ。

 サーチェは悪魔に乗っ取られたカイナを見据える。

 そして―――

 

「てりゃァァァ!」

 跳躍からの渾身の蹴りを放った。

「―――はははっアンタ、強いね」

 その一撃を⋯⋯悪魔は笑って魔力の防壁で防ぐ。

「たく⋯⋯その姿でアイツらしくねぇこと言ってんじゃねぇよ。 調子狂うだろクソが」

 

 サーチェは防壁に臆することなくさらに鋭い拳打を放つ、放つ、放つ。

 ―――が。

 その全てが防壁によって無情にも阻まれる。

 

「めんどくさいなぁ。 めんどくさいから―――本気出してあげるよ。」

 そう口走った悪魔の魔力が一気に増幅する。

「その魔力⋯⋯さっきの大技か!」

 そう言ってサーチェは身構える。

 そして⋯⋯

 

「セリカ! 張れるだけの障壁を展開しろ!」

 僕に向かって叫んだ。

「分かりました! 障壁(バリア)障壁(バリア)障壁(バリア)!」

 僕はサーチェの指示に従い、張れるだけの魔力障壁を展開する。

 しかし⋯⋯それを聞いた悪魔は微かに笑った。

 

「無駄だよ! そんな障壁、全て破るから」

 悪魔の魔力が高まっていく。

 ―――あの魔法は!

 その魔法は僕にとって、とても見覚えがあるものであった。

 何故なら、それは魔王時代に()()()()()()()魔法だったからだ。

 そして悟る、この程度の障壁で防ぐことは不可能だと。

 

 

 

 

 ―――そう、()()()()()

 

 

 

 

 

「滅びろ! 黒破壊(ブラックバースト)!」

 詠唱が完成し、溜め込まれた魔力が放たれる。

 しかし、その魔法が発動することは永遠になかった。

「何故だ! なぜ魔法が発動しない!」

 悪魔が叫ぶ。

「なっ⋯⋯何がおきた?」

 サーチェも起こった状況がいまひとつ理解できていない様子だった。

 

解呪(ディスペル)です」

 僕は、その答えを告げる。

 悪魔は僕を睨みつけ⋯⋯

 

「ディ、解呪(ディスペル)だと! ありえない! 『黒破壊(ブラックバースト)』は、人間には理解できない程の高位魔術だぞ!」

 そう喚き散らす。

(うるさい⋯⋯)

 内心で苛立ちを覚えるが、喚き散らすその理由が僕には理解できるため、何とも言えない気持ちになる。

 

 ―――解呪(ディスペル)

 魔法の発動のタイミング、その一瞬にのみ使用可能な魔法。

 その効果は―魔法発動の停止―

 しかし、魔法発動のタイミングはどの魔法も絶妙に違う。

 つまり、その魔法の術式を完全に理解していないとできない芸当。

 それが―解呪(ディスペル)―だ。

 

黒破壊(ブラックバースト)』が人間に理解できない程の高位魔術でも関係ない。

 ―――なぜなら、その製作者は僕なのだから。

 

「お返しだ。 滅びろ!! 」

 

 僕は、黒破壊(ブラックバースト)を発動。

 その崩壊エネルギーが一気に悪魔へとかかる。

 

「クソっ! ! 」

 

 悪魔は魔力防壁に加えて障壁を展開し、被害を最小限に抑えた。 それでも威力の封殺はままならなかったようで、少しよろめいていた。

 

 そのまま前に切りこもうとしたが⋯⋯

 魔力の大量消費により猛烈な吐き気を感じる。

 お互いに満身創痍の状態だ。

 ―――たった一人を覗いて。

 

「サーチェ! 」

 僕は、サーチェに呼びかける。

 呆然と立ち尽くしていた彼は軽く頷いた後⋯⋯

「おう!任せろ! 全力で行ってやる『正義執行(ジャスティスセイバー)』 !」

 

 サーチェの身体が白いオーラ、聖霧に包まれる⋯⋯

 

(は?)

