メイドは主人を殺したい   作:朱花

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女神登場

 いやはや早いもので、僕がメイドになってから今日で四十日が経過した。

 この短期間で僕がサーチェに仕掛けた暗殺は合計で七十六回。

 ちなみに、その内で攻撃に成功したことは一度もない⋯⋯。

 当初は自分の力不足を嘆いていた僕であったが、最近ではサーチェの異常さを前以上に感じるようになっていた。

 普段は隙だらけで腑抜けただらしない顔をしているくせに、いざ攻撃を仕掛けてみると神がかった反応速度で確実に回避し、反撃してくるのだ。

 平和な時代に生まれたのが不思議な程の、正しく天災であった。

 

 ⋯⋯とここまで後ろ向きな話ばかりしてきた僕だが、勿論収穫はあった。

 それこそが能力である『読心』である。

 

 この能力を言い表すとしたら『燃費の悪い高速魔導車』である。

 相手の思考を読む、という強力な能力の代償として物凄い量の魔力を消費するのだ。

 サーチェには及ばないにしろ、この時代では強大と言える僕の魔力量でさえも、五回も使えばすぐさま魔力欠乏症を起こして倒れてしまう程に。

 ちなみに、この身体の持ち主の少女も数ヶ月に一回程しか使えていなかったようだ。

 

 ただ、使っていく度に本当に少しづつではあるがコツが理解できて消費魔力を抑えることに成功している。

 もしかしたらその内、連発できるようになるのかもしれないな。

 

「お! セリカちゃん! 今日も可愛いねぇ!」

「⋯⋯え? あっ! ありがとうございます!」

 

 思考の最中に掛けられた声に、少し怪しい挙動をとりながらも何とか笑顔を作りながら返答した。

 蛇足だが、この短期間で愛想笑いもかなり上手くなったと思う。

 

「今日も買い出しかい? 頑張るねぇ!」

「いえいえ。 これも仕事ですので」

「国王様の護衛もしてメイドとしての仕事もこなすなんて⋯⋯凄いねぇ。 おばちゃん感動したよ!」

「ふふっ。 ありがとうございます」

 

 目に腕を当てながら、感極まった様子の彼女。

 彼女は、僕がメイドとしての買い出しの仕事でよく向かう食料販売店の店主だ。

 僕はそんな彼女から、指定された食材を購入していく。

 

「しっかし⋯⋯セリカちゃんは力持ちだねぇ」

「そうですかね⋯⋯? まぁ鍛えておりますので」

 

 多くの食材が入った袋を担いだ僕に、そう言い放った店主へ向けて僕は腕を曲げて、ぷにぷにの二の腕を見せる。

 ほんの小さなジョークだったが、店主は手を叩きながら大笑いしてくれた。

 

「ところで⋯⋯セリカちゃん知っているかい? あの話」

「あの話⋯⋯と言うと?」

 

 世間話好きの店主に付き合ってしまうと、長話になることは目に見えていたが、戻っても特にすることがないので、暇つぶしに聞いてみることにした。

 店主は客への対応をするつもりがないのか、近くの椅子に座り込んで話し始めた。

 

「最近、王都で話題の占い師がいてねぇ」

「占い師⋯⋯ですか」

「聞かれたことは、何でも答えが出せる。 って言われてるんだ」

「なるほど⋯⋯」

 

 占い師⋯⋯か。

 胡散臭いことこの上ないが、それほど当たるというのも気になるものだ。

 いくら優れた占い師と言えど、人間ならば失敗もあるはずだ。

 それなのに⋯⋯必ず答えが出る、という噂が広がっているのは奇妙なものだ。

 店主が語る、質問に対する占い師の回答を聞いても、偶然に答えられるとは考え難いものばかりであった。

 

「その占い師はどこに?」

「それが分からないらしいんだよ! 急に現れたかと思ったら、急に消えたりするらしいんだ!」

「はぁ⋯⋯」

 

 なんだか一気に胡散臭さが増した。

 そんな神のような人間が果たしているのだろうか?

 

「⋯⋯他に何か、その占い師についての噂はないんですか? 外見の特徴とか」

「そうそう! 外見がまた凄くてねぇ! 黒髪で絶世の美女らしいんだ!」

「黒髪の⋯⋯美女?」

「そうそう! 腰ほどまでの長い髪らしいよ!」

「⋯⋯なるほど。 もしかして、能天気で軽い言葉遣いとかではありませんよね?」

「いや、その通りだよ! なんだいセリカちゃん? もしかして知り合いかい?」

「⋯⋯いえ、ただ聞いてみただけです。 中々に不思議な方ですね」

 

 口ではそう言った僕だったが、内心ではその占い師の正体に確信を抱いていた。

 ⋯⋯サヤだ。 その占い師はサヤである。

『私もすぐにそっちに向かうから!』

 僕が出発する前に彼女が言っていた言葉を思い出した。

 彼女の軽口だと思っていたから、まさか本当に来るとは思っていなかったな⋯⋯

 

「そんな目立つ真似をしているのも、有名になって僕に会うため⋯⋯なのか?」

 

 僕が思考を巡らせ始めた正にその時であった。

 

「そこのお姉さん! 占い、やっていかない?」

 

 鈴のように美しい声が耳に届いた。

 

「あれ? ねぇ⋯⋯聞いてる? お姉さんってば!」

 

 必死に僕を振り向かそうと声をかけてくるその女を無視する。

 ここで振り返ったら絶対に面倒くさいことになると確信していたからだ。

 

「ねーえってば! ヴァイスくん! いや、魔王のてんせ⋯⋯」

「⋯⋯なんだ」

「お! ようやく振り向いてくれたねぇ」

 

 ニヤニヤと意地悪い笑みを浮かべるその女⋯⋯サヤを見て振り返ったことを心底後悔する。

 ⋯⋯仕方ないことだ、あのまま振り返らないと僕の絶対に守り通さねばならぬ秘密を暴露され金なかったからな。

 そんな僕を他所に、気がついた時には遅く、既にサヤは僕を抱き締めていた。

 彼女の豊満な胸が僕に容赦なく襲いかかり、何故かえも言えぬ敗北感が感じさせられた。

 

「ふっふっふ〜! ヴァイスくん、お待たせ!」

 

 そんな僕の気持ちなど露知らず、心底嬉しそうに言い放つサヤであった。




暫く投稿しなくて申し訳ございませんm(_ _)m

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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