「え〜っと⋯⋯私はねぇ⋯⋯」
「おう。 なんだよ⋯⋯」
しどろもどろになって視線を巡らせるサヤを、サーチェは訝しげに見つめる。
先程からチラチラと僕に救いを求めるような視線を向けてくるのだが⋯⋯僕の頭にも妙案が浮かぶ気配はなかった。
「⋯⋯おい。 なんか言えよ」
「あはは⋯⋯」
愛想笑いを浮かべるサヤを明らかに不審がるサーチェは腰の愛剣に手をかけていた。
これは非常に宜しくない状況だ⋯⋯どうにかしないといけない。
サヤが女神だと悟られないように上手い嘘をつかなくては⋯⋯そうだ!
「⋯⋯ま、魔法顧問です。 ご主人様の」
「魔法顧問?」
僕の言葉にサーチェは振り返り、疑問の目を向ける。
僕は嘘であることが表情に出ないよう心血を注ぎながら続ける。
「ご主人様は大量の聖法気と魔力を有しているのに、魔法は
「ふーん。 そうなのか?」
「え!? うっ⋯⋯うん! そうだよぉ!」
僕の言葉に納得したように頷きつつ、サーチェはサヤの方へと向き直って彼女へと問いかける。
明らかに怪しく返答した彼女だが、サーチェは意外にも頷くのみであった。
しかし、僕が胸をなで下ろしたのも束の間、サーチェは予想だにしない行動に出た。
「⋯⋯!」
「だったら、俺の相手をするくらい訳ないよな?」
いつの間にか
思わず一歩仰け反った彼女に合わせて、サーチェも一歩間合いを詰め直す。
緊張で空気が張り詰め、一触即発の状態となった。
「⋯⋯ご主人様? 何をしているんですか? あくまで彼女は客人なのですよ?」
「⋯⋯ハハッ。 冗談だよ。 そんな怖い顔すんなって」
僕の言葉に、サーチェは小さく笑いながら剣を収めた。
やれやれと思いつつ、心の中で安堵した僕を他所に何を思ったのかサーチェは軽く身体を引いて拳法の構えをとった。
「安心しな。 剣は使わねぇよ」
「⋯⋯え? いやいや。 そう言うことではなくて⋯⋯」
「ん? 客人だから剣は使うなってことだろ? 分かってるって」
何を当たり前のことを、と言わんばかりの表情のサーチェの間違いに頭の痛い思いである。
「そうではなくて、戦うことをやめろと言っているのです!」
「いやいや。 それはねぇだろ? だって俺の顧問になるってことは、セリカと同じで国王直属になるってことだ。 だから選ぶ権利は当然俺にあるし第一、戦いに関して弱いやつに教えられてもしょうがないだろ?」
「⋯⋯はぁ」
「俺がセリカを護衛にしたのも、お前が強かったからだしな。 本当だったらぶち殺してるところだったからな?」
「そうは言っても⋯⋯」
「⋯⋯もういいよ、ヴァイ⋯⋯じゃなくてセリカちゃん」
僕がサーチェに依然噛み付こうとしたその時、サヤの美しい声が静止を促した。
振り返ると、そこには銀色の杖を構えたサヤが悠然と立ち尽くしていた。
「やる気だな? 手加減はなしだ。 本気で来いよ?」
「むしろ、手加減ありで勝てるなんて甘く見られたくないんだけどね〜」
「ハハッ。 おもしれぇな、お前。 名前は?」
「サヤ、だよ。 んじゃ、やろっかサーチェくん」
ニヤニヤと微笑を浮かべ合って見つめ合う双方。
お互いに後ろに下がり、ある程度の距離をとったところで武器を構え合う。
⋯⋯先に動いたのはサーチェであった。
軽い動作で走り出し、恐るべき速さでサヤとの間合いを詰めていく。
そして⋯⋯サヤとの距離が最初の半分ほどに迫ったその時、サーチェは大きく跳躍した。
そして⋯⋯渾身の蹴りを繰り出す。
『清めたまえ神の御業よ。 虚偽を打ち砕き真理を示せ』
それと同時に恐るべき速さで詠唱を完成させるサヤは、身体を捻ってその一撃を躱す。
「⋯⋯テリャァ!」
「ふふふ! 甘いよぉ!」
着地したサーチェが繰り出す拳打を、サヤは時に躱し、時に捌き、時に杖で受け止めることで完全に見切っていた。
「⋯⋯やるな、お前」
「へへんっ! そう弱くはないよぉ!」
鼻を擦りながらそう言い放つサヤ。
彼女の美しく長い黒髪は、彼女自身の溢れ出る聖法気を受けて眩く輝いていた。
「⋯⋯セリカ」
「はい?」
そんな彼女の髪をぼんやりと眺めていたところ、サーチェに声をかけられた。
「わりぃ。 やっぱり全力で行くわ」
「は? それはどういう⋯⋯」
僕の質問に答える前に、サーチェは行動でその答えを示した。
彼はサヤに勝らずとも劣らない聖法気量を解放して⋯⋯腰の愛剣に手をかける。
そして⋯⋯抜き放った。
彼の言う全力。
つまり、勇者の剣である
「さぁ⋯⋯二回戦と行こうか」
「いいねぇ。 ゾクゾクするよ!」
互いに笑い合いながら、再び聖法気を纏った武器を構え合うのであった。
現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)
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セリカ
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サヤ
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サーチェ
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エイリ
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カムラ