メイドは主人を殺したい   作:朱花

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能力の使い道

「⋯⋯ふぅ。 今日も疲れたな」

 僕は一糸まとわぬ姿となり湯船に浸かる。

「魔王の頃にも水浴びはあったが⋯⋯それを湯に変えるだけでここまで劇的に変化するとはな」

 与えられた部屋に風呂というものがあり以前から気になっていた。

 ちょうどサーチェに勧められたということもあり試しに入ってみたのだが、これがとても気持ちい。

 

「しかし⋯⋯サーチェは強いなぁ。全く当たる気がしない」

 時が経つのは早いもので、僕がメイドになってから一ヶ月が経過しようとしていた。

 僕は毎朝、訓練という名目でサーチェを殺そうと仕掛けているのだが⋯⋯等のサーチェは、その最中に余裕の表情で僕にアドバイスを繰り出してくる。

 

 かなり悔しいが、サーチェがするアドバイスは的を射ているため聞くべきところがあるのだ。

 それが更に悔しいのだが⋯⋯

(さてさて⋯⋯)

 僕は訓練の最中、サーチェに貰ったアドバイスを思い出す。

 ―――お前、タイツやめた方がいいぞ。 そんな貧相な胸なのに脚まで隠してちゃあ、そそらねぇからな。

 

(違う⋯⋯何を思い出しているんだ)

 一瞬自分の胸を確認して、首を振った後に再び思案する。

 ―――お前⋯⋯あの能力使えよな。 あのドラゴンを滅ぼしたやつ。

(⋯⋯これだ!)

 去り際に彼が言っていたことを思い出した。

 そう⋯⋯彼は知っていたのだ。 僕の『魔眼解放』を、そしてそれでドラゴンを討伐したことを。

 

「けどなぁ⋯⋯多分通じないしな」

 ぽつりと呟く。

 多分、と言うがこれは確信だ。

 彼には『魔眼解放』が通じない。

 僕の魔力量も平均的にはかなり多い方なのだが、それでもサーチェには遠く及ばない。

 それほどまでに彼の魔力量は大きいのだ。

 魔王時代の不敗神話は見る影もなく、今の『魔眼解放』は大した効力もない駄能力に成り下がってしまったのだ。

 

「どうするかなぁ⋯⋯」

 そうボヤきながら風呂を出た。

 エイリさんに貰った可愛らしいフリルの着いた寝巻きに着替えようかと思ったその時⋯⋯洗濯物の籠をぼんやりと見つめてひとつの事に気がついた。

 

 ―――ない。

 ないのだ。 僕の下着が⋯⋯。

「⋯⋯盗まれたな」

 

 僕の王城の中での地位はかなり高い。

 それこそ、大臣に匹敵するほどだ。そんな僕にこんなことをする奴は恐らく一人しかいない。

 ―――そう、サーチェだ。

 僕は寝巻きを一度仕舞い、クローゼットからエイリさんに送ってもらった服を適当に見繕ってサーチェの部屋へと向かった。

 

 ―――バン!

 ノックもせずに派手にドアを開け、部屋に入る。

「よぉ。 来ると思っていたぜセリカ」

 僕はその中で脚を組み椅子に座って、何故か格好をつけているサーチェを見据え⋯⋯

 

「変態が⋯⋯死ね!」

 思いっきり災厄(ディザスター)を振りかぶった。

「よっと! 危ない危ない」

 サーチェはそれを軽く避けた。

 僕の剣は勢い余って椅子を粉々に破壊した。

 

「あぁ! てめぇ⋯⋯! やってくれるじゃねえか。 そんな事したら俺がライラに怒られるだろ!」

 サーチェが喚き散らす。

 どうやら彼はライラに苦手意識を持っているようだが、そんな事は関係ない。

 

「黙れ。 変態に慈悲などない!」

 そう言って再び剣を構える。

 するとサーチェは手を挙げて。

 

「前から思ってたけどキャラ変わりすぎだろ⋯⋯わかった⋯⋯わかったよ。 俺が悪かった。 ただ、どうしてもお前に来て欲しい理由があったんだよ」

 そう言ってサーチェは僕を見つめる。

 そして⋯⋯

 

「お前のドラゴンを討伐したあの能力(スキル)を使え。 それの上手い使い方を教えてやるよ」

「⋯⋯良いんですか? 死ぬ可能性もありますよ」

「安心しろ、覚悟の上だ」

「分かりました⋯⋯」

 

 僕は、心の中で『解放(オープン)』と念じる。

 

「行きますよ⋯⋯」

 赤くなった双眼で、何やらそわそわと落ち着きのない様子のサーチェを見つめる。

「あぁ、来い!」

「上位者の名において命令する。 『死ね』」

 

 僕は、迷いなくサーチェに命令する。

 ―――しかし、何も起こらない。

 やはり彼には『絶対服従』は通用しないようだ。

 

「よし。 睨んだ通りだったな。 セリカ、お前そのスキルのこと命令するだけのスキルだと思っていないか?」

「⋯⋯違うのですか?」

 

 僕はサーチェに問う。

 彼は少し考えた後⋯⋯

 

「あくまで仮定だが。 そのスキル、上手く使えば色々な用途に応用できる。 そのスキルは身体中に巡らせた魔力を目に集中させてそれを相手に叩き込めるスキルだろ? だから、それを応用するんだ」

「⋯⋯応用とは? 具体的にどうすれば良いんですか?」

「近えよ⋯⋯。 それは分からねえ。 答えは自分で見つけろ。 んじゃそろそろ寝ろよ」

 

 ―――ふぁぁぁ。

 そう欠伸して彼は寝室へと向かおうとする。

「待ってください。 最後に一つだけ」

 僕が声をかけると、サーチェがビクッと肩を震わせ、恐る恐るといった様子でこちらを振り返る。

 少し気になるところがあったが、僕は自分の質問を優先した。

 

「どうして⋯⋯私がドラゴンを討伐したことを知っていたのですか?」

「⋯⋯ん? あぁ、それか。 そいつは俺が倒そうとした獲物だったから、だ。 そこでたまたまお前に会って興味を持ったからその鞘を渡したんだよ。 ただの偶然だ。」

 

 ―――早く寝ろよ。

 そう言って今度こそ彼は寝室の中へと消えていった。

「ただの偶然⋯⋯か?」

 やはり引っかかる所はあるが、そう言われた以上、気にしても仕方ない。

「『魔眼解放』の使い道⋯⋯か。」

 

 それを思案しながら僕は睡眠をとるべく自室へと向かっていった。

 

―――

 

「はぁ⋯⋯はぁ。 危ねぇー!」

 

 王城の一角、国王の部屋の寝室にて荒い息が聞こえる。 その部屋の中で、サーチェはベッドの上でブツブツと呟いている。

 

「さっきセリカに呼びかけられた時は終わったかと思ったぜ⋯⋯」

 そんな彼の手に握られているのは白い布。

「よし! ここなら邪魔者はいないし、心置き無く楽しめるぜ⋯⋯。 ただ、今日は眠いから明日にするか⋯⋯」

 

 ―――そうしてサーチェは眠りについた。

 

 翌朝、憤怒の形相のセリカに半殺しにされることなど知る由もなく⋯⋯。

 




寝落ちしてしまって更新忘れちゃいました(๑>؂•̀๑)テヘペロ

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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