 

 ―――内心で驚愕する。

 サーチェが行使したのはあろうことか、過去の世界で勇者が行使したものと同じものであった。

(まさか⋯⋯サーチェは⋯⋯)

 

 ―――サーチェは勇者の末裔なのでは?

 そんな懸念を心の中に抱いた。

 しかし、それについて考える余裕などなくサーチェが悪魔に肉薄する。

 

「くらいやがれ!」

 

 ―――パリン!

 高い音がして悪魔の魔力防壁が崩れ落ちる。

 一度対峙した僕なら分かるが、正義執行(ジャスティスセイバー)を前に魔法など無力に等しいのだ。

 

 ―――正義執行(ジャスティスセイバー)

 魔を滅するために作られた技術(アーツ)

 言い換えればそれは『聖魔法の絶対領域』なのだから。

「おのれ! おのれおのれ!」

 

 悪魔は叫びながら勇者の剣を一閃する。

 その切っ先は、完全にサーチェを捉えていた。

 剣がサーチェに近づく⋯⋯

 しかし、サーチェの身体が切り裂かれることはなかった。

 

「バカが」

 サーチェは余裕の表情で剣を掴んでいた。

「どうして⋯⋯どうして切り裂けない! 勇者の剣だぞ!」

 悪魔が驚愕して叫ぶ。

 

 ―――サーチェがその問いに答えることは無い。

 ただ黙々と殴る、殴る、殴る⋯⋯

(勇者の剣は、聖法気で戦う剣だ。 魔力で代用したところでたかが知れてる。 ただ⋯⋯サーチェ⋯⋯彼は⋯⋯)

 

 魔力で使われた勇者の剣など、本来の力に比べればなまくらに等しい。 しかし、剣としての性能は本来のままのため剣の腹を掴むのは決して容易ではない⋯⋯

  おそろしい程の見切りの目に僕自身、恐怖を覚える。

 

「テリャ!」

 サーチェの蹴りが悪魔の腕に見事に炸裂しその手から勇者の剣が滑り落ちる。

 サーチェはそれを拾う。

 途端に勇者の剣が鋭い光を放つ。

 そして―――光の剣となった。

「ほらよ! 落し物だ、受け取れよ!」

 

 投擲された光の剣が悪魔目掛けて飛んでいく。

 その剣に纏われるは破邪の光⋯⋯喰らえば即死だ。

 それを察したのか悪魔は無様に這いつくばって剣の投擲を回避する―――だが、後手だ。

 サーチェはその行動を読んでいたようで既に悪魔目掛けて疾走している。

 その手に強大な聖法気を宿らせて―――

「終いだ。 カイナ(あいつ)を唆した罰、その命で償ってもらうぞ」

 

 サーチェの貫手が悪魔の胸を貫いた。

 悪魔の体内で聖法気―――魔を滅するが炸裂する。

 

「がっ⋯⋯おの、れ!貴様ら⋯⋯いつか魔皇様が貴様らを⋯⋯ 」

 不穏なことを吐き捨てて悪魔⋯⋯もといカイナは事切れた。

「うぇー汚ぇ。 これだから貫手は嫌なんだよ」

 

 サーチェは手に付着した返り血を服でゴシゴシと拭いている。

 彼自身の血もあって服は赤黒く染まっている。

「終わったな。正直俺一人でも余裕だったが」

 

 ある程度拭き終えたサーチェがニヤニヤしながらそう呟いた。

 ―――何を馬鹿な。 強がりめ。

「冗談はやめてください。 ヘロヘロだったじゃないですか」

「ぬ⋯⋯俺にはあそこから勝算があったんだよ! ほら! 俺は全力じゃなかったし?」

 

 顔を赤くしてサーチェが叫ぶ。

 何が勝算だか⋯⋯まぁいい。

 

 ―――僕達は国王暗殺を成し遂げたのだ。

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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