メイドは主人を殺したい   作:朱花

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女の子部屋

「んじゃ。 そういう事で。 今日はセリカの部屋に泊めてもらえ」

「え? ご主人様? それは流石に⋯⋯」

「うん! ありがとう! じゃあそうさせて貰うね!」

「ん。 んじゃそういう事で」

 

 嫌だ、と言おうとした僕の言葉を遮ったサヤに頷きで返したサーチェはそれっきり近くの大木に腰掛けて眠ってしまった。

 ⋯⋯こうなってしまってはそう簡単に起きないことを今までの生活で十分に理解した。

 

「えへへっ! 嬉しいなぁ〜」

「⋯⋯仕方ない。 ただし、絶対に変なことをするなよ」

「うんうん! 分かってるから早く連れて行ってよ〜!」

「⋯⋯分かった」

 

 全く話を聞いていない様子のサヤに内心で呆れながら、僕は地面に落ちてしまった買い物袋を拾って王城へと歩き出した。

 

「いや〜。 本当にサーチェくんって人間なの? 強すぎるんだけど!?」

「サーチェが常識破りなのは今に始まったことではないがな。 ただ、明らかに異常な強さだ」

 

 周囲に人がいないことを把握した僕は、素の状態で会話をする。

 思えば素の言葉遣いでの会話は久しくしていなかった気がするな。

 

「勇者の血筋だからあんなに強いのかな?」

「それもあるかもしれないが⋯⋯口ぶりから察するに、師匠がいたようだぞ。 恐らく血のにじむような努力を重ねたのだろうな」

 

 自分の過去についてあまり話したがらないサーチェだから、あくまで推測の域を超えないのだが。

 

「え〜? サーチェくんが修行⋯⋯ねぇ? まだ知り合って間もないけど、そういうタイプには見えないけどなぁ?」

 

 僕の言葉にサヤは首を傾げる。

 恐らくサーチェが真面目に修行する姿が思い浮かばないのだろう。

 無理もない。 サーチェは精神的に幼いからか、極端に人前で努力することを嫌うからな。

 

「意外とそうでもないぞ。 サーチェはものすごく努力家だ。 毎晩こっそりと王城の庭園で修行しているからな」

「え! 意外だなぁ⋯⋯」

 

 目を丸くするサヤ。

 僕も初めてそれを知った時は物凄く驚いたことを記憶している。

 なかなか寝付けない夜に星でも眺めようかと、庭園に出た時に、偶然見かけたのだ。

 そこから数日間、自室から庭園を眺めてみると毎晩サーチェが同じ場所で修行していたし、日課なのだろうな。

 

「ところで⋯⋯サーチェくんのその師匠さん? その人も多分、人並み外れた強さを持ってたんでしょうね〜」

「あぁ。 それこそサーチェすらも相手にならない使い手かもな」

「もしかしたら⋯⋯人間じゃなかったりして!」

「まさか。 そんなことはないだろう」

「だよね〜」

 

 冗談めいた声色でそう言ったサヤは、僕の返答に小さく舌を出して答えた。

 

「さて⋯⋯ここが僕の部屋だ」

 

 話題が切れたタイミングで区切りよく、自室の前に到達した。

 それまで通った一般のメイドや庭師などの部屋とは明らかに別の絢爛な装飾が施された重厚な扉。

 その扉には、僕の部屋であることを示す『セリカ』と書かれた立て札がかけられていた。

 

「わ〜お。 でっかいねぇ⋯⋯」

「まぁな。 僕は中々に高位の役職なんだ」

「サーチェくんがさっき言ってた国王直属ってやつだっけ?」

「あぁ。 その通りだ。 ⋯⋯ってサヤも僕と同じ立場になるのか」

「そ〜だね。 私もこんな感じの部屋が貰えるのかな?」

「どうだろうな? 多分、今の国内にそこまで余裕がないとおもうぞ」

「え〜!」

 

 唇を尖らせるサヤ。

 しかし、仕方ないことなのだ。

 新体制となったマグノリアでは、改革に次ぐ改革が推し進められており、常に国家予算がギリギリの状態で運営されているのだから。

 正直、個人的にはどこかと戦争でもして賠償金で儲けるべきだと思っている。

 

 最も、人間兵器とも言えるサーチェが平和主義者だから実現しないと考えているのだが。

 

「⋯⋯さて。 歓迎するぞ、入れ」

「わ〜い!」

 

 どうでもいいことを考えるのはやめにして、僕は胸ポケットから鍵を取り出して自室にサヤを招き入れる。

 彼女は子どものようにはしゃぎながら部屋の中へと飛び込んで行った。

 

「⋯⋯え?」

「ん? どうしたんだサヤ?」

 

 すっかり見えなくなったサヤの背中を追って僕も部屋の中に入ろうとしたところ、先程意気揚々と入っていったはずのサヤが不思議そうな顔をして戻ってきていることに気がついた。

 

「⋯⋯ここって本当にヴァイスくんの部屋?」

「⋯⋯あぁ。 そうだが⋯⋯どうしたんだ?」

「うそ⋯⋯とりあえず、ちょっとこっち来て!」

 

 驚愕の色を見せたサヤが僕の腕を引っ張って部屋の中へと導いていく。

 やがて開けたリビングにあったのは、愛用のソファと眠るためのベッド。

 あと、エイリさんがくれた連絡機能を備えた熊のぬいぐるみであった。

 

 サヤのただならぬ様子から何かあったのかと不安に思ったが、どうやら杞憂だったようだ。

 しかし⋯⋯何が問題なのだろうか?

 

「これがどうかしたのか?」

「どうかしたのか、って⋯⋯本当に言ってるの?」

 

 サヤは肩を震わせながら問いかけてくる。

 ⋯⋯本当にサヤが何を言いたいのかが分からない。

 

「だから⋯⋯何が言いたいんだ?」

「なんで⋯⋯」

「ん?」

「なんでこんなに殺風景な部屋なの? ヴァイスくん、今は仮にも女の子なんだからもう少し可愛らしい部屋にしなよ!!」

「⋯⋯は?」

「こんな真っ白な壁じゃなくて、ピンクとかにして⋯⋯あともっとリボンとかも巻こうよ! あとは⋯⋯」

「え? おい、サヤ?」

「私に任せてヴァイスくん。 完璧な女の子の部屋を作ってあげるから」

 

 戸惑う僕を他所に、自分の世界に入り込んでしまったサヤは、杖を取り出して何やら詠唱を始めるのであった。

現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)

  • セリカ
  • サヤ
  • サーチェ
  • エイリ
  • カムラ
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