「戻ったぞー⋯⋯って、なんだこれは!?」
先程のメイド長の言動を不思議に思いながら、僕は部屋のドアを開いた⋯⋯のだが。
見慣れた玄関が、ピンクを基調としたデザインのものへと変わっていて、思わず扉を閉じた。
どういうことだ? ここは僕の部屋なはず⋯⋯
部屋に立てかけられた立て札を見ても『セリカ』と書いてあるし⋯⋯ここは僕の部屋で間違いない。
僕が思案していたその時、部屋の中から「あれ? ヴァイスくんどこに行ったの?」と脳天気な声と共に扉が開いた。
「あ! いた! 何してるの? 早く中に入ってよ〜」
「おい!? サヤ!?」
見慣れた自分の部屋の変わりように困惑する僕の気持ちなど知らずに、サヤはグイグイと引っ張って部屋の中へと僕を連行する。
「ねぇねぇ! これとかどうかな〜? 可愛くて自信があるんだけど〜」
「あっ⋯⋯あ⋯⋯」
長い時を生きてきた僕であるが、過去最大級に驚いていた。
白と黒を基調として、綺麗にまとめた室内は無惨にも玄関同様にピンクとフリルで装飾されたメルヘンチックな内装へと変化していた。
「あっ! そ〜だ! 部屋に置いてあったお花は、邪魔だったからあっちに置いといたよ〜」
「えぇ⋯⋯」
サヤの言うお花、通称『魔力花』というのは以前エイリさんに貰った魔力回復薬。 それを作る原料となる薬草である。
人間という種族は昔ほどではないが、魔力を多く所有している数が少ないから広まっていないのは仕方ないのだが⋯⋯人間ではなく、女神であるサヤには知っていて欲しかった。
結構高いやつなんだから⋯⋯。
だが『魔力花』事態はそのまま特に触れられていないようで良かった。
まぁそれ以上の問題が目の前にあるのだが⋯⋯
「おいサヤ? 」
「う〜ん? どうしたのヴァイスくん? お礼は結構だよ〜」
「選べ。 ここで死ぬか部屋を片付けるか」
「ふぇ!?」
僕は
サーチェから貰った不可視の鞘からの行動を予想もしていなかったであろうサヤは、奇怪な声を上げて目を丸くした。
「ぇぇぇぇ!? なんでヴァイスくん怒ってるのさ!?」
「黙れ。 さっさと選ぶんだ」
「む〜! 別にいいじゃん!」
サヤの発言を斬り捨て、剣を更に前へと突き出すことで圧をかける。
別にサヤを本気で殺そうとしている訳ではないし、ただ部屋を元のように戻してくれさえすれば僕はそれでいいのだ。
少しきついやり方になってしまったが、まぁサヤだから少しくらい良いだろう。
そんなことを考えていた僕だが、次の瞬間サヤは予想外の行動をとった。
「だったらこっちだって⋯⋯それ!」
「⋯⋯!」
サヤは指先を僕へと突き出し、無詠唱魔法を放った。
煌めく紫電が僕の頬を掠めて背後の壁へと着弾する。
⋯⋯サーチェとの戦いで、先程見ていたから反応できたものの、初見なら絶対に反応できなかった。
「ふふん! やるんだったら容赦しないよ? ⋯⋯それっ!」
「クソッ⋯⋯!」
完全にやる気になってしまったサヤはもう一発、僕に向けて魔法を放った。
それを何とか回避したが、その回避先に予見していたかのように放たれていた攻撃には回避が間に合わず、剣を盾にして迎撃した。
「ちょっと待つんだサヤ! これ以上は冗談にならない。 一度話し合おう⋯⋯っと!」
「え〜どうしよっかな〜? それっ!」
間髪なく放たれる攻撃を躱すのが精一杯な僕とは対照的に、笑みを深めるサヤは愉しそうに魔法を放ち続けた。
最もその魔法のせいで、先程自分で整理した部屋を荒らしているのだが⋯⋯本人は特に気にしていない様子だ。
「そこだっ!」
「しまっ⋯⋯!」
攻撃を捌き続けること数分。
ついに、サヤの足元を狙った攻撃によって体勢を崩されてしまった。
「貰った! それっ!」
しまった、と思った時にはもう遅かった。
大きな声とともに、魔法を放ったサヤ。
その攻撃は今までの最速で僕に迫ってきた。
完全に体勢の崩れた今の状態では躱すことは不可能であった。
「まだだ!」
「え!?」
僕はいつの間にか近くに置かれていたぬいぐるみを何とか掴み取り、盾として攻撃を防いだ。
凄まじい電圧によって黒焦げとなったぬいぐるみを捨てて、僕は呆けているサヤへと駆け出した。
「とった!」
何故か微塵も動かないサヤへと剣を振りかぶる僕。
そのまま振り下ろそうとしたのだが⋯⋯
「うっ⋯⋯」というサヤの声で動きを止めた。
まだ何かあるのかもしれない⋯⋯。
僕は一度落ち着いて周囲を油断なく確認する。
今度こそサヤを無力化しようと試みた僕だが、サヤの姿を見て思わず手を止めてしまった。
「うぇぇぇん! ヴァイスくんが⋯⋯私の大切なシノブちゃんを壊したぁ!」
「⋯⋯は?」
サヤは泣いていた。
美しく長い黒髪を揺らしながら、ビービーと子どものように泣いていたのだった。
現在の推しキャラ(番外編の主人公に起用)
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セリカ
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サヤ
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サーチェ
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エイリ
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カムラ