時は少し遡って、サーチェが僕に飛びかかる前となる。
「見ちまったな⋯⋯セリカ。
そう口走ったサーチェの身体を今までとは比べ物にならない程の魔力が包んだ。
(これは⋯⋯まずい)
サーチェの狙いが
僕は悪あがきをするべく、身体強化魔法をかけられるだけかける。
魔力が巡り、身体を強化する。
(この感覚って⋯⋯もしかしたら!)
僕はその感を信じて『魔眼解放』を発動して魔力を巡らせる。
―――魔力を目に集めるのではなく、
(予想通り)
内心でほくそ笑む。
『絶対服従』発動の魔力を、目にでは無く身体に巡らせる⋯⋯そうする事で身体強化魔法と同じ効力を得られるのだ。
僕の身体は現在、二種類の身体強化を受けサーチェに負けず劣らずの運動量を備えている。
今なら―――回避可能だ。
「行くぜ?」
そう言ってサーチェが走り出す。
(速い! ⋯⋯が)
突風のように迫り来るサーチェの手から逃げるべく、僕はその場から横に飛ぶ。
―――ギュン!
僕が元いた場所にサーチェが立つ。
―――こうして僕はその一撃を避けきったのだった。
―――
僕は赤く染った双眸でサーチェを捉える。
「無駄だ。 俺にそれは効かねえよ」
「そうですか⋯⋯それは残念です」
両手を大きく広げながらサーチェはそう言った。
しかし⋯⋯残念だな。 僕の目標はそれじゃない。
「はァァ!」
「⋯⋯うおっ! いきなり来るかよ!」
一瞬の虚を突いて僕はサーチェに向かって走る。 それが予想外だった様子の彼は、その攻撃の回避に専念する⋯⋯
(右とみせての左への回避!)
しかし、僕にはその回避先が手に取るように分かっていた。
「⋯⋯は? ⋯⋯嘘だろ?」
サーチェは驚いたような声をあげて⋯⋯咄嗟に剣を抜いて攻撃を受けた。
「よく⋯⋯分かったな!」
「⋯⋯ッ!」
鍔迫り合いの状態からサーチェが力だけで僕を押し飛ばす。 そして⋯⋯攻撃に転じた。
(右からの横薙ぎ⋯⋯左への返し斬り!)
サーチェの打つ手が、僕には全て手に取るように分かる。
これこそが僕のもうひとつの能力⋯⋯『読心』であった。
「⋯⋯マジかよ。 ⋯⋯よく避けたな」
「これで負けません!」
冷や汗を浮かべるサーチェに向けて大きく一歩を踏み出す。 そして⋯⋯そのまま飛びかかろうとして⋯⋯
「あ⋯⋯れ?」
まるで糸が切れたかのように、僕の意識は途切れたのだった。
―――
「⋯⋯は?」
ちょっと待ってくれ。 情報量が多すぎる。
セリカの動きが急に気持ち悪いくらい良くなったかと思ったらぶっ倒れたんだが⋯⋯。
「おーい。 セリカー? 生きてるかー?」
ペシペシと頬を叩くと、微細ながら反応があった。
⋯⋯どうやら生きているようだ。
多分だけど⋯⋯魔力の使い過ぎだな。
全くこいつは魔力の使い方が下手くそだぜ⋯⋯。
やれやれと思いながら俺はセリカから
「へへっ。 ⋯⋯手間かけさせやがって」
劇に出てくる山賊のようなことを口走りながら、俺は箱の中にそれを仕舞い、鍵をかけた。
⋯⋯これでよし。
「さーて。 飯でも食いに行くかなーっと」
朝から動き過ぎてもうヘトヘトだ。
早く飯にありつきた⋯⋯
「陛下! 何を騒いでいるのですか! メイドたちから苦情が来ておりま⋯⋯」
「あ」
顔を赤くして俺の部屋に飛び込んできたライラは、倒れ伏すセリカを見て更に顔を赤くした。
「何をされているのですか! 陛下⋯⋯こちらに来てください!」
「えちょっと⋯⋯待って? 誤解⋯⋯誤解だぁぁぁ!」
弁解の余地もなく、俺はライラに連れて行かれて事情聴取を受けた。
その時は俺の
「陛下! 今日は飯抜きです! しっかり反省してください!」
―――飯抜き
それが俺に下された刑罰であった。
―――
「ふふっ。 面白いなーヴァイスくんは」
暖かみを感じさせる木造の屋敷の中で、水晶玉を見つめながらポツリと呟く妖艶な美女がいた。
「待っててね〜! もうすぐそっちに行くから〜!」
その女―――サヤは、机の上に置かれた紅茶を口に含みながらそう叫ぶのであった。
ここまでが「たいあっぷ」での連載分です。
よろしければ、そちらでの評価もお願い致します!
ここからも連載は続ける予定ですので⋯⋯
現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)
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セリカ
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サヤ
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サーチェ
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エイリ
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カムラ